『【NEXT150北海道プロジェクト】北海道 都市開発・建設総合展2020』現地レポート

北海道 都市開発・建設総合展は「NEXT150北海道プロジェクト」という複合展示企画の一つとして、都市開発や建設業の資材・技術・工法・管理・対策の製品・技術サービスに関する企業・団体が出展し、関係者との商談や情報交流のために初めて開催された展示会です。2020年は北海道札幌市で開催され、2021年6月には福岡県で開催される予定になっています。

新型コロナでインバウンド需要が打撃を受ける中、建設業界も深刻な影響をこうむっていると考えられます。本展示会がどのようなものになるか興味深いところでしたが、札幌市中心部から遠い開催場所であったにも関わらず、東京など道外から出展する企業も多く、会場内で関係者間の商談や情報交換が活発に行われていた印象がありました。

今回、札幌で開催された展示会では、入場時の体温測定、マスク着用、入場者数を制限するなど新型コロナの感染対策を実施し、65社が出展して会期2日間で約3,500人の来場者を集めていました。

実際、出展社や来場者に聞いてみると、北海道は大型開発の案件が多く、コロナ後を見すえればさまざまな資源が豊かで伸びシロは十分にあるとのことでした。また、職住近接型のコンパクトシティ需要や老朽施設の改修・修繕など新型コロナによりむしろ注目を集めている分野もあるそうです。こうした出展社の中からいくつか新技術を紹介しましょう。

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高耐食性で、施工も簡単な「埋設型枠」と排水効率を高めたメッシュ状の「水抜き鋼管」

フリー工業株式会社(東京都台東区)が出展していたのは、金属を網目のメッシュ状にした工法や建築資材です。説明してくださった同社建材営業部建材営業推進部長の西澤睦博(にしざわ・むつひろ)氏によると、例えば同社の埋設型枠は高耐食性めっき鋼板を使い、メッシュ状の金網にして作っているそうです。

材料の鋼板は、約11%のアルミニウム、約3%のマグネシウム、微量のシリコンによって構成されたアルミ・ガリバリウム鋼板に亜鉛を主にした溶融亜鉛めっき層をほどこしていると言います。それにより高い耐食性をもち、金網にする際にできる切り口を亜鉛めっき層がサビるよりも速くカサブタ状におおうことで切断面からサビることも防げるそうです。

この型枠を直接、コンクリート打設後に取り外さずに構造物の一部となる埋設型枠として使うことで、仮設型枠やその解体、外側の支保工が不要になると言います。さらに、金切りバサミなどによる切断や折り曲げなどの加工も容易で、施工もボルト締めで簡単に行うことができ、熟練職人がいなくても工期を短縮することができるそうです。

型枠の撤去によるゴミの発生も少なくなり、メッシュ状のため、動植物への影響も少なくできると言います。熟練職人不足、人手不足に悩む建設業界で評価されているそうで、同社の商品は新技術活用のために国土交通省が整備したデータベース、新技術情報提供システム(NETIS)に指定されているそうです。

同社は1975年に急斜面などののり面を升目状に補強するコンクリート枠、フリーフレーム工法を開発したそうで、当時から金網金型による技術開発を進めてきたと言います。そうした技術の一つとして出展していたのが、鋼管の上部をメッシュ状にして排水効率を高めた水抜き鋼管です。盛土や切土、斜面などの排水により、防災対策に役立つそうです。

同社の埋設型枠。ボルト締めで設置が可能だそうです。堤防、擁壁、ブロック積の代替、石積の補強などに使えると言います。
鋼管の半周をエキスパンド加工した同社の水抜き鋼管。斜面などに直接、打ち込んだり、埋設したりして施工すると言います。

点検の省人化と効率化、高速化に向けた「水道管点検用ドローン」

株式会社北王インフラサイエンス(北海道帯広市)が出展していたのは、配管内を飛ばす点検用ドローンです。説明してくださった同社監査役の石田純一(いしだ・じゅんいち)氏によると、同社は上下水道などのインフラに関するコンサルティングを行っている株式会社NJS(東京都港区)のグループ社で、上下水道、農業用排水施設、発送電施設、道路などの調査点検事業を行うために設立されたそうです。

石田氏によれば、全国の下水管は設置してから年月が経過して老朽化が進み、修理の必要性が高まっている下水管の保守点検のニーズが増えてきているそうです。2015年に改正下水道法が施行されたことで5年に1度の点検が義務付けられ、今後は点検の省人化と効率化、高速化が求められてくると言います。

この点検用ドローンはNJSのドローン開発部が開発した一種のホバークラフト型ドローンと言います。管径400㎜から1,500㎜の埋設管などの閉鎖環境に入れ、調査員が行うよりも安全に速く点検できるそうです。石田氏によると、従来のビデオカメラと目視を使った調査方法が1日あたり300mから450m(秒速10㎝)なのに比べ、このドローンを使うと1日あたり1,000mから1,500m(秒速50㎝、最大秒速3m)になると言います。

操作はWi-Fiにより行うそうで、約100mの遠隔操作が可能といい、通常のマンホールの間隔は約50mだそうです。GPSが届かない環境のため、スタックした場合に備えて回収用のヒモをつけて飛ばすと言いますが、秒速50㎝の速度でも安定した動画撮影が行えるそうです。また、ドローンから得た画像でAIを使った画像解析をし、管内の劣化状況を自動で評価するシステムを開発中と言います。

同社の点検用ドローン。バッテリーを含んだ重量2kg、プロペラは浮上用4基、推進用1基、全長57㎝、全幅28㎝、飛行時間は約5分、前方に照明用LEDをつけ、操作用カメラと4Kの点検用カメラで調査するそうです。
同社の点検用ドローン。バッテリーを含んだ重量2kg、プロペラは浮上用4基、推進用1基、全長57㎝、全幅28㎝、飛行時間は約5分、前方に照明用LEDをつけ、操作用カメラと4Kの点検用カメラで調査するそうです。


掘削要らず、工期を短縮可能な「山留め式擁壁」

景観壁体研究会という団体が出展していたのは山留め式擁壁の技術です。この団体は日特建設株式会社(東京都中央区)、日本コンクリート工業株式会社(東京都港区)、日本建設技術株式会社(佐賀県唐津市)の3社によって設立されました。同団体が提供している工法というのは、親杭とコンクリートパネルを一体化した薄肉壁体構造によって土留壁や遮音壁などに使うそうです。

この工法を使えば、大規模な掘削を必要とせず、各種アンカー工法と併用することで現場条件に合わせた施工方法を選択でき、高い壁を構築できると言います。従来の工法よりコストはやや高くなるそうですが、工期を短縮でき、早期の災害復旧などに効果的だそうです。

長大切土法面や基礎掘削が多くなる急斜面での道路拡幅工事などで切土や残土が多く出ることが問題になったりするそうですが、この工法では背面の盛土材に残土などを使うことができ、切土や残土の発生も少なくできると言います。また、景観に配慮した壁面を作ることが可能だそうです。

同団体の山留め式擁壁のミニチュア模型。基礎にH鋼を立ち上げ、H鋼に親杭のコンクリートパネルを設置し、モルタルで中詰し、必要に応じてグラウンドアンカーやタイロッド(つなぎ材)を打ち込むなどして強度を確保するそうです。
同団体の山留め式擁壁のミニチュア模型。基礎にH鋼を立ち上げ、H鋼に親杭のコンクリートパネルを設置し、モルタルで中詰し、必要に応じてグラウンドアンカーやタイロッド(つなぎ材)を打ち込むなどして強度を確保するそうです。


空気は通すが、水分は通さず木材の改質する「ガラス塗料」

株式会社ニッコー(東京都八王子市)が出展していたのはガラス塗料の一種です。説明してくださった同社工事統括部長の池洋一郎(いけ・よういちろう)氏によると、ガラス塗料やALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)技術の一種で、ケイ素とアルコールに詳細はノウハウで明かせないという物質を加え、木材に含浸させてガラス状に固化するのだそうです。

ガラス塗料が空気や水を通さず、ALCが空気と水を透過させるのに比べ、同社の製品は空気は透過するものの水分は通さないと言います。そのため、木材の呼吸を止めずに木材の改質が可能で、木材特有の質感や香りを維持しつつ、曲げや反り、割れ、ささくれを防止し、耐久性を向上させることができるそうで、シロアリ対策にも効果的で木材が腐りにくいそうです。

同社のガラス塗料とそれを含浸させた木材。木材の表面はガラス状になっているため、油性マジックなどで文字を書いてもにじまないそうです。
同社のガラス塗料とそれを含浸させた木材。木材の表面はガラス状になっているため、油性マジックなどで文字を書いてもにじまないそうです。


北海道では、新幹線の延伸や北海道ボールパーク、札幌市近郊の再開発、ウポポイ(「民族共生象徴空間」の愛称)や冬季スポーツイベントの誘致など、特有の広い土地を活用できる大型の開発案件が進められてきましたが、コロナ後にはこれらが再開すると考えられています。今回の北海道 都市開発・建設総合展2020は、そうした北海道の可能性を見込んだ企業の出展も目立った展示会でした。



文/石田雅彦

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