『第35回 ネプコンジャパン/第13回 オートモーティブワールド』現地レポート(前編)

ネプコンジャパンとオートモーティブワールドは、東京と名古屋で年に2回、開催されてきた展示会です。

ネプコンジャパンは、エレクトロニクス関連技術・素材・検査などの企業・団体が出展し、エレクトロニクス検査・試験・測定のエレクトロテストジャパン、プリント配線板、電子部品・材料、半導体・センサー、エレクトロニクス業界向けの微細加工の併設展示会があります。

一方、オートモーティブワールドは自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化といった自動車業界における技術に関する企業・団体が出展し、カーエレクトロニクス、EV(Electric Vehicle)・HV(Hybrid Vehicle)・FCV(Fuel Cell Vehicle)、軽量化、自動運転、部品加工などの併設展示会があります。CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)、MaaS(Mobility as a Service)といった展示も増えている傾向にあります。

このようにエレクトロニクスと自動車という、大きな2つの分野をまとめて開催されているのがこの展示会の特徴です。そのため、前編でネプコンジャパンを中心にしたエレクトロニクス関連分野、後編でオートモーティブワールドを中心にした自動車関連分野とロボティクスに分け、特に目についた出展・団体の展示内容をご紹介します。

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「単層グラフェン」と、印刷特性を有する「導電性銅ナノインク」

創業1900年の金属表面処理剤を中心にした化学薬品メーカー、石原ケミカル株式会社(神戸市兵庫区)のブースには、同社が多くの知的財産権をもつグラフェンパウダーに関連した展示がありました。グラフェンとは2010年にノーベル物理学賞を受賞した材料で、単層グラフェンは、透過率97.3%という光学的な特性をもち、銅の10倍以上という高い熱伝導性、銅や銀より低い電気伝導性(抵抗値は約10-6Ω・㎝)、鉄の100倍以上という高い引張係数(約1TPa)、ガスや電磁波へのバリア・シールド性、耐腐食性というさまざまな特性をもつ材料だそうです。

こうした特性のため、リチウムイオン電池の導電助剤など電池・キャパシタに使われたり、放熱材料として塗料などに使われてきたと言い、同社の単層グラフェンの生産量は年間約1,000tにもなるそうです。

また同社ブースには同社の研究開発によって誕生した導電性銅ナノインクも展示されていました。これはナノサイズの銅パウダーに、ポリイミドやPET、セラミックなどの、基盤上に回路形成をするようなプリンテッドエレクトロニクスに求められる印刷特性をもたせ、大気下・室温・短時間での焼成後には純銅に近い比抵抗率を得られる機能性インクとして使用することを可能にしたものです。これにより、プリント基板上に銅回路を配線するインクジェット印刷、ハードコートPET上の銅回路を配線するグラビアオフセット印刷などが実現できます。

また同じ技術を応用すると、200℃を超える高温での動作が求められるパワーデバイスで、焼結型銅接合材料として半導体の基板に接合するダイアタッチ(ダイボンディング)に使うことができるそうです。銅だけのペーストのためRoHS(Restriction of Hazardous Substances Directive、危険物質に関する制限令)指定物質を含まず、180W/mK以上という高い熱伝導率が期待でき、ダイアタッチ強度も40MPa以上、耐熱性(1,000℃以上)も高い材料として期待されています。

石原ケミカル株式会社の導電性銅ナノインクの展示。スクリーン印刷などの用例が紹介されていました。
石原ケミカル株式会社の導電性銅ナノインクの展示。スクリーン印刷などの用例が紹介されていました。

従来の熱電対測定や放射温度計が使用困難な工程で使える「熱状態測定システム」

アセイ工業株式会社(神奈川県厚木市)が出展していたのは、新規開発したという熱電対を使わない熱状態測定システムです。説明してくださった同社代表取締役、小田代健(おだしろ・たける)氏によると、液晶や半導体、ガラスなどの製造分野では1,000℃に達するような条件で熱処理が行われていますが、そうした製造工程での温度管理、温度測定に多く使われている熱電対測定や赤外線放射温度計によるものは、例えば熱電対には配線処理が必要で搬送式の工程で使えなかったり、赤外線放射温度計は密閉された工程では使えないなどの問題があったそうです。

そこで同社は神奈川県などと協力し、製品の近くにラベルや測定具を配置することで搬送中や密閉工程でも柔軟に温度測定することのできる技術を開発したと言います。神奈川県と特許を出願している測定システムは400℃から1,000℃までに対応し、シリコンや石英などの絶縁基板にATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(スズドープ酸化インジウム)といった酸化被膜のチップを貼って加熱、それを取り出し、光の透過量や抵抗値を測定することで温度を測定します。また、250℃から500℃まで測定できる機器では、コードレスで炉内などの熱の分布を測定していますが、加熱時の熱の状態をチップに記憶し、それを取り出して計測し、数値化するそうです。

アセイ工業株式会社の高温度測定システム。ATO(アンチモンドープ酸化スズ)の被膜は加熱によって結晶欠陥が縮小し、透過率が増加します。その後、キャリア電子が増加することで近赤外波長の反射や吸収も増加し、透過率が減少します。こうした現象を演繹的に測定することで加熱された履歴を逆算できるそうです。
アセイ工業株式会社の高温度測定システム。ATO(アンチモンドープ酸化スズ)の被膜は加熱によって結晶欠陥が縮小し、透過率が増加します。その後、キャリア電子が増加することで近赤外波長の反射や吸収も増加し、透過率が減少します。こうした現象を演繹的に測定することで加熱された履歴を逆算できるそうです。

この測定技術の原理には、例えば、基板上の薄膜の反射率が受けた温度の履歴によって低下する現象を利用し、逆算して最高到達温度を推定することができる現象を使っていたり、石英の基板上にATO(アンチモンドープ酸化スズ)で皮膜した場合に、被膜の近赤外波長の吸光度が加熱温度や加熱時間によって変化する現象を利用し、高温領域での加熱温度や加熱時間を特定したりしていると言います。

同社では、ワークと一緒にチップを炉内などに入れ、加熱された温度の履歴を記録したチップを取り出し、硬さを測定することでその硬さから加熱温度を特定するという測定システムも開発中。これは500℃から1,000℃まで対応できるようになっているそう。
同社では、ワークと一緒にチップを炉内などに入れ、加熱された温度の履歴を記録したチップを取り出し、硬さを測定することでその硬さから加熱温度を特定するという測定システムも開発中。これは500℃から1,000℃まで対応できるようになっているそう。

独自のセラミック技術を応用した半固体電池と呼ばれる「リチウムイオン二次電池」

日本ガイシ株式会社(名古屋市瑞穂区)のブースでは、同社が独自に開発したというリチウムイオン二次電池が出展されていました。電極に特殊な結晶配向(エピタキシャル成長によって方位がそろった単結晶)セラミックス板を用い、従来のセラミックス製品に使われる結合剤の有機バインダーや電極の抵抗を抑える導電助剤を含まずにリチウムイオン二次電池を作ることに成功したそうです。こうした材料を含まないため、従来より小型・薄型でありながら高容量(同サイズの市販二次電池の約2倍)・低抵抗(同1/2以下)を実現し、電極の成形に有機材料を使用していないため高温プロセスでの実装も可能になったと言います。

この電池の原理はリチウムイオン二次電池だそうですが、正極に前述した結晶配向セラミックス電極板を使うことで、同社が「半固体電池」とよぶ新しいコンセプトの電池を開発したそうです。この正極は結晶の向きを揃えて焼結したセラミックス材料に少量の電解液を染み込ませ、電極内をリチウムイオンや電子が移動しやすくしていると言います。

同社の説明によれば、物流用の柔軟なフレキシブルタグ向けカード実装タイプ、ICやセンサー、無線通信向けのコイン・タイプのものがあり、数十から数百mAの大電流を流せるオンボート・タイプの小型薄型電池として提供していくそうです。また、定電圧充電ができるため電流を制限するための充電用ICが不要で、高い耐熱性が期待できるため、車載機器や屋外使用での応用が期待できるそうです。

日本ガイシ株式会社のリチウムイオン二次電池の展示。大容量・高出力・高耐熱という特徴のため、非常にメンテナンス性の高い電源となると言います。
日本ガイシ株式会社のリチウムイオン二次電池の展示。大容量・高出力・高耐熱という特徴のため、非常にメンテナンス性の高い電源となると言います。

高い光学吸収性、帯電防止性を有する「防錆黒色皮膜技術」

レイデント工業株式会社(京都府久世郡)はその名の通り、0℃以下で電気メッキ的に合金的な金属材料面を作り出す特殊表面処理技術、レイデント(raydent)処理(R)を開発した会社です。防錆黒色皮膜であるレイデント処理は、同社によると10年以上の防錆効果があるとされ、対象物の屈曲などにも強く、剥離しにくいという特徴があるそうです。

同社が出展していたのはレイデント処理を施した巨大な液晶ガラス用の真空吸着治具(ボード)です。同社によれば、膜厚は標準で7〜10μm、光学吸収性に優れた黒色で帯電防止性、準導電性の高い特徴をもつそうです。黒色なのは、液晶ガラスのエッチング処理のためと言い、6年間で約2,000枚の加工実績があります。

レイデント工業株式会社が出展していたレイデント処理(R)を施した液晶ガラス用の真空吸着治具(ボード)。
レイデント工業株式会社が出展していたレイデント処理(R)を施した液晶ガラス用の真空吸着治具(ボード)。

エッジAI技術を用いた「マイクのノイズキャンセリング機能」

イアフレド株式会社(大阪市中央区)が株式会社パルテック(PALTEK)(横浜市港北区)と共同出展していたのは、AIによる通話のノイズキャンセリング機能をもったワイヤレスイヤホンです。ノイズキャンセリング・ヘッドフォンは広く普及していますが、技術開発したイアフレドの代表取締役社長、田坂修一(たさか・しゅういち)氏によると、AIによる通話、つまりマイクのノイズキャンセリング技術は世界でも例がなかったと言います。

田坂氏は、これまでデジタルオーディオの研究開発やDVDフォーマットの開発をしてきたそうで、今回の製品は台湾のIntelliGo社のエッジAI(端末のAI)技術を用いて人の声とノイズを判別させ、遠隔会議や作業現場など雑音の多い場所でも相手からの音声をクリアに聞き取ることができるようにしたそうです。また、9軸センサー、温度(体温)センサーといった生体センサーによってエッジ端末でイヤホン使用者の状態をセンシングし、Bluetoothによってクラウド上で管理・分析することで作業員の体調や安全対策などの労務管理をすることも可能だそうで、将来的には脈拍を測る機能も加える予定だと言います。

マイクのノイズキャンセリング機能をもってクリアな通話を可能にしたイアフレド株式会社と株式会社パルテックのイヤホン。連続通話時間は約7時間、充電時間は約2時間、通信距離は最大10mだそうです。
マイクのノイズキャンセリング機能をもってクリアな通話を可能にしたイアフレド株式会社と株式会社パルテックのイヤホン。連続通話時間は約7時間、充電時間は約2時間、通信距離は最大10mだそうです。

コロナ禍の中のお台場(ビッグサイト)で開催されたネプコンジャパンとオートモーティブワールドでしたが、前回(2020年)とほぼ同じ会場を使い来場者も前回の半分以下だったものの、実際に現場にいた感覚ではそれよりも多い印象がありました。後編では自動車やロボット関連の出展を中心にオートモーティブワールドを紹介します。

文/石田雅彦



参考情報
・レイデント処理は、レイデント工業株式会社の登録商標です。


《後編に続く》

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