テレワークで乗り越えるものづくり《アルプスアルパイン~栗山年弘社長:前編》ニューノーマルにおける「ものづくりの経営者たち」(1)

INTERVIEW

アルプスアルパイン株式会社
代表取締役 社長執行役員 CEO
栗山 年弘

タクトスイッチ(R)で世界市場の約4割を占める日本を代表する電子部品メーカー、アルプスアルパイン。新型コロナの世界的拡大で自動車市場、モバイル市場は市況が悪化し、リーマンショックを超える影響を受けています。再興をかける世界的ものづくりメーカーのトップに話を伺います。

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グローバルでDXに進化へ

インタビューはコロナ禍ということから、オンラインで行われました。

オンライン取材での代表取締役 社長執行役員 CEO栗山年弘氏(スクリーンショットより)
1957年4月生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、1980年4月にアルプス電気に入社。2004年4月に磁気デバイス事業部 事業部長、2007年4月に事業開発本部 本部長を担当。2011年6月に常務取締役に就任後、2012年4月に技術本部 本部長に。同年6月に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
オンライン取材での代表取締役 社長執行役員 CEO栗山年弘氏(スクリーンショットより)
1957年4月生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、1980年4月にアルプス電気に入社。2004年4月に磁気デバイス事業部 事業部長、2007年4月に事業開発本部 本部長を担当。2011年6月に常務取締役に就任後、2012年4月に技術本部 本部長に。同年6月に代表取締役社長に就任し、現在に至る。


────新型コロナの影響でテレワークが進んでいますが、ものづくりのテレワークの状況についてお教えください。

「当社は、売り上げの8割が海外です。生産も、海外が3分の2ぐらいあります。開発では日本が8割ぐらい。ですが、グローバルで生産・販売活動を進めており、お客様も8割が海外です。生産の3分の1となる国内をマザーラインと位置付けており、生産拠点は国内にもあります。

テレワークについていえば2年前(2018年)に制度化し、部分的には既に活用されていたので、今回の新型コロナ禍でもテレワークそのものは問題なく運用できています。欧州、米国では一時ロックダウンされた際にもオンライン会議などで対応しています。 (日本での)緊急事態宣言のとき、出社率は首都圏では10%ぐらいに抑えました。現在は40%ぐらいとしていますが、それでも問題なく仕事はまわっています。

開発拠点は東京にもありますが宮城、福島、新潟が主です。そこではテレワークは首都圏ほどは利用されてはいませんが、基本的に通勤は車なので感染のリスクはない。ただ、実験の評価は工場に行かなければならないし、製造現場はテレワークしていません。これら各拠点では、テレワーク感染予防というよりも、働き方改革と生産性向上のためとも言えます」


────ものづくりでオンラインはどのぐらいできているのですか。古川第2工場がスマート工場というように伺っていますが。

「工場は日本だけではなく海外もありますが、今の生産状況、品質状況がすべて、パソコンだけではなくスマホでも見られるようにしたいと思っています。IoT、スマートファクトリーとよく言いますが、まだ部分的にしかできていないのを今後、グローバルに『見える化』します。ものづくりのデジタル化, DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)に力を入れ、ウィズコロナでも、ものづくりがちゃんとできるようになると思っています。

古川第2工場は新しい工場です。世界には工場が約30か所ありますが、すべてがスマートファクトリーというわけではありませんし、例えば、中国の工場では、稼働状況などをオンラインで常時把握しているものの、日本からは直接見ることができないということもあります。今後、IoT化して、欧米でもまたテレワークからでも「見える化」しなければいけないと思っています。それが次の改革です。(コロナのためというよりも)生産性を上げるためにDX化を進めたいのです」

世界市場の約4割を占めるタクトスイッチ(R)(提供:アルプスアルパイン)
世界市場の約4割を占めるタクトスイッチ(R)(提供:アルプスアルパイン)


────そのための投資を行うということですか。

「投資といっても、いわゆる、基幹システム、ERP(Enterprise Resources Planning、企業資源計画)は既にグローバルにつながっています。一般的に、自宅などのオフィス外からサーバーやクラウドにアクセスできないシステム環境の企業もまだまだ多いと聞きますが、当社は既に、概ね1人1台ノートパソコンを配布しており、これら会社配布のパソコンやスマートフォンでは自宅に限らず、リモートで基幹システムにアクセスできます。実験のデータも全部デジタルですからその解析は、自宅でもできる。今後、大掛かりな投資をなくても、見える化はできると思います」


20%減益を乗り越えるのはCASEの開発、コスト改革

────このコロナの影響は予測がつかないと思いますが、見通しと経営戦略をお教えください。

「コロナの影響で上期4〜9月で言うと前年のコロナ前に比べて売り上げが3割ぐらいマイナスと見ています。特に、車載系の落ち込みが大きいですから、下期10〜3月は10%くらいはまだ影響が残るとみています。

経済活動の再開、お客さまの受注の回復状況を見ていると、年間を通してやはり2割はコロナ前に比べて落ち込み、20%くらいは減収になってしまう。じゃあ来年以降元に戻るかというと、新型コロナのワクチンが開発され世界に広がるかなど、先行きはまったくわかりませんから、厳しめにみると車載関連は10%くらいマイナスになるのではないかとみています。

それを前提に、逆に売り上げがプラスに振れればラッキーと考え、損益分岐点の引き下げ、『コスト構造改革』に全社を挙げて取り組んでいます。コロナ禍を乗り越えていかなければならない。車の業界で言うとCASE(Connected:コネクティッド、Autonomous/Automated:自動化、Shared&Service:シェアリング、Electric:電動化)という流れそのものは変わらないので、そこにむけた開発活動をきちんとやっていこうということですね」

車の電子化に伴い、変わるデジタルキャビン(提供:アルプスアルパイン)
車の電子化に伴い、変わるデジタルキャビン(提供:アルプスアルパイン)


────コロナ禍でピンチをチャンスにするには。

「コロナで、営業利益の面ではピンチですが、逆にテレワークを含めた働き方改革、生産性向上、さらにDXの進展に拍車がかかることはチャンスだと思っています。車の技術トレンド「CASE」や第4次産業革命ともいわれる、IoT 、Connected Industries、その流れは変わらない。

このため、我々の開発のロードマップ、計画もコロナによって大きく変わることはありませんし、DXをもっと活用して、テレワーク、リモートでもグローバル各拠点がOne Team(ワンチーム)として活動できるようにする。そこが変化ですね。従来からやりたいと思っていたけれど、コロナである意味やらざるをえなくなった。ピンチをチャンスに転じるということですね」


eMirror+車室内モニタリングカメラ(アルプスアルパイン提供)
eMirror+車室内モニタリングカメラ(アルプスアルパイン提供)


────グローバルといえば、サプライチェーン寸断の影響はなかったのですか。閉鎖されて部品が届かないといったトラブルが各地で起きましたが。

「当社では、あまり問題にならなかった。車載製品だと、中心になる北米、ヨーロッパなどで、ものづくりサプライチェーンを築いています。国境をまたいだサプライチェーンは今回厳しくなりましたが、北米は北米、欧州は欧州など域内である程度ものづくりのサプライチェーンを完結しており、それぞれの地域でマーケットに対応できる。基幹部品は日本からグローバルに供給しています。

ものづくりは、工場での生産、品質だけではなく、サプライチェーンの構築による、全体のリードタイム短縮も付加価値です。消費する場所で生産した方が、ロジスティックがシンプルになりますから、そうしたものづくりの体制ができている企業は結果的にコロナにも強いということになります」


テレワークが女性活用に ジョブ型雇用も視野に

────社長自身もテレワークを実施しているのでしょうか。

「本日は社にいますが、概ね半分ぐらいテレワークです。上司が出社したら部下も会社に来なければならなくなります。役員、部長、課長などマネジャー層が率先してテレワークする必要があります。とはいえ、ITの活用が1番苦手なのが、50歳を超えた管理職ですが……。

発見もありました。6月に本社圏約3千人の社員にテレワークを実施した上でのアンケートをしました。その結果が意外でした。当初は自宅にいると、どうしてもサボりがちになるのではないか、きちんと労務管理ができるのか、などを心配していたのですが、むしろテレワークをやることで、始業時終業時の部門ミーティングや、上司とのコミュニケーションなど、これまではオフィスに行けばそれとなく惰性でまわっていたのが、テレワークでメリハリがついてコミュニケーションもより活発にできるようになりました。

社員はサボっていると思われないかをすごく心配しています。会社に長時間いれば、頑張っていると評価されたのが昭和の日本企業だと思いますが、テレワークでは成果重視になります。ですから、上司と業務進捗が共有化されていないと、社員本人も不安になっている。そういう意味で、仕事のやり方、働き方、マネージメントで大きな効果が出ています。

最近いわれているジョブ型雇用ですね。現行の制度から急には変われませんが、テレワークで業務の目標アウトプットを、上司と部下が共有化する。そうなると、1日8時間働こうが、5時間で終わろうが、今日はここまで達成したという形で、時間より成果が重要になる。テレワークを活用した社員の90%以上がサボるどころか、逆にしっかり成果を『見える化』しなければならないというプレッシャーを感じながら仕事を進めてくれている。ですからその分マネジャーも、しっかり管理して、仕事を共有化しなければならないのです」

自らテレワークを実施すると言う栗山年弘氏(提供:アルプスアルパイン)
自らテレワークを実施すると言う栗山年弘氏(提供:アルプスアルパイン)


────逆に言うと、テレワークの方が管理職も厳しいといえますか。

「会社に行って雑談してればいいではない。人事評価も、会議で大声で発言する人、発言が多い人が評価されがちということはなくなり、成果をより重視する方向へ評価の基準も変わる。だから、女性社員の評価もさらに高まると思っています。

女性社員は結婚、子育てなどで残業が難しく一般的には会社に長時間いる男性社員と比べると、どうしても勤務時間の長さでは見劣りしてしまって評価が低めになる傾向があったようにも思いますが、今後はそれが一掃されることになっていくのではないかと思っています」


文/杉浦美香


《後編に続く》

・タクトスイッチは、アルプスアルパイン株式会社の登録商標です。

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