『TCT Japan 2021(3Dプリンティング & AM技術の総合展)』現地レポート

コロナ禍でサプライチェーンが断絶されたことによって、医療現場では3Dプリンターを活用したフェイスシールドや人工呼吸器部品の量産、迅速な代替部品の提供、ネットワークを活用した生産支援など、本格的な活用が急速に普及。アディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing、AM、積層造形)技術の活躍の場は多方面にわたっています。

ここ数年でさらに注目を集める3Dプリンターをはじめとしたアディティブ・マニュファクチャリング技術。世界の市場動向はどうなっているのでしょうか?
2020年12月9日~11日に、東京ビッグサイトにて開催された、3Dプリンティング & アディティブ・マニュファクチャリング技術の総合展「TCT Japan 2021」を取材しました。

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大型光造形3Dプリンター、レーザーユニットの常時垂直照射で高精度に

2021年に国内販売をスタートする大型光造形3DプリンターFormlabs社のForm 3Lと、フュージョンテクノロジー営業 熊谷耕太氏
2021年に国内販売をスタートする大型光造形3DプリンターFormlabs社のForm 3Lと、フュージョンテクノロジー営業 熊谷耕太氏


同展示会の会場を訪れ、まず目に入ってきたのが米国の3Dプリンターメーカー、Formlabsのブースです。2016年に日本市場へ本格参入。アジア圏でトップの販売実績を誇るなど、国内ユーザーから熱烈な支持を受けています。同社は今回の展示会で、2021年に国内販売をスタートする大型光造形3Dプリンター「Form 3L」を披露していました。

本製品は、同社が展開する光造形3Dプリンター「Form 3」の大型版。大きく変わったのは造形サイズとレーザー出力装置の数です。Form 3の造形サイズは「145mm×145mm×185mm」となっていますが、Form 3Lは造形サイズが拡大。

造形サイズは335mm×200mm×300mmとなっており、これまで縮小して再現するしかなかった造形物をより大きなサイズで造形できるようになっています。また、レーザー出力装置は2基に増えています。

同社の光造形3Dプリンターを説明する上で欠かせないのが独自技術「LFS(Low Force Stereolithography)」です。同技術に関して、Formlabsの日本正規代理店であるフュージョンテクノロジー営業の熊谷耕太(くまがい・こうた)氏はこう語ります。

「LFSはLPU(Light Processing Unit)という移動式のレーザーユニットによって、造形物に対して常に垂直にレーザーをあてられます。そうすることで、高精度で再現性の高い造形が実現できるようになっています」(熊谷氏)

造形物との接点を小さくすることで「ライトタッチサポート」を実現したほか、オンライン経由でプリンターの状況を確認できる「ダッシュボード」に対応しているのも特徴です。

「Formlabsの光造形3Dプリンターは無料で使用できるソフトウェアが付属しているため、使用方法を習得するための特殊なトレーニングなども必要ありません。誰でもすぐに3Dプリントを始められるのも大きな魅力です」(熊谷氏)

そのほか、同社のブースには生体適合性レジンに対応し、人の肌に触れる医療向け製品の試作や実験用器具などの造形が可能な光造形3Dプリンター「Form 3B」、最高238℃の高温にも耐えられるレジン「High Temp」など、さまざまな用途にも対応可能な製品の展示を行っていました。


金属3Dプリンター、光学メーカーの強みはそのままで手軽に利用できるよう小型化に

ニコン社の光加工機「Lasermeister 101A」
ニコン社の光加工機「Lasermeister 101A」


光学メーカーとして100年以上にわたって、光学技術を研究し続けてきた株式会社ニコン。一眼レフカメラ、コンパクトデジタルカメラなどを使っている人も多いのではないでしょうか。

そんなニコンが強みを持つ光学技術や精密制御技術を活かし、新たに開発したのが多様な金属加工機能を提供する光加工機「Lasermeister 100A」です。本製品は、誰でも手軽に利用できる金属3Dプリンターの実現を目指し開発されたもの。3,000万円と低価格でありながら、サイズも850×750×1700mmで小さな冷蔵庫ほどの大きさとなっています。

「通常の金属3Dプリンターの場合、大きさや重量の関係で設置する場所がどうしても限られてしまいます。しかし、Lasermeister 100Aは光学メーカーであるニコンの強みを発揮し、集光レンズを軽く、小さくできたことで小型化を実現。また重量も310kgと軽量となっており、気軽に設置できるのが特徴となっています」とニコン デジタルソリューション事業部の王愷(わん・かい)氏は語ります。

また、本製品はダイレクトダイオードレーザーを採用。コスト低減を図ると同時に排熱を工夫し、配管レス、チラー(冷却水循環装置)レスのコンパクト化も実現しています。そんな本製品の上位機種として、今回の展示会では「Lasermeister 101A」も展示されていました。


ニコン社の5軸制御となったLasermeister 101Aでは、より複雑な立体加工が可能になった。
ニコン社の5軸制御となったLasermeister 101Aでは、より複雑な立体加工が可能になった。


本製品は制御機構を3軸から5軸へ拡充。新たに高速造形モードを搭載したほか、使用可能な造形用粉体の種類が増えた光加工機で、造形自由度が高まっています。

王氏によれば「5軸制御機構の採用と複数種類の造形用粉体への対応はLasermeister 100Aの発売から要望があった」といい、そうした声に応えるべく開発に至ったと言います。

実際、本製品は造形用粉種がSUSだけでなく、ハイス鋼(高速度鋼)やニッケル合金718も可能になったほか、高速造形モードで1.5倍の造形速度を実現しているとのことです。


カーボンファイバー(炭素繊維)の造形が可能な3Dプリンター

Markforged社の3Dプリンターでパーツを作り、組み立てたロボット
Markforged社の3Dプリンターでパーツを作り、組み立てたロボット


鉄の4分の1の軽さながら、10倍の強度を持つ「カーボンファイバー(炭素繊維)」。近年注目を集めている素材ですが、加工が難しいという短所がありました。そうした中、カーボンファイバーでの造形を世界で始めて可能にした3Dプリンターが生まれています。

それが米国の3DプリンターメーカーMarkforged(マークフォージド)が開発した3Dプリンター「Mark Two」です。Mark Twoは世界で初めてカーボンファイバーを芯材に入れることを可能にしました。アルミ相当の強度と軽量化を実現しつつも、 FDMプリンターの⼿軽さを兼ね備えており、特殊な造形環境も不要となっているのが大きな特徴です。

また、連続カーボンファイバーをはじめ、さまざまな長繊維で造形することで、造形物の強度、弾性、重量、コストを自由に変更可能。そのほか、長繊維と同時にマイクロカーボン含有のナイロンフィラメント「オニキス(ONYX)」を使用して造形することで強度と保ちつつ、仕上がりも美しいマットブラック造形品を造形できます。

Markforgedの3Dプリンターを取り扱うファソテック AM開発センターの小西健彦(こにし・たけひこ)氏は、特徴をさらにこう語ります。

「Mark Twoの造形品は一般的なABS樹脂の20倍以上(アルミニウム相当)の強度を誇り、平面度・精度はハイエンドプリンター並みです。また反りにくく熱変形しにくいので精度の必要な造形物にも使用できます。導入費用も金属プリンターの100分の1となっているほか、卓上サイズなのでどこでも設置できるのも特徴となっています」(小西氏)

展示会ではMark Twoのほか、デスクトップシリーズの約3倍の造形体積を実現し、積層ピッチも50ミクロンまでの高精度を実現した生産性重視の産業用3Dプリンター「X7」も展示されていました。


3Dテクノロジーを組み合わせた「ものづくりプロセス」の提案

株式会社データ・デザイン セールスユニット マネージャー 今田智秀氏
株式会社データ・デザイン セールスユニット マネージャー 今田智秀氏


同展示会には、3Dプリンターだけでなく3Dテクノロジーを組み合わせ、新たなモノづくりのプロセスを構築している企業もありました。それが株式会社データ・デザインです。

データ・デザイン セールスユニット マネージャーの今田智秀(いまだ・ともひで)氏は「業務のデジタル化が進む中、特定部分だけがデジタル化されず非効率になっているケースがまだ存在しています。データ・デザインは、そのような現場における課題を解決するため、3次元技術とAIやIoTなどを融合させた『スマート3Dテクノロジー』によって、デジタル仮想空間の造形プロセスを進化させ、現場のデジタル革新をサポートします」と語ります。

具体的には、データ・デザインは3Dスキャニング、3Dモデリング、3Dマシニング、3Dプリンティング、3Dビジュアライズ、ナレッジシェアリングといった6つの領域における、海外の3Dツールを61製品取り扱っています。

例えば、ハンディ/モバイル型スマート3Dスキャナー「Artec Eva」や、3Dプリンティングでは前述したFormlabsの「Form 3」、Markforgedの「Mark Two」、そのほか3Dカメラセンサー技術で三次元データをダイナミックに追従投影することが可能な3Dプロジェクションマッピングシステム「EXTEND3D-WERKLICHT」などを展開しています。

これらの取り扱っているツールをもとに、データ・デザインのセールス&テクニカルチームがクライアントの課題をもとに最適なデジタルツールを選定し、提案します。「これにより、一般的なソフトウェアだけでは実現できない課題に対して、個別カスタマイズにより、独自のデジタルプロセス構築の手伝いができるのです」と今田氏は語りました。


文/新國翔大


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