『第32回日本ものづくりワールド2021』現地レポート

2021年2月3~5日に、幕張メッセにて「第32回日本ものづくりワールド2021」が開催されました。本展示会は設計・製造ソリューション展を軸に、製造業に関する企業や団体が出展する9つの展示会がまとまった会です。東京、名古屋、大阪で年に3〜4回開催されてきました。今回は、アプセット鍛造、波動歯車減速機、ピアスナットなど加工法から機械要素まで幅広い分野のものづくり最新動向をご紹介します。

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第32回日本ものづくりワールドは、設計・製造ソリューション展を軸に、製造業の開発、生産、品質向上、VA(Value Analysis)/VE(Value Engineering)といったコストダウンなどに関する企業や団体が出展する展示会です。9つの展示会をまとめた構成になっており、東京(2回の年も)、名古屋、大阪で年に3〜4回、開催されてきました。

出展社はもちろん、実際にデモや実機を間近で見たり手に取ったりできることに期待する企業や担当者、技術者らにとって、こうした展示会は貴重な機会になっています。本展示会には、製造業の設計、開発、研究、生産技術、製造、生産管理、情報システム、経営企画、知的財産、品質管理、工場・設備管理、購買、人事部門といった担当者が多く来場していました。そんな出展の中から目立った製品や技術などを紹介しましょう。

ピストンシリンダーなどの内周面を、機械振動や光学系揺らぎを排除し非接触測定

ピストンシリンダーなどの内周面を三次元的に非接触で精密測定する技術を出展していたのは、アダマンド並木精密宝石株式会社(青森県黒石市)です。説明してくださった同社技術顧問、淺田隆文(あさだ・たかふみ)氏によると、自動車のエンジンなどのピストンや精密軸受などは、加工時や作動時の熱膨張、取り付け時の加工圧などをあらかじめ勘案し、最初から単純な円筒形ではない複雑な形状に切削されているそうです。

従来の非接触測定器はピストンシリンダーや軸受の中へ回転する棒状のセンサーを挿入し光学的に測定しますが、回転によるブレや揺らぎが生じて正確に測定できなかったと言います。しかし同社は、挿入する棒を石英パイプにし、パイプ底面に角度をつけたミラーを設置してそのミラーのみを回転させて光学的に走査させることで、機械的な振動や光学系の揺らぎを排除することに成功したそうです。

それによって内径や真円度などの測定精度が上がり、内面の多様な形状も精密に計測することができるようになったと言います。淺田氏によると、直径1.1mmの細径動圧軸受加工精度を25秒で自動的に測定することが可能だそうです。特に三次元形状データを得ることで、従来はカットして測定していた焼結材のポーラスなどをカットせずに検査することができるといいます。

アダマンド並木精密宝石株式会社の内周面3D精密測定機。回転しない石英パイプの底面に設置した走査ミラーを回転させることで、機械振動や揺らぎを除くことができたとのこと。
アダマンド並木精密宝石株式会社の内周面3D精密測定機。回転しない石英パイプの底面に設置した走査ミラーを回転させることで、機械振動や揺らぎを除くことができたとのこと。


種子などの微小粒子の数を、2方向ミラー分光画像処理型カメラ計数機で検出

株式会社松楽産業(東京都中野区)が出展していたのは、植物の種子などの微小粒子を毎秒200個から300個、カウントできる計数機です。説明してくださった同社営業部の宮本弘(みやもと・ひろし)氏によると、農作物の種子は小さな粒子状になっていますが、通常は重量で大まかな個数を算定しています。しかし、ゴミや粉塵などが混入しているため、正確な個数まで数えることはできなかったそうです。

展示していた2方向ミラー分光画像処理型カメラ計数機は、CMOSカメラと90度に配置されたミラーによって、上から落下してくる種子を2方向から高精度で検出し、1ピクセル×4Kカメラ(米国ポールコールマン式)で1秒間に3万3,000回スキャンすることで正確なカウントができるといいます。また、AIの学習機能と画像処理、粒度分布計などを用いてゴミや粉塵を無視した計数が可能になっているそうです。


株式会社松楽産業のカメラ式計数機は、カウント後に落下の差分を異物検知して別に排出。また、トルコキキョウなどの希少な種子やスワロフスキーなどの単価の高い粒子は、重量ではなく個数で管理したいニーズがあるそう。
株式会社松楽産業のカメラ式計数機は、カウント後に落下の差分を異物検知して別に排出。また、トルコキキョウなどの希少な種子やスワロフスキーなどの単価の高い粒子は、重量ではなく個数で管理したいニーズがあるそう。


複雑な形状のシャフトをアプセット鍛造、加工代重量の削減と高強度へ

アプセット鍛造の技術を展示していたのは、東名鍛工株式会社(静岡県静岡市)です。アプセット鍛造は、据え込み・据え圧縮とよばれる鍛造成形の一種で、説明してくださった同社代表取締役社長、宮嶋俊介(みやじま・しゅんすけ)氏によれば、自動車や農業機器などのシャフトといった回転する部品に使われる鍛造方法だそうです。

もともとアプセット鍛造はバリなどの材料ロスが少なく歩留まりがいいのがメリットですが、同社のアプセット鍛造は複雑な形状による鍛造が可能なため、鍛造後の切削など後工程を省くことができ、加工代重量も削減することができると言います。一般的なアプセット鍛造では、例えばアプセット鍛造品が4.47kgなら後工程の切削で2.22kgの加工代重量の無駄が出ますが、同社の技術ではそれが0.53kgに抑えることができるそうです。


丸棒から4工程を経て複雑な形状のシャフトを鍛造できる
丸棒から4工程を経て複雑な形状のシャフトを鍛造できる


アプセット鍛造は鍛造のため、丸棒から切削したり溶接するよりも高い強度が期待できる
アプセット鍛造は鍛造のため、丸棒から切削したり溶接するよりも高い強度が期待できる


防水用のネジのOリング取り付けを自動化、防水性の確保へ

富士セイラ株式会社(東京都品川区)が出展していたのは、高耐圧防水・防油・防塵ネジです。説明してくださった同社東京営業部、本社第二営業課の安村崇(やすむら・たかし)氏によれば、防水用のネジは自動車用部品、携帯端末、屋外機器、医療機器などで多く使われてきた部品ですが、シリコン製のOリングをネジの座面に取り付ける工程が自動化できず、ネジの回転によってOリングが潰れたり不均一になったりして防水性が落ちたりする欠点があったと言います。

同社はOリング取り付けをロボットで自動化し、座面に凹んだグリをつけることでOリングの密着面やパッキン性能が保持され、ネジの回転による潰れや偏りでも防水性が確保できるそうです。またOリングの内径はネジ外径より小さいため、取り付け時に脱落しにくく、接触面積が大きいので既存ネジを交換するだけで使用できると言います。


防水用のネジの加工法はネジ山を切るのと同時にOリングを入れるとのこと
防水用のネジの加工法はネジ山を切るのと同時にOリングを入れるとのこと


金属とセラミックスの接合技術、寿命延長とランニングコストの削減のメリットが

金属部品にセラミックスを接合させた製品を出展していたのは株式会社ミテック(福井県福井市)です。説明してくださった同社営業部エリアマネージャー、小玉敦(こたま・あつし)氏によると、金属とセラミックスの接合方法には、エポキシ系、有機系、無機系接着剤による接着、熱膨張と収縮を利用して接合する焼きばめ、融点の低いろう材を挿入して接合するろう付けがあるそうです。

金属や樹脂にセラミックスを接合するメリットとしては、レール部品などで焼入れ後硬質クロムメッキなどに比べて10倍以上の寿命があること、必要な部分だけをセラミックスにできること、セラミックスだけを再研磨したり再利用することができるなどがあると言います。そのため、摩耗パーツの交換頻度を低くすることでランニングコストの削減、メンテナンスの軽減などが期待できます。


株式会社ミテックのセラミックス接合例。搬送用レールや軸受などに使われているそう。
株式会社ミテックのセラミックス接合例。搬送用レールや軸受などに使われているそう。


3ローブ型の波動歯車減速機、バックラッシ低減とヒステリシスロス低減へ

株式会社リケン(埼玉県熊谷市)が出展していたのは3ローブ型の波動歯車減速機です。説明してくださった同社新製品開発部主任技師、石塚一男(いしづか・かずお)氏によると、従来の波動歯車減速機はギアの噛み合う場所が楕円の2か所でしたが、同社ではこれをオムスビ型の3か所にして実用化することに成功したそうです。この技術は特許出願中で、回転角の精度が約2倍に向上し、減速機としての剛性が約3割、高くなったと言います。

また、3ローブ型では、バックラッシ(歯車同士の遊び)を小さくすることができ、ヒステリシス・ロス(変形履歴損失)も少なく、効率、起動トルク、静音性は2ローブ従来型と同等だそうです。産業用ロボットなどで、減速比の大きな同軸減速機に対するニーズがあり、現在では2ローブ型が主流ですが、ギアの干渉のため4ローブ型が限界と言います。


株式会社リケンの3ローブ型波動歯車減速機は2ローブ型より、たわみ変形時の応力が大きくなるそうですが、歪み量を少なくすることで効率よくできる技術的な工夫があるとのこと
株式会社リケンの3ローブ型波動歯車減速機は2ローブ型より、たわみ変形時の応力が大きくなるそうですが、歪み量を少なくすることで効率よくできる技術的な工夫があるとのこと


ピアスナット、母材の端をナット内へ引き込むことでより強固に

ピアスナットという加工技術を出展していたのは株式会社新城製作所(大阪府岸和田市)です。説明してくださった同社営業部課長、河崎義治(かわさき・よしはる)氏によると、ピアスナットとはSelf Piercing and Clinch Nutの略だそうで、ナット自体が対象物に穴を開けて取り付く技術のことを指します。

この技術自体は1960年代に米国で開発されたものですが、母材にナットを溶接するよりもピアスナットのほうが作業管理や強度管理、環境負荷、溶接ヒュームが発生しないなどの点でメリットがあるそうです。同社は独自の技術開発によって母材の端をナット内へ引き込むことで、より強固に母材にかしめられて取り付けると言います。

株式会社新城製作所のピアスナットは、鉄、アルミ、真鍮など取り付ける材質を選ばず、一度に数十個単位で同時に取り付けることが可能だそう。
株式会社新城製作所のピアスナットは、鉄、アルミ、真鍮など取り付ける材質を選ばず、一度に数十個単位で同時に取り付けることが可能だそう。


本展示会の主催社は、出展社のスタッフや来場者には発熱センサーによる検査を実施し、受付にマスクを常備して感染対策を徹底しているそうですが、オンライン展示説明をするブースや出展を取りやめたブースが点在し、新型コロナウイルス感染症の影響の大きさがわかります。やはり新型コロナの影響もあり来場者は、前回(1万664名)に引き続き、例年(2019年は6万6,049名)よりかなり少ない8,558名となっていました。

ものづくり企業にとって、デモや実機を紹介できる展示会での営業は欠かすことができず、取引先企業などにとっても展示会での情報収集は欠かせません。今回は前回(2020年2月26日〜28日)と同様、新型コロナの感染防止対策を講じた開催になっていて、主催社はもちろん出展各社は、1日も早い新型コロナの終息を祈っているようでした。


文/石田雅彦

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