量産試作のための基礎知識(4)~製品設計時に知っておくべき金型の「パーティングライン」と「アンダーカット」設定の注意点

樹脂で製品を量産するためには、多くの場合、金型で製品を射出成形する必要があります。そのため製品設計者であっても、ある程度は金型のことを知らなければいけません。今回も引き続き、射出成形金型の基本について取り上げます。特にパーティングラインやアンダーカットについて詳しく解説します。

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金型が分割される境目「パーティングライン」設定時の注意点

射出成形の基本は、凹凸(固定側と可動側に分かれる)の金型を合わせ、その隙間に樹脂を高温で溶かしながら流し込みます。「パーティングライン」というのは、金型で固定側と可動側に分割される位置(境目)のことを言います。なおパーティングラインはそのアルファベットを略して「PL」などとも呼ばれます。このパーティングラインはどこに設定してもよいわけではなく、製品を金型平面で見た時に、一番外側になる部分がパーティングラインになります<図1>。

もしそれ以外の位置に設定した場合には、通常の金型の動きでは製品が取り出すことができないため「アンダーカット」と呼ばれる形状(金型から抜き出す際に引っかかる形状、詳細後述)が発生してしまいます<図2>。

<図1>離型できるパーティングライン(Parting Line、図中PLと表記)
<図1>離型できるパーティングライン(Parting Line、図中PLと表記)


<図2>アンダーカットができるパーティングライン(Parting Line、図中PLと表記)
<図2>アンダーカットができるパーティングライン(Parting Line、図中PLと表記)


「どのような分割を設定するか」は、良い製品を成形するための重要なポイントとなります。製品設計の段階で以下のことに注視をしながらパーティングラインを設定するとよいでしょう。

 

1.固定側の離型抵抗が小さくなる位置にする

金型が開いた時、製品は可動側の金型に付いている必要があります。そのため固定側の方が離型抵抗が小さくなるように、パーティングラインを設定しなければなりません。

 

2.できるだけ単純にする

複雑なパーティングラインを設定すると金型の調整が難しくなってしまい、バリなどの不具合が発生しやすくなります。そのためパーティングラインは可能な限り単純にします。

 

3.パーティングラインが目立たないようにする

パーティングラインは製品に分割線として残ってしまいます。そのため、できるだけ目立たない位置にパーティングラインを設定するのが望ましいです。そこで、コーナーR(角のラウンド形状)のR止まり(ラウンドが終わる境目)や製品の段差部などにパーティングラインがうまくくるようにすれば、目立たなくなります。

 

4.アンダーカットを避ける

アンダーカットは、金型から離型させるための仕組みが必要になることから、金型の構造が複雑になってしまい、その結果コストアップにつながってしまいます。そのため、可能な限りアンダーカットを避けるようにしてパーティングラインを設定する必要があります。

 

上記のことに注意して、その製品が金型でどのように分割されるのかを考慮しつつ、パーティングラインの位置を意識した製品設計を心がけるとよいでしょう。

 

製品を金型から外す「突出機構」の仕組み

金型が開いた時、製品は通常、可動側の金型に付いています。よって、この可動側に張り付いた製品を金型から取り外す必要があります。単純に金型に張り付くといっても、製品は収縮率の関係で、かなりしっかりと金型に張り付いています。そのため金型から製品を取り外すための機構が必要になります。その機構を「突出機構」といいます。

突出機構の基本構造は「エジェクターストローク(Ejector Stroke)」(エジェクターが移動する距離のこと)を利用して製品を突き出すというシンプルな機能のものになります<図3>。

<図3>製品の突き出しとエジェクターストローク
<図3>製品の突き出しとエジェクターストローク


突出機構は金型設計の範ちゅうですので、製品設計側から指定することはあまりありません。しかし、製品を突き出した部分の跡が残ってしまうということを知っておく必要があるでしょう。

突出機構がくると想定できそうな箇所で、製品の外観部分などでは避けるのが原則です。また、透明な製品については製品の裏面を突き出したとしても、表から透けて見えてしまいますので、特に注意が必要になります。

突出機構にはさまざまな方法がありますが、金型で製品を量産するためには必須になります。透明な部品をはじめ、突出機構の跡を残したくない場所があるなら、製品設計時(製図の際など)に注記をしておくとよいでしょう。

金型から離型できない形状「アンダーカット」を残す時と解消する時

金型から抜き出す際に引っかかってしまう、つまり通常の金型の開閉では離型処理することができない形状のことを「アンダーカット」といいます<図4>。実際の製品では次のような形状になります。

<図4>さまざまなアンダーカット
<図4>さまざまなアンダーカット


アンダーカットのある製品を金型で処理するためにはアンダーカット用に別の機構を設定する必要があります<図5>。

<図5>アンダーカットを処理するための機構の動き
<図5>アンダーカットを処理するための機構の動き


「別の機構が入る」ということは、金型のコストがアップするということになります。製品の用途やその部分が持つ意味、相手部品との関係性などを考えて、解消できるアンダーカットは解消していくのが望ましいです。

例えば、横穴やフランジは<図6>のように、それぞれ金型の抜き方向に合わせた形状に変更すれば、アンダーカットは解消できます。

<図6>アンダーカットの解消
<図6>アンダーカットの解消


ただし当然、やみくもにアンダーカットを解消すればよいわけではありません。アンダーカットを解消するかどうかについて、その形状を設計した意味を考慮して検討する必要があります。

例えば、横穴のアンダーカットであれば、そこにボタンがはまるのであれば、アンダーカットの形状(円のまま)である必要がありますし、ただ単に配線をそこにまわすだけであればアンダーカットを解消してしまってよいでしょう。

このように、それぞれのアンダーカットの意味をよく理解して、アンダーカットのまま残すものと解消してしまうものを適宜判断し、製品設計に反映させましょう。

今回は、金型の動きや製品形状を考慮した上で、パーティングラインを決め、なるべくアンダーカットを避ける設計をしていく考え方について解説しました。今回の内容は基本的なことのみですが、それを知っているだけでも、部品製作で余計なコストをかけずに済むでしょう。



文/落合孝明
大学卒業後、2年間の会社勤めを経て、モールドテックに入社。2010年から同社の代表取締役に就任、現在に至る。樹脂およびダイカスト金型の設計を軸に、製品の企画・デザインから手配まで一貫して請け負う。著書に、「金型設計者1年目の教科書」「すぐに使える射出成形金型設計者のための公式・ポイント集」(日刊工業新聞社刊)がある。

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