世界半導体市場統計から学ぶIC半導体製品4分類「マイクロ」「ロジック」「アナログ」「メモリ」〜半導体入門講座(18)

市場にはおびただしい数の半導体製品が流通しています。その多種多様な半導体製品を分類する一つの指標として、統計データに基づいてWSTS(世界半導体市場統計)が定義する分類があります。今回から2回にわたり、このWSTSの半導体製品分類に基づいた、半導体製品の種類とその役割について紹介します。1回目は、WSTSによる半導体製品の分類と市場規模を解説とともに、IC(集積回路)に該当する半導体製品に注目し、「マイクロ」、「ロジック」、「アナログ」、「メモリ」について解説します。

 

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WSTSによる半導体製品の分類と市場規模

市場にはおびただしい数の半導体が流通しているが、それらはどのような半導体なのだろうか。半導体製品の分類として、WSTS(World Semiconductor Trade Statistic、世界半導体市場統計)という協議会が統計を取っている半導体製品は、一つの指標になる。WSTSは、2020年12月1日現在、46社が加盟する世界半導体市場の統計を取っている団体である。46社の半導体メーカーが加盟している。この機関は、半導体製品を大きく分けて、IC(Integrated Circuit、集積回路)とICではない半導体にまず分類している。

ICはさらに4つに分類されている。①マイクロプロセッサやマイクロコントローラを含む「マイクロ」、②標準ロジックやASIC(Application Specific Integrated Circuit: 特定用途のために設計されるICチップ)などの「ロジック」、そして③AD/DAコンバータや電源ICなどの「アナログ」、④DRAMやNANDフラッシュなどの「メモリ」である。

ICではない半導体としては、パワートランジスタや小信号トランジスタのような「個別半導体」、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、シリコンを深くくり抜き微細な電気機械機構を形成する部品)を利用した「センサ」、受光・発光ダイオードやレーザー、イメージセンサーなどの「オプト(光)エレクトロニクス」、という分類をしている。

これらの半導体がどの程度の市場規模か、それらがどのように成長していく製品なのか、WSTSは2020年の見積もりと21年の予想を2020年12月1日に発表している。それによると、<図1>のようになる。全半導体製品の内、最も大きな市場を占めるのが「メモリ」であり、約28%を占める。その次が「ロジック」であり26%となる。この2種類のICで過半数を占める。そして、「マイクロ」と「アナログ」を含めたIC全体は、83%を占める。このため、単に半導体製品、あるいは半導体チップというとICを指すことが多い。


<図1> WSTSが2020年12月に発表した世界半導体市場の見積もり
<図1> WSTSが2020年12月に発表した世界半導体市場の見積もり


全半導体の中でICの比率がこれほどまでも増えたのは、やはりムーアの法則に沿って、集積化が進んできたからである。システムの機能を増やそうとする場合、シリコンチップにたくさんの回路を詰め込む方が、システムの動作は速く消費電力は低く、しかも小型になるためだ。プリント回路基板上に多数の部品を載せて構成するよりも、高集積のICチップを2〜3個載せる方がプリント回路基板は小さくなる。

このため、小型化が最も強く要求されるシステムほど高集積化の傾向は強い。例えば、以前も紹介したが、スマートフォンのような薄くて小さな最新のシステムは、1980年代のスーパーコンピュータであったCray-2とほぼ同じ性能だと言われている。(半導体入門講座(6)(13)参照)スマホを分解すると、プリント回路基板よりもバッテリの方が大きい。バッテリの進歩よりも半導体の進歩の方がはるかに速いため、機能を詰め込む部品は半導体であり、それによって回路基板の面積を小さくしてきた。バッテリの進歩は遅いため、バッテリを小型にできていない。

それぞれの半導体製品の機能については後述するとして、WSTSの分類は時代とともに変わりつつある。例えば、スマホのプロセッサは、CPUとGPU(Graphics Processing Unit)回路、DSP(Digital Signal Processor)回路、ISP(Image Signal Processor)回路などを1チップに集積したものであり、「マイクロ」に分類されるべきだと思われるが、実は「ロジック」に分類されている。

これはかつての携帯電話でのプロセッサがIntelやAMDのCPUと比べ、性能も機能も見劣りしており、CPUに分類することがはばかられたためである。しかし、現在はパソコン用のCPUと比べても遜色のないレベルにまで達しているため、「マイクロ」に分類されてしかるべきだと思われるが、未だに「ロジック」に分類されたままである。

では、IC半導体製品の各分類の詳細をみていこう。


「マイクロ」、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ~IC半導体製品①

マイクロには、マイクロプロセッサ (Micro-Processing Unit、MPU)やマイクロコントローラ(MCUあるいはマイコン)が含まれる。ただ、マイクロプロセッサにはIntelとAMDの製品がほとんどである。今のところイIntelの最新のプロセッサは第11世代と呼ばれており、パソコン向けではCore ファミリーと呼ばれている。

マイクロプロセッサはコンピュータと同じように演算処理を行う。演算部分はCPUコアと呼ばれ、4個あるいはそれ以上のCPUコアを集積した製品もある。CPUの役割は、ソフトウエアでプログラムすることで、何番地の命令を持ってきて、何番地と何番地のデータを足しなさい(引きなさい)、といった足し算や引き算を行うことができる。すべてソフトウエアプログラムで動作することが特長である。マイクロプロセッサ内部にはデータや命令をいったん保管するレジスタという簡単な一時的なメモリがあり、これらは演算している時に使われる。

しかし、外部メモリに保存されているデータを命令によって探しに行くのに時間がかかることが多い。このため、よく使う命令やデータをキャッシュあるいはバッファと呼ばれるメモリに保管しておく。しかもメモリは階層的に、最も良く頻繁に使うメモリは1次キャッシュ、次によく使うメモリは2次キャッシュとする。これらのキャッシュメモリはプロセッサに集積されている。かつてはキャッシュメモリも高速SRAMとして外付けされていた。

さらにメモリを大量に集積するとプロセッサが巨大になるため、DRAMとして別チップに用意しておく。ただし、プロセッサとDRAMメモリとはできるだけ近づけて配置しておく方がコンピュータシステムとしての動作速度は速くなる。

コンピュータのメモリは階層構成になっており、パソコンに入っているメモリは電源を入れている限りDRAMに内容が書き込まれており、プロセッサとメモリは瞬時にやり取りできるようになっている。ただしDRAMはコンピュータが動作している時にしか記憶できないという特性があるため、電源を切った時にも記憶できるように、ストレージ部分がコンピュータ側にもある。ノートパソコンでは最近、ストレージメモリとしてHDD(Hard Disk Drive)ではなくNANDフラッシュメモリを多数搭載したSSD(Solid State Drive)を使う例が増えている。最新のノートパソコンにはSSD搭載の機種が増えている。

コンピュータの命令セットは大きく分けて、制御命令と演算命令がある。例えば、パソコンでワープロソフト「ワード」を使って文書を書く時は、主に制御命令を使い、表計算ソフト「エクセル」で交通費などを計算する時は演算命令を使う。マイクロプロセッサでも同様で、主に制御命令を使って演算よりも制御を多数使う製品はマイクロコントローラと呼ばれている。マイクロコントローラは、CPU部分が小さいためDRAMやSRAMなどのメモリやフラッシュメモリなども集積し、周辺回路、入出力インターフェイス回路なども集積している。

パソコン用のマイクロプロセッサは汎用であるため、制御も演算も豊富な命令セットを用意しておく。このためメモリはせいぜい2次キャッシュまでしか集積していない。その代り、演算は並列にするためのマルチコアプロセッサ構成になっており、演算部分をより多く集積している。


「ロジック」、FPGA、GPU、DSP~IC半導体製品②

ロジックに分類される半導体は、ANDやOR、NOTなどの論理記号の役割を果たす標準ロジックを始め、現場のユーザーがプログラムによって自分の好きな電子回路に組み直すことのできるFPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)などに加え、先ほど紹介したスマホの頭脳部分となるアプリケーションプロセッサあるいはモバイルプロセッサ、さらにGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor、積和演算専用のプロセッサ)などがある。これらのロジックをほぼ全部集積したのがSoC(System-on-a-chip)である。アプリケーションプロセッサをSoCと呼ぶこともある。

最近では、IntelやAMDもマイクロプロセッサと呼んだりSoCと呼んだりすることがあり、「ロジック」と「マイクロ」の境界はあいまいになりつつある。そこで、今一度、マイクロプロセッサであるCPUとGPU、DSP、FPGAを整理しておく。

CPUは非常に汎用なプロセッサで、演算も制御も可能であり割込みもでき、ソフトウエアで機能を定義する。これに対し、GPUはグラフィックス、すなわち絵を描くための専用プログラマブルチップであり、特に色を塗る(レンダリング)ために小型の積和演算器を大量に集積しているのが特長である。絵をデッサンして色を塗るという作業ではCPUとは違い割込みは許さない。色塗り作業に専念する。色塗り作業では大型スクリーン(例えば1024×800)を小さなブロック(画素数例えば100×80)に分解して、小さなブロックを並列に一斉に計算すると色塗りが即座にできる。このため汎用的なCPUよりも積和演算は速い。

また積和演算は、複雑で解析的に解けなさそうな方程式を数値演算で解くのに使う。さまざまなアルゴリズムを計算する方程式を数値演算に展開することができるが、それを64ビット×64ビットの高精度な数値演算で行うのがDSPである。DSPは高精度な積和演算器を1個か2個集積しているだけで、GPUの積和演算器とは異なる。

余談だが、AIのニューラルネットワークでも、一つのニューロンでは多入力の各データに重みを掛け合わせて並列に積和演算を行うため、GPUがAIチップとして使われることが多い。ただし、多数のニューロンを多数並列に演算して、その結果を次のニューロン群に入力しなければならないため、積和演算器と一次メモリのセットがAIチップとして望ましい。


「アナログ」、AD/DAコンバータ、電源IC~IC半導体製品③

アナログICは、入力に対して増幅された信号を出力するため、リニアICとも呼ばれる。単なる増幅器だけではなく、発振器や減衰器もできる。マイクロプロセッサやマイコンのようにデジタルの論理信号も扱えるようにするため、アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter, ADC) やその逆を行うD/Aコンバータ(Digital-to-Analog Converter, DAC) などもアナログICの仲間である。

さらに最近のIoTやデジタルトランスフォーメーション(DX)のようにセンサを使ってデジタルに変換しデータ処理をしてから、またセンサのある顧客のもとにフィードバックするシステムが増えている。大概のセンサはインピーダンスが高く(信号レベルが小さい)、外来ノイズが載りやすい。このため、インピーダンスを下げる必要があり、センサの直後にアナログICを用いてインピーダンス変換をする場合も多い。

また、デジタルであれ、アナログであれ、どのような回路も直流電源がなければ動作しない。このための電源用ICを最近ではPMIC(Power Management Integrated Circuit)と呼ぶことが多い。PMICは、スマートフォンやバッテリ動作が必要なシステムでは異なるDC/DCコンバータを1チップで多数集積する製品が増えている。というのは、スマートフォンに使われる多数のICでは、1.2Vや3.3V、5V、7Vなどさまざまな電圧が要求されることに応じて、3.7〜4.1Vのリチウムイオン電池から多数の安定化電源電圧を生み出さなければならないためだ。


「メモリ」、DRAM、NANDフラッシュ~IC半導体製品④

DRAMはプロセッサのそばで使われるが、NANDフラッシュはストレージ用であるためプロセッサのそばである必要はない。DRAMの最近の特徴は、高集積化よりは高速化に重点が置かれていることだ。それは大量のデータを一度にどっと吐き出す場合が増えているからだ。並列演算が増えてくるとともに読み出されるデータも大量になってくるため、早く読み出し、次の動作につなげたい。高速化の波はプロセッサだけではなくメモリにも来ている。

NANDフラッシュは、大量に記憶ができるようになっており、しかも電源を消しても記憶は保持される。しかし動作はDRAMよりは遅く、しかも何度も書き換えると劣化してしまうため、同じメモリセルを何度も書き直さないようなアルゴリズムの工夫もされている。これによってNANDフラッシュの書き換え回数を均等になるようにして劣化を防いでいる。

NANDフラッシュはHDDよりは速いものの、DRAMよりはずっと遅い。このため、DRAMとNANDフラッシュとのギャップを埋めようというメモリが出てきている。ストレージクラスメモリと呼ばれ、「半導体入門講座(15)」でご紹介したようにIntelはOptane(R)メモリという製品シリーズを出荷している。

相変化メモリを利用したこのメモリ技術は、3D Xpoint(R)(読み:3D cross point)と呼ばれており、この中で、DRAMのメモリモジュール基板に搭載した製品をIntelはパーシステントメモリ(Persistent Memory)と呼び、ストレージとは区別している。IntelのOptaneタイプのSSD(Solid State Drive)は、ストレージのSSDよりも高速であるため、高速ストレージという位置づけの製品としている。


3D XPoint(R)技術を用いたIntelのOptane(R)メモリ 。NANDフラッシュよりもランダムアクセス性能や耐久性で性能が向上しているため、キャッシュメモリとして使用するのに適している。
3D XPoint(R)技術を用いたIntelのOptane(R)メモリ 。NANDフラッシュよりもランダムアクセス性能や耐久性で性能が向上しているため、キャッシュメモリとして使用するのに適している。


その他、NORフラッシュメモリもある。Cypress Semiconductor(現Infineon Technologies)や台湾のWinbond Electronics Corporationも手掛けており、自動車向けの製品として力を入れている。NORフラッシュは、NANDフラッシュほどの高集積化はできないが、NANDのようなシリアルデータ出力ではなく、パラレルデータ出力のため高速である。NORフラッシュにセキュリティ回路も集積し、自動車用メモリとして不揮発性であり消費電力が低く、書き換え回数も100万回以上と多いため、DRAMのようなメモリとしての使い方もある。また、内部は並列だが、外部的に取り出すための端子数を減らすため、シリアル出力のNOR製品もある。



著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。



参考情報
・3D XPointは、Intel Corporationの登録商標です。
・Optaneは、Intel Corporationの登録商標です。



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