『第7回 町工場見本市2021』現場レポート(前編)

2021年2月9〜10日に、東京国際フォーラムにて「第7回 町工場見本市2021」が開催されました。町工場見本市は葛飾区およびその近隣地域の製造業かつ中小企業のための展示会。多くの下町の町工場が自慢の技術を持ち寄り、商談から受注につなげようと出展していました。その中から気になったものづくりの展示を2回に分けて紹介します。前編では、コロナ禍で売上が落ち込んだ企業や、年々市場からの需要が減少している企業などの生き残り戦略や、町工場ならではの得意技術についてご紹介します。

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2021年2月9日より2日間、東京国際フォーラムで開催された「第7回 町工場見本市2021」。『中小にしかできない「技術(こと)」見本市』というサブタイトルにある通り、東京都葛飾区、足立区、墨田区、江戸川区、埼玉県八潮市、三郷市、千葉県松戸市、市川市など、8区4市から、機械、金属加工、ゴム、プラスチック、ガラス、皮革、紙、繊維、めっきなどさまざまな技術を持った中小企業が出展しました。会場では、来場者参加型のワークショップや、セミナーも開催されました。町工場見本市の会場レポートとして、気になる企業をご紹介しましょう。

抗ウイルスフィルターと除菌抗菌剤、コロナ禍で新規需要の開拓へ

株式会社オリタニが販売しているアルコール不使用の除菌抗菌剤
株式会社オリタニが販売しているアルコール不使用の除菌抗菌剤

ハンガーラック、リネンカート、ランドリーワゴンなど、業務用のバックヤード備品のメーカーである株式会社オリタニは、コロナ禍でクリーニング業の売上が落ち込んでいったことを背景に、世界各国の会社から商品を取り寄せ、新たな需要を開拓していました。

同社営業部の大久保成(おおくぼ・せい)氏が「需要が増えてきている」と語ったのが、エアコンに装着し室内のウイルス感染対策が実現できる「抗ウイルスフィルター」と、アルコール不使用の「除菌抗菌剤」です。

抗ウイルスフィルターは、オフィスや店舗、家庭のエアコンの吸い込み口に貼り付けることでエアコンが空気清浄機のような役割をするシート。フィルター内に含まれる銅イオンが、菌やウイルスの中に入り、たんぱく質や核酸と結合することで菌やウイルスの活動を抑制するというものです。商品の種類はルームエアコンサイズ(40×80cm)と業務用エアコンサイズ(62×62cm)の2種類が用意されています。

「エアコンの吸い込み口に貼っていただくだけで、簡単に室内のウイルス感染対策ができます。電源を入れたり切ったりする家庭であれば効果は1か月ほど持ち、24時間稼働させているような病院などでは効果は2週間ほど持ちます」(大久保氏)

まだ新型コロナウイルスでは試してはいないものの、新型コロナと同じエンベロープタイプである「インフルエンザウイルス」で試したところ、抗菌試験において抗ウイルス活性値は基準値の3.0を大きく上回る「4.1」を記録しています。

塩素・アルコール不使用の除菌抗菌剤の配合されている成分は、食品衛生分野の除菌、ヘアケア製品、コンタクトレンズ洗浄液において長年繁用され、世界の主要な監督・検査機関によりその安全性が証明・認可されているものを使用しているとのこと。

「人間やペットや植物には無害、皮膚を刺激せず、中性で、有毒ガスを発生することもなく安心して使えるのが大きな特徴となっています」(大久保氏)

アルコールや塩素系の消毒液は乾燥すると除菌の効果が著しく低下しますが、本製品は乾燥後も目に見えないミクロのバリアを形成。そのため、一般環境で24時間から数日間にかけてバリア効果が持続すると言います。

小型卓上真空成形機、型があれば自宅でも複製可能

株式会社ラヤマパックの小型卓上真空成形機によりマスク成形
株式会社ラヤマパックの小型卓上真空成形機によりマスク成形

1962年に創業。約60年にわたって、プラスチック成形を軸にモノづくりを手がけてきた株式会社ラヤマパックは今回、小型卓上真空成形機を展示していました。

ラヤマパックはプラスチックシートを「真空成形」という加工技術を用いて、店頭に並ぶ商品パッケージや工場内外の部品の運搬用トレイなどを生産している企業。同社は、その技術を活用し、独自に開発したのが前述した小型卓上真空成形機です。

真空成形機は加熱して軟化させたプラスチック板を型に合わせて、真空吸引することで立体的なプラスチック製品を製造するための機械のこと。同商品はそれを小型化したものです。100Vの家庭用電源で操作することができるため、事務所のデスクや工場の小さなスペース、自宅などで簡単にデザインの試作やトレイづくりに取り組めます。

具体的には、下記の手順で使うことができます。

1.真空成形機にプラスチック板をセットしてヒーターで加熱します。
2.プラスチック板が加熱によって軟らかくなります。
3.型をプラスチック板に押し当て、瞬時に真空ポンプで排気して密着させます。
4.プラスチック板が冷えて固まってから型を引き抜きます。

また、同社営業部の大久保祐汰(おおくぼ・ゆうた)氏は同商品の特徴について、つぎのように説明します。

「機械の中に掃除機と同じようなモーターが入っているので、そこで空気を吸い取って、型にシートを押し当てていきます。海外にも似たような製品がありますが、それは掃除機で吸わなければいけないなど、手間がかかります。ただ、同商品は一つの機械で真空成形が完結します。それが大きな特徴となっています」

「また、3Dプリンターは製作に3〜4時間、下手すると10時間ほどかかることがあるのですが、それを数十個作るとなると、とても大変だと思います。ただ、真空成形はひとつの型があれば、すぐに複製することができるので、そこも大きな強みです」(大久保氏)

大久保氏によれば、現在同商品はホンダやマツダ、ソニーなどで導入されており、製品の試作やパッケージの試作などに使われているとのことです。

亜鉛・アルミダイカスト技術、自動車部品からギフトアイテムまで

株式会社浅川製作所が展示している亜鉛ダイカストとアルミダイカストの加工品
株式会社浅川製作所が展示している亜鉛ダイカストとアルミダイカストの加工品

1951年に墨田区向島に創業。亜鉛ダイカスト、アルミダイカストを手がける株式会社浅川製作所。同社は純銀製の一輪挿しや、手鏡、切子グラス、その他のテーブルウェア、 インテリア小物、ギフトアイテムの企画から製造、販売までを一貫して行う自社製オリジナルブランドも展開しています。

同社の主力事業が自動車部品や建築、家電製品などのダイカストパーツのOEM事業です。同社は、設計から金型製作、鋳造、仕上げ(研磨・メッキ・塗装等)、検査、組立、完成品での納品までを一貫してトータルプロデュースすることができます。長野県佐久穂町にダイカスト工場を持っています、

同社営業部の神津拓哉(こうづ・たくや)氏は自社の強みをこう説明します。

「特に亜鉛ダイカストが強みですね。亜鉛は融点が低く、非常に高い寸法精度で加工できることが特徴です。重厚感があり、ドアノブなどの高級感が欲しいパーツにも向いています。一方でアルミニウムは軽量が特長。弊社はさまざまな亜鉛とアルミの鋳造機を持っているため、いろんな企業のニーズに応えられるのが大きな強みとなっています」(神津氏)

同社の佐久工場はアルミダイカスト鋳造機を7台、亜鉛ダイカスト鋳造機を13台所有。それらをコンピューター管理するなど、最新の工場となっています。

「世の中的には軽量化の流れに向かっていますが、どうしても重量や強度が必要になるものはあるので、そうした企業のニーズに応えていければと思っています」(神津氏)

毎週のように新しい紙器製品を開発、減少する需要から生き残るべく

有限会社高田紙器製作所の社員の皆が考えた「開くと飛び出す立体紙模型」
上下に3つぶら下げることができるカップホルダー

紙のパッケージ、店頭用ディスプレイなどの紙器製品を手がける会社として、1929年に創業したのが有限会社高田紙器製作所です。創業から80年以上にわたって、紙器製品を展開してきた同社ですが、紙器製品の需要は年々、減少傾向にあります。

また、厳しい価格競争にもさらされています。そうした中、高田紙器製作所は生き残りを図るべく、毎週のように新製品を開発し、企業に新商品を直接販売しています。

例えば、飛び出す絵本のように開くと立体紙模型が起き上がる会社案内や名刺、特殊な形をしたギフト箱、オリジナルのうちわやメガホン、ジグソーパズル、立体的な販促POPなど、さまざまなツールを開発。紙の特性を熟知したプロだからこそできるアイデアを企画提案し、新たな受注につなげています。コンビニエンスストアなどで売られているカップ式コーヒーを上下に3つぶら下げることができ、一人で両手で6つまで持ち運べるカップホルダーは、東京TASKものづくりアワード2020優秀賞を受賞しています。

この戦略を実施するにあたって参考にしたのが、企業が消費者に直接商品を販売する「D2C(Direct to Consumer)」という考え方です。D2Cは10年ほどからアメリカで勃興し、その流れは数年前から日本にも来ていて、さまざまなD2Cブランドが立ち上がっています。

同社代表取締役社長の高田照和(たかだ・てるかず)氏は、D2C をやめた経緯について、このように語ります。

「さまざまな紙器製品を開発してきた中で培った技術を販売してみよう。そう思い、12年前に自社製品のD2C(EC販売)を行ってみたのですが、最終的には撤退することになりました。私たちにはクレーム対策や宣伝手法、在庫管理、発送業務に対する心構えがまったくなかったんです。3万個ほど製品を作りましたが、結果的には1万個ほど捨ててしまうことになってしまいました。そこからどうやって自社製品を売ればいいのか考えてみたところ、私たちは、消費者の一歩手前の企業に販売してみたらどうか、と思ったんです」(高田氏)

3年ほど前から高田紙器製作所は「毎月新製品を作る」ことを掲げ、2018年は1年間で20製品ほどの新製品を開発しました。それをさまざまな方法で企業に宣伝したり、配布したりした結果、利益率は向上。また取引先も5年前と比較して90%変わったと言います。

「利益率の低い下請けの仕事を意識的に減らした結果、売上は落ちました。ただ自社製品を作り、他の会社がやっていないこと向かっていった結果、利益率が上がり、『良いものを作り続ける』という社風もできあがっていきました」(高田氏)

なぜ、同社はこれだけのスピードで新製品を開発できるのでしょうか。そのポイントとなるのが、紙器製品の試作コストの低さ。

「1つの試作品にかかる材料費が金属部品が1万円とすると、紙器製品はその100分の1。非常に低いんです。紙器製品は単価が安く見られがちですが、それはメリットだと捉えています。すぐに試作開発でき、例えば打ち合わせをしている最中に試作を見せることもできます。金属製品の場合は1つの新製品を開発するのに、2〜3か月の時間を要しますが、紙製品は2時間ほどです」(高田氏)

実際に高田氏は「目についたものを片っ端から作っている」と言い、最近では展示会で隣に出展していた企業の製品からアイデアを着想し、足踏み式アルコールディスペンサースタンドを紙で制作。さらには紙の「靴べら」も開発を進めているとのことです。

「通販にはもう一度、挑戦したいと思っています。ただ従来の通販の形ではなく、動画や写真、体験記を入れた簡単なサンプルを1,000円以下で販売します。多分、利益は出ませんが限定100個などにして販売することで購入者からフィードバックをもらったり、新たな取引につながったりする可能性もある。そういう商売の形も模索したいと思います」(高田氏)


文/新國翔大

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