「アフターコロナ」に向けた新たな社会づくりを探る(3) (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

新型コロナウイルス感染拡大は、なかなか収束しない。仮に収束しても、さらに未知の新型ウイルスがいつ出現するかわからない。そのたびに都市封鎖を繰り返していては、経済は停滞し、社会が崩壊に向かうに違いない。コロナ以前の社会がウイルス感染症に「脆弱」だったのだとすれば、ウィズコロナ/アフターコロナの社会は、その脆弱性をどう解消するかにかかっている。本稿では、そのための方向性を考えてみたい。

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予測不能なリスクを多様なオプションで乗り越える「反脆弱」という考え方



『反脆弱性[上]』『反脆弱性[下]』
-不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

 ナシーム・ニコラス・タレブ 著
 望月 衛 監訳
 千葉 敏生 訳
 ダイヤモンド社
 2017/06 [上]412p[下]424p 各2,000円(税別)



変化によるストレスを糧に成長・繁栄する「反脆弱」

新型コロナウイルスの感染拡大が、なかなか収束しない。さらに、ウイルスは予測できない変異をするので、今後、未知のウイルス感染症が再び大流行するかもしれない。

こうした予測不能のリスクに、われわれはどう備えればいいのだろうか。

本書『反脆弱性[上]』『反脆弱性[下]』は、不確実でリスクに満ちた環境を生き抜くのに必要な要素である「反脆弱」を、豊富な事例とともに解説している。

著者のナシーム・ニコラス・タレブ氏はリスク工学を専門とする研究者。著書『ブラック・スワン』(ダイヤモンド社)は33の言語で出版され、大ベストセラーとなった。

タレブ氏は、ある環境に過度に最適化されたシステムは「脆い(fragile)」と指摘。突然の環境変化に対応できないからだ。

だが、対照的に、変化によるストレスを糧に成長・繁栄するシステムもある。例えば、人間の筋肉や骨は、筋トレなどで負荷がかかったり、骨折したりすると、以前より太く強くなることが多い。タレブ氏は本書で、このような性質を「反脆弱(antifragile)」と名づけている。

「反脆弱」は、今回のパンデミックのような予期せぬ環境変化に対応できる性質なのかもしれない。では、具体的に何をすればいいのか。


コロナ禍をチャンスに変えたミュージシャン

本書は、「反脆弱」になるためのポイントの一つに「多様なオプション(選択肢)」を挙げている。「別のやり方」に行動の方針を切り替えることで、却って“強くなれる”のだ。

例えば、コロナ禍で打撃を受けている業界の一つに音楽業界がある。ライブなどができないために多くのミュージシャンが仕事を失った。しかし、ある私の友人のギタリストは、この状況でむしろ知名度を上げ、ビジネスを成功させている。

どういうことかというと、彼はコロナ禍以前から、さまざまな「オプション」を持っていた。これからは単にライブだけでは食べていけないと思い、ミュージックスクールを経営したり、YouTubeでギター講座を開設しオンラインでレッスンを行ったり、ネット上で音楽理論講座のテキストを販売したりしていた。

もともと教えることが得意でもあったので、自粛で家にいる機会が増え「ギターでも習ってみようか」と考えた人たちに、これらのネットコンテンツがヒットしたのだ。

一般企業でも、以前から働き方改革を進め、テレワーク環境という「オプション」を整えていた企業は「反脆弱」になれる可能性が高い。従来とそれほど変わりなく活動を継続でき、他社が止まっていた分、業績を伸ばせるかもしれないからだ。

今からでも遅くはない。「コロナ後」を見据えたオプションを見きわめ、整備を進めてはいかがだろうか。


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