デジタル化社会の到来にどう備えるか(2) (2/3)

古い生産設備をIoT化し、めざましいDXを実現した旭鉄工

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

古い生産設備をIoT化し、めざましいDXを実現した旭鉄工

『Small Factory 4.0 第四次「町工場」革命を目指せ!』 
-IoTの活用により、たった3年で「未来のファクトリー」となった町工場の構想と実践のすべて

 木村 哲也 著
 三恵社
 2018/08 128p 1,500円(税別)


現場の課題解決に向けた小さな取り組みも立派なDX

「DX」と聞くと、大企業が大規模なITシステムを導入するイメージが思い浮かぶ。

だが、先述のようにDXがデジタル技術を活用した継続的なカイゼン活動である以上、現場の課題解決に向けた小さな取り組みからスタートするのも、立派なDXだ。

本書『Small Factory 4.0 第四次「町工場」革命を目指せ!』は、町工場規模の中小企業である旭鉄工株式会社(以下、旭鉄工)が、生産ラインのIoT化で生産性向上に成功し、その経験とノウハウを生かした新ビジネスを立ち上げるまでのドキュメンタリーだ。

著者の木村哲也氏は旭鉄工の現社長。トヨタ自動車でトヨタ生産方式によるカイゼン活動を指導し、2013年に旭鉄工に転籍後、生産ラインのIoT化を推進した。

IoT化以前、旭鉄工の生産設備の多くは、データを取る仕組みを持っていない古い機械だったそうだ。木村氏は、どのようにして、そのような古い生産設備をIoT化し、DXを実現したのだろうか。


改善サイクルを回すために必要なシステムを手作り

木村氏は先述の「DXの基本プロセス」を繰り返し実践してきたといえる。
 
木村氏は、生産ラインのパフォーマンス改善という目標を立てる。そしてその実現のために、ラインの稼働時間や、サイクルタイム(製品1個作るのに必要な時間)などを自動測定しようと、次々にアイデアを出し、検証しながら、必要なシステムを手作りしていった。

例えば稼働時間については、ライン停止時の異常検知信号を無線モジュールを使って小型PCに飛ばし、PCで時刻情報を加えてクラウドにアップロードすれば、自動測定したデータを蓄積することができる。

データの自動計測により日々の正確なデータが得られるようになれば、ライン停止の原因の洗い出しと、対策の検討という改善サイクルを毎日回せるようになる。

その結果、ラインのパフォーマンスは見る見るうちに向上していき、計画していたライン増設が不要になりコストが減る、といったビジネス面のメリットも確認された。

ここまで検証できれば、本格的に投資をして、本番システムを開発できる。

こうして旭鉄工は少しずつ「製造ライン遠隔モニタリングシステム」を完成させていった。

さらに木村氏は「このシステムは他社にもメリットがあるのでは?」と発想。i Smart Technologies株式会社(iSTC)を設立し、他社のラインのモニタリングやコンサルティングのサービスを事業化した。

もし、DXをどこから始めるべきか悩んでいるなら、自社の主要な事業や業務のパフォーマンスを数値で把握しているか、確認してみるといい。もし誰も正確に把握していなければ、そこを御社のDXのスタート地点とするのがいいだろう。


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