通電接合・表面改質など接着・接合技術が注目を集める理由〜独自技術で存在を示すベンチャー企業たち(2)

人類が道具を使い始めた頃にさかのぼるとされる接着・接合技術。石器時代においては、木や竹などの棒に矢じりを接着させるために、アスファルトが利用されており、それを示すものが世界各地で発掘されています。原油に含まれる天然のアスファルトは、石油資源が古くから活用されていた中近東で利用されており、壁画の装飾に宝石や貝殻などを接着したり、建築においても活用例が確認されています。アスファルト以外にも、ニカワや漆、デンプンなどが、古くから接着に用いられています。これら天然の接着剤は、接着前においては柔らかく、その後、硬化することで、物と物との界面をつなぐという特徴があり、現代における接着剤にも共通する特徴です。

接着のメカニズム自体は、現在においても十分に解明されてはいませんが、主には「分子間力」や「アンカー効果」がその原理とされています。接着は、接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態と定義されています。
この接着において重要な役割を担う「接着剤」の基本的な原理としては、①機械的結合、②化学的結合、③物理的結合の3つの要素が複合的に作用します。
もちろん、物と物をつなぐ技術は接着剤に限ってのことではありません。接着も含め、物と物とをつなぎあわせることを接合といいます。

本稿では、常に進化し続ける接着・接合をテーマに、いくつかの新しい技術の紹介をいたします。


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材料的接合技術

接合技術の3種類

物と物とをつなぎあわせる接合技術は、今日の電子機器、大型構造物など、ものづくりにおいて不可欠な要素技術です。生活を便利で豊かに発展させてきた様々な製品、社会基盤を支えるインフラ構造物、産業の発展とともに進化し続けています。

目的、用途に応じて信頼に足る接合を実現するために開発されてきた多くの接合技術を大別すると、①材料的接合、②化学的接合、③機械的接合の3つに分類することができます。ここでは、「材料的接合」に着目して解説していきます。


材料的結合の2分類

材料的結合は、2つの材料を強固につなぐ方法であり、材料を積極的に溶融させてつなぎあわせる「溶融接合(溶接)」 と、その溶融を局部に限定もしくは溶融させずにつなぎあわせる「界面接合」に分類できます。技術の方向性としては、ものづくりにおいて求められる軽量化、小型化、コスト低減に対応する開発が進められており、界面接合の需要が高まっているといえます。

レーザー溶接

「レーザー溶接」では、レーザー光を集光し局所的に材料を溶融させて接合する技術であり、ファイバーレーザーなど様々なレーザー技術の進歩が接合に活かされて発展をつづけています。しかし、レーザー溶接のシステムは、精密な光学機器が基本となっており、装置自体高価なものが多く、その特徴が活かされる場面として、高精度、低ひずみ、低入熱溶接が要求される部品の製作などに限定されているのが実情です。

ろう付け

「ろう付け」においては、つなぎあわせる材料よりも低い融点をもつろう材を用いることで、母材を可能な限り溶融せずに接合することが可能です。小物部品、複雑な形状の部品の加工において非常に有効な接合技術で、自動化や量産化にも適しています。溶融したろう材が母材にしっかりとぬれ広がることが高く要求されることから、適用できる材料が限定的といえます。

摩擦攪拌接合

「摩擦攪拌接合」は、高速回転させたツールを材料内に挿入し、そのときに発生する摩擦熱を利用しつつ、さらに強い力で押し付けて、材料を軟化させるとともに回転によって接合部分の材料同士を練り混ぜて一体化させるという接合法です。粉塵の発生もなく、低温で接合させることが可能な一方、複雑な形状に対しては不向きであり、また利用できる材料も制限があるといった特徴があります。

通電接合

さらに最近の動向としては、特に金属主体の部品を樹脂化する研究開発が盛んになっています。軽量化、小型化、コスト低減の要求に応える新しい接合技術として、「通電接合」が注目されています。高価なレーザー溶接、ろう付などから、コストをおさえつつ転換できる精密接合法としての可能性があります。

これら先端的な接合技術は、どのような材料に対して適用するのか、またその形状や用途などにあわせて選択するのが良く、どの技術が良いといったものではありません。実現したいものづくりにおいて、それぞれの技術の長所短所を見極めることが重要といえます。


難接着材料をくっつける表面改質技術

接着剤における開発課題

接着剤の特徴は、接着前においては柔らかく、その後、硬化することで、物と物との界面をつなぐという性質によります。そこに求められるポイントは、「分子間力」や「アンカー効果」をいかに発揮できるかということになります。

しかし、材料によっては、接着剤がその価値を上手く発揮できず、「くっつくかない」または、くっついてもすぐに剥がれてしまうなどの課題があります。新しく開発される新素材においては、従来の接着剤では対応できないこともあり、そのような材料にも対応できるような接着剤の開発が求められています。特に異種材料の接着においては、双方の材料に対して機能する接着剤が必要であり、その開発難度は高いものとなります。

材料にあわせた接着剤と接着できない材料

分子間力は、分子と分子の間に働く電気的な引力のことです。この分子間力が働くためには、材料同士の距離が分子レベルで近接することが必要になります。しかし、一見平滑に見える材料表面にも凹凸は無数に存在し、材料表面の分子同士が引き合うほどの距離に近づけるのは困難です。そこで接着剤は、この凹凸を埋めるように変形して材料同士を密着させて分子間力を働かせ、さらにその凹凸に入り込んで硬化することで、釘を打ったようなアンカー効果を発揮します。

紙や木の接着に適した酢酸ビニル樹脂接着剤、金属やガラス、陶器などの接着に適したエポキシ樹脂接着剤、瞬間接着剤として有名なシアノアクリレート接着剤などは日常的にもよく使われています。その他、産業用では、フェノール樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤、ポリウレタン接着剤、シリコーン接着剤など、それぞれの材料や製造工程など目的にあわせて用いられています。

しかし、材料にあわせた接着剤が数多く存在するにも関わらず、接着できないとされる材料もあります。例えば、フッ素系樹脂、シリコーンゴムなどは、接着剤でくっつくかない典型ともいえます。そもそも材料表面にものがつかない特性にこそ、その材料の価値があるので簡単にくっつくものではありません。しかし、ものづくりにおいては、加工上このような材料同士をくっつける要求が高いのも事実です。

このような材料同士をくっつける技術として、表面改質技術が様々に研究されており、表面付近の分子を強く分極させることで、接着に寄与する分子間力の向上が図られています。

表面改質技術、難接着材料を接着

分子間力の中で最も強い結合は水素結合です。接着剤の水酸基(-OH)と水(H-O-H)や酸素(=O)、窒素(≡N)、カルボキシル基(-COOH)などとの間で形成されます。つまり、表面改質は、このような材料表面を作ることを目指す技術といえます。

表面改質を行う方法は、大気中で紫外線やプラズマを照射するのが一般的です。与えられたエネルギーにより、表面に付着した有機物を分解し、またプラスチック等の材料表面の分子が切断され、表面が活性化した状態になります。活性な表面は大気中の水や酸素などと結合し、水素結合しやすい官能基を材料表面に形成します。これが接着性の向上につながるのです。しかし、このような官能基はさらに大気中で他のガスなどの作用により劣化して失活してしまいます。このため保存法などで工夫もされていますが、このような表面処理の効果は一過的といえます。

そこで、この表面改質の効果を安定化させるために開発された複数の工程からなる改質技術があります。活性化した表面にさらに、デンプンなどの多糖類、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶'性のポリマーで化学的に処理を行います。またはグラフト可能なモノマーにより水素結合が可能で安定的な表面を得る技術です。それぞれは公知な技術ですが、組み合わせによって、有用で新規性のある技術として注目されています。このような表面改質技術を活用することで、汎用的な接着剤でも十分に接着することが可能になるのです。


接着剤における分子間力による接合
接着剤における分子間力による接合


接着剤における理想的な接着の状態
接着剤における理想的な接着の状態


天然由来の接着剤

植物由来の接着剤

接着剤の起源が古くは石油資源に由来する天然のアスファルトであったように、自然界には接着剤として機能するものが多数存在します。近年着目されているのが、植物由来で強力な接着剤です。現在一般に普及している接着剤とは異なり、有機溶剤やシアノアクリレートなどの有害物質を含まないため、また植物由来の抗菌性や生体適合性なども有していることから、まつ毛のエクステンション用など美容や医療用途での展開が見込まれています。

接着のメカニズムは分子間力の強い水素結合です。着目したのは、ムール貝やイガイなどの貝類がもつ水中でも岩などに接着することが可能な分泌物です。この分泌物にはカテコール基を含むアミノ酸が含まれており、この分子構造を接着剤の成分に活用しています。

シナモンから抽出したカテコール構造の接着剤

カテコールそのものは、フェノール類の一つであり、劇物に指定されている化合物ですが、ポリフェノールに含まれる構造としても知られています。古くから接着剤として利用されてきた漆の主成分にもウルシオールというカテコール構造をもつ化合物が含まれています。カテキンなどのポリフェノール類、いわゆるドーパミンやアドレナリンなどのカテコールアミンにも同様の分子骨格があります。

このような構造をもつ天然物質を植物であるシナモンから抽出し、これを接着剤の原料にした研究開発がなされ、ガラスや金属に対しても強い接着力を発揮することが確認されました。このような接着剤を建築材料に用いることで、シックハウス症候群などの予防にも役立つと期待されています。


独自の接着・接合支援技術をもつベンチャー企業

ECO-A株式会社、ろう材を用いることなく金属同士を直接接合

ECO-A株式会社が手掛ける通電接合は、金属部品に電気を流すことで発熱する抵抗発熱(ジュール熱)を利用して、金属同士または樹脂と金属を直接接合する技術です。接合時間が数十秒〜数分で、ろう材などが不要、金属同士だけでなく樹脂なども含めて異種材料の接合が可能です。また、変形や歪みやバリの程度が少ないなど特徴があります。

>ECO-A株式会社、詳しい情報はこちら

 

 

通電拡散接合の模式図 (提供:ECO-A株式会社)
通電拡散接合の模式図 (提供:ECO-A株式会社)


通電拡散接合の接合サンプル (提供:ECO-A株式会社)
通電拡散接合の接合サンプル (提供:ECO-A株式会社)

株式会社カナLABO、分子レベルでの接着技術

株式会社カナLABOは、従来の技術では接着が困難なプラスチック、ゴム、金属などの素材の表面を改質する独自技術により、異種・同種材料の接着の他、プラスチック表面の水性塗装、新規な複合材料の開発に取り組んでいます。企業等の要望により、テストピースの接着条件検討や接着強度等の評価をサービスとして実施しています。

>株式会社カナLABO、詳しい情報はこちら

 

まとめ

ここまで、古くて常に新しい接着・接合の技術ということで、小型化や軽量化につながる通電接合などの材料的接合技術や、難接着材料を接着させるための表面改質技術、自然界の接着成分に着目した天然由来の接着剤についてみてきました。人類が道具を使うようになってから常に進化を続ける接着・接合技術、今後も時代にあわせたものづくりを支えていくものといえます。


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