様々な種類・用途が存在する半導体集積回路(IC)~半導体入門講座(8)

私たちが肌身離さず持ち歩いているスマートフォンはもちろんのこと、あらゆる電化製品は半導体がないと作ることができません。特に、半導体集積回路(IC)は年々進化しており、その用途を拡大しています。今回は、私たちの身のまわりでよく使われている主な半導体ICの種類について簡単に解説しながら、今後の成長が期待される半導体ICとして、パワー半導体ICや高周波半導体ICについても簡単にご紹介します。

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半導体ICの種類

では、今は一体どのような半導体集積回路(Integrated Circuit:IC)やチップがあるのか。主なものを紹介しよう。おおよそ、半導体メーカーが手掛けている半導体ICには、MPU(Micro-Processing Unit:マイクロプロセッサ)、メモリ(DRAMとNANDフラッシュ)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、通信モデムIC、アナログIC(ADC/DAC)、電源IC、レーザーやLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、受光素子(Photodiode)やCMOSセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などが今後も成長が期待されるICなので、簡単に紹介する。詳細はさまざまな教科書やウェブなどを参照していただきたい。


MPU(Micro-Processing Unit:マイクロプロセッサ)

ソフトウエアプログラムで演算や制御を行うICで、仕組みはコンピュータと同じ。命令セットも演算命令と制御命令などを使う。現在は64ビットが主流になり、絶えず使うメモリをキャッシュメモリとして、多数の高速SRAMを集積している。IntelやAMDが大手。プロセッサIC内の、基本MPUブロックをライセンス販売するARM社は、ソフトウエアを作成する仲間が多く、エコシステムが充実している。

インテルが手掛けるマイクロプロセッサ(MPU)
インテルが手掛けるマイクロプロセッサ(MPU)


半導体メモリ

DRAM(Dynamic Random Access Memory)は1トランジスタ/セル方式の集積度が高いメモリで、絶えず書き込みと読み出しがおこなわれるメモリとして使われる。例えば、パソコンで文章を書く場合はDRAMに貯めておき、書き直しがいつでもできるようにしている。メモリ内容が数秒で消えてしまうため、百ミリ秒程度ごとにリフレッシュしてメモリ内容を保っている。

NAND型フラッシュメモリは、保存用のメモリでストレージと呼ばれる不揮発性メモリ。DRAMとは違い、写真やビデオ、オーディオを貯めるのに使われる。メモリセルがある程度集まったブロックごとに一括消去するため、一瞬でブロック全部を消すことからフラッシュと名付けられた。

3D-Xpoint(読み:3D cross point)メモリは、最近注目されているストレージクラスメモリで、DRAMより少し遅いがフラッシュのように不揮発性でDRAMとNANDフラッシュとの中間に位置する。IntelとMicronが共同で開発した。

SDカードやUSBメモリはNAND型フラッシュメモリが使用されている
SDカードやUSBメモリはNAND型フラッシュメモリが使用されている


マイクロコントローラ(マイコン)

マイクロプロセッサ(MPU)はソフトウエアでさまざまな機能を設けたり、演算速度を上げたりするが、マイクロコントローラ(Microcontroller、マイコン)は制御命令を得意としてシステムの制御を担当する。超高集積のマイクロプロセッサ(MPU)よりも構造が比較的簡単で、コストが安い。


GPU(Graphics Processing Unit)

グラフィックス、すなわち絵を描くためのプロセッサである。絵はまずデッサンを描くのと同様に小さな三角形のポリゴンをつなぎ合わせておおよその輪郭を作る。次にレンダリング(Rendering)、すなわち色塗りである。色はさまざまな色を混ぜ合わせて作るため、掛け算を足し合わせる「積和演算回路」を多数集積する。

コンピュータ画面上に1枚の絵を素早く色塗りするためには、小さなブロックに分割し、それぞれを積和演算回路で色を塗り、しかもすべての積和演算回路を並列に同時に動作させる。この積和演算回路は、人工知能(Artificial Intelligence :AI、以下AI)に使われるニューラルネットワークの演算とよく似ているため、AIの学習と推論にGPUが使われている。


高性能GPUが搭載されたNvidia社のグラフィックボードQuadroシリーズ
高性能GPUが搭載されたNvidia社のグラフィックボードQuadroシリーズ


DSP(Digital Signal Processor)

積和演算専用のマイクロプロセッサで、GPUの多数の小さな演算器とは違い、大きな演算器をもち、数値解析に使う。複雑な偏微分方程式などを解く場合には数値演算がよく使われるが、ここでは演算精度を上げるため32ビットよりも64ビット演算が主流になっている。例えば、通信モデム(変復調器)のデジタル変調や、圧縮・伸長アルゴリズムなどを解くために使われる。


FPGA(Field-Programmable Gate Array)

FPGAは、ユーザーが自分専用のロジック回路を自由に組むことができる。いろいろなロジックテーブルと、ロジックをつなぐスイッチやメモリなどを集積している。最近では一般的なC言語でプログラムできるツールも入手できるほか、クラウド上でプログラムするツールもある。


通信モデムIC

携帯電話やスマートフォンに使われる無線通信用のIC。無線通信では、デジタルデータを電波に乗せて飛ばしたり、受け取ったりするためにデジタル変調をかける。このデジタル変調を計算するために使うICチップ。DSPを使った数値演算も可能だが、決まったアルゴリズムの演算だと専用ICの方が小さく低コストでできる。メーカーとしては、米QualcommやBroadcom、台湾のMediaTekの他に中国のHiSiliconも参入している。


アナログIC

増幅や線形回路を表現するオペアンプ(演算増幅器)やコンパレータ(比較器)、さらにデジタルに変換するA/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter, ADC)やその逆のD/Aコンバータ(Digital-to-Analog Converter, DAC)などがある。例えば、A/Dコンバータでは、アナログ信号のピーク値を最大桁数のデジタル値として表し、アナログ波形の高さを時々刻々とサンプリングしながらデジタル値に落としていく。コンパレータ(比較器)を使いながらデジタル値に落とし込む方式や一気に比較する方式などさまざまな方式がある。


電源IC

安定した5Vや3.3V、あるいは1.2Vなどを作り出すための安定化電源IC。AC/DCコンバータやDC/DCコンバータなどがある。十数年前は5V単一や3.3V単一などICに加える電源電圧は一定だったが、一つの回路システムではマイクロプロセッサ(MPU)には1.2V〜1.0VやCMOSロジックには5V、液晶ドライバには7Vなど、さまざまな電圧を使うICが増えたため、電源ICの用途は広がった。例えばスマートフォンでは、4.1Vのリチウムイオン電池から1.2V、3.3V、5Vなど10種類くらい電源が必要だと言われており、DC/DCコンバータの需要は増えてきている。


レーザーとLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)

LEDではpn接合に順方向の電流を流すと、半導体チップが光ってくる。順方向に電圧をかけると電子と正孔が接合部に集まり、それらが結合する時にエネルギーを光に変える。レーザーでは、光を閉じ込めてその波長の長さの共振器を形成し光のエネルギーを増幅することで強くまっすぐに集光させたビームになる。直線状にビームが出るため、面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser: VCSEL)がiPhone Xに搭載され顔認証に使われている。

iPhone XではVCSELから数十本のビームが顔の鼻や耳、眼、眉毛など顔の特徴部分にあたり反射光を検出してその距離から3次元の顔の特徴輪郭を描く。AI学習データと突き合わせ、人物を判断する。



受光素子(Photodiode)やCMOSセンサ

光を感知する受光素子はフォトダイオード(Photodiode)と呼ばれる。受光した光を電流に変換し、光の強さは電流の大きさに比例するため、照度センサとしても使われる。受光素子をずらりとマトリクス状に並べたものがイメージセンサと呼ばれ、カメラに使われている。

数十年前までフォトダイオード(Photodiode)からの電荷をCCD(Charge Coupled Device)方式で集める方式が主流だったが、最近はソニーが発明した裏面照射型CMOSイメージセンサが主流になっている。半導体表面には金属配線が設けられており光を十分に取り入れることができないため、裏面から光を取り入れる方式にした。画素ごとにアンプを設けてありノイズに強い。



MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)

シリコン(Si)にエッチングやパターニングなどで加工して、超微細な機械部品を作る技術。シリコン(Si)をくりぬいて細い板状のカンチレバーを作り、カンチレバーを先端に取り付ける重りで加速度や振動などを検出したり、薄い膜を作ってマイクロフォンを形成したり、圧力を検出したりするセンサとして用途は広い。

AppleがiPhoneに加速度センサを搭載し、スマートフォン画面を縦と横で見やすい画面に90度動かすようにしたことがMEMS製品の爆発的に売れるようになった。MEMSマイクは1台のスマートフォンに2〜3個はいっておりノイズキャンセル機能も追加している。

加速度ジャイロセンサチップ
加速度ジャイロセンサチップ


今後の成長が期待されるパワー半導体ICと高周波半導体IC

その他、パワー半導体や高周波向けの無線チップなどもこれから成長が期待される製品である。パワー半導体は電気自動車のモータを制御したり、回生ブレーキによる充電を制御したり、クルマ内のパワーウインドウやワイパー、ウィンカーなどさまざまな小型モータの駆動にもパワー半導体が使われている。
 またワイヤレス製品が増えれば増えるほど、無線回路も必要になり、高周波半導体は欠かせなくなる。特にこれからの5G(第5世代移動通信システム)には高周波半導体への要求は高まる。
 AIにもチップがカギを握るようになり、IntelやMicrosoft、Google、Facebook、Amazonなどが開発している。


著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。


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