「モノからコトへ」の価値変革で モノづくりはどこへ向かうのか (3/3)

【考察】製造業だからこそ重要になる、顧客への「体験」の提供と「共創」の視点

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

【考察】製造業だからこそ重要になる、顧客への「体験」の提供と「共創」の視点

「生産・組立」の過程で創出できる付加価値が下がっている

今回2冊の本を通じて考察した、新たな「体験」の提供や、顧客との「共創」が、なぜ今後製造業にとって重要な視点となっているのだろうか。

それは、モノづくりの「企画・開発」「製品設計」「生産・組立」「流通・販売」「保守・アフターサービス」という5つの過程を考えた時に、顧客価値創造につながる過程が変化してきたからだ。

かつての高度経済成長時代には、高品質の製品の「所有」が顧客価値の源泉だった。

そのため日本の製造業は、品質の高い製品の安定した「生産・組立」で、強みを発揮していた。

だが近年は、機械があれば高品質の「生産・組立」を行えるようになり、この過程で創出できる付加価値が相対的に下がった。

つまり、品質の高い製品を作るだけでは、もはや十分な価値を顧客に提供できなくなった。だからこそ、コマツのようにICTを駆使した「保守・アフターサービス」でより良い利用価値・体験価値を提供しなければならなくなっている。

これからは製造業もAmazonと競争する時代に

また、多様化した顧客ニーズを捉えるには、「保守・アフターサービス」だけでなく「企画・開発」の過程も、今後ますます重要になるだろう。

そして、この過程での差別化にも、顧客との「体験」価値の共創が大きなポイントになる。

例えば、たびたび引き合いに出して恐縮だが、Amazonが近年、プライベートブランド にも注力していることをご存じだろうか。

Digital Commerce 360の2020年5月の記事によると、その時点でAmazonは111のプライベートブランドから22,617の商品を提供しており、レビューでは5つ星評価で平均4.3という高評価を獲得しているそうだ。

Amazonは、膨大なEC商品の販売データと、商品利用者の口コミ情報を持っている。

これらのデータを分析すれば、さまざまな顧客層が、どの領域のどのような商品を、どのように利用したか、そしてその利用体験をどう評価したかを把握できる。

最近になってAmazonは、こうしたデータを活用し、売れ筋商品や特定の顧客層向けの限定商品を、プライベートブランドとして「企画・開発」しはじめたのだ。

企画・開発した商品をOEMメーカーに格安で作らせれば、競争力の高い製品を自社ブランドから次々に販売することが可能だ。

製造業にとっては、いつか自社の領域にAmazonが進出してきて、下請けメーカーに成り下がってしまうようなことも起こりかねない。

Amazonにビジネスを取られないためにも、まずは自社の商品を顧客がどのように利用しているかを把握するべく、ICTを活用したデータ収集に着手すべきだろう。

そして、そのデータを用いて顧客の利用状況を見える化し、顧客にフィードバックして、自社に何ができるか議論してみてはどうだろう。

今回取り上げた2冊には、顧客にどのような体験価値を、いかなるビジネスモデルで提供し成功しているか、多彩な事例が掲載されている。

大いに参考にして、製造業だからこそできる「体験」の提供と「共創」を検討してみていただきたい。


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