用途によって車内レイアウトが変更できる!MaaS導入効果などを気軽に検証できる「マルチタスク車両」

INTERVIEW

MONET Technologies 株式会社
事業本部 事業推進部 事業推進課
森下 久弥

MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)は2020年8月、車内レイアウトを柔軟に変更し、1台でさまざまな用途に利用できるMaaS(Mobility as a Service)向け「マルチタスク車両」を発表しました。安全性を確保しながら、車内レイアウトの変更をどのように実現したのか、MONET Technologies株式会社 事業本部 事業推進部の森下久弥(もりした・ひさや)氏にお話を伺いました。

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MaaS向け「マルチタスク車両」の開発経緯

────MaaS向け「マルチタスク車両」の概要について教えてくださいますか。

はい。まず開発の経緯からお話します。お客様とお話をするなかで、MaaSと言っても具体的なサービスのイメージが湧かないという課題が見えていました。MaaSでどのような問題が解決できるのか、事業性を持たせることはできるのか、などです。

一般の車両を使って実験してもなかなかイメージが湧かない、とはいえスペシャルな車を1台仕立てると相当なコストがかかり現実的ではないので、もう少し気軽に検証したいというご意見もいただいていました。

であればということで、MaaSの導入の効果や、利用者が本当に求めているものなのかといった点を検証できるように、車内のレイアウトを柔軟に変更できる車両を開発しました。
そのため「マルチタスク車両」は1台の車両をさまざまな用途で活用できることがポイントになっています。またMONETは、車両だけではなくてシステムも提供しているため、新規事業の検討や課題解決にスムーズにつなげていただくことができます。

MONET Technologies株式会社 事業本部 事業推進部 事業推進課 森下久弥氏。
国内外の自動車メーカーやアフターマーケット用の商品開発を行う部品メーカーのエンジニアから現ソフトバンク株式会社に転職。マーケティング部門で商品企画やサービスプロモーションを担当。2019年にMONET Technologies株式会社に出向し、現在は主に車両企画やサービスプロモーションを担当。
MONET Technologies株式会社 事業本部 事業推進部 事業推進課 森下久弥氏。
国内外の自動車メーカーやアフターマーケット用の商品開発を行う部品メーカーのエンジニアから現ソフトバンク株式会社に転職。マーケティング部門で商品企画やサービスプロモーションを担当。2019年にMONET Technologies株式会社に出向し、現在は主に車両企画やサービスプロモーションを担当。



────なるほど。つまりハードウェアとしてのマルチタスク車両と、オンデマンド交通システムなどのMaaSに必要なASPを組み合わせて使えるということですね。

そうですね。以前から一般車両とオンデマンドのシステムを組み合わせた実証実験は全国で実施しており、現在は主に人を運ぶ用途で使われていますが、今後はサービスを運ぶ、モノを運ぶ、空間を作り出して移動させる、といったニーズにも対応していきます。


────マルチタスク車両には、位置情報の送受信やルートの共有などのための専用のナビ端末があるのでしょうか。あるいはタブレットのアプリを使うのでしょうか。

今は有人での運行ですので、ドライバーがタブレットのアプリケーションを通じてルーティングなどの指示を受けて運行しています。


用途に合わせて車内レイアウトを変えるための架装

────架装された車両を見ると、フロアに多数設置されたレールが目立ちますね。

このフロアレールは、エアラインレールと呼ばれる航空機で使われているもので、シートを安全にしっかりと固定することができます。


────このレールに装着するシートは新たに開発したものですか?

新規に開発すると莫大な費用と時間がかかるので、欧州製の使用実績があるものを採用しました。ただし試験については、シートと車両の組み合わせで試験をしますので、今回のベース車両である「ハイエース グランドキャビン」にこのシートを装着して、あらためて試験をして認証を取りました。


────シートを欧州から輸入し、日本の安全基準に合うように車両を作ったということですか。

正確には、車両とシートを組み合わせて試験をする必要があるので、現地にハイエースのホワイトボディを送って試験をしました。

例えば20Gで横から力をかけるというテストがあるのですが、車両ごと欧州に送って、ボディのフロアとレールを強度接着し、パーツを架装した状態で現地で試験を受けました。それで欧州の認可をとり、さらにその結果をもって日本の国土交通省運輸局への申請をし、日本国内の認可を取ったという順番です。


────なるほど、かなりコストがかかりそうですね。レールの材質はなんでしょうか。

ジュラルミン製です。このレールをボディと強度接着し、部分的にボルト留めをしています。クルマのフロアは真っ平らではないので、接着が効く面と弱い部分がありますので、接着と剛結を組み合わせています。


────シートの脚は1本ですよね。1本のレールに1本の脚で支持する形でしょうか。

脚は1本に見えますが、2本のレールをまたぐ長方形のステーに、四隅にレールと噛み合う部分があるので、4点で結合しています。

2本のレールをまたぐように椅子の脚が設置されているのがわかる。
2本のレールをまたぐように椅子の脚が設置されているのがわかる。


────なるほど。そのレールの間であれば自由に動かすことができるんですね。実際に調整できる刻み幅はどれくらいなのでしょうか。

レール間が約12cmですので、横方向は12cm刻みで設置できます。前後方向は1つ1つのピッチが約2cm刻みで設置できます。


ジュラルミン製のレールが12cm間隔で装備されている。
ジュラルミン製のレールが12cm間隔で装備されている。


────さまざまなニーズを想定すると、これくらい細かくしたほうが良いということだったんですか?

はい、おっしゃる通りです。少しでも空間を自由に使いたいというニーズが強いです。例えば以前はすぐ横にシートが並んでいて肩が触れ合うようなレイアウトが基本でしたが、たった5cm、10cmでも前後にずらすだけで隣の方との圧迫感がかなり改善でき、思い切って8席を4席にして広々とお使いいただくこともできます。レイアウトの自由度の高さは好評をいただいている点ですね。


────そもそもなぜ航空機で使われているフロアレールを採用しようということになったのでしょうか。

私自身、このような製品があることを以前から知っていたのですが、用途に合わせて車内レイアウトを変えたいというニーズに対して、これが使えるのではないかということで、架装を担当する企業(株式会社トイファクトリー)と試作をしながら検討し、採用を決めました。


────これは航空機のどこに使われているんですか?

客室のシートの固定などに採用されていると思います。


多人数を運ぶための基本レイアウト。シートにはシートベルトが内蔵されている。
多人数を運ぶための基本レイアウト。シートにはシートベルトが内蔵されている。


────今回のシートは車用のシートベルトが内蔵されたシートですが、これも既製品なんですか?

そうですね。既製品です。このレールと同じサプライヤーが作ってるものです。このシートは欧州の自動車メーカーでも使われているもので、自動車メーカーのサプライヤーでしたら実績があり信頼性が高いので、日本でもこれを使おうという話になりました。


────そういう意味では信頼性が担保されているということなんですね。シート以外のテーブルやキャビネットも、このレールで固定できるものなんですよね。

はい、すべてレールで固定できるようになってます。シート以外のアイテムはすべて今回の車両のためにオリジナルで作ったものですが、レールへの締結部分はもちろん転用しています。


────客室用の充電式バッテリーが搭載されていますが、容量はどれくらいでしょうか?

12万600mAhですね。客室の液晶モニターや照明用に使うものです。


間隔を広く取り、テーブルを配置したレイアウト。
間隔を広く取り、テーブルを配置したレイアウト。


次世代「マルチタスク車両」は床が低いクルマ

────MONETは地方自治体と組んで実証を進めていますが、想定ユーザーのメインは地方自治体になるのでしょうか?

そうですね。まずは自治体が中心ですが、民間の事業者の方々もお悩みを抱えています。MaaSの部署を起ち上げたはいいけど実際どうしたらいいのか悩んでいるというお話も多いですね。MONETコンソーシアムは現在600社以上の企業に参加いただいていますので、そういった方々とディスカッションを始めています。


────実際に車両を作ってみて、今後はこうしたい、というアイデアはありますか。

そうですね。もし次のマルチタスク車両を作るとしたら、フロアの低い車両があるといいなと思います。フロアが低ければ高齢の方も利用しやすいですし、サービスを提供する上でも、室内高が十分取れたほうがいいので。


────しかし現存する市販車ではそういう車は無いですよね。

無いですね。なので、もしe-Paletteのように低床で室内高が稼げるクルマがあればベストですね。


────80キロで走れなくてもいいけど床が低いクルマ、ですね。

そうですね。必ずしも高速で走る必要はないので。そういう意味でこのマルチタスク車両は、現時点の現実解としてのMaaS車両のテンプレートになっています。


────ベース車両はトヨタである必要があるのですか。

トヨタである必要はないのですが、国内ではハイエースのワイドロングがいちばん客室空間が広いことと、それから全国の自治体ではこの車の導入実績が非常に多いので、今回ベース車両として決めました。


────新車架装ではなくて中古車架装もある程度あるという想定ですか。

はい、ハイエースのグランドキャビンをご用意いただける場合は、車両の状態を確認させていただいて架装をすることを検討しています。


レイアウト変更の自由と高級感ある雰囲気が評価ポイント

────実際に導入が決まった事例はありますか。

はい。自治体も、企業でもすでにいくつか引き合いがあります。


────導入の際に評価されているポイントは、やはりレイアウトを自由に細かく変えられるというところでしょうか。

そうですね。そこが1番のポイントです。さらに実車をご覧になると、高級感があって特別な空間に見えますので、商談ルームとしても使いたいという声もいただいています。あとは観光用途ですね。余裕のある室内で観光地の情報を道中モニターで見ながら観光地に向かう、といった特別な体験、価値が創り出せないかという話もあります。

高級感の演出はこだわったところで、ダークな石目調のフロアや、シーリングに間接照明を設けて、落ち着いて会話ができる雰囲気を目指しました。


まとめ

ひとことにMaaSと言っても、車両に対する現場のニーズはさまざまです。MONETが提案するこの「マルチタスク車両」は、全国各地で実証実験を重ね、現場のニーズに精通している同社だからこそ、コストをかけすぎず、かつ安全性を確保した上でニーズに対応できる架装がなされていると感じました。


文/佐藤耕一


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