『第8回 関西スマートエネルギーWeek』現地レポート

新型コロナウイルス感染症により延期や中止が多かった展示会も少しずつ再開されています。大阪のインテックス大阪では、9月9日から3日間、関西スマートエネルギーWeekが開催されました。東京と大阪で年に2回、開催されてきた再生可能エネルギーや自然エネルギー、電池、省エネ・節電、リサイクル、環境保全対策などの技術を開発・提供する企業や団体が多く出展している展示会です。

関西スマートエネルギーWeekは、主催者によれば85%以上が関西・名古屋・九州などの西日本からの足を運んだ来場者というのが特徴だそうです。東京と大阪の両方への出展者は3.5%ほどということで、西日本エリアに特化した展示会と言えるでしょう。

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電池向けバスバーのレーザー溶着技術

前回(第7回)の関西スマートエネルギーWeekにも出展していた企業が、新たな技術を展示していたので最初に紹介しましょう。大阪府摂津市のナグシステム株式会社は、リチウムイオン電池用の積層箔の溶接装置を前回出展していましたが、今回も電池の接続端子溶接の技術を出していました。

電池では、アルミと銅など異なった端子を接続するバスバー(Bus bar、導体棒)の接合が必要です。同社では、アルミと銅の合金のバスバーのレーザー溶着の技術を使ったリチウムイオン電池用、正極・負極の集電板溶接装置を展示していました。この装置により、低温・安全・高品位に接合することができるそうです。

ナグシステムのバスバー溶着装置。大型リチウムイオン電池の接続端子を接合する装置で、正極・負極の直列、正極・正極、負極・負極の並列の連結が可能だそうです。
ナグシステムのバスバー溶着装置。大型リチウムイオン電池の接続端子を接合する装置で、正極・負極の直列、正極・正極、負極・負極の並列の連結が可能だそうです。


また、同社は銅やアルミを錫メッキしたリード線を端子に抵抗溶接する技術も新たに出展していました。細い銅線が束になったリード線の溶接は1本1本がバラけてしまって難しいと言いますが、残留応力を逃がすことで課題を解決したそうです。

ナグシステムが出展した銅とアルミのリード線の溶接サンプル。細い銅線が編み込まれたリード線をこのように溶接するのは難しいと言います。
ナグシステムが出展した銅とアルミのリード線の溶接サンプル。細い銅線が編み込まれたリード線をこのように溶接するのは難しいと言います。


メタノール溶液を使って燃料電池電源システムと、バイオマスによる小型ボイラーで熱利用及び発電

スマートエネルギーということで、各種電源システムの出展も目立っていました。三菱ガス化学株式会社は、同社が開発したメタノール54%溶液(メタミックス)を燃料にした直接メタノール形燃料電池電源システムを、200Wクラス、500Wクラスの2種類出展していました。

燃料電池には、水素を電気に換える直接水素形、ガスやエタノールなどを水素に改質して電気に換える改質水素形、そして天然ガスを合成して作られるメタノールを電気に換える直接メタノール形(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)の主に3種類があるそうです。同社のシステムは直接メタノール形燃料電池を使い、リチウムイオン電池に蓄電することで出力は1kWまでは出ず、500Wまでですが、メタノールを供給する間長時間の給電が可能になると言います。

含有量60%以下のメタノールは、消防法や毒物及び劇物取締法の規制を受けず、貯蔵や陸上輸送に関して官公庁への届出が不要といい、取り扱いが容易な燃料としてポリタンクなどでも長期間、保存が可能だそうです。同社のシステムは含有量54%のメタノールを使い、静音性も優れていると言います。ただ、熱エネルギーの変換効率は30%弱、排出ガスにCO2が出るなどのデメリットもあるそうです。


三菱ガス化学の直接メタノール形燃料電池電源システム(500Wクラス)。同社が供給する含有量54%のメタノールを使うそうです。
三菱ガス化学の直接メタノール形燃料電池電源システム(500Wクラス)。同社が供給する含有量54%のメタノールを使うそうです。


バイオマスによる小型ボイラーで、スターリングエンジンを使っていたのは、大阪府堺市の株式会社イクロスです。スターリングエンジンは気体の膨張と収縮によってピストンを動かす外燃機関で、同社のボイラーに使われていたのは英国Qnergy社製のスターリングエンジンだそうです。

ウッドチップやゴミ固形燃料(Refuse Derived Fuel、RDF)などを燃やし、発生した燃焼ガスを熱出力後にスターリングエンジンの吸熱器に吹き込むことで温浴施設や給湯などでの熱利用と同時に発電もできると言います。このスターリングエンジンは、最大7.1kWの発電が可能で、摩擦部がないためメンテナンスフリーだそうです。

スターリングエンジンの特徴は、安価なわりに高効率・高出力であり、メンテナンスの労力も少なくてすむ点と言います。バイオマス燃料を利用した発電で今後、スターリングエンジンが活用されるようになるかもしれません。


スターリングエンジン自体の展示はありませんでしたが、イクロスはさまざまなバイオマス燃料のサンプルを出展していました。
スターリングエンジン自体の展示はありませんでしたが、イクロスはさまざまなバイオマス燃料のサンプルを出展していました。


連続稼働時間4時間、バッテリー駆動のクレーン

工事現場で使われるトラックの運転席と荷台の間に小型クレーンが付いていることがありますが、一般的に「ユニック」とよばれ、一般名詞のように使われています。今回の展示会に同社が出展していたのがバッテリー駆動のクレーン(URW295C B2)です。

単相AC200W/16Aのバッテリーを搭載し、連続稼働時間は4時間(高速モード、標準モード4.5時間)、バッテリー駆動なので静粛性に優れ、操作していない間の騒音もほぼ無音になるそうです。また、排気ガスが出ないのも特徴で、現在では後発企業のクレーンが出てきたそうですが、2019年の時点では業界でバッテリー駆動のクレーンは同社製だけだったと言います。

ブームは5段で、荷重は作業半径が短く使用ブームが少ないほどガソリンやディーゼルのクレーンと遜色ない性能で、作業半径が伸びて使用ブームが増えるとやはり荷重がやや低くなるようです。また、外部電源が使える場所で電動パワーユニットを使用し、バッテリー切れなどを気にせずに作業を続けることができると言います。

古河ユニックのバッテリー駆動クレーン。ブームとアウトリガーを畳んだ移動の状態で全幅690㎜、全長2,720㎜、高さ1,525㎜、総重量2,390㎏。
古河ユニックのバッテリー駆動クレーン。ブームとアウトリガーを畳んだ移動の状態で全幅690㎜、全長2,720㎜、高さ1,525㎜、総重量2,390㎏。


警備ロボットとして採用されたベンチャーのアバターロボット、配管内部探査向け尺取虫型ロボット

今回のスマートエネルギーWeekでは、ロボット技術もいくつか出展されていました。2019年の国際ロボット展(東京ビッグサイト)ではベンチャーのMira Robotics株式会社が開発した「ugo」というアバターロボットを取材しましたが、ビルメンテナンスをする大成株式会社がこの「ugo」を警備ロボットとして採用し、展示していました。

ゲーム用コントローラーを使って遠隔操作するロボットですが、巡回業務は自律的に移動することができ、エレベーターの乗り降りも可能だそうです。センサーは、深度センサー、圧力センサー、環境センサーが付き、カメラは3台備えていると言います。また、顔の部分に出る液晶表示で多様な表情を表現し、両手のアームを使った多様なポーズをすることで、人とのインターフェースの一つにしているようです。

手は1㎏程度の物なら持つことが可能だそうです。顔の部分に表情や文字などが表示され、人とのインターフェースにしています。
手は1㎏程度の物なら持つことが可能だそうです。顔の部分に表情や文字などが表示され、人とのインターフェースにしています。


山形県山形市の株式会社弘栄ドリームワークスは、集合住宅やビルなどの配管の内部を探査する「配管くん」という遠隔ロボットを出展し、デモンストレーションを行っていました。同社は、空調設備・給排水衛生設備・電気設備などを手掛けてきた弘栄設備工業株式会社からスピンアウトした企業で、ロボット開発などの新サービスを展開していると言います。

特許出願中の「配管くん」は有線でコントロールし、直径100〜150mmの配管内を自走し、カメラで内部を探査する連結車輪型ロボットだそうです。配管内を探査する従来のヘビ型ロボットでは、視点が下過ぎ、配管内がよくわからないという欠点があったと言います。そのため、尺取虫型の移動方法にし、立命館大学 理工学部 生物知能機械学研究室と共同で試行錯誤を重ねて開発したそうです。

尺取虫型のため、カメラの向きを変えて見たい部分の映像を撮影し、タイヤで移動するので走行時にもブレの少ない映像となり、配管内で突っ張ることで縦方向に3次元的な動きができるのが特徴と言います。また、リアルタイムで走行経路のマッピングができ、古いビルなどで配管の図面がなくなってしまった場合に活用できるそうです。

ビルや集合住宅などの配管内を探査するロボット「配管くん」。配管内は複雑で汚れていて滑りやすく、ロボットが移動するためには過酷な環境だそうです。配管内で突っ張ることで推進力を出していると言います。
ビルや集合住宅などの配管内を探査するロボット「配管くん」。配管内は複雑で汚れていて滑りやすく、ロボットが移動するためには過酷な環境だそうです。配管内で突っ張ることで推進力を出していると言います。


前回(第7回)の関西スマートエネルギーWeekでは、2019年度のノーベル化学賞の受賞直後だったこともあり、電池、特にリチウムイオン電池や全固体電池などに注目が集まっていました。今回の開催では、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、来場者が前回より少なかったのは当然としても、やはり電池に関係する技術には多く人が集まっていた印象がありました。



文/石田雅彦

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