『第7回 医療と介護の総合展 [大阪](メディカル ジャパン)』現地レポート

2021年2月24~26日に、インテックス大阪にて「第7回 医療と介護の総合展 [大阪](メディカル ジャパン)」が開催されました。本展示会では、病院・クリニックの運営支援、医療機器などの医療分野と、介護、看護をはじめとした介護分野に関わる製品、技術、サービスなどを展示しており、例年は2万人以上が来場する大規模な展示会です。今回は、ガスクロマトグラフィー(GC)の前処理時間を短縮する装置からウイルスが含まれる飛沫をシミュレーションサービスまで、最新医療技術についてご紹介します。

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医療と介護の総合展(通称、メディカル ジャパン)は、2019年までは大阪のみの開催でしたが同年秋から東京でも開催されるようになり、東京と大阪でそれぞれ1回ずつ年に2回、開催されている病院設備・医療機器EXPO(第7回)、病院運営EXPO(第7回)、介護&看護EXPO(第7回)、医療IT EXPO(第6回)、地域包括ケアEXPO(第4回)、クリニックEXPO(第2回)、次世代薬局EXPO(第2回)、感染対策EXPO(第1回)という8つの展示会をまとめた医療と介護、看護などの業界・団体のための総合展示会です。

病院・クリニックの運営支援、医療機器、設備、ITなどを含む医療分野と介護、看護、地域包括ケア、薬局向けなどを含む介護分野に関わる製品、技術、サービスなどが出展する展示会で、これまで医療や介護の分野でのビジネス拡大に活用され、出展企業にとって自社や団体の特徴をアピールし、病院、クリニック、介護事業者、調剤薬局の経営者などが製品・技術の導入を目的に来場しています。

また、インテックス大阪では同じ主催者によるインターフェックスWeek大阪(第7回)と再生医療EXPO(第7回)も併催されていました。インターフェックスは医薬品や化粧品の研究・製造展で再生医療EXPOは研究・治療・創薬のための製品・サービスのメーカーや団体が出展していました。

大阪での同時展示会は毎年2月に開催され、新型コロナが感染拡大を始めた2020年2月も大阪で開催された同展を取材しました。この1年で主催者の感染拡大対策がかなり手慣れてきた感じもあり、3日間の来場者数は前回より1,500名ほど多かったようです(2020年が8,177名、今回は9,639名)。そんな同展示会から目についた出展をいくつか紹介しましょう。

メタボロミクス解析向け、ガスクロマトグラフィー(GC)の前処理時間を短縮

従来2日間かかっていた試料の取得を10数分まで短縮できるという技術を出展していたのは株式会社アイスティサイエンス(和歌山県和歌山市)です。説明してくださった同社取締役の佐々野貞人(ささの・さだと)氏によると、生体の代謝などで起きる特異的な分子の動きを解析する技術をメタボロミクス(Metabolomics)と言い、環境有害物質の評価やゲノミクス、食品成分の分析などに必須の技術になっているそうです。

ただ、メタボロミクスによる解析のためにはガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)にかけるためなどでサンプル試料の前処理が必要となり、従来は遠心分離機にかけたり凍結乾燥させたりする前処理に2日間ほどもかかっていたそうです。そこで同社は特許登録済みの固相誘導体化法という前処理の方法を開発し、大手計測器システムによる解析までの時間を短縮したと言います。

この固相誘導体化法というのは、同氏によると、固相カートリッジという小さなカプセルに試料を入れることで、試料の固相保持、雑物除去、ガスクロマトグラフィー(GC)のための水分除去、目的成分の誘導体化、溶媒による溶出といった過程を行うことができる方法だそうです。同氏は、この過程は10分間から15分間ほどですむ一方で、従来の前処理法では雑物除去に30分、水分除去に17時間、誘導体化に3時間ほどもかかっていたと言います。

株式会社アイスティサイエンスの固相誘導体化法によるメタボロミクスのための前処理法で使うカプセルの例。対象成分は、アミノ酸、有機酸、糖、短鎖脂肪酸、核酸塩基などで、試料によってカプセル(固相カートリッジ)内に入れた固相保持物質を変えるそうです。
株式会社アイスティサイエンスの固相誘導体化法によるメタボロミクスのための前処理法で使うカプセルの例。対象成分は、アミノ酸、有機酸、糖、短鎖脂肪酸、核酸塩基などで、試料によってカプセル(固相カートリッジ)内に入れた固相保持物質を変えるそうです。

外骨格ロボットとAIの組み合わせ、熟練療法士のリハビリ法を定量化・データベース化

旧電電公社を母体とする通信情報やロボット技術などの研究組織、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府相楽郡)が出展していたのは、ニューロサイエンス(脳神経科学)によるリハビリテーションのための外骨格ロボットとAIを組み合わせた技術です。

説明してくださった同研究所、脳情報研究所ブレインロボットインターフェース研究室、寺前達也(てらまえ・たつや)研究員によると、リハビリ対象者の身体的特徴を外骨格ロボットで定量化し、リハビリ中の動きや機能改善などをデータベース化することで、熟練の療法士のリハビリ法をデジタル化して経験の浅い療法士に伝え、人材育成に使えるようなことができる技術だと言います。

また、こうしたデータベースをAIによって最適化することで、リハビリを高度化、効率化することができ、ICTと組み合わせることで遠隔でのリハビリも実現できるようになると考えられます。寺前研究員によれば、在宅でのリハビリにも応用でき、新型コロナの感染拡大対策にも寄与できるのではと言います。

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の外骨格ロボットの展示。熟練した療法士の経験や勘などを定量化・データベース化することにより、人材育成や遠隔でのリハビリが可能になるそうです。
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の外骨格ロボットの展示。熟練した療法士の経験や勘などを定量化・データベース化することにより、人材育成や遠隔でのリハビリが可能になるそうです。

紫外線による除菌システムを備えた卓上型の紙幣計数機

ATMなどの情報機器の開発製造を行っている日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社(愛知県尾張旭市)が出展していたのは、卓上型の紙幣除菌計数機です。説明してくださった同社トータル紙幣ソリューション事業推進本部の西野陽(にしの・あきら)課長によると、銀行本支店やATMなどの大型の紙幣除菌計数機はこれまであったけれど、簡易郵便局や病院の窓口などで使うことのできる小型のものはほとんどなかったと言います。

同氏によると、最近の研究では、新型コロナウイルスは紙幣表面に4週間ほど残存できるそうです。この計数機は、大型のものに比べて導入コストは約1/10ほどですが、計数スピードは大型が1分間1,000枚とすると、こちらの小型機では1分間180枚ほどに遅くなると言います。ただ、波長254から260nm付近の紫外線(UVC)を紙幣1枚1枚の両面に照射する除菌システムは大型と同じ機構を使い、約30cm四方のスペースに設置できるコンパクトさが特徴だそうです。

日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社の卓上型の紙幣除菌計数機。極端に大きくない限り、各国の紙幣を除菌計数できるといい、除菌率は毎秒3枚の時に約90%。
日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社の卓上型の紙幣除菌計数機。極端に大きくない限り、各国の紙幣を除菌計数できるといい、除菌率は毎秒3枚の時に約90%。

金属の板金加工業者が提案する、自立起立・移乗補助具

リハビリテーションでは、自分の力で立ったり歩いたりできるようにすることも重要です。株式会社東海技研工業(岐阜県中津川市)が出展していたのは、独自開発したという自立起立・移乗補助具です。同社は金属の板金加工を主なビジネスにしてきたと言い、社長と社員の発案でトイレに一人で行けるような補助具を開発したそうです。

この製品、巨大なゼムクリップ(ターンクリップ)のようなパイプ形状をしていて、2か所から3か所に樹脂製のグリップがついています。使い方としては、例えば、ベッドから起きあがる際にパイプを掴んで上半身を起こし自分だけで座位の姿勢にできたり、ベッドから立ち上がる際には、パイプを掴んで支持に使ったりするそうです。多様な身体特性に対応しやすい形状にしたそうで、方向転換、重心移動といったフィードバック訓練にも利用できると言います。

株式会社東海技研工業が独自開発した自立起立・移乗補助具。ベッド脇に設置する場合、ベースはベッド下寸法8cm以上と4cmの2種類があるそう。岐阜大学医学部附属病院リハビリテーション科などに提供し、2020年8月に開催された日本リハビリテーション医学会学術集会で成果発表された。
株式会社東海技研工業が独自開発した自立起立・移乗補助具。ベッド脇に設置する場合、ベースはベッド下寸法8cm以上と4cmの2種類があるそう。岐阜大学医学部附属病院リハビリテーション科などに提供し、2020年8月に開催された日本リハビリテーション医学会学術集会で成果発表された。

ウイルスが含まれる飛沫をシミュレーション、飛沫が滞留しやすい場所などを特定

株式会社エコ革(東京都豊島区)の京都テクノロジー事業部(京都府相楽郡)が出展していたのは、建造物の屋内外を3D化して新型コロナの飛沫シミュレーションを行う可視化システムです。説明してくださった同社同事業部の広報・マーケティング推進室、平田玲子(ひらた・れいこ)室長によれば、医療施設、映画館や劇場、多目的ホール、体育館、オフィスなどの屋内空間をレーザースキャンして膨大な点データを取得、コンピューターを並列グリッドで百数十台使い、空気の流れとウイルスが含まれる飛沫の移動の3Dモデルを作成すると言います。

レーザースキャンは、3軸の角度と加速度を検出するIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)を使用します。まず複数の点データを合成して建造物の3D CADデータを作成し、その後、空調設備による流体の動きを解析して気流と飛沫の移動シミュレーションを行うそうです。

実際、東京・目白にある巨大なカトリック教会で3Dの飛沫シミュレーションを作成し、換気無しや5分間の換気の違いなどを比較したと言い、巨大な空間内の複雑な気流と飛沫の流れを予測、飛沫が滞留しやすい場所などを特定することができたそうです。

株式会社エコ革の京都テクノロジー事業部がカトリック教会で行った飛沫シミュレーション。建造物内の換気や空調の最適化によるウイルス対策ができるそうです。
株式会社エコ革の京都テクノロジー事業部がカトリック教会で行った飛沫シミュレーション。建造物内の換気や空調の最適化によるウイルス対策ができるそうです。

大阪で7回目になる医療と介護の総合展は、新型コロナの影響があったものの、出展社や来場者が戻ってきつつある印象を受けました。さすがに関連業界なので感染対策の技術や製品、サービスが目につき、製薬会社の多い大阪という特徴も見えた展示会でした。

同展示会と同じインテックス大阪で同時開催されていたインターフェックスWeek大阪と再生医療EXPOにも5,000名近い来場者があったようで、今後も関西で開催される同展示会に期待したいと思います。

文/石田雅彦

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