『Japan Drone 2021(第6回ジャパンドローン)』現地レポート

2021年6月14~16日に、幕張メッセにて「Japan Drone 2021(第6回 ジャパンドローン)」が開催されました。ジャパンドローンは、名前の通り、日本のドローン技術の発信と企業交流の場を提供している展示会です。急速な市場の広がりなどの影響によりこれまで以上に安全性が求められるドローン。今回は、緊急パラシュートシステムやエアバッグなどドローンの安全に関する技術や、商用運用ドローンの飛行時間の延伸に関する技術についてご紹介致します。

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Japan Droneは、2016年から開催されているドローンに特化した展示会です。民生用・商業用のドローン市場に向けたイベントで、日本のドローン技術を広く世界に発信し、スタートアップ企業の多いドローン関連産業の出展社などに商談の場を提供している展示会となっています。

ドローンをめぐる技術革新と市場の広がり、事故の発生などを受け、日本でも航空法が2020年、2021年と改正され、今後は目視外での飛行による物品輸送を視野に入れた資格制度の導入などが取り沙汰されています。将来的な法改正も含め、より安全性の高いドローンが求められているということで、本展示会でもそういった出展が目立ちました。そんな中からいくつかをピックアップしてご紹介しましょう。

ドローン向け緊急パラシュートシステム、自動車用安全部品で培った火工品技術を応用

産業用の火薬のほか、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂、触媒、染料などの化学製品の製造販売をしている日本化薬株式会社(東京都千代田区)が出展していたのは、ドローン向けの緊急パラシュートシステムです。特に物流、測量、点検、災害救助などの産業用分野でのドローンの安全のため、エアバッグ用インフレータやシートベルト用ガス発生装置などの自動車用安全部品で同社がつちかった火工品技術を応用し、ドローンの重大な故障や異常を自動で検知して火工品を遠隔的に作動させ、高速でパラシュートを展開するシステムです。

説明してくださった同社セイフティシステムズ事業本部の大坪秀礎(おおつぼ・ひでき)氏によれば、パラシュート展開のために使用している火薬量は火薬類取締法的に除外適量のごく少量(令和2年5月8日 経済産業省告示 第百七号 三十八の項)だそうで、自動車用のエアバッグに使われている技術を応用したそうです。

外形のサイズは3種類あり、展示していたのは直径130mm、高さ154mm、25kg以下の産業用ドローンに対応でき、パラシュートシステム自体の重量は約1kgのものと言います。メインのパラシュートを引き出すための小型パイロットシュートを備え、メインのパラシュートは1m2、最低展開高度は3m以上、降下速度は1秒間に約5m。2022年に販売を開始する予定だそうです。

日本化薬株式会社のドローン向けの緊急パラシュートシステム。ドローン本体にネジで取り付けるだけで搭載可能で、誤作動を防止するために通信回路を遮断するセーフティシステムを備えている。
日本化薬株式会社のドローン向けの緊急パラシュートシステム。ドローン本体にネジで取り付けるだけで搭載可能で、誤作動を防止するために通信回路を遮断するセーフティシステムを備えている。

配送用ドローン向けエアバッグ、自動車用エアバッグ布の技術を応用

縫製用の自動ミシンや縫製ロボットなどを製造販売している株式会社松屋R&D(福井県大野市)が参考出展していたのは、ドローン用のエアバッグです。説明してくださった同社製造部長、山下尚一(やました・しょういち)氏によれば、これから始まるであろうドローンを使った宅配便の配送利用のため、安全対策用にエアバッグの使用が必須となると予想し、同社の自動車用エアバッグ布の技術を応用して5年前から開発を始めたと言います。

同社のエアバッグは大型の配送用ドローンに取り付け可能なもので、ドローンによる墜落・衝突事故の大幅な緩和だけでなく、墜落時の搭載荷物やドローン本体の保護、水中への墜落時には沈没リスクの回避を目的として開発したそうです。ドローンの状態や飛行の異常を検知すると自動でエアバッグが展開されるといい、これは自動車のエアバッグの布と同じ展開システムで作動すると言います。

株式会社松屋R&Dのドローン用エアバッグは、ドローンの外側に配置したパイプに自動車用エアバッグと同じウレタンやナイロンの布を詰め、異常を検知するとガスが充填されて浮き輪状に膨らむ
株式会社松屋R&Dのドローン用エアバッグは、ドローンの外側に配置したパイプに自動車用エアバッグと同じウレタンやナイロンの布を詰め、異常を検知するとガスが充填されて浮き輪状に膨らむ

産業ドローン用のパラシュートシステム、自動車エアバッグなどのガス発生薬剤を使用

銃砲弾などの防衛装備品や防衛装備品の技術開発でつちかったノウハウを生かした防犯・防災製品などの製造販売をしている日本工機株式会社(東京都港区)が出展していたのは、産業ドローン用のパラシュートシステムです。前述した緊急パラシュートが火薬を使って展開させるのに比べ、同社のパラシュートは非火薬作動だそうです。

説明してくださった同社機能品営業部、主査、藤澤貴大(ふじさわ・たかひろ)氏によれば、これから予想される産業ドローンの安全対策の義務化や法制化をみすえ、2年前から開発を始めたと言います。防衛装備品では銃砲弾など、火薬を使った製品開発のノウハウがある同社ですが、このパラシュートは自動車のエアバッグなどのガス発生薬剤を使ったそうです。

法制化などを考えた場合、火薬を使わないほうがいいのではと考えたと言います。防衛装備品にも非火薬作動のものが多く、開発自体は難しくなかったそうで、パラシュートの薄くて軽い生地も防衛装備品でつちかった技術の応用による開発だそうです。

ドローンとは独立して作動する同社が開発したパラシュート制御基板が、姿勢の復元が不可能な状態や墜落などドローンの異常を自動で検知し、パラシュートの完全展開まで約1秒で行うと言います。また、目視でドローンの異常を検知した場合、ドローン・パイロットが送信機(プロポ)から強制作動させることも可能だそうです。

日本工機株式会社の産業ドローン用のパラシュートシステム。対応高度は25m以上、高さ96mm、幅(最大)182mm、重量は約500g。
日本工機株式会社の産業ドローン用のパラシュートシステム。対応高度は25m以上、高さ96mm、幅(最大)182mm、重量は約500g。

エンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド・ドローン、自動車関連技術を活用

このように本展示会では、パラシュートやエアバッグなど、ドローンの安全技術に関する出展が目立ちました。今後の産業用ドローンの本格運用に向けて、避けられない課題解決と言えます。

一方、商用運用ではドローンの飛行時間の延伸も重要な技術的問題です。有線による給電の技術もありましたが、目視外への飛行を考えると現実的ではなさそうです。そうした中、飛行時間延伸について新しい技術も散見されました。

自動車用のキャブレター、バルブ、燃料ポンプなどを製造・販売している愛三工業株式会社(愛知県大府市)が出展していたのは、エンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド・ドローンです。この技術は3年ほど前から開発を始め、試作機が飛行できるようになったと言います。

同社がこれまでつちかってきた自動車関連技術やノウハウを生かしたそうですが、空冷のエンジンで発電した電力の充電など電力制御のシステム調整が難しかったそうです。4ストロークのOHVエンジンは排気量113ccで、5.5kW/7,800rpm(High時の数値、Low時は3.8kW/6,500rpm)を発電し、PCUで電力制御してドローンのモーターへ給電しつつ、バッテリーへも充電(High時0.8kW)すると言います。

バッテリーからは0.9kW放電によりドローンのモーターへ給電し、ドローン(離陸重量34.5kg)の飛行電力は4.7kW/48Vだそうです。このハイブリッド・システムによってバッテリー容量が少なくなると充電を繰り返すことで、例えばバッテリーのみで30分の飛行時間のドローンが、約6倍である3時間の飛行が可能になると言います。

愛三工業株式会社のエンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド・ドローン技術。離陸総重量は34.5kg、機体重量は30.5kg、最大飛行時間は180分(3時間、燃費370グラム/kWh)。また同社は、こうしたドローンのハイブリッド・システムを自動車向けの対応部品としても今後提案していく。
愛三工業株式会社のエンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド・ドローン技術。離陸総重量は34.5kg、機体重量は30.5kg、最大飛行時間は180分(3時間、燃費370グラム/kWh)。また同社は、こうしたドローンのハイブリッド・システムを自動車向けの対応部品としても今後提案していく。

水上緊急救命用の浮き輪などのドローン向けのオプションと、鯨類目視調査用ドローン

災害救助用ドローンなどの輸入代理店をしている株式会社センチュリー(東京都台東区)は、自社で開発したドローン向けのオプションを出展していました。赤外線カメラモジュール、救援物資投下モジュール、警告ライト付き拡声器モジュールなどですが、中でも目を引いたのが水上緊急救命用の浮き輪(2個)です。

株式会社センチュリーの水上緊急救命モジュール。内蔵された照準カメラで投下位置を正確に把握し、浮き輪を投下する。
株式会社センチュリーの水上緊急救命モジュール。内蔵された照準カメラで投下位置を正確に把握し、浮き輪を投下する。

クジラの資源調査などをしてきた一般財団法人日本鯨類研究所が出展していたのは、鯨類目視調査用ドローンです。この飛行機型ドローンは、2021年3月に北太平洋で51kmの目視外自律飛行を達成したそうです。航行中の調査船上からの離発着が可能で、スペック上の航続距離は約100kmと言います。

一般財団法人日本鯨類研究所のクジラの目視観察を行う小型無人航空機(UAV)ドローン。全長1,920mm、翼長2,500mm、本体重量12.44kg、ペイロード最大5kg。風速20kmで通常運用可能、風速40kmで水平飛行状態の維持が可能。
一般財団法人日本鯨類研究所のクジラの目視観察を行う小型無人航空機(UAV)ドローン。全長1,920mm、翼長2,500mm、本体重量12.44kg、ペイロード最大5kg。風速20kmで通常運用可能、風速40kmで水平飛行状態の維持が可能。

コロナ禍ということもあり、展示会としての出展規模や出展社数は少なかったものの、注目を集める技術なのか、会場は活気と熱気に包まれていました。次回のJapan Drone 2022は、同じ幕張メッセで2022年6月21日(火)から23日(木)まで開催される予定です。

文・写真/石田雅彦

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