『JASIS 2020』現地レポート

分析機器や科学機器に関する展示会として毎年1回、開催されているのがJASIS(Japan Analytical & Scientific Instruments Show)です。分析機器や科学機器に関する出展企業が多い展示会ですが、ものづくり技術や自動運転、ライフサイエンス、新型コロナ対策技術、環境技術といった先端技術などもありました。

本展示会は昨年は9月上旬に開催されましたが、今年は前年から決まっていた期間変更に伴い、11月に開催されました。今回の期間変更自体は新型コロナによる影響ではないものの、今年の来場者数に関しては新型コロナの影響もあって昨年の来場者数(2万3,409名、カンファレンスのみ開催の火曜日を含む)の約1/3の来場者数となったようです。

本展示会は、2017年の開催からJASIS WebExpo(R)としてオンラインでのコンテンツにより出展社情報や講演内容などを配信し、リアルの展示会と連動する形式での開催をいち早く取り入れています。新型コロナの影響で、こうしたオンライン配信をより拡充し、前年までリアルで開催していたライフサイエンスイノベーションゾーンをJASIS WebExpo(R)のみにするなどして今年の会期に臨んだようです。それでは本展示会の中から特に気になった展示を紹介しましょう。


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脱気用の「中空糸膜」の素材に、PFAを使用し高い耐薬品性を発揮

同社の中空糸膜結束サンプル。耐薬品性が高く、膜表面に平滑性があり、薬液残留の防止、高い洗浄効率が期待できる。                              
同社のPFA中空糸膜モジュールは、毎分1mlから1,000mlまで液体を流すことができる製品ラインナップがそろっている。                    

業種業態、市場に関係ない複合型のものづくり製品開発をしているという株式会社大成(埼玉県戸田市)が出展していたのは、PFA(PerFluoroalkoxy Alkane、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)中空糸膜モジュールです。中空糸膜というのは、通常は細長いパイプを束ねた分離膜のことで、液体から溶存ガスを抜く脱気に使われることが多いものです。

同社の脱気モジュール装置は、中空糸膜を介して液体中のガスを出し入れすることができると言います。膜の外側から圧をかけることで、減圧すれば液体中に微小な気泡を溶解させることができ、圧をかけると液体中の溶存気泡やガスを除去することができます。

半導体やフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display、FPD)などの製造に使われる現像液、リンス液、洗浄液、エッチング液、電池の製造に使われる電解液、印刷用インク、医薬製造の使われる液体の中に含まれる窒素や酸素などのガスを除去することで、歩留まりの向上やトラブル防止、品質の安定などが期待できます。脱気や脱泡をすることで、半導体製造でトラブルの原因になるマイクロバブルを除去したり、インクの中のガスを除去することで濃度や液量の調整、印刷の安定性を高めたりすることができるそうです。

同社のPFA中空糸膜モジュールは主に脱気を目的とし、従来はフッ素樹脂PTFE(PolyteTraFluoroEthylene、ポリテトラフルオロエチレン)だったものをPFAにした500から600本の中空糸膜が束ねられています。PFAにしたことで、薬液、有機溶媒、酸、アルカリといった耐薬品性に優れた性能を発揮できたそうです。


膨張係数が小さく、加熱や急冷による伸び縮みが少ない「耐熱ガラス」

カミオカンデに使われた光センサーの同社ガラスバルブ。小柴昌俊氏のノーベル賞受賞に貢献したものづくり技術です。                    
同社の回転時の軸ブレを抑えた実験用フラスコ。天然鉱物だけで作られ、製造過程で亜ヒ酸やアンチモンといった有害な重金属を使っていないそう。                    

創業1921年、耐熱ガラスを製造するハリオサイエンス株式会社(東京都台東区)には、2002年のノーベル物理学賞受賞者、小柴昌俊氏が超新星爆発にともなうニュートリノを観測した「カミオカンデ」の20インチ光センサー(光電子倍増管)の初期試作が展示されていました。内部のセンサーは浜松ホトニクス製で、ハリオサイエンスは外側のガラス部分の原型を試作したそうです。

説明してくださった同社営業本部取締役本部長、河村昌弘(かわむら・まさひろ)氏によると、ガラスの肉厚を均一にしながら職人が一発で吹き込んで成形するそうです。この20インチ光センサーは、世界で初めて開発されたもので、ガラスバルブには耐水性に優れた同社のハリオ32というガラス素材が採用されています。

同社は耐熱ガラスの製造が得意な企業であり、先述のハリオ32は膨張係数が小さくて水圧に耐えられるほど硬い耐熱ガラスで、実験用のフラスコやビーカー、電子レンジ用食器、コーヒーサイフォンなどに使われています。この原型を元に1万1,200本の光センサーを作ってカミオカンデの内壁に並べたそうです。

河村氏によると、ガラスの耐熱性は耐熱温度差によって示されるそうで、同社の耐熱ガラスは温度差120℃まで耐えられるそうです。急激に低温から高温に加熱したり、薬品の反応により急激な温度上昇にさらされるとガラス機器が破損してしまう危険性があり、ハリオ32はカミオカンデに採用されたように、膨張係数が小さく、加熱や急冷による伸び縮みが少ないという特性をもっていると言います。


オスミウム金属の超薄膜形成ができる、プラズマCVDガス「蒸着装置」

研究用の理化学機器、医科学機器、光学機器、電子機器、分析測定器などを製造販売しているメイワフォーシス株式会社(東京都新宿区)が展示していたのは、結晶薄膜などを評価するため電子顕微鏡で観察する際の前処理用コーティング装置です。

電子顕微鏡は、光学顕微鏡が光を当てて観察するのと異なり、電子を当てて磁場の電子線に対するレンズ効果を用いて拡大し、観察します。走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の場合、導電性のない対象に電子線を当て続けると、表面が帯電(チャージアップ)してしまい、反射する電子パターンが乱れて観察しにくくなります。そのため、あらかじめ観察対象の表面を、導電性をもつ金や白金、オスミウムといった物質で蒸着コーティングしておきます。

説明してくださった同社テクノロジーラボグループ主任、望月麻央(もちづき・まお)氏によると、同社の電子顕微鏡の前処理装置は酸化オスミウムの蒸着によって成膜するため、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)成膜法を使っているそうです。今回出展しているのは、機能性や操作性、デザインを考えた製品と言います。

特に使いやすさを考え、蓋の上げ下げをしっかり行うためのハンドル形状、タッチスクリーンによるデジタルコミュニケーションと操作しやすさを考慮した画面角度、アンプルの取り扱いをスムーズに行うための本体形状など、実験の動作とメンテナンス性を考慮したそうです。従来の製品は、特に女性研究者などにとって蓋が重く、操作に習熟するのにも時間がかかったとそうですが、出展している製品ではそうした問題を解決するように開発したと言います。

同社の導電皮膜装置は、真空チャンバー内に四酸化オスミウム昇華ガスを導入し、直流グロー放電によりプラズマ化させますが、負グロー相領域でコーティングすることにより、純粋なオスミウムの金属導電被膜を形成することができるそうです。これにより約0.25nmという極薄膜でも走査型電子顕微鏡の電子線ダメージに破壊されない強固なアモルファス導電被膜を形成することができると言います。

この製品では、チャンバーハンドルで開閉がスムーズになり、従来製品では電源オフで真空が保持できなくなっていたタイミングに真空を保持し続ける機能を付け、さらに流量制御のマスフローコントローラーを搭載してチャンバー内の圧力をデジタル制御できるようになったそうです。


同社のアモルファス導電皮膜コーティング装置
同社のアモルファス導電皮膜コーティング装置


新型コロナの感染予防対策を施し、遠隔によるコンテンツ展示などを積極的に活用していた印象のあるJASIS2020。オンラインのJASIS WebExpo(R)は2021年3月15日まで開催しています。また、2021年のオフライン展示会は11月8日(水)から3日間、今年と同じ千葉県の幕張メッセで開催される予定になっています。


文/石田雅彦


参考情報
・JASIS WebExpoは、一般社団法人日本分析機器工業会の登録商標です。

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