ネプコンジャパンは東京(幕張メッセ)と名古屋で年1回ずつ開催される電子部品・材料や製造・実装・検査装置といったエレクトロニクス関連の展示会で、半導体・センサー、電子部品、自動車・電装品、航空・宇宙などのメーカーが出展しています。併催されるオートモーティブワールドではクルマ関係・自動車業界の展示会で自動運転技術、電動化、軽量化といった技術が展示され、ロボデックスでは自動化、省人化といったロボット技術の関連企業が出展しています。
3回目となった名古屋でのネプコンジャパンですが、過去の展示会と同様、自動車関連のオートモーティブワールドやロボット関連のロボデックスも併催され、自動車産業のお膝元である名古屋での開催とあって関連企業の来場者も多い展示会です。
入場制限や入場時の体温測定、3密を避ける対策などが行われていました。出展取りやめのブースも散見され、新型コロナの影響はあるようですが、今回の来場者数は約2万人。第2回(2019年)来場者数は併催展示会を合わせて3日間で3万6,874人でしたから、コロナ禍の影響を考えればまずまずだったと言えるのではないでしょうか。
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高周波数を用いたインバータ式抵抗溶接と、異種金属接合向け超音波接合技術
抵抗溶接や超音波接合など、接合技術を展示していたのは日本アビオニクス株式会社(横浜市都筑区)です。抵抗溶接は、金属母材の抵抗発熱によって溶接する方法で、母材を溶接電極で挟んで加圧しつつ電気を流して溶接するそうです。電池のタブ溶接やモーターやマイクなどの極細のワイヤー溶接で使われていると言い、同社のインバータ式抵抗溶接電源は、周波数を切り替え式にし、交流を整流して直流にして周波数を細かく高精度に制御できると言います。
インバータ式抵抗溶接では、周波数が高いため熱効率が良く、スズメッキ銅合金の精密溶接に適し、電流、電圧フィードバック制御により安定した品質が期待できるそうです。基本的に空冷による冷却ですが水冷トランスを組み合わせることができる電源もあると言います。

また、同社のブースには超音波を使った金属接合機も展示されていました。超音波振動で表面の酸化皮膜を破壊することで固相接合を可能にする装置です。銅とアルミ、アルミとニッケルなど異種金属接合の場合、多彩な制御法と品質を判定できるモニタリング機能によって、溶融接合時に接合界面の境界に発生する脆弱な金属間化合物を抑制することで接合強度を上げることができると言います。

クルマのフレームやピラー向け超ハイテン材(超高張力鋼)の冷間加工技術
オートモーティブワールドのエリアに出展していた株式会社エイチワン(埼玉県さいたま市)では、超ハイテン材(超高張力鋼)の冷間加工技術の成果部品を展示していました。同社はフレームやピラーといったクルマの骨格を製造している企業で、ほかにバイク用の部品なども生産しているそうです。
クルマのフレームなどは、材料である薄鋼板を部品のサイズや形状に合わせて打ち抜き、プレス機で立体成型し、溶接工程などを経て作ると言います。薄鋼板はハイテン材、さらに強度を高めた超ハイテン材などが使われるようになっているため、同社のプレス機も2,500tや3,000tといった大型のものを設置して対応しているそうです。
ハイテン材は490MPa以上のものがハイテン材(高張力鋼)といわれ、同社では2010年モデルとして上部ピラーに980MPaの超ハイテン材(超高張力鋼)を使っていたと言いますが、展示されていたのは1,470MPa材を使った冷間加工技術による上部ピラーでした。一般的に、高強度になるほど鋼材の延性が下がり、亀裂やシワが発生したり、加工精度が下がってネジレが発生したりするそうです。
同社は、ピラーの部品形状をCAE(Computer Aided Engineering)のシミュレーション解析を使って検討し、トライアンドエラーで面内の応力の不均一性を下げる努力を続けた結果、2010年モデルより18%(試算、下部ピラーとの合計重量3,663g→2,988g)の軽量化を亀裂やネジレ、シワの発生を抑制しつつ実現したと言います。

高強度CFRTP板材を制作する自動積層装置
熱成形プレス技術を基盤にしてプレス関連装置などを作っているのが北川精機株式会社(広島県府中市)です。同社のブースに展示されていたのはCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics、炭素繊維強化熱可塑性樹脂)の自動積層装置と製品例の板材です。
同社のCFRTP素材は、加熱することでプレス加工などによって形状を変えることのできる熱可塑性があり、長方向の炭素繊維を任意の角度に配置した厚さ0.1mmから0.3mmのCFRTP素材を角度を変えて十数枚、積層することで加工性を高めているそうです。
例えば、2mm厚のCFRTP素材は14枚の積層によって構成されているといい、コストを別にすれば一般的なハイテン材の10倍の強度をもつと言います。CFRTPの1方向連続繊維(UDテープ)から任意の角度方向をもった800mmから1,200mmのシートを作成できる装置もあるそうで、この装置と積層を自動で行う装置とでCFRTPの板材を作ることができると言います。
また、同社の熱可塑性樹脂やCFRTPなどの成形用プレス装置は、シート材の予熱ヒーターと搬送機構、プレス機構を真空チャンバー内におさめているため、加熱による樹脂の酸化劣化を抑制することができるそうです。
1方向連続繊維(UDテープ)のCFRTPは強度や弾性に優れていますが、それを任意の配向に積層させることでさらに強い板材になると言います。樹脂の高い含浸性と繊維の直線性が特徴ですが、今後は板材の量産化とプレス成形技術の改良を行っていくそうです。

人間の手がもつ触覚情報の検出機能を人工的に作り出した触覚センサー
ロボットハンドなどに使われている触覚センサーは多種多様なものが開発されていますが、ロボデックスのエリアに大日方五郎(おびなた・ごろう)名古屋大学名誉教授(現・名古屋産業科学研究所シニアフェロー)が開発した技術を用いた触覚センサーを出展していたのが株式会社太田廣(名古屋市中川区)です。
説明してくださった大日方氏によると、これは人間の手がもつ触覚情報(力、滑りやすいさ、表面性状、温度など)の検出機能を人工的に作り出したセンサーで、ロボットハンドの指先で対象物との力学的関係(触覚情報)を検出できるそうです。
人間の指先は繊細なセンサーになっていますが、爪の存在が意外に重要でこのセンサーにも裏側に爪の代わりのアクリル板がつけられています。材質はエラストマーというゴムの一種で、内部には粘度の高いウレタンジェルが充填されていると言います。小さなドーム型をしたエラストマーの内側にはドットが印刷されていて、このドットの大きさの変化や歪みを裏側からCMOSカメラで読み取ることで対象物の情報を解析するそうです。

例えば、対角線上の4つのドットの距離を計測すると直線方向に動く力が、中央の3×3、9個のドットの歪みを計測するとせん断力と方向が、中央の5つのドットの歪みを計測すると回転させるモーメント力が、それぞれ推定できると言います。また、ドットの領域ごとの移動量の変化によって滑りやすさを推定できたり、エラストマーに温度感知材を使えば温度の可視化ができるそうです。
大日方氏によると、エラストマーの硬さ、ウレタンジェルの粘度の選定、CMOSカメラのレンズの焦点距離に苦労したと言います。すでにこのセンサー技術は、筋力が低下した電動車椅子の使用者向けに弱い力でも操作できるジョイスティックとして実装化されているそうです。また、機械学習を用いて、割ってみないと熟度がわからないアボガドの選定などにも応用できると言います。

コロナ禍の中ポートメッセなごやで開催されたネプコンジャパンでしたが、エレクトロニクス技術やクルマ関連技術、ロボット技術はもとより、AI技術、5G、航空・宇宙などの企業も出展していてバラエティに富んだ展示会になっていました。
文/石田雅彦
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