『国際画像機器展2020』現地レポート

2020年12月2日〜4日にパシフィコ横浜で開催された「国際画像機器展2020」。ロボットビジョンやセキュリティなどのテーマごとにカメラをはじめとする画像を扱う企業が多数出展しました。

また、同展示会の中で、「精密加工測定展2020」も同時開催。素材の加工や測定に関する機材を開発する企業が出展し、それぞれの特徴を来場者に紹介していました。今回はこの両展示会の中から5社をピックアップしてご紹介します。

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畜産業界でも活用、非接触3Dスキャンで豚の体重を推定

株式会社ノア代表取締役 太田初氏
一方向からの撮影のみで3Dデータを作成し、豚の推定体重を割り出すことができる

株式会社ノアが出展していたのは、デジタルカメラサイズのコンパクトな機器。撮影するだけで対象を3Dデータとして読み込む3Dスキャナです。

使用方法は、普通のカメラと同じように撮影ボタンにタッチするだけ。するとすぐさま対象物に赤外線を照射して三角測量がスタートし、測量データがカラー情報付きでデバイスに読み込まれます。

たったこれだけの行程で3Dデータの作成が完了。複数の方向から撮影したデータを組み合わせれば、すぐに3Dプリンターで立体物として出力できます。株式会社ノア代表取締役の太田初(おおた・はじめ)氏は、「最高分解能0.1mmをほこる高精度3Dスキャナを開発している同社だからこそ開発できた、3Dデータを手軽に扱えるデバイスです」と説明します。

また、撮影した3Dデータは現実の空間情報を保持しているので、対象物の距離を3Dデータ上で測定することができます。例えば、人の頭の断面の直径といった普段だったらなかなか測ることができない箇所の長さも、画像の立体合成を組み合わせれば測量可能です。

この技術を畜産業界での実用用途向けにも応用しています。これは帯広畜産大学などと共同開発した製品は、ワンタッチで豚を3Dスキャンすると、豚に触れることなく推定体重が表示されます。3Dスキャンによって豚のおおよその表面積がわかるので、そこから体重を推定するという仕組みです。

では、なぜこのようなデバイスが開発されたのでしょうか。豚は出荷時の体重によって価値が大きく変動するため、畜産業者にとって正確な豚の体重を手軽に把握するのは重要なこと。しかし、動きも素速くなかなか誘導しづらい豚を既存の家畜用体重計で計測するのは困難なのだそうです。

「こうした環境だからこそ、動き回る豚を固定することなく即座に測定できる本商品が真価を発揮します」と太田氏は話します。こちらの製品は、2021年4月の販売を予定しています。


光干渉断層計(OCT)、ガラスなど透明な製品の遺物検査に活用

シンクランド株式会社営業部マネージャー 城座俊太氏
シンクランド株式会社営業部マネージャー 城座俊太氏

センサーや理化学器などを開発するシンクランド株式会社は、和歌山大学と共同開発した「光干渉断層計 (Optical Coherence Tomography、OCT)」を出展。これは従来のカメラや顕微鏡とは異なる波長の光で観測する装置です。

この製品で用いられているのは、網膜の治療などで用いられている近赤外線。同社営業部マネージャーの城座俊太(じょうざ・しゅんた)氏は、「光干渉断層計で使用している近赤外線は、一般的な顕微鏡ではぼやけてしまう透明な樹脂や、光を反射してしまう物質の内部をハッキリ観測できるのが特徴です」と説明します。

こうした性質を持っているため、ガラスや瓶といった透明な製品や、金属の表面に付いた傷を向いているそうです。透明なものを透過できる上に内部の成分を破壊することもないので、飲料が入ったペットボトルの内側に付いた傷なども観測することできます。

また、購入時には解析ソフトの設定や、測定対象に応じて使用する波長の変更といったハードの設定まで対応。細かい機器の設定方法がわからないユーザーでも、安心して利用できるサポート体制を整備しています。

2020年10月にリリースしたばかりの本製品は、プリズムやレンズなどの透明な素材を扱うメーカーによる購入が多数。城座氏は、「対象が液体であっても観測可能なので、ペットボトル飲料に異物が混入していないか確認することもできますね」と、より幅広い用途での活躍を期待していました。

製造業のDX化、「PoC疲れ」で終わらないためのAI導入サポートサービス

画像計のAIサービスHVIAのデモンストレーション
画像計のAIサービスHVIAのデモンストレーション

近年、さまざまなサービスが登場し、あらゆる業界で急速に普及しているAI。ピックアップや目視検査をAIによって代替するサービスも多く、製造業にとっても見逃せない存在になっています。

製造業でもこれまでアナログで行っていた作業をデジタル化するDX(Digital Transformation)がブームになっていますが、一方で「流行に乗ろうとしたものの自社でAIを上手に導入できなかった」という声も少なくありません。

「あるサービスを自社で導入できるかどうか判断するために試験的に運用することを『PoC(Proof of Concept、概念実証)』と呼びますが、近年はこの段階で疲弊してしまい、結局AIを導入できない『PoC疲れ』という言葉が登場しているくらいです」と話すのは、日立製作所サービスプラットフォーム事業本部IoT・クラウドサービス事業部 エンタープライズプロダクツ本部の伊藤暢朗(いとう・のぶお)氏です。

こうした課題を解決するために同社が開発したアプリケーションプラットフォームは、目視検査を始めとした画像計のAIサービス導入をサポートするサービスです。

AIを導入する際の大きな障壁のひとつに、環境整備があると伊藤氏は説明します。「例えば、せっかくPoCで自社で扱う製品に適した目視検査のモデルを開発できたとしても、カメラをはじめとするハードウェアやソフトウェアとの接続や、その設定が適切でなければ、結局AIを運用することはできません」(伊藤氏)

本サービスはこの接続や設定をワンストップで支援するプラットフォーム。AIエンジンやカメラといったあらゆるソフトやデバイスを接続でき、シンプルな管理画面で操作。AIの操作に必須の基本機能がパッケージ化されているので、少ない構築工数でAIを実務に導入できるようになります。

「もちろん、日立製作所の製品に限らないあらゆるAIエンジンを使用可能。他社製品はもちろん、オリジナルで作成したAIエンジンも接続できます」(伊藤氏)

本サービスを導入するまでの支援も手厚く、すでにAIを導入している企業向けには手持ちの学習済みモデルと本サービスを接続して試験運用できるほか、同社のクラウド上で実際に本サービスを操作し、使用感を確かめてみることも可能だそうです。また、ハンズオンでのセミナーも開催中。AIの導入を検討している製造系企業を、幅広くアシストしています。

デジタルカメラの「ホットピクセル」防止のため、「ペルチェ冷却法」を採用

ピクセルシフト機能とペルチェ冷却機能を搭載した超高解像度低ノイズデジタルカメラ。ピクセルシフト機能により. 最高13億5,900万画素のイメージ構成を実現。
ピクセルシフト機能とペルチェ冷却機能を搭載した超高解像度低ノイズデジタルカメラ。ピクセルシフト機能により. 最高13億5,900万画素のイメージ構成を実現。

本展示会ではカメラや画像処理サービスなどを扱う企業が多数出展。その中で独自の機能で注目を集めていたのは、韓国Vieworks社の製品を販売する日本ビューワークス株式会社です。

同社の産業用カメラは、なんとワインセラーなどで用いる「ペルチェ冷却」でカメラ内部を冷やすのが大きな特徴だと言います。なぜこのような仕組みを導入したのでしょうか。

あらゆるデジタルカメラは、長時間使用するとホットピクセル(ホットノイズ)という現象が発生します。これは長時間の使用によってセンサーが熱を持ってしまい、画像に白飛びが入ってしまうのです。一般的なカメラではファンで熱を追い出すことで対策をしていますが、それだけでは不完全ということで開発されたのが同社のカメラです。

ペルチェ冷却は2つの異なった金属間に直流の電流を流すと発熱や吸熱が発生する「ペルチェ効果」を利用した冷却法。同社のカメラでは機種によって差はありますが、センサーが周辺温度から-17℃の状態が保たれるそうです。

とはいえ、この温度差によって結露が生まれてしまうため、これまでペルチェ冷却を採用したカメラはあまり多くありませんでした。同社営業技術部主任の安井研(やすい・けん)氏も、「本製品開発時にも結露は大きな課題で、何度も試作を重ねました」と話します。

最終的に、カメラ内部の素材にパッキンを使用し、外部ファンとヒートシンクを採用した筺体設計で霜や結露の発生を防止。ホットピクセル防止のために、本体部品のあらゆる箇所を見直した結果として、ペルチェ冷却を搭載することができたのだそうです。


職人技術の教育に活用、メガネ型で軽量な視線計測システム

視線計測システムを装着する同社の石本氏。一般の眼鏡と変わらない装着感が特徴。
視線計測システムを装着する同社の石本氏。一般の眼鏡と変わらない装着感が特徴。

ハイスピードカメラなどを製造する株式会社ディテクトは、視線計測システムを展示していました。


これは装着者の視線を追尾するデバイス。フレームに搭載された3台の小型デジタルカメラが、装着者の見ている景色(景色映像情報)と両眼の瞳の動き(瞳映像情報)をリアルタイムで計測します。

同社営業部課長の石本竜太(いしもと・りゅうた)氏によれば、本製品の最大の特徴は、本体フレーム重量が約40gと、既存の視線計測システムに比べて軽量な点です。

「軽いので装着時の違和感が少ない上に、ヘルメットや保護メガネとも併用できる形状です。下向き視線の計測に対応したカメラも搭載されているので、普段の姿勢での自然な視線移動を記録できます」(石本氏)

主な用途として想定されるのは、目視検査やカテーテル施術などでの職人技術の教育です。作業中のベテランがどのように視線を動かしているかがわかることで、より効率的に作業を行えるようになります。本製品で撮影された動画はUSB 3.0で簡単に出力できるので、動画マニュアルも作成できるので効率的な育成が可能です。


石本氏は、「ほかにも荷物の仕分け作業や特殊車両の運転、料理など、さまざまなジャンルでの指導にも有効なはず」とより幅広い分野での活躍を期待していました。これからの動画マニュアルは、視線の動きまで説明することが一般的になるかもしれません。



文/野口直希

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