『国際粉体工業展・東京2020』現地レポート

国際粉体工業展は、東京と大阪で交互に隔年で開催されている展示会です。今回の第14回はコロナ禍の中、東京ビッグサイトで開催されました。来場者数は、前回の大阪(2019年10月16日〜18日、インテックス大阪)の1万847名(3日間)の約半数となって、やはり新型コロナの影響が大きかったようです。

工業用の粉体には、小麦粉、砂糖といった食料、プラスチック、繊維、医薬、化学製品、鶏糞などの環境負荷物といった有機系、あるいは金属、セラミックなどの無機系と種類がとても多い素材です。材料を粉体にすることで乾燥、混合、成形、運搬などの工程の改善や効率化がはかられるため、粉体に関する技術はものづくりにとっても重要となります。

粉体というのは固体粒子の集合体のことですが、固体を粉体にすることで液中や空中に浮遊させることができ、そうすることで固体を液体や気体と同じように扱いやすくできるようになります。最近では、粉体にすることで単位質量あたりの表面積である比表面積を大きくできるため、ガスとの反応や吸着・脱着など、表面での多種多様な操作ができるようになるという新たなメリットも注目されています。

細かな粉体粒子がそれぞれ付着しやすくなり、凝集塊状になって機器に付着したり目詰まりしやすくなるという粉体特有の問題もあります。また、粉体同士、あるいは液体と粉体を混合させようとしてもなかなか馴染みにくく、それがトラブルを引き起こすという問題もあり、国際粉体工業展でもこれらの課題解決の出展も目に付きました。そうした出展社の中からいくつか興味深い技術を紹介しましょう。


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比重差が小さい粉体同士も分離可能な「風圧撰別機(グラビティセパレーター)」

10個のバルブ(黒いダイヤル)で風量の微調整が可能になっている同社のグラビティセパレーター。中にある傾斜がつけられた振動搬送装置の上で粉体が分離する。上昇気流と振動によって、想像とは逆に重い粉体が傾斜を上っていき、軽い粉体が傾斜の下部へ貯まるそう。
10個のバルブ(黒いダイヤル)で風量の微調整が可能になっている同社のグラビティセパレーター。中にある傾斜がつけられた振動搬送装置の上で粉体が分離する。上昇気流と振動によって、想像とは逆に重い粉体が傾斜を上っていき、軽い粉体が傾斜の下部へ貯まるそう。


創業を明治32年(1899年)に遡る明治機械株式会社(東京都千代田区)は、主に米や麦、大豆、トウモロコシといった穀物の粉体技術を特徴とする企業ですが、穀物を粉砕して配合飼料にする過程で粉体を取り扱う技術革新を続けてきたそうです。

同社が出展していたのは、重力によって粉体を種類ごとに分離する風圧撰別機(グラビティセパレーター)という機械で、まだ実用前の製品です。ブースにいた担当者の説明によると、粉体の原料を機械に入れ、上部から空気を吸い込む吸引装置で上昇気流を発生させ、同時に下部からも空気を吹き上げることで粉体を流動化状態にし、さらに振動を加えて4度(5度まで可能)傾斜したコンベアにより、重い粉体は下へ、軽い粉体は上へ分離することができるそうです。

比重差0.4〜0.5といった違いの粉体は、フルイによる分離はできないといい、同社による実験では「ガラス(粒子径2.8㎜、比重2.5、以下同)とポリプロピレン(2.8㎜、0.91)」、「鉄(SGC、2㎜、7.85)とポリプロピレン(2.8㎜、0.91)」、「塩化ビニル(3.3㎜、1.3)とポリプロピレン(3.3㎜)」、「ガラス(2.5㎜)と塩化ビニル(3.3㎜)」といった2種類の粉体が混合状態になったものをほぼ100%分離できたといいます。

この装置では、樹脂、石、ガラス、ゴム、金属、木材、穀物、食品などの粉体を分離することができ、さまざまな混合比でも、また比重差が小さくても分離できることが特徴だそうです。同社によれば、今後は装置を大型化して高精度で大量の粉体を分離できるように処理能力を向上させ、自動化などを進めて改良を加えていくと言います。


吸引された粉体が集合し自らシールする非接触式「軸封装置(メカニカルシール)」

同社の非接触式のセルフシール装置を取り付けた軸の例。装置に使うエアは、ほぼどこの工場にもあるものを応用できるとのこと。
同社の非接触式のセルフシール装置を取り付けた軸の例。装置に使うエアは、ほぼどこの工場にもあるものを応用できるとのこと。


三和工機株式会社(奈良県大和郡山市)が出展していたのは、非接触式セルフシールです。関西の企業ですが、前回2019年の大阪の展示会には出展していなかったそうで、この製品は今回の展示会で初めて公開したと言います。

原料を粉砕したり粉体を撹拌したりする際、貫通軸受などから粉体が漏れてきたり、ほかの粉体と混ざったりしてコンタミを起こす問題があります。そのため、シール(軸封)装置が必要になりますが、同社は従来から非接触式のシール装置を開発し、粉体や液体、気体のシールを可能にするジェル式のシール技術を特許取得しているそうです。

今回、新たに出展していたのは、セルフシールといって粉体を粉体でシールする技術です。このシール装置にはカートリッジ式のフィルターが備えられ、軸の周辺の空気を吸引すると同時に粉体も軸へ入ろうとしますが、フィルターで粉体をキャッチし、吸引された粉体が集合して自らがシール(セルフシール)するそうです。例えば小麦の粒径は約100μm、酸素の大きさは4Å(オングストローム)と25万対1と違うので、粉体より小さな空気はフィルターを通過し、粉体は機内から外へ出ることはないと言います。

対応する粉体は、シリカ、酢酸ビニル、ゼオライト、消石灰、ドライモルタル、硝酸カリウムなどで、またメンテナンスはカートリッジ式のフィルターを交換するだけで、メンテナンスのたびに粉まみれになって機器周辺の清掃に手間取るようなことはなくなります。現在特許出願中の技術で、ロータリーバルブ、スクリューフィーダー、スクリューコンベアなどの軸の径など機器に応じてオーダーメイドで提供できるそうです。


回転軸からシールとベアリングをなくし、コンタミ抑制とメンテナンス性向上へ

同社の粉体の連続吸引式搬送装置。吸引式のため、圧送式のような粉体の飛散といった危険性がほとんどないとのこと。
同社の粉体の連続吸引式搬送装置。吸引式のため、圧送式のような粉体の飛散といった危険性がほとんどないとのこと。


特許取得件数が約30件という株式会社ワイ・エム・エス(横浜市南区)が出展していたのは、粉流体のハンドリングシステムです。

研究開発型の会社と言えますが、軸にシールとベアリングをなくすことで、完全密閉を実現し、シールの交換が不要になったそうです。また、ベアリングレスなため、異物混入による噛み込みによるベアリングロックや、摺動や摩耗によるコンタミを抑制するそうです。こうした技術によりメンテナンス性が向上し、危険なガスや酸素などを扱う環境下や粉体でも労働安全が期待できると言います。

こうした回転軸のシール機構に求められるのは、内部の漏れや外部からの異物の侵入を防ぎ、軸の回転を妨げないことです。もちろん、回転軸と固定された軸受が接触しながら回転するわけで、これが完全に密着すれば漏れませんが、それでは回らなくなり、隙間が開けば回転はするものの漏れが発生してしまいます。さらに、機器内部の圧力変化などに適応しつつ安定して均一な状態で軸を接触させ続けなければならないため、シールの技術はなかなか難しいものがあるそうです。

また、同社のブースには、連続吸引式の粉体搬送装置も展示されていました。粉体を空気搬送するためには圧送式と吸引式の方法がありますが、圧送式には閉塞しやすかったり、粉体が飛散する危険性があったり、あるいはコストが高いなどのデメリットがあります。一方、吸引式にも閉塞しやすさ、エネルギー効率の悪さなどのデメリットがありますが、吸引式である同社の製品は、ツインベアーという2つの装置を連続して吸引稼働させるため、吸引式のデメリットをなくすことができたと言います。

連続吸引のため、吸引ノズルから粉体が落下して搬送装置の排出時に塊(プラグ)を形成し、閉塞を引き起こさないと言い、また、高い真空状態を維持できるため、搬送能力が大きくなったそうです。



マスク着用、入場時の体温測定、3密の回避などの新型コロナ対策を施し、152社・団体(457小間)が出展して開催された国際粉体工業展・東京2020。次回は、インテックス大阪にて2021年11月に開催される予定です。


文/石田雅彦

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