『第17回スマートエネルギーWeek 2021、第3回 資源循環EXPO』現地レポート

2021年3月3~5日に、東京ビッグサイトにて「第17回スマートエネルギーWeek 2021、第3回 資源循環EXPO」が開催されました。本展示会は、毎年東京と大阪でそれぞれ開催される、来場者数万人規模の大規模な展示会です。名前の通り、再生可能エネルギー、自然エネルギー、省エネ・節電など、エネルギーに関するさまざまな技術が展示されている会です。今回は、バッテリー・シェアリング技術や、太陽光発電モジュールの下の緑化技術、再生可能エネルギー発電所の余剰電気の最適な充放電技術など最新技術についてご紹介します。

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スマートエネルギーWeekは、東京(春)と大阪(秋)で年2回(2021年からは年3回)、開催されてきた再生可能エネルギー、自然エネルギー、電池、省エネ・節電、リサイクル、環境保全などの技術を開発、提供する企業や団体などが出展している展示会です。本展示会では、水素・燃料電池展(第17回)、太陽光発電展(第14回)、二次電池展(第12回)、スマートグリッドEXPO(第11回)、風力発電展(第9回)、バイオマス展(第6回)、次世代火力発電EXPO(第5回)、エネマネ・自家消費EXPO(第1回)がスマートエネルギーWeekとして展示会の同時開催を行っています。

新型コロナの影響で大規模イベントも出展や来場者が減少していましたが、本展示会は、コロナ以前の2019年に3日間で66,576名来場していたところから2020年では来場者数18,506名と激減したものの、今回は28,347名が来場したとのことでかなり持ち直す結果となりました。主催者による感染防止対策も講じられ、オンライン商談サービスなどリアル展示以外の方法も整備されつつあるようです。

2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーや自然エネルギーを利用した技術や省エネ技術に注目が集まり、本展示会もそうした流れの中で関連製品や技術をもった出展社が多く、今回の東京展でも再生可能エネルギーや自然エネルギーによる余剰電力の固定価格買取制度(FIT)の満期終了後の自家発電や自家消費に関係した技術やビジネスの出展、モバイル用の小型高出力の技術、EV用やキャパシタなどの蓄電技術も多く出展されていました。

また、リチウムイオン電池で日本人研究者がノーベル化学賞を受賞するなど、2019年と2020年の秋の大阪展ではリチウムイオン電池などの技術の出展が目立っていましたが、今回の東京展でもやはりリチウムイオン電池、全固体電池といった二次電池の要素技術、電池性能の評価などに関連した出展が多くありました。そんな本展示会から気になった製品や技術などを紹介していきましょう。

交換式電池パックを使ったバッテリー・シェアリング技術

自動車やオートバイなどのホンダ(本田技研工業)の研究部門を分社化した株式会社本田技術研究所(栃木県芳賀郡)が出展していたのは、着脱式の交換式電池パックを使ったバッテリー・シェアリング技術です。同研究所の先進パワーユニット・エネルギー研究所の主任研究員、藤田威人(ふじた・たかひと)氏によると、電池の技術には今でも3つの大きな課題があると言います。

充電池のデメリットの一つは、やはり大容量化の流れもあって充電に時間がかかることでしょう。急速充電の技術では高電圧の直流電流による過充電の危険性もあり、EVでも充電器の改良やインフラ整備と同時に充電時間の短縮が大きな技術的課題となっています。日本が主導して進めたCHAdeMO(チャデモ)規格はそうした課題をもつ急速充電の方法ですが、航続距離を伸ばすために電池容量を大きくすれば電池のサイズや重量も大きくなり、結果的に充電時間がさらに長くかかってしまいます。

一方、家庭や緊急時の電源、蓄電池に併設した充電池など、ユーザーの電池の利用も多様化しているようです。急速充電インフラは高速道路のパーキングエリアなどに整備されつつあり、200Vの普通充電設備も増えつつありますが、急速充電の設備が求められているのが現状です。

また、電池の大容量化によって急速充電でも30分程度かかり、使い放題のサービスに集中するなど、充電待ちの渋滞が発生するような問題も起きています。つまり、電池に短時間で充電したいニーズと多様な電池利用のニーズがあり、それらを解決できる技術が求められているというわけです。

同研究所の藤田氏によると、出展している着脱式の交換式電池パックを使ったバッテリー・シェアリング技術は、バッテリーを互換性のある交換式にし、あらかじめフル充電された電池によって電動の自動車やオートバイに瞬時にエネルギー補給ができると言います。

同じ規格のバッテリーを、従来のガソリンスタンドやコンビニエンスストアなどを利用したバッテリー交換ステーションに置いておいてシェアリングすれば、外出先でもバッテリー交換が容易にでき、ビジネス用や家庭用電源、非常用電源に使ったりすることが可能になるそうです。そして全体のシステムを「BaaS(Battery as a Service)」とよんでいると言います。

株式会社本田技術研究所が開発した交換式電池パック(Honda Mobile Power Pack)や充電用の電池パック交換機(充電ステーション)。電池パックはリチウムイオン電池で、高さ298mm×縦156.3mm×横177.3mm、重量は10.3kg、1.3kW以上の大容量電力を蓄電、連続放電出力は2.5kWだそうです。
株式会社本田技術研究所が開発した交換式電池パック(Honda Mobile Power Pack)や充電用の電池パック交換機(充電ステーション)。電池パックはリチウムイオン電池で、高さ298mm×縦156.3mm×横177.3mm、重量は10.3kg、1.3kW以上の大容量電力を蓄電、連続放電出力は2.5kWだそうです。

この技術では、バッテリー交換ステーションをハブとし、地域のエネルギー・インフラにすることを想定していると言います。受電ステーションには送電機能もあり、電力需要のピーク時にはステーション内のモバイルパワーパックから送電網に電力を供給し、電力安定化に寄与することができるそうです。

すでに、インドネシア、フィリピン、インドで実証実験を行い、インドでは現地のTork Motorsの三輪タクシーを電動化した「電動リキシャ」に交換式電池パックを使用したと言います。藤田氏によると、インドでは特に排気ガスなどによる大気汚染が深刻で、庶民の足として利用されている三輪タクシーの電動化が求められていたそうです。

インドで広く利用されている三輪タクシーを改良した「電動リキシャ」
インドで広く利用されている三輪タクシーを改良した「電動リキシャ」

こうした実証実験では、例えば電動バイクのユーザーがスマートフォンアプリなどで交換式電池パックをシェアすることで、使用頻度の異なるバッテリーの劣化度合いの平準化を図り、バッテリーの寿命を伸ばすことなどが行われていると言います。こうした交換式電池パックの機能が低くなり、モビリティに使えなくなった場合、二次利用サービスに関する実証も行い、使用済みの交換式電池パックと充放電器を一般家庭に設置し、小規模な水力発電設備などからの電力を蓄電して電力需要ピーク時の補助電源として活用するも考えているそうです。

同研究所の藤田氏によると、交換式電池パックの開発では、モビリティによる振動、温度・湿度、取り扱い時に落下させたりして衝撃による電池の損傷などにどう対処するのかに苦労したと言います。これについては、耐久性の高いセルを使い放電時に発生する熱対策を講じたそうで、そのためのプロトコルによるバッテリーマネジメントシステムのコントロールユニットを内蔵しています。抜き差しの接点、最終的にこのサイズにしたこと、持ちやすいハンドルの形状についてもさまざまな検証を行ったそうです。

再生可能エネルギー発電所の余剰電気を充電し最適に放電

東芝三菱電機産業システム株式会社(東京都中央区)が出展していたのは、大容量リチウムイオン二次電池システムです。説明してくださった同社産業第三システム事業部の荻原麻弥(おぎわら・まや)氏によると、このシステムは再生可能エネルギー発電所で発電した余剰電気を充電して最適に放電する技術だそうです。

再生可能エネルギー発電所からの電力の発電量が多くなると、その余剰電力は電線など電力会社の電気系統から電力会社へ送電されますが、その電力会社から出力制御を受けると送電できずに余剰電力の保管場所が必要となります。このシステムは、500kW時から200MW時までの蓄電池容量をもち、電力会社の出力制御が解除された後、最適に放電するそうです。

各電力会社と再生可能エネルギー発電事業との間に立って最適化するシステムと言い、蓄電池、パワーコンディショナ、蓄電池制御盤、複数の発電システムを統合する同社のメインサイトコントローラからなるシステムだとのこと。蓄電器は1基で500kW時の蓄電池容量があり、全長約12.2m、複数台を併設することで蓄電池容量をより大きくすることが可能だそうです。

東芝三菱電機産業システム株式会社の大容量リチウムイオン二次電池システムのカット模型。このシステムにより、太陽光発電や風力発電の出力を最適化できるといいます。
東芝三菱電機産業システム株式会社の大容量リチウムイオン二次電池システムのカット模型。このシステムにより、太陽光発電や風力発電の出力を最適化できるといいます。

太陽光発電用の架台、日照時間の差による発電効率の誤差を吸収

太陽光発電システムの部材販売、太陽光発電用の架台、太陽電池モジュールの独自開発などをしているネクストエナジー・アンド・リソース株式会社(東京都新宿区)が出展していたのは、太陽電池モジュール、パワーコンディショナ、産業用蓄電システムなどです。説明してくださった同社ビジネスクリエーション本部マーケティング統括部、統括部長、大家宏之(おいえ・ひろし)氏によれば、産業用太陽光発電から住宅用太陽光発電など規模や設置場所、取り付け方法などにノウハウが必要だと言います。

太陽光発電のモジュールパネル自体は2、3種類ですが、東西南北に広い日本は地域によって日照時間が大きく異なり、そのための最適化が重要だそうです。また、台風などの天災時に強風で飛ばない工夫など、安全性を高めると同時にコストをいかに下げていくかに苦心すると言います。

そのため、傾斜のある不陸地などへ太陽光発電モジュールを設置するために独自に開発した架台を活用することで、太陽光発電効率の誤差などを吸収することができるそうです。また、数十MW(メガワット)規模の太陽光発電モジュールの設置には1年以上かかることもありますが、同社が開発した杭打ち用アタッチメントを使うことで工期短縮を実現できると言います。

ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社が使う太陽光発電モジュールは、高電圧下で出力が低下する現象(PID)への耐久試験などを行っているそうです
ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社が使う太陽光発電モジュールは、高電圧下で出力が低下する現象(PID)への耐久試験などを行っているそうです

太陽光発電モジュールの下の雑草を抑制し緑化

法面工事といった土木工事を行う株式会社丸八土建(三重県多気郡)が出展していたのは、太陽光発電モジュールの下の雑草抑制技術です。説明してくださった同社代表取締役の橋本智弥(はしもと・ともや)氏によると、仕事で沖縄へ行った際、サンゴ礁保全の赤土流出を防ぐために使われていたポリソイル緑化工という技術に注目し、これを本土の雑草対策に利用できないかと考えたそうです。

まず除草剤を散布し、その後にアクリル系土壌コーティング剤により表面を固化するというこの防草工は、十数年と持続性が長く、雑草を確実に防ぐことができ、コストも安くなると言います。太陽光発電所では雨水による土壌の流出と侵食、土壌による河川汚染、土砂崩れなどが問題になっているそうで、こうした技術が解決の一つの方法になるかもしれないそうです。

株式会社丸八土建は、土壌を固化して強い緑化基盤を形成させた後、西洋芝やヤマハギ、ヨモギなどの種子をまくことで確実な緑化が実現できると言います。
株式会社丸八土建は、土壌を固化して強い緑化基盤を形成させた後、西洋芝やヤマハギ、ヨモギなどの種子をまくことで確実な緑化が実現できると言います。

高出力ブルーレーザーを活用したバッテリー銅材の加工システム

産業用ロボットのシステム・インテグレータ、株式会社豊電子工業(愛知県刈谷市)が出展していたのは高出力ブルーレーザーを活用したバッテリー銅材の加工システムです。説明してくださった同社SI第1営業部の近藤周平(こんどう・しゅうへい)課長によると銅やアルミといった反射率の高いワークは、従来の波長1,000nmの赤外レーザーでは吸収が低く、接合性・加工性が悪かったそうです。

同社ではドイツのレーザーライン社が開発した波長450nm、1,000Wの高出力ブルーレーザーを使うシステムを構築することで、赤外に比べて7倍から20倍の吸収率を得ることができ、スパッタの出にくい銅溶接を実現できたと言います。また、ビーム径1mmで局所加熱が可能なため、ワークへの熱影響や歪みを極力抑え、ロボット制御でワークの形状に沿ったロウ付けが可能になったそうです。

株式会社豊電子工業のブルーレーザーを利用した溶接技術の例。バッテリー、モーター、電子部品、銅による3Dプリントなどが可能になると言います。
株式会社豊電子工業のブルーレーザーを利用した溶接技術の例。バッテリー、モーター、電子部品、銅による3Dプリントなどが可能になると言います。

今回の展示会は、新型コロナの影響から出展社や来場者が戻りつつある印象を強く受け、再生可能エネルギーや売買電ビジネス、電池に関係する技術には多く人が集まっていました。

この分野への関心の高さや参入の多さなどから、主催者によれば、スマートエネルギーWeekは今後東京で春と秋の2回、大阪で秋に1回の年3回開催されるそうです。東京で2021年9月に開催される秋展は初めてとなり、11月の大阪で開催される展示会とどう差別化するのか興味深いところです。

文/石田雅彦

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