『INTERMOLD2021/金型展2021/金属プレス加工技術展2021』現地レポート

2021年4月14~17日に、東京ビッグサイトにて「INTERMOLD2021/金型展2021/金属プレス加工技術展2021」が開催されました。同展示会は、国内外の工作機械などの設備機器メーカーや金型メーカー、プレス加工メーカーなどが出展している、最先端の金型加工技術が集結する専門展です。新型コロナウイルスの影響でオフラインでの開催は2年ぶりとなります。今回は、超硬合金のCVDコーティングや、超短パルスレーザによる摩擦特性に優れた切削工具製作など、最新金属加工技術についてご紹介します。

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国内外の工作機械などの設備機器メーカーや金型メーカー、プレス加工メーカー、各団体、大学などが出展しているのが、インターモールド振興会が運営する「INTERMOLD/金型展/金属プレス加工技術展」です。金型設計、製造、金属プレス、プラスチック成形などの技術といった最新のモノづくりが展示され、東京、大阪、名古屋で毎年開催されていますが、2020年は新型コロナの影響で中止になっていました。

2021年の東京展は、新型コロナ感染防止対策を講じ、事前の来場登録制、会期後のオンライン展示など、新型コロナ時代の展示会として4月14日から17日までの4日間、東京ビッグサイトの青海展示棟で開催され、268の企業や団体が出展していました。そんな同展から気になった出展や技術を紹介しましょう。

超硬合金の摩耗や焼付き対策のためのCVDコーティング

超硬合金の製造販売をする株式会社シルバーロイ(兵庫県加西市)が出展していたのは、工具や金型などに使われる多種多様な超硬材質です。説明してくださった同社東京営業所、取締役所長の能瀬茂幸(のせ・しげゆき)氏によると、同社の超硬合金素地は特殊な形状や超精密加工、小ロットにも対応し、燃料電池などに使うと寿命が伸びる加工技術などが特徴だと言います。

また、こうした超硬合金では、摩耗や焼付き対策のためにさらに硬い窒化物や炭化物などでコーティング(皮膜)し、パンチ、ダイス、絞り型、耐摩耗工具など、幅広い用途に対応するようにしているそうです。同社のコーティングはCVD(Chemical Vapor Deposition)という処理方法で、これは化学蒸着法とも言い、硬質の皮膜を化学的に母材表面に蒸着させる方法です。

このCVDコーティングは、物理(電気)的に蒸着させるPVD(Physical Vapor Deposition)と比較して母材との密着性に優れた被膜法だそうで、PVDの皮膜厚が1μmから3μmなのに比べ、約7μm(平均)と厚みがあるそうです。また、被膜生成に期待を使用するため、PVDよりも膜厚の均一性に優れ、複雑な形状の母材に対しても均一なコーティングが可能です。

能瀬氏によると、同社のCVDコーティングの特徴は、脆弱で衝撃に弱く亀裂が入りやすくなる皮膜直下組織の異常相を生じにくくすることだそうです。皮膜自体が優れていても、こうした異常相が生じれば被膜が剥離脱落を起こしてしまうと言い、同社のCVDコーティングでは異常相の問題を解決して被膜の高い密着性を実現したそうです。

株式会社シルバーロイのCVDコーティングをほどこした製品。冷間鍛造用の金型など耐久性、耐摩耗性が求められる素材を皮膜し、寿命を延ばすと言います。
株式会社シルバーロイのCVDコーティングをほどこした製品。冷間鍛造用の金型など耐久性、耐摩耗性が求められる素材を皮膜し、寿命を延ばすと言います。

アルミ・ダイカストの部品製造時に押出しピンと兼用で使うガス抜きベントピン

インサート付きダイカスト製品の製造販売、アルミ・亜鉛ダイカスト・マグネシウムダイカスト・鋳造機械加工などを行っている株式会社日伸電工(兵庫県たつの市)が出展していたのは、アルミ・ダイカストの部品製造時に押出しピンの代わりに使うガス抜きベントピンです。説明してくださった同社製造部の安田一裕(やすだ・かずひろ)部長によれば、アルミ・ダイカストの充填では金型内のガスを排気することが重要で、これがうまくいかないと金型内の空気が溶湯と混じってスが入る原因になると言います。

同社のベントピンは押出しピンと兼用で使うそうで、溶湯が金型(キャビティ)に入る前に射出シリンダーの役割をするプランジャースリーブの中で撹拌され、細かく分散したガスを抜くことができるそうです。ガスの排出口を極端に小さくすることでガスの流速を上げ、排気の慣性力を高めてガス抜きをします。その後は広がった排出口によって通気抵抗が減り、ガス抜き効果がより高まると言います。

同社のベントピンは、ランナー用と製品用があるそうです。このベントピンを使うことで、バリの削減、品質向上、金型やスリーブなどの長寿命化、省エネなどが期待できると言います。

株式会社日伸電工の押し出しピン兼用のベントピン。奥がランナー用、手前が製品用。
株式会社日伸電工の押し出しピン兼用のベントピン。奥がランナー用、手前が製品用。

超短パルスレーザによるディンプル構造が導入した、摩擦特性に優れた切削工具

超短パルスレーザによるマイクロ微細受託加工、レーザシステムの設計・製作・販売などを行っている株式会社リプス・ワークス(東京都大田区)が出展していたのは、ディンプル構造などの三次元周期構造を形成し、摩擦特性に優れた工具を製作する技術です。説明してくださった同社、受託加工グループの吾田千恵(あずた・ちえ)氏によると、これは大阪大学の榎本俊之教授らと共同で開発した技術だと言い、切削工具などでディンプル構造を導入した初めての技術だそうです。

同社の超短パルスレーザを使いすくい面に深さ5μmの微細なディンプル構造を形成することで、切削油剤を使ったウェット加工よりドライ加工で、特に周期溝構造よりも高い耐摩耗性をもたせることができたそうです。これはすくい面のディンプルが硬質な摩耗粒子をトラップすることによって実現されており、ウェット加工でも切削油剤を界面に保持する効果が期待できると言います。

こうしたピコ秒、フェムト秒などの超短パルスレーザを使うことで、プレス金型や切削工具などへマイクロ・テクスチャーを施すことが可能になり、その結果、工具の長寿命化、加工油の軽減、洗浄工程の簡略化などができるようになるそうです。こうしたテクスチャーは、工具ではなく加工のため数十μmの微細なパターンをバリやダレを生じさせないといった特徴があり、ディンプル構造、エンボス構造、ピラミッド構造などのテクスチャーを施すことができ、摩擦特性の向上といったトライボロジー以外にも撥水・親水効果、流体特性の向上、反射率や拡散性などの光学特性の制御などができると言います。

株式会社リプス・ワークスのディンプル構造を施した切削工具。ディンプル径70μm、ディンプルの深さ5μm、ディンプルのピッチは75μmだそうです。
株式会社リプス・ワークスのディンプル構造を施した切削工具。ディンプル径70μm、ディンプルの深さ5μm、ディンプルのピッチは75μmだそうです。

プラスチックマグネットを使った軽量で薄肉な金型製作

金型製作、研削・プレス機器設計製造などを手掛ける小林工業株式会社(秋田県由利本荘市)が出展していたのは、プラスチックマグネットに関連した製品事例と同社のプラスチックマグネット用金型です。プラスチックマグネットとは、バリウム・フェライト(BaFe)、ストロンチウム・フェライト(SrFe)といった磁石の微粒子を熱可塑性樹脂に混ぜた素材で、射出成形加工で製品を作ると言います。

プラスチックマグネットは、焼結磁石に比べると複雑な形状が可能で後加工がなく、軽量で薄肉などの形状でも安定した寸法の磁石を作ることができるそうです。また、割れや欠けが生じにくく、アキシャル、ラジアル、極異方といった磁石の配向に対応できます。

小林工業株式会社のプラスチックマグネット金型によって作られたモーターの事例。プラスチックマグネットは、パワーウインドウ、ABS、ドアミラーなど自動車用部品、エアコンやオフィス複合機のモーターなどに広く使われているといいます。
小林工業株式会社のプラスチックマグネット金型によって作られたモーターの事例。プラスチックマグネットは、パワーウインドウ、ABS、ドアミラーなど自動車用部品、エアコンやオフィス複合機のモーターなどに広く使われているといいます。

超耐熱ポリイミド成形体、機械的加工性に優れた金属製品の代替に

ポリイミド成形体、ダイヤモンド工具の開発、販売を行っている新日産ダイヤモンド工業株式会社(横浜市金沢区)が出展していたのは、超耐熱ポリイミド成形体です。説明してくださった同社の関連企業、鈴幸商事株式会社(横浜市港北区)機能品営業部の西夏美(にし・なつみ)氏によると、同社のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)系ポリイミド樹脂は電子部品、液晶、工業用などに広く使われ、航空宇宙関連でも採用されている素材だと言います。

BPDA系ポリイミド成形体は、ポリイミド樹脂のもつ耐熱性、機械強度、絶縁性、潤滑性、化学的特性に加え、低吸水性、耐薬品性、耐放射線特性に優れ、加工しやすく、熱による変形も少ないそうです。また、機械的加工性にも優れていて金属製品の代替による軽量化が期待できると言います。

新日産ダイヤモンド工業株式会社のBPDA系ポリイミド成形体。半導体製品、液晶装置などの耐熱機械部品、摺動部品、原子力関連部品、航空・宇宙関連部品などに使われているそうです。
新日産ダイヤモンド工業株式会社のBPDA系ポリイミド成形体。半導体製品、液晶装置などの耐熱機械部品、摺動部品、原子力関連部品、航空・宇宙関連部品などに使われているそうです。

コロナ禍の東京で4日間開催されたINTERMOLD/金型展/金属プレス加工技術展でしたが、出展社や来場者が熱心に商談や情報交換をしている姿がありました。次回は2022年4月に大阪、7月に名古屋で開催される予定です。

文/石田雅彦

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