『第6回 名古屋ものづくりワールド2021』現地レポート

2021年4月7~9日に、ポートメッセなごやにて「第6回 名古屋ものづくりワールド2021」が開催されました。ものづくりワールドとは、東京、名古屋、大阪にて年に数回開催される機械部品や工場設備、計測機器などに関する大規模な展示会です。本回は新型コロナウイルスの影響が若干落ち着きを見せていた時期と重なったこともあり、昨年より多くの企業の出展が見られました。今回は、ディンプル加工用「タイリング工具」や、「ファインセラミックス加工」などものづくり最新動向をご紹介致します。

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今回で第6回目となる名古屋ものづくりワールドですが、中部国際空港(セントレア)に隣接した愛知国際展示場で開催された前回(2020年9月)から再び会場をポートメッセなごやへ移し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が比較的収まっていた2021年4月上旬に行われました。ものづくりワールドは、東京(2回の年も)、名古屋、大阪で年に3〜4回、開催され、機械部品や工場設備、計測機器などに関係する企業や団体が多く出展している展示会です。

自動車産業、航空宇宙産業などが集積する中部地域での展示会ということや、また新型コロナの感染が落ち着いていたこともあり、出展社も来場者も前回より多く、展示会も以前のような活気を取り戻していたような印象を受けました。同展示会から気になった出展や技術を紹介しましょう。

大学と共同開発、トライボロジーの知見を生かしたディンプル加工用「タイリング工具」

木材加工用平刃、チップソー、金属加工用コールドソー、窯業系の難削材のダイヤモンドチップソーなど、多種多様な加工に対応する工業用刃物、機械刃物を製造販売している兼房株式会社(愛知県丹羽郡)が出展していたのは、摩擦係数が最大1/10となるタイリング(ディンプル加工、くぼみを施す加工)工具です。

説明してくださった同社営業統括課係長、保浦正幹(ほうぼ・まさみき)氏によればこのタイリング工具を利用した特殊形状のエンドミル(切削工具。ドリルに類似した外観で、側面の刃で切削し、軸に直交する方向に穴を削り広げる)による断続切削で、直径0.1〜0.5μm、深さ2〜10μmのディンプルを与え、ディンプルが油を溜め摩耗粉を補足することによって動圧効果を生じさせます。その結果として摺動(しゅうどう)面の摩擦が低減し、部品の安定化や焼付け対策、油切れ対策などが期待できるとのことです。

このディンプル加工用のタイリング工具は、表面改質材料学が専門の名城大学理工学部材料機能工学科の宇佐美初彦教授と共同で開発したそうで、トライボロジー(Tribology、潤滑、摩擦、摩耗、焼付き、軸受など物質表面の現象に関する科学技術)の知見を生かした技術になると言います。原理は、ディンプルを付加することによって流体の潤滑域が拡大され、混合潤滑域の摩擦係数の低減に効果が出る仕組みとなっていますが、切削に使う刃先の調整や切削条件などにノウハウが必要だそうです。

レーザーでも同様の加工は可能ですが、高価で大掛かりな装置かつ、プログラムがフレキシブルな反面、制御しにくいという難点があると言います。一方、このタイリング工具はマシニングセンターなどの既存の設備に付け替えるだけで、コスト面でも導入しやすいそうです。

このタイリング工具の先端は円錐状をしており、回転することで、ワークに対し工具1本で1秒間に50個から150個、多刃工具では1,000個から3,000個のディンプルを付加させることができるそうです。また、自由曲面や円周の内外周など、任意の形状のワークに適用でき、付加するディンプルもお椀型の円形、ルート状の半円形、V字の紡錘形など多様な形状に対応可能です。さらに、バリや変形、残留応力が少なく、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)などの焼入れ材や樹脂材料などにもディンプルを付加させることができるそうです。

兼房株式会社が出展していたタイリング加工を施したディスクの様子。細かなディンプルが付加されている様子がわかります。
兼房株式会社が出展していたタイリング加工を施したディスクの様子。細かなディンプルが付加されている様子がわかります。

DLCコーティングと複合メッキ技術を融合させた低摩擦、低摩耗の「メッキ技術」

メッキ技術と機械加工技術の帝国イオン株式会社(大阪府東大阪市)が出展していたのは、従来からあるDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングと硬度と摺動性がある複合メッキ技術の特徴を融合させた低摩擦、低摩耗のメッキ技術です。説明してくださった同社開発課、開発主任の北條将史(ほうじょう・まさし)氏によると、摩擦係数0.05以下で高い耐摩耗性もあるメッキだそうです。

ダイヤモンドは、硬度HV(Vickers hardness、ビッカース硬さの単位)7,000からHV15,000ほどもあるそうですが、このメッキ技術で作ることができるのは、ダイヤモンドの粒子を均一に整列させて構造制御することで実現させた低摩擦・耐摩耗の皮膜だそうです。ダイヤモンドは硬いため、相手の部材を削ってしまうと考えがちですが、北條氏によればダイヤモンド粒子を均一に配列することでそうした恐れはなくなると言います。

帝国イオン株式会社のダイヤモンド粒子を使ったメッキ技術の例。軸受やベアリングなどに使うことができといいます。
帝国イオン株式会社のダイヤモンド粒子を使ったメッキ技術の例。軸受やベアリングなどに使うことができといいます。

CADデータからマシニングセンター加工プログラムをAIで自動作成するソフトウエア

製造AIの研究開発、各種産業機械の設計製作などをしているアルム株式会社(石川県金沢市)が出展していたのは、製造機械などのCADデータを自動で読み込み、マシニングセンターの加工プログラムをAIで自動作成するソフトウエアです。

説明してくださった同社代表取締役、平山京幸(ひらやま・たかゆき)氏によれば、同社が請けた産業機械の設計製作で膨大な数のCADデータの処理をなんとか自動で行えないかということで、平山氏自身がコツコツと開発したソフトウエアだと言います。1台の工作機械を作るためには数百枚の設計図が必要だそうですが、このソフトウエアはCADデータからAIが形状分析し、適切な工具の選定や加工条件を行い、従来は手作業で出してきた段取り指示書を短時間で発行することが可能だそうです。

アルム株式会社のデモンストレーションでは、AIによるNC(Numerical control、数値制御)プログラミングの自動化の例を展示していました。
アルム株式会社のデモンストレーションでは、AIによるNC(Numerical control、数値制御)プログラミングの自動化の例を展示していました。

シャープペンシル芯の製造で培った技術を応用した「ファインセラミックス加工」

筆記具などのステーショナリー用品、玩具、貴金属などの製造販売をしている株式会社パイロット(PILOT)コーポレーション(東京都中央区)が出展していたのは、シャープペンシルの芯の製造でつちかった混練(こんれん)、押出成形、焼成などの技術を応用したファインセラミックスに関する製品や技術です。説明してくださった同社産業資材営業部、課長代理の佐々木潤一(ささき・じゅんいち)氏によると、シャープペンシル芯の押出成形設備を使い、焼成のノウハウによって均質、高密度、高強度、高純度のセラミックスを作っているそうです。

またこうしたセラミックスに二次加工を施し、内外径に対して、ミクロンオーダーの高精度寸法とサブミクロンオーダー(Ra0.2程度)の平滑面の面粗度(表面粗さ)を提供することが可能だと言います。要望に応じ、一般的な直径0.3〜5mm、長さ0.2〜100mm以外にも対応可能だそうです。

例えば、アルミナやジルコニアの薄型パイプ形状の押出成形では、200以上の高アスペクト比の孔を貫通させているそうです。通常、こうした深孔の加工を機械でやろうとすると直径1mm未満の場合、深さ‏/内径のアスペクト比が5から10以上のものは変形や偏肉が生じがちで難しいと言います。高アスペクト比の孔を貫通させたアルミナやジルコニアの深孔の薄肉パイプや多孔セラミックスは、流量制御部品、センサー保持体、碍子などの絶縁体として使われるそうです。

株式会社パイロット(PILOT)コーポレーションのファインセラミックス製品。長さ100mmのジルコニアに貫通した深孔の例。ジルコニアは靭性がセラミックスより高く、強度は金属などより強固で熱伝導率が小さく、また耐薬剤性が高い素材といいます。
株式会社パイロット(PILOT)コーポレーションのファインセラミックス製品。長さ100mmのジルコニアに貫通した深孔の例。ジルコニアは靭性がセラミックスより高く、強度は金属などより強固で熱伝導率が小さく、また耐薬剤性が高い素材といいます。

振動を嫌う工業用ミシン製造向け鋳物技術と、チップマウンタ基盤向け外観検査装置

工業用や家庭用のミシンを製造販売してきたJUKI株式会社(東京都多摩市)が出展していたのは、グループ企業の要素技術を生かした鋳物技術、半導体技術、検査計測技術などです。

説明してくださった同社グループ事業カンパニーの關貴至(せき・たかし)氏によるとJUKI金属株式会社(三重県多気郡)は銑鉄鋳物、JUKI会津株式会社(福島県喜多方市)はロストワックス鋳造や金属射出成型、JUKI産機テクノロジー株式会社(秋田県横手市)は制御基板の設計製造や精密・大型加工などの技術があり、グループ企業の技術やノウハウを合わせ、医療機器のユニット・パーツや産業用ロボットのパーツ製造などに取り組んでいると言います。

ミシンの本体は、今でも鋳物で作られることが多いそうです。それは、鋳物が振動を吸収しやすいという性質があるからだそうで、同社の鋳物技術はエンジンの減速機や航空機用パーツなど、振動を嫌う工業用製品に応用されているそうです。

また、同社も出資している東京工業大学発のベンチャー企業、株式会社XTIA(東京都品川区)と共同開発したハイブリッド外観検査装置も出展されていました。この検査装置はチップマウンタ用の基盤の装着具合を検査する装置の技術を転換した製品で、2D画像認識用光学カメラとレーザー測定を組み合わせたものだそうです。このハイブリッド外観検査装置により、従来は人による目視検査に頼らざるを得なかった自動車のエンジン部品や機械部品の複雑な形状の部品の外観検査をインラインで自動化できると言います。

JUKI株式会社の工業用ミシン。振動を嫌う工業用製品にミシンのような鋳物の技術が生かされているといいます。
JUKI株式会社の工業用ミシン。振動を嫌う工業用製品にミシンのような鋳物の技術が生かされているといいます。

コロナ禍の中開催された名古屋ものづくりワールドでしたが、あちこちで出展社のスタッフと来場者が商談する光景や説明を受ける姿が見受けられました。実物を間近で見ることができ、説明も直接やり取りできるというリアル展示会の魅力を再確認できたイベントでした。

文/石田雅彦

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