「アフターコロナ」に向けた新たな社会づくりを探る(3) (2/3)

ウィズコロナ/アフターコロナの社会を救う「開疎化」「多様化/分散化」  

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

ウィズコロナ/アフターコロナの社会を救う「開疎化」「多様化/分散化」

『変質する世界』
-ウィズコロナの経済と社会

 Voice編集部編
 PHP研究所(PHP新書)
 2020/07 221p 880円(税別)


「オフグリッド化」などの工夫で森林に「開疎化」された集落を

月刊誌「Voice」に掲載された、経済学者や人類学者、企業経営者、作家など15人による論考やインタビューを集めた本書『変質する世界』をもとに、「アフターコロナ」のオプションを探ってみよう。

安宅和人氏(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)は、「開疎化」すなわち「開放(open)×疎(sparse)」に向かうトレンドが起きていると説く。

周知のように、医療機関、商業施設、オフィス、大量輸送機関などでは、密閉を回避して換気を励行、座席等を離すなどして、人を密集・密接させない工夫が始まっている。

これは、これまでの都市化が効率化のために、積極的に密な空間を作ってきたのとは正反対の動きだ。だが、今後は否応なく、都市空間のデザインを開疎化を前提にしたものに変えていかざるを得ない。

安宅氏はさらに、国土の67%を占める森林の中に、1平方キロメートル当たり50人以下の開疎化された集落を展開することを提案している。

人口密度が低いと、道路・電気・水道などの生活必需インフラを構築・維持するコストが高くなるが、それに対しては「オフグリッド化」などの工夫をするという。

オフグリッド化とは、大きな発電所と送電網(グリッド)で電気を配るのではなく、必要な場所に小規模の太陽光発電システムを設置していくものだ。


1国への依存を避け「多様化/分散化」したグローバル化がキーに

コロナ禍は、海外との取引にも深刻な影響を及ぼしている。国同士の人の往来や物資の流通がストップし、日本ではとくに中国との輸出入や、インバウンド需要が急激に落ち込んだ。

それに対し、今後は海外への依存を避け、グローバル化を縮小して国内回帰を進めるべき、といった声も小さくない。

だが、本書で戸堂康之氏(早稲田大学政治経済学術院教授)は、日本はむしろグローバル化を強化し、「多様化/分散化」を図るべきと主張している。

戸堂氏は、海外への依存を避け国内で閉じるのではなく、依存を分散化させることを提言している。近年、日本の貿易は中国にやや偏重していたが、それを多くの国に分散させるようにすれば、リスクの軽減になるというのだ。

さらに同氏は、日本の国際共同研究による特許の割合が、欧米諸国や中国のおよそ10分の1しかない事実を指摘。知識面でも、日本はもっと多様な国々とのネットワークを構築すべきだと説く。

多様な情報や知識の国境を超えた往来が、イノベーションを活発化し、これからの経済や社会の発展を支える「オプション」になっていくからだ。


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