『第2回ファーマラボ EXPO [東京]』現地レポート

新型コロナウィルスの流行もあり、昨今はさまざまな面で注目を集める医療業界。2020年11月25日(水)~27日(金)の3日間にわたって幕張メッセで開催された「第2回ファーマラボ EXPO[東京]」では、医薬品の研究・開発を支援するための研究機器や試薬などが多数展示されました。展示ブースの中にも、新型コロナウィルス対策を取り扱う企業が数多くありました。

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人、室内空気、環境表面などを対象とする「新型コロナウィルス検査」サービス

ユーロフィン・フードアンドプロダクト・テスティング株式会社ビジネスストラテジーマネージャー西川文人氏
ユーロフィン・フードアンドプロダクト・テスティング株式会社ビジネスストラテジーマネージャー西川文人氏

ユーロフィンは世界50か国以上に800か所を超える試験所を持ち、食品や医薬品などの分析を行う企業。
環境分析も専門分野で、昨今は新型コロナウィルスの検査や関連サービスを実施しています。すでに欧米諸国では積極的にサービスを展開中で、日本での導入も進行中とのことです。


同社が提供する新型コロナウィルス関連サービスは、大きく分けて4種類。まず、すでに日本でも幅広く実施されている「ヒト唾液PCR検査」。被験者の唾液を採取して、2〜3営業日で陽性/陰性を判定します。症状の有無に関わらず判定できるので、潜伏期の人が早期発見することで重症化する前に対処できます。

さらにユーロフィンでは、人だけでなく空気中や環境表面のウィルス検査も実施。ユーロフィン・フードアンドプロダクト・テスティング株式会社ビジネスストラテジーマネージャーの西川文人(にしかわ・ふみと)氏が「日本でもぜひ積極的に導入してほしい」と勧めていたのは、「室内空気PCR検査」です。

これは空間内のウィルスの有無をモニタリングするサービス。西川氏によれば、室内空気PCR検査にはクラスター化の抑制も期待できるそうです。

「新型コロナウィルスが恐ろしいのは、未症状の感染者が出入りすることで、感染者の症状が顕在化する前にその空間がクラスター化する可能性がある点です。定期的に室内空気PCR検査を実施すれば、症状が出る前にウィルスを発見でき、罹患者によるウィルスの拡散を未然に防ぐことができます」(西川氏)

またユーロフィンは、現地にて「環境表面PCR検査」でより詳細にウィルスを検知するサービスを行っています。これは人体と同じ方法のPCR検査で、ドアノブや机といった環境表面上のウィルスの有無を判定します。発見されたウィルスには、新型コロナウィルス専門の特殊消毒プランもあり、最短で当日にも対応できるそうです。

「さまざまなプランがありますが、定期的な室内空気PCR検査でウィルスの発生をモニタリングし、もし検知されれば人唾液PCR検査や環境表面PCR検査で感染者や感染ルートを特定しつつ、消毒作業を入れるという利用法を想定しています」(西川氏)

すでにアメリカではゴルフを始めとしたスポーツの公式大会や、病院、大学などで定期的なモニタリングが実施されているそうです。「日本での導入も積極的に進めていきたい」と西川氏は話します。


研究機関などの要望に合わせた「実験動物」を短時間で提供

伊勢久株式会社貿易事業部ファーマビジネスユニット伊藤裕康氏
伊勢久株式会社貿易事業部ファーマビジネスユニット伊藤裕康氏

サイヤジェン株式会社は、研究機関などの実験で幅広く使用されている実験動物や研究用の幹細胞を販売する企業。
本社はカリフォルニアにあり、中国に動物施設を持っています。


同社が主に取り扱っているのは、遺伝子を組み換えたマウスやラットです。企業や大学の研究機関では、特定の病気や突然変異種といったさまざまな実験用マウスが必要になります。サイヤジェンではそうした実験用マウスをニーズに応じて生産し、短期間で提供するサービスを行っています。

自社開発の人工知能システムで遺伝子案をデザインし、注文に応じたマウスを設計します。16,000種以上のマウスを設計でき、最低価格63万円から、最短2週間で納品できるそうです。

この価格や納品の早さは、業界でもトップクラス。サイヤジェン株式会社の日本代理店である伊勢久株式会社貿易事業部ファーマビジネスユニットの伊藤裕康(いとう・ひろやす)氏は、幅広い要望に素早く対応できる理由は、中国に保有する動物施設にあると説明します。

「サイヤジェンではここに25,000匹のマウスが飼育可能な個別換気ケージを有し、10,000種以上のマウスの精子を凍結した状態で保管しています。ここから注文に応じて生体マウスを作成します」(伊藤氏)

同社のもう一つのウリは、徹底した保管体制です。研究機関では実験動物を自ら培養することもありますが、予期せぬ病気などにかかってしまえば実験は立ちゆかなくなります。サイヤジェンではAAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)の認証を取得した動物センターのクリーンルームで精子を管理。専門的なトレーニングを受けた担当スタッフが慎重に取り扱い、病気などのリスクを最低限に止めています。

新型コロナウィルスに感染したマウスも生産する準備を進めています。こうしたサービスから、感染症に帯する有効な手立てが生まれるのかもしれません。


「微生物」を自動分析、培養装置とロボット付き分析機が一体化

100枚以上のシャーレを1台でインキュベートできる装置(左写真)。バクテリア繁殖量をリアルタイムでモニタリングする(右写真)。
100枚以上のシャーレを1台でインキュベートできる装置(左写真)。バクテリア繁殖量をリアルタイムでモニタリングする(右写真)。


食品や化粧品、医薬品の開発時には、微生物の検査は非常に重要な工程です。「製品開発段階の環境でバクテリアが繁殖する可能性はないか?」「製品完成時に悪質な菌が混入していないか?」といった検査は、健康に害のない製品を世に出すためには欠かせません。

そんな微生物の分析を担う製品を開発するのが、インターサイエンスジャパン株式会社。今回のファーマラボでは、リアルタイムでインキュベート(一定時間温度や湿度などを管理する実験中の操作)や分析をこなす装置を紹介してくれました。

「従来の食品分析機は、シャーレを1つずつしか分析できません。培養装置からサンプルの入ったシャーレを手で取り出し、機械に乗せて分析した後、また培養装置に戻すという操作が必要でしたが、本装置は培養装置と食品分析機が一体となっていて、分析作業をロボットがすべてこなします。例えば数十枚のサンプルの状態をそれぞれ1時間おきに分析していくといったことができます」とインターサイエンスジャパン株式会社のジャランク久美子(くみこ)氏は説明します。

インキュベートの内容を設定しておけば、途中で外部から手を加えることなく複数の検査を同時にこなすこともできます。同時に扱えるシャーレのキャパシティは、100枚以上になります。これにより、複雑な過程や比較を要する分析を効率化。実験途中の操作やそれにかかる人手を抑えることができるそうです。

また、本装置で定期的にバクテリア繁殖量をモニタリングしている場合、事前に設定した閾値を超えたシャーレが出たらアラートを出すといった設定も可能です。検査技師がいなくてもサンプルの変化を撮影しながらモニタリングしているため、バクテリア量の推移と培養状態を後から遡って確認することができ、大きな変化があった際の原因究明もスムーズに行えるそうです。時間ごとのバクテリア繁殖量を事前に予測する機能も搭載しているので、効率的に実験を進めることができます。


細胞療法向け、自動「細胞培養」プラットフォーム

テルモBCTマーケティング部CTTチームリーダー田中淳氏
テルモBCTマーケティング部CTTチームリーダー田中淳氏

「細胞療法」という分野があります。これは薬などの化合物ではなく、他人や微生物の細胞を投与することで疾患を治す技術。
例えば、赤血球を作り出す造血幹細胞を含む血液を投与することで赤血球の量を増やす造血幹細胞移植などです。


医学領域でも比較的新しい治療法の細胞療法はこれから大きく成長する分野だといわれており、日夜新たな細胞製品が開発されています。そんな細胞製品開発のカギを握るのが、細胞培養のクオリティや効率です。あまり規模の大きくない実験機関では細胞製品の臨床試験や試作の際にフラスコで細胞を培養するのが一般的ですが、そうすると膨大な費用や処理時間が必要になってしまいます。

テルモBCTが出展していた細胞増殖システムは、そんな細胞培養を効率化する自動細胞培養プラットフォーム。細胞培養に用いるインキュベーターと安全キャビネット、クリーンルームがセットになって、約30㎠センチメートルの設置面積に収まり、プラットフォーム内の温度調節や栄養供給、廃棄物の除去などを行います。

テルモBCTマーケティング部CTTチームリーダーの田中淳(たなか・じゅん)氏によれば、この製品を導入する最大の利点は、やはり細胞培養の効率化です。「熟練したオペレータであれば、1人で約10台もの本細胞増殖システムを同時に管理できるでしょう。フラスコでの手作業に比べて、最大で70%の労働力の低減ができ、細胞の増殖にかかるコストも最大で40%削減できます」(田中氏)

機械での制御により、複雑な培養を同一の品質で大量にこなせるのも本細胞増殖システムの利点。細胞製品を市場に導入する直前、つまり臨床試験の最終段階などで大きな力を発揮するかもしれません。



文/野口直希


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