日本における「地熱発電」の現状、そして地熱発電の仕組みとメリット~カーボンニュートラルの実現に向けて(前編)

INTERVIEW

JOGMEC
総務部広報課長
尾崎 敏樹

地熱発電は、マグマで熱せられた高温・高圧の蒸気と熱水の高いエネルギーを電力に変えることによって行います。環太平洋火山帯に属した日本の地下には、このマグマが大量に溜まっており、世界第3位の地熱資源量を保有しています。しかし、1925年日本最初の地熱発電に成功した以来、大きな発展は見られず、地熱発電量は世界10位と、豊富な資源を生かしきれていないのが現状です。今回は、地熱資源開発推進のサポートを行っている独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に、日本における地熱発電の現状と、地熱発電の適した場所の条件や仕組み、メリットについてお話を伺いました。

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再生可能エネルギー開発の動きが加速しています。日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しているため、国際情勢に左右されない安定的な資源の確保が喫緊の課題となっています。そのような状況の中、注目を集めているのが「地熱発電」です。そこで今回は、日本の資源・エネルギー開発に関わるさまざまな取り組みを続ける独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation、以下JOGMEC)地熱統括部(現在、総務部広報課長)の尾崎敏樹(おざき・としき)氏にお話をうかがいました。

日本における地熱発電の現状

「再生可能エネルギーには、水力、太陽光、風力、バイオマスなど、さまざまな種類がありますが、その中でも地熱発電はまだまだ開発の余地が残されており、大きなポテンシャルを秘めたエネルギー源であると言えます。事実、日本にはアメリカ、インドネシアに次ぐ、世界第3位の地熱資源量があり、経済産業省 資源エネルギー庁(参考文献1)によれば、日本の地熱発電資源量は2,347kWに相当します。しかし、現状の日本の地熱発電量は約54万kWで、世界で10位。豊富な資源を生かしきれていないのが現状です。そのため、JOGMECでは地熱発電に取り組む事業者を支援することで、資源の有効活用を図っています」

そう尾崎氏が語るように、実は日本は世界有数の豊富な地熱資源に恵まれた国です。環太平洋火山帯に属し、世界の7%にあたる100以上の活火山を持つ火山国である日本の地下には大量のマグマが溜まっており、地熱発電はその熱を電気に変換して有効利用できる発電方法なのです。


世界各国の地熱発電設備容量。環太平洋火山帯に多い (提供:JOGMEC)
世界各国の地熱発電設備容量。環太平洋火山帯に多い (提供:JOGMEC)


JOGMECの取り組みを紹介する前に、地熱発電の基本について解説しておきましょう。

世界初の地熱発電所が誕生したのは、1900年代のこと。1904年にイタリアのラルデレロ地方で最初の地熱発電実験に成功したのを受け、1913年に世界初の地熱発電所が操業を開始しました。日本における地熱発電の歴史は意外に古く、1925年には日本最初の地熱発電に成功しています。しかしその後、大きな発展は見られず、1966年になってようやく日本初の地熱発電所である岩手県の松川地熱発電所が、続いて1967年には大分県の大岳発電所が稼働を開始します。

1970年代に入ると二度のオイルショックをきっかけにエネルギー政策が見直され、地熱発電が推進されます。その結果、発電量は大幅に増え、1996年には地熱設備の認定出力50万kWを達成しましたが、石油価格の安定化やエネルギー政策の転換により、90年代後半から近年まではほぼ横ばいの状態が続いていました。しかし近年の再生可能エネルギーの必要性の高まりを受け、地熱資源の開発が再び活発になろうとしています。


地熱発電に適した場所の条件

地熱資源に恵まれた日本ですが、どのような場所で地熱発電が行われているのでしょうか。尾崎氏はこう解説します。

「地熱発電はマグマ溜りの熱で温められた『地熱貯留層』に溜まった『地熱流体』(蒸気や熱水)を利用します。つまり、地熱貯留層を見つけて掘削し、地熱流体を地上に取り出す必要があります。火山のあるところであれば、どこでも地熱貯留層が形成されるわけではありません。次の4つの条件が必要になります。

 ① 周囲の岩盤を熱するマグマ溜りがあること。
 ② マグマ溜まりによって熱せられる水の供給源があること。
 ③ 高温の蒸気や熱水を閉じ込める蓋の役割を果たす難透水性の地層(キャップロック)があること。
 ④ キャップロックの下に地熱流体を蓄えられる地熱貯留層があることです」

地熱発電には4つの成立要件がある (提供:JOGMEC)
地熱発電には4つの成立要件がある (提供:JOGMEC)


そのような条件が揃っている場所は、日本では、火山帯や地熱地帯が分布する、北海道、東北、九州に多く存在します。現在、全国で40か所近くの地熱発電所が稼働しており、発電出力の合計は約54万kW、発電電力量は2,472GWh(2019年度)となっています。日本の電力需要の約0.2%にあたる数字となります。

地熱発電の仕組み、「蒸気発電」と「バイナリー発電」

地熱発電は、マグマで熱せられた高温・高圧の蒸気と熱水である「地熱流体」の高いエネルギーを電力に変えることによって行います。その方法には、大きく分けて「蒸気発電」と「バイナリー発電」の2つがあります。

蒸気発電の仕組み

「蒸気発電」は、地中1,000〜3,000mの深さにある地熱貯留層から取り出した天然蒸気を直接タービンに当てて回転させ、電気を生み出す発電方法です。200〜300℃超の高温・高圧の蒸気が利用できる場合にこの方法がとられます。貯留層から蒸気だけが噴出する場合は「蒸気卓越型」、蒸気と熱水が混合して噴出する場合は「熱水卓越型」と呼ばれています。最もシンプルな発電が可能な蒸気卓越型は岩手県の松川発電所のみで、他はすべて熱水卓越型となっています。

熱水卓越型の発電方法は、蒸気と熱水が混合した地熱流体から蒸気を気水分離器と呼ばれる装置で1回だけ分離して、その蒸気でタービンを回す「シングルフラッシュ発電」、そして気水分離器で分離した熱水を減圧器にかけてさらに蒸気を取り出し、高圧蒸気と低圧蒸気でタービンを回す「ダブルフラッシュ発電」の2種類があります。日本の地熱発電所のほとんどはシングルフラッシュ発電を採用しており、より多くの発電が可能なダブルフラッシュ発電は大分県の八丁原発電所、北海道の森発電所、秋田県の山葵沢発電所で採用されています。


「蒸気発電」の仕組み(熱水卓越型シングルフラッシュ発電) (提供:JOGMEC)
「蒸気発電」の仕組み(熱水卓越型シングルフラッシュ発電) (提供:JOGMEC)


バイナリー発電の仕組み

もう1つの「バイナリー発電」と呼ばれる発電方法は、蒸気の温度が150℃程度以下と低く、熱水が多く含まれる場合に使われます。150℃以下の蒸気では直接タービンを回すことができないため、水よりも沸点の低いアンモニアなどの媒体と熱交換し、タービンを回す発電方法です。

「一般的に、蒸気発電は大規模な発電施設で使われる方法です。一方、バイナリー発電はシステムがモジュール化されており、小規模な事業者でも導入しやすい発電方法となっています。また、地表に湧き出した70〜120℃の高温温泉を活用した『温泉バイナリー発電』と呼ばれる方法も注目されています。従来、高温の温泉水は浴用に適さないため冷まして使うだけでした。しかし、その温泉水でバイナリー発電を行えば、電気をまかなえるうえ、温度が低下した熱水を浴用に利用できるため一石二鳥です。

現在、福島県の土湯温泉で2015年から400kW級の温泉バイナリー発電が稼働しており、新潟県の松之山温泉でも『コミュニティ発電 ザ・松之山温泉』発電所が開所するなど、各地で普及が進みつつあります」


「バイナリー発電」の仕組み (提供:JOGMEC)
「バイナリー発電」の仕組み (提供:JOGMEC)


地熱発電のメリット、「純国産」「環境低負荷」「ベースロード電源」

地熱資源は純国産のエネルギー~地熱発電のメリット①

このようにして行われる地熱発電には、他のエネルギーにはない多くのメリットがあります。
まず、地熱資源は他国に依存しない純国産のエネルギーです。日本は、エネルギー資源である石油・石炭・天然ガスのほとんどを輸入に頼っていますが、地熱資源を有効活用することでエネルギー自給率を高め、輸入するエネルギー資源を節約することが可能になります。また、雨水や河川水が地下水として供給される限り、蒸気と熱水を取り出せるので、化石燃料とは異なり枯渇する心配がありません。適正に利用すれば永続的に利用することができます。

「実際、電源のほぼ100%を再生可能エネルギーに転換しており、そのうち約30%を地熱発電でまかなっているアイスランドのような地熱大国もあります。日本も豊富な地熱資源を開発することで、再生可能エネルギーの割合とエネルギー自給率を大きく改善することができるはずです」


環境への負荷が少ない~地熱発電のメリット②

環境への負荷が少ないことも地熱発電のメリットです。火力発電では、石油や石炭などを燃やし、水を沸騰させて作った蒸気でタービンを回して発電するためCO2が発生します。しかし、地中のマグマによって沸騰した蒸気を使ってタービンを回す地熱発電ではCO2の排出量を大幅に減らすことができます。同じ再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電よりもCO2排出量が少ないため、とても地球に優しいエネルギーなのです。また、発電に使われた蒸気と熱水は、還元井と呼ばれる井戸を通じて地下に戻されるため、周辺環境に与える影響もわずかです。

地熱発電は二酸化炭素排出量が再生可能エネルギーの中でも小さい (提供:JOGMEC)
地熱発電は二酸化炭素排出量が再生可能エネルギーの中でも小さい (提供:JOGMEC)


「ベースロード電源」としての有用性~地熱発電のメリット③

安定的に電力を供給できる「ベースロード電源」としての有用性も大きなメリットです。太陽光発電や風力発電は天候や季節によって発電量が大きく変動します。そのため、設備利用率は太陽光発電が12%、風力発電は20%と、決して効率の良いものではありません。しかし、地熱発電は環境に左右されず、1年を通じて安定的に電力を供給できるため、83%という高い設備利用率を実現しています。

「発電を行うだけでなく、発電後の余熱や熱水を活用することも可能です。熱交換して温めた河川水を農業用ハウスの熱源や魚の養殖に利用したり、地域の暖房に使うなど、観光や地域経済の振興に役立てる試みも実施されています。

良いことばかりのように思える地熱発電ですが、冒頭に書いたように、日本はそのポテンシャルを十分に生かしきれていません。それは稼働までのハードルが高いことが大きな要因となっています。JOGMECの役割は、そのハードルを下げることだと尾崎氏は言います。

次回はJOGMECが取り組んでいる数々の試みについて詳しく見ていきましょう。

文/高須賀哲、写真/岡田晃奈



▽参考文献
参考文献1:『令和元年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2020)』 (経済産業省 資源エネルギー庁) 令和2年6月

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