アルミニウムの特徴を活かした押出加工〜アルミニウムの基礎知識(3)

アルミニウムは、私たちの生活に欠かせないものです。アルミホイルのような薄い箔の形状から、アルミサッシのような建築材料、トラック、バス、新幹線、飛行機、自動車部品、橋の欄干、家電、産業機械など、薄いものから大きなものまで、さまざまな形状を製造することができます。非常に加工性が良いのです。

アルミニウムの加工方法には、圧延、鋳造、ダイカスト、鍛造、押出などいくつもの種類がありますが、その中でも特に、アルミニウムの得意な加工方法が、押出です。押出はある温度まで加熱することで柔らかくなったアルミニウムを、穴の空いた鉄の金型に強く押し付けることで穴の断面形状を持った長い棒をところてんのように押し出して加工する方法です。
今回、アルミニウム製品の製造メーカーである、日軽金アクト株式会社の谷津倉政仁(やつくら・まさと)氏に押出加工の基礎知識について聞きました。

「押出加工」、熱したアルミニウムをダイス(金型)に押し出す

日軽金アクト株式会社の谷津倉政仁氏
日軽金アクト株式会社の谷津倉政仁氏


「押出は“ダイス”と呼ばれる鉄製の金型を使うため、材料は鉄よりも柔らかくなければいけません。銅や樹脂にも押出加工はありますが、金属の押出材料ではアルミニウムが多いです。それはアルミニウムは熱すると柔らかくなり、加工性が高くなるためです」

まず、谷津倉氏はアルミニウムの特徴をこう説明します。押出加工は、このアルミニウムの特徴を生かした加工方法と言えるでしょう。具体的にはアルミニウムや展伸用アルミニウム合金を約500℃に熱し、柔らかくしてからダイスに高い圧力をかけて押し付け、断面形状のわずかな隙間から押し出すことで、細長い加工製品(押出材)をつくります。

「円柱の鋳造棒(ビレット)をつくり、それを押出機に挿入します。その後、加工したい形のダイスを後ろに配置し、押し出し方向に圧力をかけて押していくと金型の形にアルミニウムが出てくるようになっています」

続けて、谷津倉氏は押出加工の製造工程の一連の流れを次のように説明します。


押出の設計から加工、出荷までのフロー
押出の設計から加工、出荷までのフロー


「アルミニウムの原料(アルミニウム合金のインゴット)を、溶解する工程が最初にあります。次に鋳造工程でビレットと呼ばれるアルミニウム合金円柱の棒をつくり、熱処理を加え、切断して押出工場に持ち込む。そして押出機の前で円柱の棒を加熱して押出機の中に入れます。そしてここからが最終工程です。ビレットを500度程度まで予熱し、前面にダイスと呼ばれる成形したい開口形状を持つ金型を配置して、圧力をかけて押し出します。すると製品形状の型材が出てきます」

大型押出機を使用することで長尺押出材の製造が可能
大型押出機を使用することで長尺押出材の製造が可能


「押し出して出てきたものは、多少の歪みがあります。そこで、まっすぐになるように引っ張り矯正をして形を整えた後、それを切断します。そして、多くの場合は熱処理を施して硬くします。最後に製品検査を終えた後、梱包して出荷していく。そういった流れです」


「直接押出」と「間接押出」の違い

押出加工は、「ところてん」の製造をイメージすると分かりやすいでしょう。ところてんは細い筒状のところに寒天を押して絞り出していきます。押出加工は同じような仕組みです。

代表的な押出方法として「直接押出」があります。これは材料のビレットを保温用のコンテナに入れ、前方にダイスを設置し、ステムと言われる押し棒で力を加えて押し出す工法のことです。これを使うことで、比較的軟質のアルミニウム合金材料に対して複雑で大断面形状の押出が可能になります。

直接押出は古くから知られている工法で、1797年にイギリスでバラマ(J.Bramah)という人物が、鉄製のポットの中で鉛を溶かし、冷却凝固させながら管に押し出したことが始まりと言われています。また直接押出の他に「間接押出」と言われる工法もあります。

間接押出はダイスに対してビレットとコンテナとプレステムを同時に前進させ押出力を加えることで、アルミニウム合金材料とコンテナとの間に摩擦力が発生しないため、直接押出と比較すると、やや低い材料温度や比較的小さい力で押出できることがメリットとなっています。逆に直接押出よりも大きな力を加えることができるので、間接押出は硬質材料の押出が可能です。


「直接押出」と「間接押出」の概念図
「直接押出」と「間接押出」の概念図


ダイス(金型)の進化により、複雑な形状が可能に

アルミニウムを希望の断面形状に加工できる──押出加工の特徴は、ここにあります。

「他の加工方法では製造が難しいと言われている中空品や複雑な断面形状の製品であっても、押出加工は1回の押出工程で簡単につくることができます。また、寸法精度が厳しい形状の製品をつくることもできるのです」

その鍵となっているのが、「ダイス」です。押出加工におけるダイスの種類は基本的に、中実のソリッド、中空のホローの2つと言われています。例えば、ホロー材を押出する場合、ダイスはダイ(製品外形を形成するする金型)とボート(中空部を形成させる中子を保持する金型)の2つの金型を合体させて製品を押し出します。

十数年前、ダイスはまだ単体のものが多かったため、簡単な形状の製品を作るのが一般的とされていましたが、ダイスも年々進化。ここ数年で、いくつかのダイスを組み合わせて複雑な形状の押出材が作れるようになりました。


アルミニウムをいきなり製品形状のダイスに押し当てるのではなく、ダイスを2段階の形状で設計し、加工性を良くしています。アルミニウムはポート(後部)からダイ(先端部)を通って製品化されます。左側の図は押出前、右側の図は押出加工途中の状態を示しています。
アルミニウムをいきなり製品形状のダイスに押し当てるのではなく、ダイスを2段階の形状で設計し、加工性を良くしています。アルミニウムはポート(後部)からダイ(先端部)を通って製品化されます。左側の図は押出前、右側の図は押出加工途中の状態を示しています。


アルミニウムの需要は建材から輸送機器へ

「もともと、押出加工の技術はアルミサッシやパイプ材など、建材関係で使われることが多かったと思います。ただ、ダイスが飛躍的な発展を遂げ、難しい形状の加工にも利用できるようになったことから輸送機器分野での利用が伸びてきています。弊社も輸送機器分野に力を入れてビジネスを展開しており、具体的には鉄道や自動車、トラックなどに部品を供給しています。長期的な流れとして、建材から輸送機器関係に需要が移ってきた印象です」

例えば、JR東海やJR西日本の新幹線車輛で使用されている「アルミ合金製ダブルスキン構造材」は押出加工の技術によって生まれた形材です。日本軽金属グループは国内最大の幅60cm、長さ25mのアルミ合金製中空押出形材の製造技術を保有。この強みを活かし、断面が三角形を組み合わせたトラス形状のダブルスキン構造材を製造しています。

新幹線が高速で走行する際、大きな力が加わり車内の振動も激しくなりますが、アルミ合金製ダブルスキン構造材は、高い強度を持っており、車両の強度を確保するための骨材の使用量を他の構造材に比べ、大幅に低減。これにより、ゆとりある車内スペースの確保を実現しています。さらに、空洞部分に制振材を充填することで車両の振動を低減し、揺れの少ないより静かな車内環境づくりが実現しています。


新幹線の壁の形状をダブルスキン構造(右端写真)にすることによって強度を確保し、壁面を薄くすることが可能に。そのため、新幹線の車内スペースをより広くとることができています。
新幹線の壁の形状をダブルスキン構造(右端写真)にすることによって強度を確保し、壁面を薄くすることが可能に。そのため、新幹線の車内スペースをより広くとることができています。


また、自動車のバンパー補強材やサスペンション部品、サンルーフレールなどの部品にもアルミニウムの押出材が活用されています。


アルミ押出材を多用して製造されているトラック
アルミ押出材を多用して製造されているトラック


年々、進化を遂げ、活用の幅が広がっている「押出加工の技術」。最後に谷津倉氏は「今後、ますます複雑な形状が求められるようになっていくはずなので、そこに対応できるダイス設計やプロセス設計が非常に重要になってきます。難しい形状を高精度かつ低コストで製造していけるメーカーが今後勝ち残っていくと思います」と今後の展望を語りました。


文/新國翔大


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