『京都ビジネス交流フェア2021』現地レポート

2021年2月18~19日に、京都パルスプラザにて「京都ビジネス交流フェア2021」が開催されました。本展示会は、ものづくり企業や生産性向上、環境・エネルギー関連などのソリューション技術の関連企業のBtoBビジネス交流に特化した展示商談会で、年に1度京都で開催されています。今回は、大学の医学部からの依頼で開発した「再生医療で使用する軟骨片を細断する装置」や、京都のものづくり企業が協力して開発した「買い物かご除菌装置」など京都ならではのものづくり技術についてご紹介します。

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京都ビジネス交流フェアは、年に1度、京都パルスプラザ(京都府総合見本市会館)で開催されているBtoBに特化した展示商談会です。新型コロナ感染防止対策を講じて開催された2021年の展示会には、京都府や関西圏を中心に146社20団体が出展、来場者数は3,100名(2日間、2020年は5,650名)でした。

出展社は、切削・研削、鋳造・鍛造、板金・プレス、金型・治具、表面処理・熱処理、塗装、電気・電子部品組み立て、樹脂加工などのものづくり企業や生産性向上や環境・エネルギー関連などのソリューション技術の関連企業などです。今年はコロナ感染症対策商品・サービスなども出展され、会場内の商談用のマッチングスペースでは活発な商談や意見交換などが行われていました。その中から興味深いユニークな技術、注目の技術を出展していた企業をいくつか紹介しましょう。

スーパーエンプラなど特殊樹脂から、ステンレス、真鍮など金属への「微小穴開け」加工

微細加工技術の企業、洛陽化成株式会社(京都府久世郡)が出展していたのは、微小穴開け加工と3Dの切削デモです。説明してくださった同社の製造部第一製造グループ主任、小巻英範(こまき・ひでのり)氏によると、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)やPEI(Polyetherimide) といったスーパーエンジニアリング・プラスチック(スーパーエンプラ)など特殊樹脂、アルミ、ステンレス、銅、真鍮といった金属の加工が得意な企業だと言います。

300℃から400℃までの耐熱性をもつ、こうした特殊樹脂への微細形状の穴開け加工や切削加工は、半導体、ICソケット、検査治具、車載関連の部品、医療関連部品などで用いられているそうで、同社では切削加工精度でプラスマイナス0.02(寸法、穴加工など)をクリアできる技術をもっているそうです。

デモされていた直径0.03mm、深さ0.3mm、穴間壁厚0.02 mmの穴開け技術は、通電検査などに使われると言います。こうした微細形状の穴開けドリリング加工は特殊なマシニングセンタで行うそうですが、折れやすい微細加工用ドリルの回転数などを調整し、穴が広がらないよう、バリができないようなプログラミングとノウハウの蓄積が重要だそうです。

また、切削デモでは、PEEK材に対して2mm×2mm、深さ15 mmの切削を施していました。これを裏返すとお椀状に出っ張り、その3D加工技術をデモしているそうです。こうした切削加工では、最小溝0.1 mmで深さ1mmまで対応可能だと言います。

洛陽化成株式会社には、最小穴径0.03 mm、最大連続加工穴数1万穴以上の微細加工の実績があるそうです
洛陽化成株式会社には、最小穴径0.03 mm、最大連続加工穴数1万穴以上の微細加工の実績があるそうです

大学の医学部からの依頼で開発した、再生医療で使用する軟骨片を細断する装置

有限会社シバタシステムサービス(京都府綴喜郡)が出展していたのは、三次元形状生体組織細断装置です。説明してくださった同社代表取締役、柴田和博(しばた・かずひろ)氏によると、軟骨組織などの再生医療で組織を再生させる足場として三次元形状の軟骨片が必要とのことで、近畿大学医学部の形成外科学教室の依頼により製作した装置とのことです。

使い方は、まず周囲に溝が掘られた青いトレーの中央にある出っ張りの上へカットしたい生体材料を置き、専用の接着剤で固定して装置へセットします。その後、デジタルマイクロメーターでカットしたい高さを確認し、レバーを左右に往復させることでまずX方向への細断をし、トレーを移動させてレバーを今度は前後へ往復させてY-Z方向の細断を行います。こうして細断することで、生体組織から必要細胞数に応じた再生材料を得ることができるそうです。

得られた生体材料はサイコロ状の立方体に細断されていて、立方体内の細胞数が多く生理食塩水などでトレーの周囲の溝へ流して回収し、再生医療などで利用できます。柴田氏によると、近畿大学医学部形成外科学教室の研究によって、軟骨は酵素処理による細胞回収率が最も高く、再生に適したサイズは100μmから400μm前後であるということがわかったと言います。

この装置で作製したマイクロサイズの立体形状の軟骨と幹細胞の分化増殖に適切なサイトカイン(cytokine、細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の総称)を組み合わせて足場にすることで、例えばイヌの耳の軟骨などで細胞生存率や利用率の高い再生が行われることがわかったそうです。

有限会社シバタシステムサービスが出展していた三次元形状生体組織細断装置は5バージョン目。一片が数百μmの立方体の軟骨組織などを得ることができ、細断の幅は100μm、150μm、200μmの3段階とのこと。
有限会社シバタシステムサービスが出展していた三次元形状生体組織細断装置は5バージョン目。一片が数百μmの立方体の軟骨組織などを得ることができ、細断の幅は100μm、150μm、200μmの3段階とのこと。

京都のものづくり企業が協力して開発した、買い物かご除菌装置

最近では全国各地にものづくり企業の集積、クラスターができていますが、ものづくりの歴史の長い京都にも京都市ライフイノベーション推進戦略、ネオマテリアル創成研究会(2015年で解散)などがあります。2001年に設立された一般社団法人京都試作ネットもその一つで、島津製作所やオムロン、京セラといった京都の企業の試作をしてきた地元企業50数社が集まってネットワークを形成しています。

その京都試作ネットが出展していたのが買い物かご除菌装置です。説明してくださった同ネット副代表理事、森豊(もり・ゆたか)氏によれば、ある大手スーパーチェーンが新型コロナ感染防止対策のために行っている買い物かごの除菌作業が大変ということを耳にし、その作業を省力化するためのロボット除菌システムを作ろうということで開発された技術だそうです。

この買い物かご除菌装置は、高さ2,100mm╳縦840 mm╳横820 mmで、背の高い箱型の中に買い物かごを入れ、紫外線(UVC)によって除菌するようになっていると言います。紫外線C波は人体に有害ですが、周囲の透明板によって有害紫外線は外へ出ないようになっているそうです。

開発計画が立ち上がったのが2020年5月中旬、株式会社ニューネクスト(京都市南区)が中心となり、多種多様な要素技術をもつ14社が協力して9月29日にプロトタイプが完成し、京都市内のスーパーでお披露目したと言います。買い物かごの持ち手の裏側まで除菌でき、かご60個を約17分で除菌(除菌率99.9%)できるそうですが、同社の代表取締役会長である松岡俊秀氏によれば、買い物かごはくっつきやすく、それを外す仕組みを考えることに苦労したそうです。

その仕組みは、買い物かご60個を本体へ入れると、まず最下部の1つのかごを残して59個を上へ移動させ、1つのかごの取手を持ち上げるなどして中へ入った紫外線ランプが除菌作業を行います。その後、上に移動していた59個がいったん下に降り、2つ目のかごを残して58個を上へ移動し除菌という作業を繰り返すそうです。

株式会社ニューネクストが中心になって開発した買い物かご除菌装置。手作業で行っていた買い物かごの除菌を自動化でき、大手量販店やスーパーなどでの活用が期待されます。
株式会社ニューネクストが中心になって開発した買い物かご除菌装置。手作業で行っていた買い物かごの除菌を自動化でき、大手量販店やスーパーなどでの活用が期待されます。

穀類向け色彩選別機、ブロワーで吸引搬送、カメラで色検査し不良品除去

色彩選別機、異物選別機の製造メーカー、株式会社服部製作所(京都府宇治市)が出展していたのは、粉体・軽比重物用異物除去装置です。オオムギ、発泡ビーズ、粉ミルクなどの粒子・粉体に混じった不良品を除去する装置ですが、フルカラーのカメリ方式穀類用色彩選別機だそうです。

説明してくださった同社本社営業部の佐伯紘平(さえき・こうへい)氏によれば、オオムギなどの軽量な粒子状物質や粉ミルクなどの粉体をブロワーで吸引搬送し、2台の2Kカメラによって1粒ずつ色を検査して不良品をピンポイントで除去できる装置だそうです。これにより発泡ビーズでは99.9%、粉ミルクでは99%の異物除去を実現でき、自由落下よりも効率的に選別が可能になります。

同社が従来より開発してきたカメラによる色彩選別の技術とブロワーによって粉体を吸引搬送する技術を組み合わせた新発想の装置ということで、本展示会を主催する公益財団法人京都産業21の京都府中小企業技術大賞の優秀技術賞を受賞しています。佐伯氏によれば、異物をイジェクターの圧縮空気によって瞬時に選別するタイミングとブロワーの吸引力のコントロールなど、トータルバランスをどう取るかに苦労したそうです。

株式会社服部製作所の粉体・軽比重物用異物除去装置。前後に配置された2台のCCDカメラが異物を検出すると、瞬時に圧縮空気を吹き付けてイジェクトするといいます。
株式会社服部製作所の粉体・軽比重物用異物除去装置。前後に配置された2台のCCDカメラが異物を検出すると、瞬時に圧縮空気を吹き付けてイジェクトするといいます。

本展示会は、2月1日から3月5日までバーチャル京都ビジネス交流フェア2021も開催され、バーチャルとリアルのハイブリッドで商談などが行われていました。京都ならではのものづくり技術も多く、また産業クラスターによる出展も見受けられ、来年も発想豊かで京都独自の技術が期待できそうです。

文/石田雅彦

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