『関西ものづくりワールド2020』、『第8回関西高機能素材Week』現地レポート

ものづくりワールドは毎年、東京、大阪、名古屋で製造業の「短期開発、生産性向上、品質向上、VA/VE、コストダウン」に寄与することを目的に開催されるものづくり関連の展示会です。幕張メッセで開催された東京の展示会は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が本格化する前の今年2020年2月に行われ、感染対策をして9月には名古屋の愛知国際展示場ですでに開催されています。また同時開催の高機能素材Weekは東京と関西で年に2回行われ、今年は12月に東京で開催予定されています。

大阪での本展示会も十全な感染対策を実施し、710社が出展してインテックス大阪で10月に行われました。前回の出展社数が1,350社でしたから、やはりコロナ禍の影響が大きく約半分の規模になったことになります。ただ、出展社の声を聞くと、実際に製品や実機、デモなどの実物を目にしたり手にとったりすることのできるリアル展示会のほうが参考になり、商談でも顔を合わせることでのメリット、偶発的な出会いやマッチング、参考になる他社展示といった良い面が遠隔での展示会より多いとのことでした。

来場者数は関西ものづくりワールドと関西高機能素材Weekで別々の集計を発表していますが、両方に足を運んだ人も多いと思われます。ただ、今回の展示会はオンライン商談サービスの登録も行っており、その分の参加者数はカウントされていないことを考慮すると本展示会へ参加した実数はもう少し多いのではないでしょうか。
会場に入ると来場者が思ったほど少なくないと感じました。ただ、出展見合わせの案内が掲示されたブースも目立ち、VIPエリアや休憩エリアのスペースも広く取ってあるのもわかりました。


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ロストワックス精密鋳造によるさまざまな加工事例

本展示会には、ロストワックス鋳造の企業がいくつか出展していました。ロストワックス鋳造とは、蝋で原型を作り、その周囲を石膏などを鋳型としておおい、型枠が固まってから加熱して中の蝋を溶かして取り除き、型に金属などを溶かして流し込み、型枠の鋳型を取り除けば金属によって鋳造された製品ができるという製法です。

仏具や工芸品などブロンズの鋳造に長く用いられてきた鋳造方法ですが、最近では精密鋳造としていくつかの企業が取り組んでいるそうです。ただ、ある出展社によると、国内ではこの10年で企業数が1/3程度にまで減っていると言います。

妙中鉱業株式会社(千葉県茂原市)は、アンダーカット(離型、抜きが難しい複雑形状)が難しい鋳造をロストワックスで解決するような展示をしていました。例えば、蝋で作った型をツリー状にくっつけて量産する過程、ツリー状の型を石膏で固めた様子などです。溶接が必要な部品もアンダーカットを解決することで可能になり、部品点数を格段に減らすことができると言います。また、ロストワックス鋳造では、部分的に肉厚を調整できたり、鋳肌が砂鋳物よりきれいなため、後工程の磨きが不要といった利点があるそうです。


妙中鉱業では抜きが難しいアンダーカットを解決するロストワックス鋳造のわかりやすい展示、ロストワックス鋳造の方法などを展示していました
妙中鉱業では抜きが難しいアンダーカットを解決するロストワックス鋳造のわかりやすい展示、ロストワックス鋳造の方法などを展示していました


キングパーツ株式会社(広島県福山市)は、ロストワックス鋳造の精密鋳造技術による多数の具体的な展示をステンレスやアルミなど、多種多様な素材で行っていました。特にコストダウンと小ロット生産、短納期の実績を中心に訴求していたのが印象的でした。


キングパーツの展示では多種多様なロストワックス鋳造の事例が比較展示されていました
キングパーツの展示では多種多様なロストワックス鋳造の事例が比較展示されていました


ロストワックス鋳造による戦艦ヤマトの展示に人だかりがしていたのが、株式会社キャステム(広島県福山市)でした。同社の技術では、蝋で型を作ってツリーにし、その後、セラミックでコーティングして鋳型を作ると言います。薄肉や複雑な三次元曲線の製品やローコスト化が特徴だそうです。また、キャステムではメタルインジェクションモデリング(金属粉末射出成形、Metal Injection Molding:MIM)による金属加工も行っており、強度に優れた部品を作ることができるという展示もしていました。


キャステムで展示されていた戦艦ヤマトは、3Dプリントから鋳造したものの拡大版で、京都先端科学大学と協働で研究している超微細3D造形技術により作られた髪の毛より小さいステンレス製の戦艦ヤマトをロストワックスでスケールアップしたそうです
キャステムで展示されていた戦艦ヤマトは、3Dプリントから鋳造したものの拡大版で、京都先端科学大学と協働で研究している超微細3D造形技術により作られた髪の毛より小さいステンレス製の戦艦ヤマトをロストワックスでスケールアップしたそうです


メタルインジェクションの一種でセラミックの粉末も扱う加工技術をパウダーインジェクションモデリング(粉末射出成形、Powder Injection Molding:PIM)というそうですが、そのパウダーインジェクションモデリングの出展をしていたのが株式会社アテクト(滋賀県東近江市)です。

これは、金属やセラミックなどの微粉末と樹脂などの有機性のバインダー(つなぎ)の混合物を射出成形する製法で、チタンなどの融点が高い金属を高精度で成形することが可能と言います。同社は、バインダーから最終製品まで一貫して製造しているそうで、基板のヒートシンクや自動車のローターなどをパウダーインジェクションモデリングで作っているそうです。


アテクトの自動車用ターボローター。つなぎになるバインダーと金属やセラミックの粉末を混練し、金型の中で射出成形し、バインダーを脱脂して取り出すそうです。バインダーから一貫製造するため、ヒケや変形の少ない成形物を作ることができると言います。
アテクトの自動車用ターボローター。つなぎになるバインダーと金属やセラミックの粉末を混練し、金型の中で射出成形し、バインダーを脱脂して取り出すそうです。バインダーから一貫製造するため、ヒケや変形の少ない成形物を作ることができると言います。


家庭向け植物工場と、紫外線照射による減菌装置、そしてマグネシウム合金ボルト

LED光源などを利用した植物工場は広く行われるようになっていますが、栽培される野菜などはBtoCが増えているものの、ユニット自体で一般家庭のガレージなどを利用した手軽なものはまだあまり多くありません。本展示会に出展していたスパイスキューブ株式会社(大阪市西区)は、Withコロナ時代を踏まえて「モバイル型」と称した一般家庭向けの植物工場を開発したそうです。

この製品は1平方メートル以下の場所に設置できるポータブル型のIoT植物工場で、展示場ではベビーリーフなどの葉物野菜の光合成に適したピンク色の光源で展示されていました。この色はスイッチで通常の白色光源に変えることができます。

製品キットは肥料の水溶液を貯める下部のタンク、組み上げるポンプ、タンクへ循環させるパイプ、光源とフレームで構成されています。導入コストは1畳の面積で約50万円、肥料は年に3,000円程度、葉物野菜の種なども供給してくれるそうです。このキットにより、クリスピーレタスなどのレタス類、ビーツ、ケールなどを家庭で栽培できるようになると言います。

スパイスキューブの一般家庭用IoT植物工場。ピンク色のLED光源で出展されていて会場では目立っていました。光源の下には肥料の水溶液が循環するパイプからレタス類が育っていました。
スパイスキューブの一般家庭用IoT植物工場。ピンク色のLED光源で出展されていて会場では目立っていました。光源の下には肥料の水溶液が循環するパイプからレタス類が育っていました。


セン特殊光源株式会社(大阪府豊中市)が展示していたのは、紫外線によってオゾンガスを発生させ、紫外線を照射して環境中の減菌をする装置です。この会社は、紫外線(UV)による魚介類の養殖の殺菌装置やシステムを提供しているそうで、今回のものは強い酸化力と残留性がないオゾンガスを発生させる装置で据え付き型と可搬型です。

説明担当者によると労働環境のオゾン濃度は0.1ppm以下と定められていますが、例えば新型コロナウイルスを消毒するためには1〜6ppmの濃度が必要だそうです。細菌やウイルスの減菌に効果を発揮させるためには、紫外線もオゾンガスも人体にも悪影響があります。

この装置は、人がいる場合は室内の空気を装置内へ取り込んで紫外線で有人で減菌し、人がいなくなった環境では4ppmの濃度のオゾンガスを無人で発生させるように切り替えると言います。再度、人がいる環境になった場合、室内の換気をすると約30分で労働環境基準のオゾンガス濃度へ減衰するそうです。

対象の空間は、天井までの高さ2.5m、162㎡(約100畳)で、紫外線もオゾンガス発生も同じ紫外線を発光するオゾンランプを使い、紫外線は254nm、オゾンガスは18nmの紫外線を利用して発生させ、有人モード、無人モードで使う2本のオゾンランプ、オゾンフリーランプを使うと言います。オゾンフリーランプのほうはオゾンガスの分解を促進させる効果があり、人がいる環境で換気すると同時にオゾン濃度を下げるために使うそうです。

今回の装置の開発には、可搬型で紫外線とオゾンガスの発光・発生装置と電源を統合すること、温度管理に苦労したと言います。また導入コストは約100万円だそうです。


オゾンガスと同様、波長によって紫外線も人体に有害です。特に目に障害を起こすなど、波長270nmを前後に危険度が高くなります。この装置は有人モードで有害な紫外線をカットしているそうです。
オゾンガスと同様、波長によって紫外線も人体に有害です。特に目に障害を起こすなど、波長270nmを前後に危険度が高くなります。この装置は有人モードで有害な紫外線をカットしているそうです。


マグネシウム合金は軽量で高強度などの利点がありますが、伸びにくいため塑性加工が難しくネジやボルトにはなかなかできないという問題がありました。本展示会で株式会社丸ヱム製作所(大阪府大東市)が出展していたのは、レアアースを含まないマグネシウム合金(AZX912)ボルトです。このボルトは、線材に転造でネジを切り、軸力低下が小さくて緩みにくく、熱応力も小さいと言います。また、頭部やリセスは、ナベ、皿、アプセット六角、十字、ヘクサロビュラなどの形状の量産化対応が可能と言います。


丸ヱム製作所のマグネシウム合金のネジ類。軽量で高強度のほか、電食しにくく熱応力が小さいといった特性があるそうです。
丸ヱム製作所のマグネシウム合金のネジ類。軽量で高強度のほか、電食しにくく熱応力が小さいといった特性があるそうです。


このように新型コロナウイルス感染症対策が講じられて本格的に開催されつつある展示会の一つとして開かれた関西ものづくりワールドでしたが、出展企業や来場者はまずまずの数になったのではないかと思います。出展社が少なかったせいもあってか、会場は広々としていて開放感がありました。

本展示会では関西圏を中心に出展社も戻りつつあるようで、遠隔ではなくやはりリアルな展示会の重要性が再認識されているようです。展示会からの感染クラスターが出れば、また状況も変わってくるのかもしれませんが、当面は例年並の内容に向けて少しずつ回復させていくというになるでしょう。



文/石田雅彦

 

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