『SURTECH 2021 表面技術要素展』 現地レポート

2020年12月9日~11日に、東京ビッグサイトにて開催された、表面処理・表面改質の専門展「SURTECH 2021 表面技術要素展」では表面処理技術・加工装置をはじめ、表面処理薬品、分析技術・サービス、周辺機器など、表面処理に関するさまざまなモノとサービスが展示されていました。

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耐食性・耐摩耗性が優れた「無電解ニッケルめっき」技術

仁科工業株式会社 技術課課長 谷川武氏
仁科工業株式会社 技術課課長 谷川武氏

1946年に米国で発明されて以来、世界各国で改良され、急速な発展を遂げてきたニッケルめっき。今やなくてはならない表面処理の技術として、重要な役割を担っています。

同展示会に出展していた、仁科工業株式会社はニッケルめっきの中でも「無電解ニッケルめっき(Ni-P)」の処理技術に強みを持った企業です。

無電解ニッケルめっきは、ニッケル塩の水溶液に還元剤として次亜リン酸ナトリウムを加え、適当な緩衝材を用いてpHを適当に保ち、90℃以上に温めためっき浴の中に鉄およびニッケルなどの周期律表の鉄族元素を浸透すると表面にニッケルめっきができる、というもの。当初はめっき速度が比較的遅い、液が不安定で寿命が短い、コストが高いなどの難点があり、実用には至りませんでした。

しかし、その後改良を重ね、現在は被めっき物が触媒となって還元反応を起こし、液中のニッケルイオンを還元して表面にニッケル合金をめっきする形となっています。

仁科工業株式会社 技術課課長の谷川武(たにがわ・たけし)氏は「この方法は幅広い金属に対応できる、被めっき物の形状を問わない、均一性が高い、厚み指定が自由にできる、密着性が良い、耐食性・耐摩耗性が良いといったメリットがあります」と言います。

また、昨今は金属材料に対する機能要求が多様化し、単一の材料では対応できない場合も増えてきています。そうした中、複数の材料が持つ特性を組み合わせた「複合材料」の開発が行われ、表面処理分野でも「複合めっき」の開発が進んでいます。

複合めっきは、液中に微粒子を分散させ析出する金属表面に微粒子が吸着し、金属マトリックス中に共析するめっき法。代表的なものが「無電解 Ni-P PTFE めっき」です。

これは通常の無電解 Ni-P皮膜中にポリテトフラルオロエチレン(PTFE)微粒子を均一に共析させるめっき施工。皮膜は潤滑性、撥水性、撥油性、耐摩耗性、非粘着性などの特性を持ちます。仁科工業は無電解ニッケルめっきのほか、無電解 Ni-P PTFE めっきにも強みを持っており、低含有タイプ(5〜10vol%)と高含有タイプ(20〜25vol%)の2種類を保有しています。

「数ミリ単位の小型部品から重量20トン級の大物まで対応できるのが仁科工業の強みでもあります。この規模に対応できるのは国内で数社しかありません」(谷川氏)

同社の技術は自動車部品や電子部品、航空部品など、幅広い産業で活用されています。

アルミ特有の光沢と触感を保ちながら高耐食性の「アルマイト処理(陽極酸化処理)」

奥野製薬工業株式会社のアルミニウム表面処理
奥野製薬工業株式会社のアルミニウム表面処理

自動車やスマートフォン、家電などのさまざまな産業分野に欠かせない表面処理技術の総合メーカーとして知られる奥野製薬工業株式会社。同社の数ある技術の中でも高い評価を受けているのがアルミニウムの表面処理、アルマイト処理(陽極酸化処理)です。

アルミニウムの表面処理はアルミの表層にまず酸化皮膜をつくりそこに着色するため、硬度が高く塗装のように塗膜がはがれることがありません。そのため、長期にわたって美しい発色を保つことができます。同社の総合技術研究所企画開発部 副主事の山中美由紀(やまなか・みゆき)氏は同社の特徴をこう語ります。

「私たちは表面処理の前に、基本の33色をベースにクライアントとイメージをすり合わせながら、丁寧に調色プロセスを積み重ねていくのが特徴です。例えば、黒染めは深遠な漆黒、青みがかった黒、ラグジュアリー感あふれる黒、と色のバリエーションは限りなく広いため、探し求める色を創り出すためには、納得するまでとことん突き詰めていくプロセスを取り入れています」(山中氏)

また、奥野製薬工業は色をつくりだす工程だけでなく、それを定着させる技術にも長けているとのこと。「アルミ特有の美しい光沢と触感を保ちながら、長く色あせない発色を実現させるには、アルミ筐体の下地処理から研磨などの全工程において高い技術が必要となります。アルミニウム表面処理剤の開発製造、前処理から後処理まで全プロセスをご提供しているのは、国内外において私たちだけだと思います」と山中氏は語ります。

さらに、同社はサステナブルな社会を実現するために、リン酸、硝酸を含まないアルミニウム用表面処理剤の開発のほか、人に優しい製品づくりのために、ニッケルフリー封孔剤の研究も進めているとのことです。

ヒートポンプとの組み合わせにより省エネで「水を熱に交換」

ここ数年で、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」への対応の重要性が高まっていることから、本展示会でも「環境に配慮」したサービスが目立っていました。

例えば、1947年に工業用電熱機器の製造所として創業した谷口ヒーターズ株式会社もそのひとつです。同社は投込ヒーターと潜水ヒーターなどの製品を開発・販売していますが、新たに熱交換器技術に定評のあるドイツ・EKTが開発した水熱交換器機「サーモジーニアス」の正式代理店に認定。2021年2月にデモ実験場を開設する予定です。

サーモジーニアスは海や河川、湖、池、プールなどの「水」に着目。水源の近くに設置すると、ヒートポンプとの組み合わせによって水を熱に変換。加熱や冷却の費用を節減できるほか、二酸化炭素の排出を避けることができるので、省エネのみならず、環境保護の一翼を担うこともできます。

谷口ヒーターズ本部の川崎孝(かわさき・たかし)氏は「水で熱交換できるので非常に効率がいい。また設置は容易で、並列設置によって熱交換能力がアップするのも大きな特徴となっています。SDGsの必要性・重要性が高まっていることから、来年以降はサーモジーニアスに力を入れていこうと思います」と語りました。

アルマイト処理において、常時硫酸アルミを回収する「硫酸アルミ分離装置」

伸栄化学産業株式会社 開発管理部 五来潔氏
伸栄化学産業株式会社 開発管理部 五来潔氏

水処理装置の総合メーカー伸栄化学産業株式会社は硫酸アルミ分離装置を出展していました。これまで、アルミニウムの陽極酸化処理において、処理槽中の溶解アルミの濃度管理は難しく、多くても少なくても製品の品質に影響を与えるため安定的な浴液管理が必要であるほか、硫酸の希釈熱に対する対策なども必要とされていました。

そうした中、伸栄化学産業は浴槽から常時、硫酸アルミを取り出す方法を開発。補給薬品の節約・回収を可能にしたほか、浴寿命の延長化、品質の安定化、排水処理費用の削減、メンテナンスの労賃や時間の節約、削減、危険作業の低減などを可能にしました。

硫酸アルミ分離装置は具体的には、装置に浴液を通液すると最初に硫酸アルミが排出。装置内部には高濃度の遊離硫酸が残り、そこに純水を通液することで高濃度の遊離硫酸が得られます。これにより、浴液更新作業がなくなり、有効な遊離硫酸を廃棄せず、回収して再使用できます。また、自動運転によって硫酸アルミが浴液から排出されるため、溶液中の遊離硫酸およびアルミ濃度が一定に保てて製品品質が安定します。そのほか、硫酸アルマイト浴液以外の酸洗浄廃液からも酸回収ができるなど、環境負荷低減にもつながります。

伸栄化学産業株式会社 開発管理部の五来潔(ごらい・きよし)氏は「私たちの硫酸アルミ分離装置はコスト面が安く、従来の製品よりも硫酸の回収率が良いのが特徴です。硫酸アルマイト液中から硫酸アルミを分離し、液の恒久化を実現できればと思います」と説明します。

石炭火力発電所、ゴミ焼却場などで使用する「排水用重金属処理剤」

東ソー株式会社のTX55(上段)は従来品に比べ、重金属が原水から分離し、凝集沈殿している
東ソー株式会社のTX55(上段)は従来品に比べ、重金属が原水から分離し、凝集沈殿している

化学品やセメント、ポリマーなどを扱う総合化学メーカーの東ソー株式会社は、排水用重金属処理剤「TXシリーズ」を取り扱っています。排水中の重金属処理については、2011年の水質汚濁防止法改正、2017年の水俣条約施行などにより、カドミウム、亜鉛、水銀などの排出規制が厳格化。従来の凝集沈殿処理では対応が困難となっています。また、従来の重金属処理剤は、保管時および排水処理時に有毒な硫化水素ガスを発生するため、臭気や作業安全性の課題も指摘されています。

そうした課題を解決すべく、東ソーは「重金属処理性能」と「安全性」に優れる新しい排水用重金属処理剤「TX-55」を開発。TXシリーズとして、石炭火力発電所、ゴミ焼却場、土壌洗浄工場、めっき工場などで導入が進んでいます。

具体的には排水用重金属処理剤が水に溶けている重金属と化学的に結合し、重金属を不溶化。その後、凝集剤を添加し、排水用重金属処理剤と重金属の反応物(フロック)を汚泥として沈降させ、上澄みを汚泥と沈降分離することで、重金属が除去された排水(放流水)が得られるといった仕組みになっています。

東ソー株式会社 有機化成品事業部の佐藤直人(さとう・なおと)氏は、「新規に薬剤を導入、現行の薬剤の切り替えを実施する際、技術サービスの一環として、お客様の排水の分析評価を行っています。その際、最適なTXシリーズの提案はもちろんのこと、処方についてもアドバイスしています。TXシリーズをご導入済みのお客様からは、『処理が安定した』『臭気が気にならなくなった』『コストダウンにつながった』等のコメントをいただいています」と話します。

さらに、「当社の排水用重金属処理剤は高い重金属処理能力、省コスト、高い安全性が大きな特徴となっています。めっき業界では、亜鉛の暫定排水基準(5mg/L)がさらに延長されなければ、来年12月に2mg/Lに変更されます。そうなると従来の凝集沈殿法では落としきれない部分があるため、今後私たちの製品のニーズも高まってくるのではないかと思います」と語りました。


文/新國翔大

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