デジタル化社会の到来にどう備えるか(1) (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

新型コロナウイルス感染症への対応の中で、保健所への感染者の報告がファックス経由であるなど、日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになった。一方で、デジタル化に対し、あらゆる人の行動がデータ化・監視されたり、自動化技術やAIで人の仕事が奪われたりといった懸念の声も小さくない。今後避けることが難しい「デジタル化時代」に、誰もが自由で豊かになる社会を実現するにはどうすればいいのか。

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デジタル化は、個人に多様な体験を選択する自由を与える


『アフターデジタル2 UXと自由』
 
 藤井 保文 著
 日経BP
 2020/07 240p 2,200円(税別)



コロナ対策で露呈した日本のデジタル化の遅れ

日本の新型コロナウイルス感染症対策では、デジタル化の遅れが迅速な対応を妨げたと思われる点がいくつかあった。

感染者数の集計は、ファックスで上がった報告を人手で計算。特別定額給付金の支給も、オンライン申請された内容を印刷してその後は手作業だった。いずれも時間がかかりすぎていた。

また、内閣府の調査によると、リモートワークを経験した人が全国で34.6%にとどまっている。これは、稟議書への捺印など、企業のさまざまな業務がいまだに紙ベースであることが原因の一つと考えられる。

こうしたデジタル化の遅れを巻き返し、人々が暮らしやすい社会を作っていくには、どうしたらいいのだろうか。

本書『アフターデジタル2 UXと自由』は、デジタルでオンラインが前提となった社会、つまり「アフターデジタル社会」をより良くするための考え方と方法論を詳説している。著者の藤井保文氏は、株式会社ビービット東アジア営業責任者。海外の日系クライアントに対しデジタルトランスフォーメーションのコンサルティングを行っている。


デジタル化による“自由”な社会の実現を近づける「OMO」の提供

藤井氏は、前著『アフターデジタル』で提示したOMO(Online Merges with Offline)が正しく理解されておらず、O2O(Online to Offline)と混同されていると嘆く。

O2Oはオフラインの行動を促すためのオンラインの施策だが、あくまで「提供者目線」で提供される。例えば「街を歩いている時、近くにあるショッピングモールのキャンペーン情報がスマホに配信されるサービス」は、単なるO2Oだ。

それに対してOMOは、藤井氏によると、ユーザーが望む形に設えられた「新たな体験価値」を提供するものだ。

OMO実践企業として本書に紹介されているサントリー社の、TOUCH-AND-GO-COFFEEが分かりやすい。これは、ユーザーがLINEでコーヒーを注文し、指定した時間にボトル入りのできたてコーヒーを、店舗の専用ロッカーで受け取れるというサービスだ。

同サービスでは、コーヒーのタイプ、ミルクの種類、フレーバーなどに複数の選択肢が用意され、それらの組み合わせで約300通りのカスタマイズが可能だ。また、ボトルには自分の名前など、好きな文字を入れられる。

つまりユーザーは、その時々の気分でカスタマイズしたコーヒーを、自分専用のボトルで待ち時間なく受け取り、好きな場所で味わえる。これこそOMOで実現される、新たな、そして自由な体験だ。

「売り手視点」のO2Oではなく、消費者に自由な選択の余地を与えるOMOが普及した「アフターデジタル社会」は、人々がのびのびと暮らせる豊かな社会の要素の一つになるのではないだろうか。


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