『第6回 沖縄海洋ロボットコンペティション』現地レポート(前編)

沖縄海洋ロボットコンペティションが、2020年11月7日、8日に沖縄県宜野湾市にある宜野湾新漁港で開催されました。2015年の第1回大会から数えて6回目の大会となるこのコンペティションは、実際の海でロボットの実機が競技する世界的にも珍しい大会で、海洋産業における海洋ロボット分野の研究・開発・教育を活性化させるために行われてきました。

ここは海洋ロボットの研究開発をしている大学や工業高等専門学校、職業能力開発大学校といった高等教育機関、企業の発表の場として、また沖縄の海洋資源関連産業や海洋ロボットの可能性についての理解を深める場ともなっています。大学・大学校10校、19台の海洋ロボットが参加し、コロナ禍の中で開催された第6回、沖縄海洋ロボットコンペティションの様子を前編後編の2回に分けて紹介します。


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「沖縄海洋ロボットコンペティション」の競技部門と参加チーム

コンペティションの会場は、那覇市からバスで1時間ほどの場所にある宜野湾市の漁港です。以前は那覇市波の上うみそら公園の海岸で開催されていましたが、2017年の第3回コンペティションから現在の宜野湾新漁港で行われるようになりました。

初日である2020年11月7日に大会会場の宜野湾新漁港に隣接した宜野湾マリン支援センターで開会式が開かれ、大会長の沖縄職業能力開発大学校の高良富夫(たから・とみお)校長による開会の挨拶とともに大会が開幕しました。当日は参加者が練習潜航(試走)をし、ロボットの最終調整に余念がないようでした。


会場で練習潜航(試走)に臨む海洋ロボット。これはROV(Remotely Operated Vehicle、遠隔操作型無人潜水機)部門に参加する福山職業能力開発大学校の「hippy」というロボット。
会場で練習潜航(試走)に臨む海洋ロボット。これはROV(Remotely Operated Vehicle、遠隔操作型無人潜水機)部門に参加する福山職業能力開発大学校の「hippy」というロボット。


前日の11月6日には、現地とオンラインのハイブリッドで「水域ロボットシンポジウム」が開催され、海や河川などの水域に関係する産業を振興するためにロボティクスとIoTはどう関わるべきかといった議題について、研究者らの間で活発に議論が行われました。浅い海での音響通信技術、自律型海中ロボットを使った水産資源の調査などやロボットを使った水域産業の実現シナリオについて講演されました。

本大会のコンペティション競技は、AUV(Autonomous Underwater Vehicle、自律型無人潜水機)部門とROV(Remotely Operated Vehicle、遠隔操作型無人潜水機)部門、フリースタイル部門、知能・計測チャレンジ部門(AUVタスクとROVタスク)の4部門で競われます。

AUV部門には沖縄職業能力開発大学校、九州工業大学、琉球大学の3校3台が、ROV部門には福山職業能力開発大学校、沖縄職業能力開発大学校、愛知工業大学(2チーム)、島根職業能力開発大学校(2チーム)の4校6台が、フリースタイル部門には東京工業大学、長崎大学(2チーム)、愛知工業大学(4チーム)、九州職業能力開発大学校、北九州工業高等専門学校の5校9台(うち新型コロナウイルスの影響による遠隔参加が3校)が、知能・計測チャレンジ部門はROVタスクに1校1台が参加しました。また、知能・計測チャレンジのAUVタスク部門は天候悪化などのため、決勝での競技が中止されました。


開会式の様子。参加したチームに開会を宣言する大会長の高良沖縄職業能力開発大学校校長。
開会式の様子。参加したチームに開会を宣言する大会長の高良沖縄職業能力開発大学校校長。


各競技部門のルールと、競技会場が海水ならではの技術的工夫

実行委員の琉球大学工学部の大城尚紀(おおしろ・なおき)准教授によれば「回を重ねるごとにレベルが向上している」そうです。出場チームは主に大学や工業高等専門学校、職業能力開発大学校といった教育機関、特に沖縄での開催ということで西日本の学校が多くなっていますが、過去には中学生チーム(沖縄県南城市立大里中学校、第1回の特別賞受賞)や神奈川県からアプリケーション開発会社(有限会社イケハウス、第2回の特別賞受賞)が参加したこともあったと言います。

コンペティションのレギュレーションは、完成された市販品以外のロボットを使用(知能・計測チャレンジ部門は市販品でも可)、AUV競技は自律制御方式のみ(スタート位置までの移動を無線遠隔制御するのは可)、ROVは遠隔操作方式、無線はホビー用ラジコンの割り当てられた周波数のみ、ロボットの重量は45㎏未満、筐体許容寸法は縦2,000㎜、横1,500㎜、高さ700㎜以内などと指定されています。

実際に参加チームのロボットを見ると、円筒型(島根職業能力開発大学校、チームくにびき)あり、ウミガメ型(愛知工業大学、Team Blue δ)あり、オール推進型(愛知工業大学、チームAIT海洋チャレンジ)ありと多種多様でした。オールで推進する「albero」というロボットを開発した愛知工業大学のAIT海洋チャレンジチームの学生によれば、秒速50㎝で推進できるはずだと言います。

競技会場は、沖縄県宜野湾市の海面へのスロープがついた漁港(宜野湾新漁港)で、AUV部門の競技エリアは幅約15m、長さ約55m、ROV部門は幅約5m、長さ約20mの海面と海中です。各部門ともチームの競技持ち時間は5分、予選を2回行い、その合計点で順位が決まります。


ROV部門に参加する島根職業能力開発大学校「SEA LINE」チームのワークショップ・プレゼンテーションの様子。オンラインによる審査員からの質問に答えています。
ROV部門に参加する島根職業能力開発大学校「SEA LINE」チームのワークショップ・プレゼンテーションの様子。オンラインによる審査員からの質問に答えています。


水の流れなどのノイズの少ないプールと比べ、海水の透明度も低く、太陽光の反射や波、海流などの影響が大きい、実世界での競技が求められる本コンペティション。実際に土曜日の練習潜航では、参加者の何人かから「テストで動かすとうまくいくのに、競技会場では勝手に起動したり海流に押し戻されて推進できない」などという声を聞きました。光センサーでロボットを制御する方法を採用した琉球大学工学部の学生は、太陽光で光センサーが反応しないように急きょプログラムを書き直したそうです。

自律型無人潜水機を使うAUV部門の得点は、それぞれ点数が振り分けられた5つの課題の達成度とワークショップでのプレゼンテーションの点数で決まります。スタート地点から自律制御が継続され、スタート・ゴール(SG)区域から潜水浮上区域へ海上を航行し、その後潜航して潜航時間を計測し、海上航行区域へ移動して浮上、その後また潜航して潜航時間を計測し、潜水浮上区域からSG区域へ海上を航行します。

遠隔操作型無人潜水機を使うROV部門の得点は、海上(岸壁)と海中に設置された4つの目標物(数字とQRコード、25点ずつ100点満点)の認識判読とワークショップでのプレゼンテーションによって決まります。数字は5×5マスの2桁の数字を読み取り、QRコードに隠された言葉を読み取ります。


水中に設置された数字とQRコード。各課題の大きさはA4サイズで数字の表はそれぞれ約15㎝角。
水中に設置された数字とQRコード。各課題の大きさはA4サイズで数字の表はそれぞれ約15㎝角。


フリースタイル部門は、自由なアイデアで作った海中ロボットの実機の実演の様子を撮影した動画(5分以内)を提出し、実演の様子と実機の開発コンセプトと機能についてワークショップでプレゼンテーションして評価します。今回のコンペティションでは、完全オンラインでの競技となり、初日2020年11月7日の午前中にオンラインのビデオ審査を終えました。


今年の目玉競技は5連覇中の大学チームの行方

知能・計測チャレンジは、市販のロボットも使用可(INS(Inertial Navigation System、慣性航法装置)やDVL(Doppler Velocity Log、ドップラー速度ログ)など市販ナビゲーションの使用は不可)で、自律型無人潜水機を使うAUVタスクは海中測位を新たに開発し、約30m離れたランドマーク(ピンガーあり)までを往復し、その到達度で競います。ただし、ランドマークのピンガーを使うと得点が1/2になるため注意が必要です。なお今回は、天候不良により知能・計測チャレンジのAUV部門は中止になりました。

知能・計測チャレンジで遠隔操作型無人潜水機を使うROV部門は、遠隔操作と自律的な運動制御を組み合わせたタスクです。指定された海中の壁面(岸壁)に設置された擬似的な傷(深度0.2mから1m、大きさ0.25m×0.25m)まで遠隔操縦でロボットを移動させ、カメラで傷をとらえたら自律的運動制御に切り替えます。その後、30秒間観測して画像を録画してから自律制御を解除し、10秒間の間隔を開けて再び自律観測を行うという動作を3回繰り返し、その達成度を評価します。

実行委員の大城氏によると、これまでAUV部門では沖縄職業能力開発大学校のチームが作ったロボット(第1回から第5回まで最優秀賞)が、ROV部門やフリースタイルでは長崎大学工学部のチームのロボット(第4回の優秀賞、第5回の最優秀賞)が、フリースタイル部門では長崎大学工学部のチームのロボット(第2回の最優秀賞、第3回の優秀賞、第4回、第5回の最優秀賞)が優秀な成績をあげてきたそうです。また第5回コンペティションから始まった知能・計測チャレンジでも長崎大学工学部のチームが最優秀賞を受賞しています。

大城氏によると、関係者の間では、大会が始まって以来AUV部門で最優秀賞の受賞し続けている沖縄職業能力開発大学校チームの連覇をどのチームが崩すのかに注目が集まっていると言います。また、今回のコンペティションでは新型コロナウイルスの影響もあり、実際の競技参加から動画とワークショップでのプレゼンテーションを競うフリースタイル部門へ参加変更したチームもいくつかあったそうです。

コンペティションでは、初日に練習潜航と技術プレゼンテーションの評価、最終日である2日目に2回の競技と決勝、表彰式が行われました。初日の練習潜航では、海中でロボットを運んだりスタートまでロボットを支えたり回収したりするためのダイバーたちも参加し、参加者が最後の調整をしていました。


黒のウェットスーツを着用したダイバーは運営スタッフとして参加した地元の学生や土木会社のボランティア。
黒のウェットスーツを着用したダイバーは運営スタッフとして参加した地元の学生や土木会社のボランティア。


次回後編では、雨の中行われた大会2日目の競技の様子と結果をレポートします。沖縄特有の激しい雨の中、参加者、大会スタッフがなんとか競技を続け、実際の海という環境で各部門の最優秀賞と優秀賞、審査員特別賞、敢闘賞が決まります。


文/石田雅彦

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