日本と世界の自動運転はどこまで進んでいるのか~最新動向と6つの事例

現在、自動車産業は100年に一度の大変革を迎えるといわれており、世界各国で自動運転などの技術開発が活発に行われています。日本でも各自動車メーカーが自動運転システムを搭載した自動車の開発を進めていますが、それだけでなく国の政策により研究開発、実証実験が進められるなど国としても力を注いでいる分野でもあります。自動運転が普及すると交通事故、渋滞の低減だけでなく物流や新たなサービスの提供など様々な効果が期待されています。現在、自動運転はどこまで進んでいるのでしょうか。日本、世界の6つの事例から自動運転の最新動向を解説していきます。

▽おすすめ関連記事

自動運転によって解決する日本が抱える様々な課題

現在日本では、高齢者等の移動弱者の移動手段の確保や人口減少が見込まれる過疎地域における移動手段の確保、物流関係の運転者不足への対応など様々な課題を抱えています。これらの課題を解消すべく、2020年には自動運転レベル3を搭載した自動車の市場化、高速道路での移動サービスの実現を目指し、2030年までに世界一安全で円滑な道路交通社会を構築することが目標として掲げられています。具体的な取り組みとして3つの項目の自動運転システムを重点化し、2025年を目途に市場化、普及を進める計画となっています。

① 自家用車における自動運転システムのさらなる高度化
② 運転者不足に対応する革新的効率的な物流サービスの実現
③ 地方、高齢者向け無人自動運転移動サービスの実現



運転者からシステムへ、日本における自動運転6段階のレベル分け

運転には、運転者が全ての運転操作を行うものから自動車の運転支援システムが一部の運転操作を行うもの、運転者の関与なしに走行するものまで、様々な概念が存在します。
日本政府はSAE (Society of Automotive Engineers)が定めた定義に従い「自動運転レベル」0~5の6段階に分けを行っています。(参考文献1)

<自動運転レベルの概要>

レベル 呼称 概要 操縦の主体 対応する車両の名称
運転自動化なし 運転者がすべての動的タスクを実行。 運転者
運転支援 システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。 運転者 運転支援車
部分運転自動化 システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行。 運転者
条件付運転自動化 システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行。作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答する必要あり。 システム
(作動継続が困難な場合は運転者)
条件付き自動運転車
(限定領域)
高度運転自動化 システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行。 システム 自動運転車
(限定領域)
完全運転自動化 システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域内だけでなく実行。 システム 完全自動運転車

(参考文献1)「官民ITS構想・ロードマップ2020」をもとに作成

 

運転者が主体となる自動運転レベル0~2

レベル0~2までは、運転者が一部、またはすべての運転タスクを実行するため認知、判断、および予測などの操縦の主体を運転者が務めることになります。

「自動運転レベル0」 
運転自動化なし。運転者がすべての動的運転タスクを実行します。ABS(Anti-lock Brake System)や死角検知、レーンキーピング機能などは、この自動運転レベル0の範囲の技術とされています。


「自動運転レベル1」 
運転支援。システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行します。自動ブレーキやACC(Adaptive Cruise Control、定速走行・車間距離制御装置)、LKAS(Lane Keeping Assist System、車線維持支援システム) など、ブレーキ・アクセル・ステアリングのみの制御介入を行う機能などは、この自動運転レベル1の範囲の技術とされています。
【例】
 ①自動で止まる
 ②車線をはみ出さない
 ③前の車について走る


「自動運転レベル2」 
部分運転自動化。システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行します。前車追従機能などの個々の運転支援機能などは、この自動運転レベル2の範囲の技術とされています。
【例】高速道路での自動運転モード機能
 ①遅い車がいれば自動で追い越す
 ②高速道路の合流を自動で行う


システムが主体となる自動運転レベル3~5

レベル3~5は自動運転システムが(作動時は)全ての動的運転タスクを実行することになります。

「自動運転レベル3」
条件付運転自動化。システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行します。作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答する必要があります。

「自動運転レベル4」
高度運転自動化。システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行します。

「自動運転レベル5」
完全運転自動化。システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域内だけでなく実行します。


法律が変わり走行可能となった自動運転レベル3

2019年に改正された道路交通法が、2020年4月から施行されました。新たに自動運行装置について定義され、自動運行装置を用いた公道の走行も運転と定められました。これにより一定の条件下において運転者の操作が不要となり、レベル3の自動運転が可能となりました。また、装置を使用する運転者への義務などが規定されました。システムからの警報が鳴った場合には直ちに通常運転に戻る必要があります。さらに自動運転作動状態の記録、保管が義務付けられました。道路交通法に違反する動きをした場合、自動運転が作動中か否かを確認するために使用されます。レベル3の自動運転で公道を走行できるようになりましたが、自動運転をしているからと言って油断せずに常に通常の運転に戻れるよう注意が必要です。(参考文献2)

 

身近になりつつある日本の自動運転、3つの事例からみる最新動向

1.自動運転レベル3型式認定、ついに発売される自動運転車/自動運転レベル3

Hondaは2020年11月に自動運転レベル3の型式認定を国土交通省から取得したことを発表しました。自動運転レベル3の実用化を国が認可したのは世界初です。(参考文献3)
そして2021年3月にHonda SENSING Eliteが搭載されたレジェンドが発売されました。Honda SENSING Eliteには、ハンズオフ機能、トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)、緊急時停車支援機能などの様々な特徴があり、高速道路渋滞時などの一定の条件下において、システムがドライバーに代わり運転操作を行うことができます。これらの機能を実現するために、様々なセンサーを車両に搭載することで周囲360°の状況を高精度で把握し、車内にはドライバーの顔の向き、目の開閉を検知して、システムからの操作要求に対応できるか判断するといった様々な技術が用いられています。(参考文献4)
今回発売されるレジェンドは100台のみの限定生産となっていますが、これから自動運転車が私たちにとって身近なものになる日が近づいているかもしれません。


2.国内初、自治体で自動運転バスの公道運行が実用化される/自動運転レベル2

ソフトバンク系列の企業「BOLDLY(旧社名・SBドライブ)」は茨城県境町で自動運転バスの運行が計画しされています。当初の計画では2020年4月から運行予定でしたがコロナウイルスの影響により秋へと延期されていました。バスはフランス製の「NAVYA ARMA」が使用されます。車両にハンドルはなく、11名(運行時、走行に不都合が生じた際に車両を手動でコントロールするオペレータと周囲の安全を確認する保安要員の2名を含む)、最大速度25キロ、一度の充電で平均9時間の走行が可能です。境町では高齢化に伴って電車や駅の不足、バスやタクシードライバーの不足が課題となっており、自動運転バスの導入による効果が期待されています。今回の自治体での導入をきっかけに全国各地でも導入が検討されるかもしれません。(参考文献5)


3.労働力不足を解消、物流を変える自動運転技術/自動運転レベル2

近年、インターネットを用いた通信販売が日常的になり、それに伴いトラックによる輸送も増えてきました。しかし、トラックのドライバーは他の産業と比較して長時間労働・低賃金とされており、ドライバー不足は深刻な問題となっています。そこで注目されているのが自動運転によるトラックの隊列走行です。先頭車にはドライバーが乗車し、後続車一体操作機能などの様々な技術を用いて隊列走行を行います。2021年2月には豊田通商が新東名高速道路の遠州森町PA~浜松SAの約15km の距離において、トラックの後続車無人隊列走行を実現しました。今回実現した後続車無人隊列走行では、3台の大型トラックが時速80km、車間距離約9mを保ちつつ走行しました。開発された後続車無人システムでは、先頭車追従制御と車間距離維持制御の2つの制御が使用されています。(参考文献6)


トラック隊列走行のイメージ
トラック隊列走行のイメージ


世界の自動運転実現への取り組み、3つの事例からみる最新動向

自動運転は日本だけでなく世界でも開発や実験に注力している国々が多く存在します。それぞれの国でどのような開発、実験が行われているのでしょうか。各国で自動運転の定義は異なるため、本記事では日本の自動運転レベルの定義に従いご紹介します。


4.アプリで呼べる自動運転配車システム「Waymo One」/アメリカ,自動運転レベル4

2018年ウェイモ(Waymo)は世界の各社よりも一足早く、補助員が乗車するという条件付きではありましたが自動運転タクシーのサービスを一部地域で開始しました。従来のタクシーサービスと同じようにアプリ「Waymo One」で乗車位置、目的地を指定するとタクシーが配車され、乗車後はボタンを押せば目的地まで運んでくれるというものでした。そのわずか1年後の2019年には補助員を同乗させない状態での自動運転タクシーのサービスの試験を開始しました。そして2020年10月に一般向けに完全無人車両での自動運転配車サービスを開始することが発表され、現在は同社車両の5~10%が完全無人運転を行っており、秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement 、NDA)を結んだ少数のユーザーのみが利用できるようです。(参考文献7)


ウェイモの自動運転タクシー
ウェイモの自動運転タクシー


5.自動運転システムの開発ペースを加速させる自動運転基盤「Apollo」/中国,自動運転レベル4

自動運転基盤「Apollo」とは、インターネット検索を主力事業とするバイドゥ(Baidu,百度)がリリースしたAI技術を融合した自動運転車オペレーションシステムです。Apolloはオープンソースとしてだれでも利用することができ、2019年時点で97カ国、2.4 万人以上の開発者、150社以上の企業が参画しています。2017年4月にApollo1.0がリリースされ、2019年7月にはApollo5.0がリリースされました。Apollo5.0では、限定地域向け自動運転車の量産化バージョンがリリースされています。Apolloを利用した自動運転車には様々な車種が出てきており、無人バス、無人販売車、無人清掃車などのあらゆる利用シーンの自動運転車に利用されています。バイドゥはレベル4の試験許可を中国で初めて取得した企業で、自動運転業界をリードする企業の一つとなっています。(参考文献8)


6.無人で自動駐車 ドイツで導入される自動バレーパーキング(AVP)/ドイツ,自動運転レベル4

2020年10月、ドイツの自動車大手ダイムラー(Daimler AG)、自動車部品ボッシュ(Robert Bosch GmbH)、駐車場運営APCOA Parkingは無人で自動駐車を行う自動バレーパーキング(Automated Valet Parking、AVP)の実験をシュツットガルト空港パーキングビルで行うことを発表しました。新型のメルセデス・ベンツSクラスが対象車両となっており、この車両はすでに将来のインフラ協調のAVPに必要な技術を備える世界初の量産車として、AVPに対応しています。AVPを利用するにはまず、スマートフォンからアプリで駐車予約をし、AVP専用の乗降場所に車を停めます。駐車場内にはボッシュのビデオカメラが設置され、空いている駐車スペースを識別し、走行通路とその周囲をモニターすることで通路内の障害物や人間を検知します。さらに駐車場内の専用コントロールセンターが、利用可能なスペースへ到達するために車両が通るべきルートを計算します。これによって車が無人で予約した駐車場まで自動走行し、利用者は駐車を見届けることなく空港に向かうことができます。AVPを利用すると狭く、遠く離れていて人々が避けるような魅力のない駐車スペースの有効活用が可能になり、収容可能な車両数も20%程度増えるとされています。(参考文献9)


自動バレーパーキングのイメージ
自動バレーパーキングのイメージ


自動運転レベル5の実現には、なぜ5G技術の大容量・低遅延・多接続通信が必要不可欠なのか

完全自動運転化のレベル5では認識、認知、判断、制御の4つのプロセスがあるといわれています。

・認識:車載カメラやセンサーから情報を取得し、人、車、障害物などを検出する。
・認知:認識した画像情報から自車の走行環境を認知する。高精度地図やGPSの位置情報から自車の位置を推定する。
・判断:AIを用いて認知した自車の運転状況などから運転経路をきめる。
・制御:運転経路に従ってアクセルやブレーキなどを制御する。


完全自動運転では車載カメラやセンサーから認識した情報をもとに自車の走行環境や位置を認知します。認知で使用される高精度地図は道路や建物など変化の少ない情報から周辺車両や歩行者などの常に変化するような情報まで記録され、このようなデータを常に更新する必要があります。さらに信号や周囲の自動車を認知するために多くのセンサーを使用していますが、1台に搭載されたセンサーによる情報のみでは限りがあるため、複数の車両との情報を共有することが想定されます。これらの情報をもとにAIが運転航路を判断し、アクセルやブレーキを制御します。この4つのプロセスを一瞬にして行うためには5Gの大容量・低遅延・多接続通信が必要になってくるのです。


まとめ

自動運転技術の発展が進むと普段私たちが運転する車の負担を軽減するだけでなく、バスやタクシー、生活を支える物流など、幅広い範囲への効果が期待されています。2020年には日本でついに自動運転レベルの型式認定がされ、自動運転が私たちにとって少しずつ身近なものになってきました。さらに自動運転が普及していくには安全性や信頼性、道路などの環境整備、法律の整備などの課題が残っていますが、世界各地では様々な実証実験が行われており、自動運転の実現に向けて日々研究が進められています。この先、自動運転技術がどのように発展していくのか注目です。


▽参考文献

参考文献1:『官民ITS構想・ロードマップ2020』(政府CIOポータル – Government Chief Information Officers’ Portal, Japan20207

参考文献2:『ついに日本で走り出す! 自動運転レベル3”の車が走行可能に』(政府広報オンライン)20203

参考文献3 世界初! 自動運転車(レベル3)の型式指定を行いました』(国土交通省)202011

参考文献4:『 Honda SENSING Elite 搭載 新型「LEGEND」を発売』(本田技研工業株式会社)20213

参考文献5『自治体として初めて、茨城県境町が自動運転バスの定常運行を開始』(BOLDLY株式会社)202011

参考文献6:『高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術を実現』(豊田通商株式会社)20213

参文文献7:『Waymo is opening its fully driverless service to the general public in Phoenix(和訳:Waymoは、フェニックスで完全自動運転サービスを一般に公開しています)』(Waymo202010

参考文献8:『中国の自動運転業界を解説:戦国時代の覇者をめざすバイドゥの自動運転基盤「Apollo」【唐徳権の中国デジタル事情】』(SB クラウド株式会社)20198

参考文献9:『シュトゥットガルト空港、ドライバーレスの完全自動駐車の受け入れ準備を推進』(ボッシュ株式会社)202010

 

 

▽おすすめ関連記事

こちらの記事もおすすめ(PR)