『第1回 AI・人工知能EXPO 【秋】』 現地レポート

昨今急速に実用化が進み、さまざまな業界で注目を集めているAI(Artificial Intelligence :AI、以下AI)。2020年10月28日(水)〜30日(金)に開催された「第1回 AI・人工知能EXPO【秋】」では、そんなAIを活用したソフトウェアやハードウェア開発企業、コンサルタント企業などが多数出展し、あちこちのブースで商談を前提にしたやりとりが交わされていました。今回そんなブースの中から、製造業の業務効率を高めてくれるサービスを紹介します。

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AI画像認識技術で、製造業現場での検品作業を代替

アクティベートデータ代表取締役社長兼CEO 森田尚也氏
アクティベートデータ代表取締役社長兼CEO 森田尚也氏

名古屋を中心にAI人材の育成や派遣を行う株式会社アクティベートデータ。同社が開発するのは、AIを用いた画像認証サービスです。蓄積した教師データを参考に、製品の異常や特定の人物のトラッキング(追跡)をこなします。

用途として想定されるのは、例えばフィットネスクラブでの人物トラッキングです。フィットネスマシンのバーに押しつぶされそうな状態といった危険状態の人を感知してアラート。迅速な対応を可能にします。

同社の代表取締役社長兼CEOの森田尚也(もりた・ひさや)氏によれば、画像認識による人物トラッキングは役立つのはそれだけではありません。「骨格で会員を識別してトレーニング内容をスマホに自動記録したり、器具ごとの使用状況を正確に把握したりするなど、ユーザー体験向上につながる機能も開発しています」(森田氏)

さらに、画像認証は製造業でも活躍します。これまで作業員の目視で実施していた検品作業を代替。あらかじめ正常な製品と異物の画像データをAIに認識させておくことで、ベルトコンベア上の異物をAIが察知。すでに8割以上の精度を誇り、人件費の大幅な削減を可能にしているそうです。こちらは早ければ2021年中にもリリースされる予定だそうです。

ほかにも、アクティベートデータではバッテリーや機械部品が時間変化によってどのように劣化していくかを予測するサービスや、不動産オークションの適正価格を推測するサービスなど、AIを用いたさまざまなサービスを開発中。多方面からAIビジネスの可能性を探ります。

欠陥検査向けAI画像解析技術を初期費用無料で提供するビジネスモデル

Anamorphosis Networks代表取締役 炭谷翔悟氏
Anamorphosis Networks代表取締役 炭谷翔悟氏

京都大学発のベンチャー企業である株式会社Anamorphosis Networks(アナモルフォシスネットワーク)が開発する「49Mierre」も、同じく画像解析技術を使ったAIサービス。認識した画像の中にある傷や異物の検出や、それを視認しやすくする「欠陥強調力」が強みです。

このサービスはすでに小麦粉に紛れ込んだ毛髪などの異物混入や、木目状の製品についた傷などの検出といった事例で活躍。画像撮影の際にある程度の影が入ってしまっても、問題なく検出できるそうです。

「それ以上にサービスが特徴的なのはその提供形態です」と同社の代表取締役である炭谷翔悟(すみたに・しょうご)氏は語ります。同社が採用しているのは、ソフトウェアの購入を検討している人に初期費用無料で実際にソフトを使用してもらうというビジネスモデル。プログラミング不要で直感的に操作できるため、従来のオープンソースソフトウェアに比べて使用のハードルが低くなっているそうです。

「弊社製品の主なユーザー層は中小製造業の方々ですが、そうした企業にはAIを使いこなせる人材がいないことが少なくありません。そこでソフトウェア操作の敷居を大幅に下げ、あらゆる方にAIを導入してもらおうとしています。とはいえ、それでも本当に使いこなせるかどうかはわからないはず。そこで、実際にソフトウェアに触れてもらうことで製品の魅力を知ってもらうという、論より証拠の提供形態にしたんです」(炭谷氏)

評判も上々で、2020年7月に提供を開始して以来、すでに200件以上も導入され、問い合わせも後が立たないのだとか。製造業におけるAI導入の敷居を下げるきっかけになるかもしれません。

教師データを自動生成、製造業における機械学習導入のハードルを下げる

シリコンスタジオ株式会社テクノロジー事業本部マーケティングコミュニケーション室室長 中野倫太郎氏
シリコンスタジオ株式会社テクノロジー事業本部マーケティングコミュニケーション室室長 中野倫太郎氏

いまや製造業においてもさまざまな用途で使用されている機械学習。しかし、その精度を高めるための準備も用意ではありません。シリコンスタジオ株式会社 テクノロジー事業本部マーケティングコミュニケーション室室長の中野倫太郎(なかの・りんたろう)氏は、製造業が機械学習を導入する際に以下のようなハードルがあると説明します。

「例えば、機械学習を活用して不良・欠陥品を識別するためには、傷や汚れのついた製品の画像を大量に用意しなければなりません。しかし、単価が高い製品の場合は欠損品のサンプルをつくるだけでも莫大なコストがかかってしまうんです」(中野氏)

そこで活躍するのが、同社が開発する「Defect image Generator」。これは機械学習の教師データとして用いる画像データを、さまざまなパターンで自動生成してくれるサービスです。

本サービスでは線傷や打痕といった傷の種類を選択できるうえに、長さ、深さ、位置、さらには光源の位置といったパラメータを自由に調節可能。1ステップで数千枚もの画像を生成します。また、作成したデータは傷の種類などでラベリングできるので、実際に写真を撮影した場合よりも手軽に管理・分類できるのもメリットです。さまざまな材質に対応しており、液体の画像を作成することもできます。

同社では、本サービスを買い切りのソフトとして購入するほか、単発での教師データ作成を委託することもできます。同社はもともとオンラインゲームなどを運営している企業。近年の機械学習の盛り上がりを受けて、今年から教師データの作成事業を始めたそうです。

要件定義時に役立つ、ベテランの熟練暗黙知を再現するAIエンジン

SOLIZE株式会社 Innovationsカンパニー マネージャー 勝浦秀文氏
SOLIZE株式会社 Innovationsカンパニー マネージャー 勝浦秀文氏

最後に紹介するのは、SOLIZE株式会社が開発する設計業務特化型のAIソリューション。一言で説明すれば、これはベテランの解釈や判断をAIで再現し、交渉や要件定義に活かすことができるサービスです。

では、どのような仕組みなのでしょうか。同社のInnovationsカンパニー マネージャーの勝浦秀文(かつうら・ひでふみ)氏は、本サービスの根幹は熟練暗黙知の形式知化技術と自然言語処理AI技術を掛け合わせた独自開発のAIエンジンにあると言います。


「過去の技術文書を構造化し、キーワードやポイントとなる部分をピックアップしてデータベースにします。これによって必要な知識が的確に整理されたベテラン社員の暗黙知を再現するのです」(勝浦氏、以下同)

この仕組みが活躍するのは、クライアントからの要求文書(RFQや関連する技術文書)をもとに要件定義し、交渉するタイミングです。まず、クライアントからの技術文書を読み解き、注目すべき箇所を自動検出。さらに、抽出した箇所に関連性が高い過去の類似情報や関連するナレッジ情報、交渉内容などの実績情報もピックアップしてくれます。

これにより膨大な文字量の文書を読み込む時間を削減できるほか、文書の読み落としや解釈間違いを防止。ベテランスタッフでなくてもポイントを的確に把握しながら、過去の組織経験と関連付けてクライアントへの確認や交渉の要否と提示方法を判断できるので、的確な交渉ができるようになります。もちろん、データを増やしたりベテランスタッフがチューニングしたりすることで、さらに精度を高めることも可能です。

本サービスの導入によって案件の処理数が4倍になったという事例もあるそうです。しかし勝浦氏は、「その効果は単なる時間削減にとどまりません」と話します。

「最もうれしいのは効率化によって生み出した時間という原資をより攻めの提案や新規開拓に再投資するなど、戦略的業務を推進できるようになることです」

主なユーザーはプラントエンジニアリングや建設業界、海外企業と自動車部品メーカーなど、プロジェクト案件の規模が大きく、要件定義の重要性が高い業界です。現在のサービス形態はソフトウェアとコンサルティングの併用ですが、より価格を抑えたSaaS(Software as a Service)での提供も検討中。将来的には、より幅広い規模の企業が利用できる環境を用意するそうです。


文/野口直希

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