『第4回ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会』現地レポート

瀬戸内工業地帯に入る広島経済都市圏は中国地方の中核拠点としての機能をもち、また関西経済圏と九州経済圏の中間に位置する重要な産業地域となっています。自動車、造船、鉄鋼といった重工業から電気機械、電子部品などの先端工業まで、ものづくり県として有名な広島県で2018年から不定期に開催されているロボット関係の展示会が「ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会」です。

本展示会は、毎年東京ビッグサイトで開催されている「国際ロボット展」の地方版として始まったもので、ものづくり県である広島の需要に期待したロボット関係企業が多く出展し、また地元産業も特徴を活かした独自技術を紹介してきました。前回は2020年2月、まだ新型コロナの影響が広がる前に開催。今回は、手指消毒、検温実施、3密(密閉・密集・密接)の回避、マスク着用などの感染対策を講じて開催されました。ここではいくつかの際だった出展社をご紹介します。

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空気圧を利用した簡単な構造で柔らかい食品をつかむロボットハンド

同展が開催された地元、広島のニッタテクノ株式会社(広島市中区)が展示していたのは、ほとんどの工場に標準で備え付けられている空気圧(エア)を利用した簡単な構造のロボットハンドです。説明してくださった同社営業部、広島営業課主任、細井誉仁(ほそい・たかひと)氏によると、不定形で大きさもバラバラ、つぶれやすい食品をハンドリングするためのハンドだそうです。

インターフェースの寸法ごとのアダプタープレートがあれば、ほとんどの規格に対応していると言います。把持の速度はエアの流量によって変えることができ、300万回の把持回数を保証しているそうです。ワークが食品だと、およそ1秒に2、3回といったところでしょう。

ハンド部の素材はウレタンゴムで、耐薬品性は熱水・合成洗剤・エタノールの使用が可能、次亜塩素酸は使用不可ということです。また、素材のウレタンゴムは、食品衛生法(食品、添加物等の規格基準、昭和34年厚生省告示第370号)に適合した柔軟なエラストマー(elastomer)だそうで、表面は滑らかで凹凸がないため、洗いやすい形状になっているそうです。

同社の親会社は大阪市浪速区にあるニッタ株式会社ですが、もともとゴムや樹脂、繊維といったソフトマテリアルの研究開発に熱心な企業と言います。工業用ロボットでは、金属やセラミックなどの硬い素材を頻繁に扱いますが、同社では柔らかい素材をハンドリングする作業に需要があるのではないかという考えからこのハンドを開発したそうです。

果物(りんごなど)、カット野菜、ハム、ロールパンといったものは5本の指で柔らかく包み込むようにハンドリングし、野菜(おくらなど)、菓子類(エクレアなど)、唐揚げ、冷凍食品などは2本の指で挟み、野菜(ミニトマトなど)や菓子類(プチシュークリームなど)などは3本の指でつまむといい、動作は空気圧のみで構造が簡単、メンテナンス性にも優れていると言います。

同社の柔らかいロボットハンド。インターフェースは1種、ハンド部は3種(ワークサイズΦ20mm~Φ140㎜)だそう。
同社の柔らかいロボットハンド。インターフェースは1種、ハンド部は3種(ワークサイズΦ20mm~Φ140㎜)だそう。

同展に出展していた川崎重工業株式会社のブースで、同社のハンドが実際にバナナを把持する様子。
同展に出展していた川崎重工業株式会社のブースで、同社のハンドが実際にバナナを把持する様子。

柔らかい製品を自動で縦向きに箱詰めするロボットシステム

地元、広島の株式会社ヒロテック(広島市佐伯区)が出展していたのは、縦詰めBOXロボットシステムです。レトルト食品などのパウチは自動で箱詰めする際に平積みされるのが一般的ですが、ユーザーから「柔らかい製品なので縦向きに箱詰めできないか」という要望があり、開発したシステムだそうです。

デモをしていたシステムに追加した機構となっており、ユーザーの既存ベルトコンベアにつなぐだけで自動化し、難しいという縦詰めを実現したそうです。専用機ではなく多様な製品に対応でき、製品の向きがバラバラでも補正して正しく箱詰めすることができると言います。

パウチ製品を縦詰めする同社のデモの様子。右のベルトコンベアから流れてきた製品をロボットが吸引して移動させ、縦向きにしていました。
パウチ製品を縦詰めする同社のデモの様子。右のベルトコンベアから流れてきた製品をロボットが吸引して移動させ、縦向きにしていました。

汎用の協働ロボットに組み合わせたトレイチェンジャー

産業用装置の開発や製造を一貫して行っている株式会社ユニテック(大阪府枚方市)が出展していたのは、汎用の協働ロボットに組み合わせたトレイチェンジャーです。説明してくださった同社技術部課長代理、山本浩之(やまもと・ひろゆき)氏によると、同社は製造ラインを含めて作業現場全体を設計することが多いそうですが、今回の出展は台湾メーカーTechMan(R)の「TechMan Robot(R)」やデンソーウェーブの「COBOTTA(R)」といった協働ロボットに使う部品供給・収納システムだそうです。

出展していたのはデモ機で、ユーザーの希望によって、コンテナ、発泡トレイ、真空成形トレイといった多種多様な材質や形状のトレイに合わせ、最適なトレイチェンジャーを提供できると言います。また、ライン設計でつちかった技術を応用し、カメラによるセンシングと取り出し、適切なハンドの設計・製作、システムを操作するためのタッチパネルなどを全体システムとして製造可能だそうです。

山本氏によると、こうしたトレイチェンジャーでは、2/100秒以内の高速でμ単位の高精度な作業が求められ、ハンドも使用状態で摩耗したりするのでメンテナンス性も高くなければならないと言います。また、自動車産業などでは100kgを超えるワークも扱うため、多様な作業環境に適応できる開発力が求められるそうです。

協働ロボットと組み合わせた同社のトレイチェンジャーによる部品供給・収納システム。こうしたシステムで難しいトレイの素材は、卵パックのような薄くて離れなくいものだそうです。
協働ロボットと組み合わせた同社のトレイチェンジャーによる部品供給・収納システム。こうしたシステムで難しいトレイの素材は、卵パックのような薄くて離れなくいものだそうです。

汎用の協働ロボット用、ワンタッチ手動式ロボットハンドチェンジャー

工作機械の治具やチャック、金型交換システムなどを製造販売している株式会社コスメック(兵庫県神戸市)が出展していたのは、最近になって多く使われるようになった汎用の協働ロボットのハンド部分につける手動式のワンタッチ・チェンジャーです。

協働ロボットなどの産業用ロボットで搬送やハンドリング、バリ取り、ネジ締めといった複数の目的の作業をさせる場合、作業ごとにハンドを付け替えるか、複数台のロボットを用意しなければなりません。同社が出展していたのは、汎用の協働ロボットでハンドの交換を容易にするためにワンタッチで行える手動式のチャンジャーです。

説明してくださった同社営業部企画・広報室室長、佐藤直人(さとう・なおと)氏によると、メカニカルインターフェースの基準形状に合わせ、マスターシリンダーとツールアダプタを組み合わせて使用するそうです。インターフェースは大きく2種類あり、COBOTTA(R)やユニバーサルロボットのURシリーズの協働ロボットに適合できると言います。

特に協働ロボットは複数の作業を行えることが特徴の一つであり、誰でも簡単にハンドの交換ができることが重要だそうです。また、ユーザーが自身で変換プレートを設計することが可能で、プレートの厚さや取り付け位相などを考慮して製作したオリジナルのハンドを使うことが可能といいます。

同社のワンタッチ手動式ロボットハンドチェンジャー。5/1000の位置再現精度を実現したそうです。
同社のワンタッチ手動式ロボットハンドチェンジャー。5/1000の位置再現精度を実現したそうです。

今回の「ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会」も前回と同様、大手の産業用ロボット企業が多く出展していました。一方で、ロボットハンドや箱詰めシステムなど、ものづくりの街としてチャレンジする地元、広島の企業の意気込みも感じられる展示会でした。

文/石田雅彦


参考情報
・TechManは、テックマン ロボット インコーポレイテッドの登録商標です。
・TechMan Robotは、テックマン ロボット インコーポレイテッドの登録商標です。
・COBOTTAは、日本電信電話株式会社と東レ株式会社の登録商標です。

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