『第7回 東京ケアウィーク’21』現地レポート

2021年3月17~19日に、東京ビッグサイト(青海展示場)にて「第7回 東京ケアウィーク'21」が開催されました。本展示会は、第7回CareTEX東京をはじめとする6つの展示会を同時開催して毎年行われる、介護、医療、健康施術、関連技術、サービス、まちづくりに関する展示会です。今回は、高齢者向け握力トレーニング装置やオゾン水によって除菌できる手洗い装置、医療現場向け強化磁器など多様な分野の最新動向についてご紹介します。

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第7回CareTEX東京、第4回 次世代介護テクノロジー展、第4回 介護予防総合展、第4回 超高齢化社会のまちづくり展、第2回 在宅医療総合展、第2回 健康施術産業展の6展を総称して毎年開催されている「東京ケアウィーク」。2021年で7回目の開催となりました。介護、医療、健康施術、関連技術、サービス、まちづくりまで、製品や技術の展示・紹介、BtoBの商談会、各種セミナーなど「人生100年時代」を支える約400の企業・団体が出展している展示会です。そんな同展示会から目についた製品や技術を紹介しましょう。

板バネを用いたリハビリ機器、宇宙飛行士の筋トレ方法開発ノウハウをもとに

1990年に創業した有人宇宙システム株式会社(JAMSS、東京都千代田区)は、国際宇宙ステーション(ISS)計画に準備段階から携わってきた宇宙関連企業だそうです。説明してくださった同社宇宙事業部 主任の渡部靖之(わたべ・やすゆき)氏によると、国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」などの運用や利用の支援業務、宇宙飛行士などの教育訓練、宇宙衛星の利用、宇宙空間での創薬研究支援などが業務内容と言います。

同社が出展していたのは、板バネを用いたリハビリ機器です。渡部氏によれば、宇宙飛行士がISSで長期滞在する際、無重力状態のために抗重力筋が弱くなったり骨密度が低下したり三半規管に異常がみられるなど、さまざまな影響が出ると言い、宇宙飛行士はISS滞在中、1日1時間30分の全身トレーニングをするそうです。

同社の運動指導士(トレーナー)らが宇宙飛行士の筋力強化のためのトレーニング方法を研究・開発してきたと言います。同社が長年つちかってきたノウハウをもとに、リハビリの現場の声を参考にし、リハビリ・トレーニング機器として製品開発したそうです。この製品は重量400g、大きさは縦15cm×横8cm×幅5cmで、中にゼンマイのような金属製の板バネが入っており、ハンドルを引いて使用します。

ゴムの場合、引き始めと引き終わりで負荷が変化しますが、板バネではその変化が少なく負荷変化がなだらかなそうです。ダイヤルで1kgから3kgまで負荷の強弱を変えられ、トレーニングを受ける人が寝ているベッドの周辺に取り付けて寝たままトレーニングできたり、施設の設備や状況に合わせたトレーニングを柔軟にすることができたりすると言います。

例えば、上半身用の運動として複合関節を対象としたストロークの長い運動がしやすいとか、低負荷にすることで心臓リハビリが必要な患者へ心拍数や呼吸数を上げることなくリハビリができるなどの効果があるそうです。実際、茨城県の特別養護老人ホームの80代の女性でリハビリしたところ、それまで難しかった服の脱ぎ着が苦労なくできるようになったと言います。

同社の渡部氏によれば、使い方やトレーニング法などでシンプルにすることを心がけて開発したそうで、デジタル部品などを使わずにアナログにこだわったそうです。こうしたことは宇宙飛行士のトレーニングでも同じで、それを今回のリハビリ機器にも生かしたと言います。

有人宇宙システム株式会社(JAMSS)の板バネを用いたリハビリ機器。リハビリ開始時の準備に時間がかからず、症状や負荷をかけたい部分に応じた多様なトレーニング方法ができるためリハビリにかかる時間を短縮することができ、トレーニングを受ける人やトレーナーの負担を軽減する効果があるといいます。
有人宇宙システム株式会社(JAMSS)の板バネを用いたリハビリ機器。リハビリ開始時の準備に時間がかからず、症状や負荷をかけたい部分に応じた多様なトレーニング方法ができるためリハビリにかかる時間を短縮することができ、トレーニングを受ける人やトレーナーの負担を軽減する効果があるといいます。

握力トレーニング装置、筋肉強化に効果的な遠心性収縮のトレーニングに

医療機器、リハビリ機器の製造・販売などを行っている江崎器械株式会社(京都府長岡京市)が出展していたのは、下肢に障害のある車椅子生活の人や要支援・要介護の高齢者のための筋力リハビリ・トレーニングマシンで、握力トレーニングのための製品です。説明してくださった同社代表取締役、江崎健太郎(えさき・けんたろう)氏によると、筋肉の動的な収縮には大きく求心性と遠心性の2つがあり、求心性収縮は筋の長さが短縮しながら収縮する運動であり、遠心性収縮は筋の長さが伸張しながら収縮する運動だそうです。

筋肉への負荷を上げるためには、後者である遠心性収縮のほうが力を発揮しやすく効率的で、ごく小さな筋肉を使っている握力を強化するためには遠心性収縮のほうが良いということで今回の製品を開発したと言います。特に、高齢者で筋力が低下するサルコペニアの指標の一つとして握力があり、高齢者の握力低下はビンのフタの開閉がしにくくなったり箸が使いづらくなったりといった生活の質(QOL、Quality Of Life)の低下にもつながるため、握力のトレーニングが高齢者にはとても大切だと言います。

江崎氏によると、名古屋大学や国立長寿医療研究センターの研究グループにより、握力の弱い人は認知症になるリスクが高くなることがわかっているそうで、手を使うことは脳の刺激にもなり、認知症予防にも効果があるそうです。

この製品は、モーター駆動式のベルトとバネによって4本のバーが電動で広がり、バーを両手で握ってバーが開かないように抵抗することで遠心性収縮のトレーニングとなると言います。バーが開く力の強弱は調整できず、開く速度を無段階に調整できるそうで、筋力が強い人ほど速度を速くすると良いそうです。低速では単にバーを握るだけでも一定のトレーニング効果が得られ、速度を上げることで筋肉への負荷も上がっていくと言います。

江崎器械株式会社の握力トレーニング装置。下肢を動かせず車椅子生活の人も座ったままトレーニングができ、男女など手の大きさの違いもバーの上下で掴む場所を変えることで対応できるといいます。
江崎器械株式会社の握力トレーニング装置。下肢を動かせず車椅子生活の人も座ったままトレーニングができ、男女など手の大きさの違いもバーの上下で掴む場所を変えることで対応できるといいます。

強くて軽い強化磁器、アルミナを添加しても形状工夫で軽く

美濃焼で有名な町に本社を置く株式会社おぎそ(岐阜県土岐市)が出展していたのは、割れにくく軽い高強度磁器を使った食器です。一般的に強化磁器は150MPa以上の強度がある磁器とされ、同社では、従来の磁器原料成分にアルミナ添加をして素材強度をさらに増大させた磁器を作っているそうです。同社の高強度磁器は素材の曲げ強度が230MPa以上と言い、土岐市立陶磁器試験場が認定した高強度磁器としての機能性をもつそうです。

強化磁器や高強度磁器はアルミナを添加しているために重くなるそうですが、同社の製品は縁や底面に厚みをもたせて強度を高め、側面で薄くするなど形状に工夫を施し、強くて軽い食器を実現したそうです。また、高強度磁器は使用することでアルミナの成分が表面に出るメタルマークが現れたり、デンプン反応が落ちにくくなると言いますが、同社は再度1,200℃の窯で焼成することでリニューアルすることが可能と言います。

株式会社おぎその高強度磁器。教育施設、病院・福祉施設、ホテル・レストランなどで使われているそうです。
株式会社おぎその高強度磁器。教育施設、病院・福祉施設、ホテル・レストランなどで使われているそうです。

オゾン水を使った手洗い装置、オゾン水による除菌と耐性菌不発生

本展示会はヘルスケア業界の出展が多く、減菌・滅菌・除菌、手洗い、体温測定など、新型コロナ感染防止対策のための製品や技術も目立ちました。産業用特殊ポンプ・システム、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製航空機部品、ヘルスケア関連製品などの事業を展開する日機装株式会社(東京都渋谷区)が出展していたのは、オゾン水を使った手洗い装置です。

説明してくださった同社メディカル事業本部の恩田信也(おんだ・しんや)氏によると、オゾン水は、細菌やウイルスのタンパク質、脂質、核酸の変性などを引き起こす作用があり、細菌やウイルスに対して除菌作用をもつそうです。
 
また、オゾン水を使ったウイルスの不活性化効果は、宮崎大学との共同研究でエビデンスが出ていると言います。例えば新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の場合、5秒間、オゾン水で手を洗えば、濃度1ℓあたり1mgで81.4%、4mgで93.2%、7mgで96.6%、10mgで96.6%、ウイルスを不活性化させることがわかったそうです。

オゾンによる酸化除菌効果を使った技術は、すでに医療や上水道、食品、農業、遊泳用プールなどで使われています。オゾン水の皮膚細胞への影響は蒸留水と同程度と言い、肌に優しく傷があってもしみにくいとされています。また、電極を使ったオゾン水生成は、ガス溶解方式よりも揮散ガスが極めて少なく、より安全なオゾン水となるそうで、オゾン水による除菌では耐性菌が発生しないとされていることも大きな特徴だそうです。

同社のオゾン水による手洗い装置は、水道水をダイヤモンド電極によって電気分解してオゾン水を生成し、新紫外線LED濃度センサーで不安定なオゾンの濃度をモニタリングしていると言い、ランニングコストが安く、短時間で効果的に手指衛生ができるそうです。石鹸やアルコールによる手指衛生より効率的な方法ではありますが、一方で、接触した表面にしか効果はなく、オゾンはすぐに水と酸素に分解されてしまい、また酸化に弱い物質に繰り返し使用するとダメージが出る恐れがあるそうです。

日機装株式会社のオゾン水を使った手洗い装置。手を入れるとオゾン水が出てきて洗浄します。
日機装株式会社のオゾン水を使った手洗い装置。手を入れるとオゾン水が出てきて洗浄します。

箸を使ったゲーム、高齢者の機能回復やコミュニケーションのツールに

コミー株式会社(埼玉県川口市)が出展していたのは、介護や福祉の現場などでの機能訓練のための箸を使ったゲームです。説明してくださった同社、横瀬由美子(よこせ・ゆみこ)氏によると、この製品では2種類のゲームが可能だということで、1種類は箸で樹脂製のピーナッツ(レプリカ)をつまんで移動させるゲーム(利き手と逆の手)、もう1種類は同心円状に大小セットになった5つのリングを箸で挟む、つまむ、開く、ひっくり返す、回転させるという使い方をするゲームだと言います。

リングのほうは日米で特許取得済みとのことで、2種類のゲームとも緊張感と達成感が得られると同時に指先や手の使い方の訓練ができるそうで、施設の入居者同士やスタッフ、家族などと一緒にやることで子どもから高齢者までコミュニケーションのツールとしても期待されています。実際、高齢者が介助なしで食事ができるようになったり、片麻痺のリハビリに生かしたりとさまざまな効果があり、箸という日常で使っている道具ということで抵抗なくゲームに参加できると言います。

コミー株式会社の箸を使ったゲーム。ブースでは来場者が参加してのデモンストレーションが行われていました。
コミー株式会社の箸を使ったゲーム。ブースでは来場者が参加してのデモンストレーションが行われていました。

新型コロナ感染防止対策を講じて開かれた東京ケアウィークにはヘルスケア産業も多く出展し、あちこちで実技やデモンストレーションが行われ、医薬・介護以外の関係者でにぎわっていました。同展は2021年、札幌、仙台、福岡、大阪、名古屋の各地でも順次開催されるそうですが、ニーズと注目のある業種業界なので今後の動向に注目したいと思いました。

文/石田雅彦

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