『Medtec Japan 2021』現地レポート

2021年4月14~16日に、東京ビッグサイトにて「Medtec Japan」が開催されました。Medtec Japanは、今年で12回目となる医療機器の製造・設計に関する展示会です。400弱の国内外企業や団体などが、医療機器のさまざまな最新技術や製品を展示・発表していました。今回は、もともと医療機器メーカーでなかったものづくり企業が自社の加工技術を応用して医療機器などを制作している例も多く、「医療用のコネクター」、曇らない「フェイスシールド」などの最新動向をご紹介致します。

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Medtec Japanは、2009年から開催されてきた医療機器の製造・設計に関する展示会です。2020年3月に予定されていた前回が新型コロナの影響で開催延期され、第12回となる今回は感染対策を実施して2021年4月に東京ビッグサイトで開催されました。

390の国内外の医療機器メーカーや団体、自治体、大学、研究機関、また医療産業に参入予定の企業などが出展し、関係者はもとより、技術者、研究者、バイヤーなども多く来場していたようです。医療用3Dプリンター技術、AIなどの画像診断技術、遠隔診療、医療用生体センサー、各種セミナー、模擬ICUの展示など多種多様な展示がありました。そんな同展示会から気になった出展や技術を紹介しましょう。

ガス栓などのバルブ開発で培った技術を応用した「医療用のコネクター」

各種LPGなどのガス栓、バルブ、継ぎ手などの開発・製造・販売をしている光陽産業株式会社(東京都品川区)が出展していたのは、医療用のコネクターです。説明してくださった同社機器事業部、一般機器グループ課長、宮崎貴幸(みやざき・たかゆき)氏によると、静脈・造影・注腸などの各種カテーテル、気管内チューブ、採尿パックといったコネクターで汎用的に使用できるそうです。

宮崎氏によると、こうした医療用のコネクターは、脱着や抜け防止のためのISO規格であるテーパー形状のルアーロック式接続方法が多く使われていると言いますが、締め付け過ぎで割れたり、逆に締め付けが足りずに漏れたり抜けたりすることがあるそうです。また、きつく締め付け過ぎると固着して外しにくくなったりと、付ける人によって力の入れ具合が違っていて問題が発生しやすい欠点がありました。

そうした医療現場の声をひろった同社は、ガス栓などのバルブの開発でつちかってきた技術を応用して4年前からトルクリミット式のルアーロックを作り始めたと言います。誰が接続しても同じ締め付け具合で締め付け過ぎや不足を解消し、自動車のガソリンキャップのように締め付け完了を音で知らせる機構などを開発したそうです。

同社のルアーロックは、静脈カテーテルから血管造影、呼吸器、経腸栄養、消化器、湯液、泌尿器といった多種多様な医療現場のコネクターに使うことができます。宮崎氏によると、同社は医療機器製造業登録をすませており、今後は本格的に医療分野へ進出するそうです。

光陽産業株式会社の医療用コネクター。低圧用(3.4Mpa、放射線、麻酔、泌尿器、消化器など)と高圧用(3.4MPa〜8.3MPa、循環器など)があるといいます。
光陽産業株式会社の医療用コネクター。低圧用(3.4Mpa、放射線、麻酔、泌尿器、消化器など)と高圧用(3.4MPa〜8.3MPa、循環器など)があるといいます。

フラットスクリューにより高エネルギー効率で可塑化できる「小型の射出成形機」

成形機、金型などの開発・製造・販売を行っている株式会社新興セルビック(東京都品川区)が出展していたのは、小型の射出成形機の新製品です。説明してくださった同社技術開発の山下誠一郎(やました・せいいちろう)氏によると、この製品は従来の射出成形機で採用されてきたインラインスクリュー方式ではなく、フラットスクリューという独自の方式を採用することで2次元的に射出押出が可能になったと言います。

プラスチックなどの射出成形機ではシリンダーの中へ材料のペレットを入れヒーターなどで加熱して可塑化しますが、スクリュー方式では螺旋状の溝が刻まれたスクリューを回転させてペレットを前進させ加熱させるそうです。このスクリュー部分を平たい面にしたところが同社独自の工夫を凝らした部分であり、高いエネルギー効率で可塑化を実現できたと言います。

従来、射出成形機では小さな部品でも大型の機器や金型を使ってきたそうですが、同社では小さな部品を小さな機器で作ることを目指しており、これまで小型の射出成形機を開発してきたそうです。この小型の射出成形機は、医療用のコネクターや内視鏡用のプラスチック部品など、小ロット多品種の用途に使うことができると言います。

また射出容量を精密にコントロールでき、可塑化経路が短いため材料への熱ダメージを軽減できるそうです。射出容量は約3gのタイプと約8gのタイプの2機種あります。金型システムもユニット式で段取りの切り替えが素早くでき、フラットスクリューが高い洗浄性をもつため、材料の色変えもスムーズに行えます。

開発した山下氏によると、スクリューをフラットにする工夫に苦労したそうで、テーパーをかけたりネジ状にしたり試行錯誤を重ね、現在の機構に至ったそうです。フラットスクリューにより、小さなエネルギーで射出成形できる小型の機器を開発できたと言います。

株式会社新興セルビックのフラットスクリュー。射出するサイクルタイムは約10秒。
株式会社新興セルビックのフラットスクリュー。射出するサイクルタイムは約10秒。

鉛バッテリーを劣化させるサルフェーションを抑制する「鉛バッテリー活性化装置」

フィルター、エレメント、電気自動車関連部品などの製造販売を行っている株式会社エフテーシー(静岡県浜松市)が出展していたのは、鉛バッテリーの活性化装置です。説明してくださった同社顧問、佐藤員暢(さとう・かずのぶ)氏によると、一般的な鉛バッテリーは2年から5年で廃棄され、環境負荷の高い廃棄物になっているそうです。

この活性化装置は、鉛バッテリーの電極に付着し、鉛バッテリーを劣化させるサルフェーション(Sulfation、被伝導性結晶皮膜、電極板に付着した硫酸塩の結晶)を、独自に開発したIC素子からパルス電流を発生させて分子状態にし、電解液は戻す仕組みになっており、その結果、鉛バッテリーがリフレッシュされ、寿命が1.5倍から2倍以上に伸びるそうです。

パルス電流によってサルフェーションから離れて電解液へ浮遊した硫酸鉛の結晶体は、充電することによる化学反応で鉛と硫酸イオンに還元分解され、イオンとして元の鉛と硫酸に戻って電解液中に溶け込むと言います。佐藤氏によると、一般的に鉛バッテリーの劣化原因の約80%はサルフェーションによるものだそうです。

バッテリーはリチウムイオン電池に換えられつつありますが、鉛バッテリーは車載用などまだまだ多く使われ、その廃棄物が問題になっています。鉛バッテリーの寿命を伸ばし、再利用することで環境負荷を低減できるそうです。

株式会社エフテーシーの鉛バッテリー活性化装置。車載用12V、24Vなどがある。
株式会社エフテーシーの鉛バッテリー活性化装置。車載用12V、24Vなどがある。

医療機器部品やカメラ用のレンズフードを手掛ける「アルミ加工技術」

アルミ加工、アルミ鋳物などを手掛ける有限会社城山精機製作所(東京都板橋区)が出展していたのは、医療用インプラント、人工骨などの加工事例とカメラのレンズフードです。説明してくださった同社取締役、川村浩一(かわむら・こういち)氏によると、NC(Numerical Control、数値制御)を用いたマシニング加工でアルミ製品の多様な加工を行っているそうです。

医療機器の部品では斜め加工や微細加工などを、またカメラ用のレンズフードでは円柱のアルミを同心円状にくり抜く一貫加工が出展されていました。円筒のアルミにカムが入る3軸の穴あけ加工も難しい技術と言います。

有限会社城山精機製作所のアルミ加工事例。マシニングセンターによって円筒に斜めの穴あけを加工している。
有限会社城山精機製作所のアルミ加工事例。マシニングセンターによって円筒に斜めの穴あけを加工している。

バイオミメティクスによる超親水性光学樹脂を使った曇らない「フェイスシールド」

光学設計、金型加工、超微細加工などを行っている株式会社IMUZAK(山形県山形市)が出展していたのは、曇らないレンズ・プラスチックカバーです。新型コロナでは医療現場などでフェイスシールドが使われていますが、これはカバーが曇らないようにする超親水性光学樹脂部品だと言います。

バイオミメティクス(生物模倣)により、蛾などの目の反射防止構造とカタツムリの殻がもつ親水構造を参考にして開発した樹脂材料だそうで、常に水の膜を作ることで水滴状態になって曇りを防止できるそうです。この技術は山形大学との共同開発で、コンタクトレンズなどフェイスシールド以外の医療機器にも応用できると言います。

株式会社IMUZAKの曇らない超親水性樹脂を使ったフェイスシールド
株式会社IMUZAKの曇らない超親水性樹脂を使ったフェイスシールド

小物類を除菌できる「小型のUVC除菌器」

省エネや除菌、アイディア製品などを開発・製造・販売するジーエム株式会社(東京都板橋区)が出展していたいのは、小型のUVC除菌器です。説明してくださった同社、代表取締役の金山和男(かなやま・かずお)氏によると、スタンドを使ってスマートフォンや小物類などをUVCで除菌できると言います。有害なUVCを浴びないように、下に向けないとUVCのLEDが照射されない機構になっているそうです。

ジーエム株式会社のUVC除菌機。重さは約95g。自動停止タイマー付き。
ジーエム株式会社のUVC除菌機。重さは約95g。自動停止タイマー付き。

コロナ禍の中で開催されたMedtec Japanでしたが、医療関係者など多くの人々が来場していた印象がありました。また医療とは別の分野から新規参入する企業も増えているようです。次回は同じ東京ビッグサイトで2022年4月に開催される予定です。

文/石田雅彦

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