『第11回Japan IT Week [秋] 2020』現地レポート

情報システム、経営企画、データストレージ、IoT、5G、AI、設計開発などのIT系の企業が出展する展示会がJapan IT Weekです。組み込みシステム関係のハード、ソフト、コンポーネント、AI活用、情報セキュリティ、IoTや5Gなどの先端技術がそろい、電子契約・電子はんこ、新型コロナ感染対策関連の技術も多く出展していました。IT関係の専門展ということで、幅広い業種業態の来場者がいたようです。

体温測定、3密の回避、マスク着用、手指衛生といった新型コロナ感染対策をほどこして実施し、この主催会社は医師と看護師を常駐させていました。そんなJapan IT Week 秋2020から興味深い技術を出展していた企業を紹介しましょう。

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ポスト5G時代向け「テラヘルツ帯の導波管」と「ガラスハーメチックシール」

戦前から通信用コネクタを作ってきた株式会社川島製作所(神奈川県川崎市)では、1925(大正14)年に創立当時の同社が作っていた金属製の鉄道模型の玩具が来場者の目を引いていました。説明してくださった同社開発センター主席の川原祐紀(かわはら・ゆうき)氏によると当時、外国人旅行者向けに販売し、その精巧さが評価されたと言います。

通信で電線同士をつなぐコネクタは、つなぎ目で信号が反射することでロスが生じ、コネクタに求められるのは1/100以下の許容範囲しかないそうです。そのため、インピーダンスの差をできるだけ少なくしなければならず、電線に固有の性質にコネクタの特性も合わせなければならないことが難しいそうです。

もちろん、同社のブースには玩具の鉄道模型以外に現在の技術も多く出展され、エレクトロニクスの分野で金属と絶縁体のセラミックスのように異なる素材の間を電気的に絶縁させつつ接合したり、気密封着を固定するために使われるガラスハーメチックシールのサンプルも展示されていました。

これはRF(Radio Frequency、無線周波数・高周波)デバイスで、信号線などの金属製ピンと絶縁体のガラスを加熱して熔着させており、封止にはコバールガラスとコバール金属といった熱膨張係数がほぼ同じ組み合わせの素材を使っています。また逆に熱膨張係数が異なる物質を用いて、お互いに圧縮し合うようにして封止する方法もあるそうです。

ガラスハーメチックシールのサンプルとRF用のパッケージデバイス(左写真)。同社の1THz用コルゲートホーン(Corrugated Horn)アンテナの受信用導波管(右写真)。右が円錐状の開口部、左が右の切断サンプル。この円錐状の内径に54μm幅で268の溝が掘られています。
ガラスハーメチックシールのサンプルとRF用のパッケージデバイス(左写真)。同社の1THz用コルゲートホーン(Corrugated Horn)アンテナの受信用導波管(右写真)。右が円錐状の開口部、左が右の切断サンプル。この円錐状の内径に54μm幅で268の溝が掘られています。


また同社は、国際プロジェクトとして南米チリの高地に設置された巨大なALMA電波望遠鏡に使われている超電導受信機の一部を開発したそうです。超高速マシニングセンタを使ってマイクロメートル単位の溝をアルミ合金や銅合金に加工することで1テラヘルツ(THz)の導波管を作ったと言います。

この溝は円錐状の内径に54μm幅の溝を268箇所、エンドミルで刻み、現在は1.5 THzの加工まで実現しています。電波望遠鏡の受信機は、波長が短くなればなるほど加工精度が求められるといい、最も波長が短いのがバンド10で、その受信機に使われる部品を同社が製作しました。

川原氏によると通信機は波長が短くなればなるほど本体も小さくする必要があり、その分高い精度が求められてくると言います。このテラヘルツ帯は電波と光波の間の電磁波で、5G以降の無線システムに欠かせない技術です。同社では現在、溝幅26μmの1.9 THz用の導波管に挑戦中だそうで、電波望遠鏡のみならず6G、7Gの実現に影響を与えるような技術だそうです。

白飛びや黒つぶれを対策する「カメラモジュール」

株式会社シキノハイテック(富山県魚津市)が参考出展していたのは、顔認証用のカメラモジュールです。HDR(High Dynamic Range)では解決できない白飛びや黒つぶれを指定したエリアで画像に映し出すカメラで、汎用のUSB2.0出力でMotion JPEG画像を取り込むことができるそうです。

同社は、カメラシステムや画像処理モジュールなどの開発、JPEG IP(Intellectual Property:知的財産)をベースにした独自の画像処理の設計、生産ライン用のLSIテスト開発、半導体デバイスをテストするためのバーンイン装置などを手掛けており、今回参考出展した技術は2021年春に市場へ出す予定だと言います。

 この顔認証用カメラモジュールはATM用カメラのニーズから誕生したそうで、多様な光線・照明環境にあるATM内でカメラが白飛びや黒つぶれなどなく画像を記録するために開発したと言います。実際、QRコードや社員証などの認証は光線や照明によって白飛びや黒つぶれが起きやすく、ナンバープレートの読み取りやファクトリー・オートメーション(FA)用の画像処理システムなどに応用できるそうです。

このカメラはローリングシャッターを使用しており、解像度は1280×720で100万画素、フレームレートは30fpsで、従来の開発中の基板に回路を加えたところ今回の技術が実現したと言います。

同社のブースのデモでは、露出オーバーな対象物とアンダーな対象物を並べこのカメラモジュールで撮影し、USB経由でモニターに映し出していました。実際にモニター上では露出が適正に映し出されていましたが、カメラを操作して画像処理を調整するためには、専用のアプリケーションをインストールしソフトで制御する必要があります。


同社が開発した白飛びや黒つぶれを対策するカメラモジュール(参考出展)。右には上下に楽器を演奏する人形が置かれ、上の人形は明るく照らされ、下の箱の中の人形は暗くなっています。
同社が開発した白飛びや黒つぶれを対策するカメラモジュール(参考出展)。右には上下に楽器を演奏する人形が置かれ、上の人形は明るく照らされ、下の箱の中の人形は暗くなっています。


工場や物流倉庫で効率よく情報共有する「ウェアラブル通知システム」

鈴与商事株式会社のブースでは、腕時計型のウェアラブル情報端末を活用した同社オリジナル開発の「ウェアラブル通知システム」と、スマートグラスを活用した「遠隔作業支援ソリューション」が展示されていました。この腕時計型のウェアラブル端末は、デジタルサイネージ(電子看板)などを手掛ける株式会社ピースリー(旧・株式会社トランザス)が開発したものです。

ブースで説明してくださったピースリーのプロダクト事業部プロダクトセールス部アカウントマネージャーの三好竜太(みよし・りゅうた)氏によると、本ウェアラブル端末は工場や物流倉庫などでメンテナスのガイドをしたり在庫管理をするウェアラブル端末だそうです。また、内蔵マイクを使ってさまざまなオペレーションが可能であり、5Mピクセルのオートフォーカスカメラも搭載、Wi-FiやBluetoothを利用して通信可能し、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信の一つ)タグでID認証としても利用することができます。

鈴与商事のブースでは、本ウェアラブル端末を使ったウェアラブル通知システムが展示されていました。これは、工場や物流倉庫、商用施設内の設備に備えらえた押しボタンやセンサー類からの信号を専用サーバーで受信し、ウェアラブル端末に通知する仕組みになっています。

故障や部品・商品不足といった原因で生産設備や物流がストップした場合、情報の伝達が遅れたり、複数の対応者が重複して現場に行って鉢合わせしたりするといった時間と人のムダがよく発生します。このシステムを使えば、製造ラインなどからの通知がI/Oユニットに送られ、ハブを経由して場内通信のアクセスポイントからウェアラブル端末へ情報を送ることができます。

担当者らが故障や在庫不足などの情報を共有することで、保守・保全・補充にかかる無駄な時間を省いたり、誰が対応しているのか誰も行っていないのかなどを把握し、業務の効率化をはかれるそうです。さらに、通知履歴、対応者履歴、通知時間、対応時間といった情報を記録することで、業務改善などの検討に使えます。

また、鈴与商事のブースでは、株式会社ブイキューブが開発した拠点間情報共有システムV-CUBEコラボレーションとRealWear製のスマートグラスを組み合わせた「遠隔作業支援ソリューション」というサービスも展示していました。これは音声によるハンズフリーの操作が可能なシステムで、現場の担当者と本部の管理者やベテラン技能者をWEB会議で繋ぎ、リアルタイムな情報共有による遠隔支援を可能にするのだそうです。


同社のウェアラブル通知システム。担当者の腕に装着したウェアラブル端末に音と振動でリアルタイムに情報を伝達し、複数の端末でデータの連携も可能。
同社のウェアラブル通知システム。担当者の腕に装着したウェアラブル端末に音と振動でリアルタイムに情報を伝達し、複数の端末でデータの連携も可能。


コロナ禍の中、幕張メッセで開催されたJapan IT Week秋でしたが、やはり5Gに関連する出展が目を引きました。会場内にはテレワーク用のエリアも設けられ、オンラインでの商談サービスも行われていました。来場者は前回(2019年秋)の約4万人に比べるとかなり減っていましたが、新技術や新サービスも多く出展され、活発な商談風景も見受けられました。


文/石田雅彦

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