『TECHNO-FRONTIER 2021、第30回モーション・エンジニアリング展』現地レポート

2021年6月23~25日に、東京ビッグサイトにて「TECHNO-FRONTIER 2021、第30回モーション・エンジニアリング展」が開催されました。TECHNO-FRONTIERは、メカトロニクス、エレクトロニクスに関する11もの展示会によって構成され、モーター、電源、センサーなどさまざまな技術の展示や技術動向を情報収集できる場となっています。今回は、アキシャルギャップモーターや食品ハンドリングロボットなどの要素技術からグラファイト・ブロックなどの材料まで、最新動向をお伝えします。

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TECHNO-FRONTIERは、メカトロニクス、エレクトロニクスなどに関連する専門領域の最新技術と製品が紹介され、アクチュエータシステム、モーション・メカニズム、機械要素、モーション・コントロール、モーション・センサなど、駆動・伝達・制御のソリューションが出展される専門技術展です。【第36回】電源システム展、【第30回】モーション・エンジニアリング展、【第14回】メカトロニクス制御技術展、【第2回】電子部品材料展、【第34回】EMC・ノイズ対策技術展、【第3回】 部品設計・加工技術展、【第23回】熱設計・対策技術展、【第1回】開発・設計DX、【第1回】非接触Techで構成され、同時開催展としてINDUSTRY-FRONTIER 2021、交通インフラWEEK 2021が開かれていました。

モーター、電源、センサーなどの要素技術から製品設計に関するソリューション技術までの展示紹介から技術動向を情報収集できる展示会として、自動車、産業機械、ロボットなどの製造業の開発設計・生産の技術者が多く来場していたようです。東京ビッグサイトでのリアルの開催のほか、オンライン展も併設されていましたが、EV、半導体、エネルギーなどの関連技術、センサー、ノイズ・熱対策、計測関連など要素技術も多く出展されていました。そんな同展示会から気になった技術や展示を紹介していきましょう。

従来より薄型で高トルクにできる「アキシャルギャップモーター」

自動車関連、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材など幅広い分野で事業を展開している住友電気工業株式会社(大阪市中央区)が出展していたのは、同社の圧粉磁心によるアキシャルギャップモーター(Axial Gap Motor)です。

説明してくださった同社アドバンストマテリアル研究所、機能材料研究部長、上野友之(うえの・ともゆき)氏によれば、アキシャルギャップモーターというのは一般的なモーター(ラジアルギャップモーター)より薄型で高トルクにできるモーターで、ラジアルギャップモーターが回転軸に対して垂直(2次元)となっているのに比べ、アキシャルギャップモーターでは回転軸に対して垂直(3次元)の磁気回路となっていると言います。

同社ではこれまで磁気の等方性と自由度の高い圧粉磁心を開発し、ディーゼルエンジン用の燃料噴射弁や電動車両の昇圧用リアクトル、点火コイル向けなどの製品の量産化を実現してきたそうです。そして、こうした圧粉磁心の技術を生かし、ラジアルギャップモーターで使われている電磁鋼板では難しかった3次元状の鉄心(コア)を、圧粉磁心によって2020年8月から量産化し、ハイブリッド自動車の駆動用モーターなどへの採用を見込んでいると言います。

上野氏によると、従来のラジアルギャップモーターで使われている電磁鋼板の積層では磁気に異方性が生じ、電磁鋼板によるアキシャルギャップモーターの量産化は難しかったのだそうです。一方、どの面に対してもほぼ同じ材料組織の圧粉磁心は等方性が高く、ネットシェイプ成形(金型を使った加圧成形)をすることによって、3次元の磁気回路を必要とする鉄心(コア)に適するといいます。

また、圧粉磁心は、高周波域でコアロスが低い材料だそうで、モーターをインバータ駆動(直流を交流に変換するなど電圧や周波数を変えたり整えたり)する際に発生する高調波によるエネルギーロスの抑制が期待できるそうです。上野氏によると、アキシャルギャップモーターは、モーターの静止部分であるステータと回転部分であるローターを回転軸方向に積層した構造になっているため、モーターを薄型化した場合でもステータとローターの対向面積が変わらないため、高いトルクを維持できると言います。

従来のラジアルギャップモーターに比べ、同社の圧粉磁心を用いたアキシャルギャップモーターは同じ性能でも体積や重量が約半分になるそうです。今後は生産性の観点からツバ付きコアや薄膜・高耐圧の絶縁塗装技術などの周辺技術も開発し、アキシャルギャップモーターの普及をさらに進めていきたいと言います。

住友電気工業株式会社が出展していた薄型でも高トルクのアキシャルギャップモーターのコア。円周上に並ぶ台形のコアにコイルを巻いてモーターにするといいます。
住友電気工業株式会社が出展していた薄型でも高トルクのアキシャルギャップモーターのコア。円周上に並ぶ台形のコアにコイルを巻いてモーターにするといいます。

高い異方性、熱伝導性と電気伝導性をもつ「グラファイト・ブロック」

グラフェンなどのナノカーボン炭素材料に関連した素材の製造・販売、研究開発を行っている株式会社インキュベーション・アライアンス(神戸市兵庫区)が出展していたのは、特殊な成形方法で製造したグラファイト・ブロック(インゴット)とそれを加工した放熱部材、モーター摺動部材、抗菌素材などです。

説明してくださった同社営業企画室長、薮本秀明(やぶもと・ひであき)氏によると、同社はグラフェンという素材を中心にして研究開発し、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーといった高機能・高品質なカーボン材料を供給するために設立されたと言います。

積層数が数層の多層グラフェンを無基板、無触媒で直接合成することに成功したそうで、展示されていたグラフェンのブロック(インゴット)は、従来のグラフェンのブロック(黒鉛)が等方性で、熱伝導性、電気伝導性で金属より劣っていたのに比べ、高い異方性をもち結晶性に優れているため、高い熱伝導性と電気伝導性があるそうです。

薮本氏によると、グラフェンの炭素原子を面状に積層し、ミルフィーユ状態に積むことで実現できたブロック(インゴット)だそうで、摩擦係数が低いため、モーターブラシなどの摺動部分の固体潤滑剤として使うことができると言います。そのほかに、電池の電極、放熱部材、熱交換部材、高温断熱材、各種シールドなどへの用途が考えられるそうです。

また、グラフェンの鋭いエッジが、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、緑膿菌といった感染症を引き起こす細菌の細胞膜に突き刺さり、細菌を死滅させる機能をもっていると言い、グラフェンには高い抗菌作用があることがわかっています。グラフェンのブロック(インゴット)を原料にして加工し、バイオプレート材料にすることで抗菌性の高い素材として提供できるそうです。

株式会社インキュベーション・アライアンスのグラフェン・ブロック(インゴット)は、一般的な黒鉛材料に比べて電気抵抗で約3分の1から5分の1、熱伝導性で10倍以上の特性をもつといいます。この塊1つで約40万円だそうです。
株式会社インキュベーション・アライアンスのグラフェン・ブロック(インゴット)は、一般的な黒鉛材料に比べて電気抵抗で約3分の1から5分の1、熱伝導性で10倍以上の特性をもつといいます。この塊1つで約40万円だそうです。

バリやダレを最小限に抑えた、多種多様な断面形状を持つ「異形線材」

鉄・非鉄線材製品、金属加工部品などの製造・販売をしているナミテイ株式会社(大阪府東大阪市)が出展していたのは、多種多様な断面形状を持つ線材製品です。説明してくださった同社営業部、営業課長(開発営業)、吉川浩至(よしかわ・こうじ)氏によると、銅やアルミなど、一般的な丸い断面のコイル材料に伸線加工や圧延加工を施すことによって、要望に応じた断面形状に加工された異形線材ができ、それを切断することによって端子や電極、接触子などの部品を量産できると言います。

同社ではこうした異形線材を切断する際、バリやダレを最小限に抑える加工が可能で、面取りなどの後加工の必要のない工程にすることができるそうです。また、線材ではなくパイプ状の中空の材料を異形伸線することで軽量化された中空の異形線も作っていると言い、直管ではなく数kmにもなるコイル状に巻いたパイプ材を使うことで連続して異形伸線でき、生産効率と歩留まりを改善することができているそうです。

吉川氏によれば、線材を金型に入れ、引き抜くことで異形線とするそうですが、断面が非対称の場合不均一に力が加わるため、引き抜くためのノウハウが必要だそうです。最終的な部品の形状を意識し金型から引き抜くというのが、同社のコア技術と言います。

ナミテイ株式会社の異形線材の例。サンプル・デモのため、実際よりも異形線の部分が大きくなっています。
ナミテイ株式会社の異形線材の例。サンプル・デモのため、実際よりも異形線の部分が大きくなっています。

協働ロボット向け、画像撮影用カメラと食品ハンドリングロボット

ロボットシステムの開発、製造、販売を行っている東京ロボティクス株式会社(東京都新宿区)が出展していたのは、ロボットアームの先などの作業を3次元で画像撮影するカメラとそのカメラを使った食品ハンドリングロボットのデモです。説明してくださった同社ソフトウェア開発マネージャ、川西亮輔(かわにし・りょうすけ)氏によれば、この3Dカメラはカメラコントローラと組み合わせて使い、10fpsという高速度と低い奥行き計測バラツキ誤差(0.06mm)などの特徴があるそうです。

安全柵が必要ない協働ロボットなどでは、ロボットを移動させるたびにシステムを構築し直さなければならない事態も多いですが、このカメラをロボットアームの先や双腕ロボットの頭部につけることで機動性の高いシステムを構築できると言います。また、3Dの奥行き画像とカラー画像を同じカメラで撮影することで、2つの画像にズレが生じにくく、精度の高い情報を得ることができるそうです。

さらに、このカメラを装着した食品のハンドリングロボットでは、野菜や果物、加工食品など、形状にばらつきのある物体を高速でピッキング(平均タクトタイム2.5秒)でき、把持成功率を安定して保つ(1,500回の連続試験で98.5%の成功)ことができると言います。川西氏によれば、野菜や唐揚げなどの加工食品という不定形の対象物との境界をどう切り分け、くぼみデータなどで隙間を探して把持するという技術開発が難しかったそうです。

東京ロボティクス株式会社の3Dカメラによる野菜や果物の識別画像。2019年から開発を始め、2021年1月に製品化。
東京ロボティクス株式会社の3Dカメラによる野菜や果物の識別画像。2019年から開発を始め、2021年1月に製品化。

TECHNO-FRONTIERには、現場で研究開発や製造などに携わる技術者や研究者が多く来場するそうですが、夏前の開催ということで暑さ対策の出展も併催され、多種多様な来場者がいたという印象でした。次回のTECHNO-FRONTIERは2022年7月20日(水)から22日(金、オンライン展は7月25日から29日)に東京ビッグサイト東展示棟で開かれる予定です。

文・写真/石田雅彦

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