工場・物流倉庫内作業の自動化、ロボットに「目」と「脳」を与え「考えさせる」技術で実現

INTERVIEW

株式会社MUJIN
CEO兼共同創業者
滝野 一征

“ティーチング”を必要とせず、産業用ロボットを自律制御させる「モーション・プランニング(動作計画)」という技術を活用し、知能ロボットコントローラ「MUJINコントローラ」の開発、提供しているのがMUJINです。同社はMUJINコントローラにより、工場や物流センターにおけるバラ積みのピッキングや箱詰めといった作業の自動化を実現しています。
 
カジュアル衣料品店「ユニクロ(UNIQLO)」を展開するファーストリテイリングとの提携を発表するなど、倉庫内の作業の生産性を飛躍的に高めるとして大きな注目を集めるMUJINコントローラは、いかにして生まれたのでしょうか? 株式会社MUJIN CEO兼共同創業者の滝野一征(たきの・いっせい)氏に話を聞きました。


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株式会社MUJIN CEOの滝野一征氏
株式会社MUJIN CEOの滝野一征氏


工場での作業効率、生産性を高める存在として、ここ数年で活用の機会が増えている産業用ロボット。しかし、その多くはあらかじめプログラムを教え込む”ティーチング”という作業が必要であり、そのプログラムに基づく動作しかできませんでした。
 
「ティーチングは非常に複雑で、メーカーごとに操作方法も大きく異なります。そのためティーチングのプロでなければ務まらず、時間と費用がかかります。また、ピッキングなどの複雑な作業は対象物の形状や配置が都度異なるため、事前に動きをすべて想定してティーチングすることは不可能であり、自動化ができていませんでした」と、滝野氏は語ります。
 
そうした従来のロボットコントローラの課題を解決すべく、滝野氏とCTO兼共同創業者のデアンコウ・ロセン(出杏光魯仙)氏が2011年に創業したのがMUJINです。
 
滝野氏は米国大学を卒業後、ウォーレン・バフェットの会社として有名な、製造業の中でも世界最高の利益水準を誇ると言われる超硬切削工具メーカー・イスカルの日本支社に入社。生産方法を提案する技術営業として、営業成績1位を獲得するなど輝かしい実績を残します。実際に営業として、滝野氏がさまざまな現場をまわる中で感じた課題が「製造現場における生産性の向上」でした。


株式会社MUJIN CTOのデアンコウ・ロセン氏
株式会社MUJIN CTOのデアンコウ・ロセン氏


そんな滝野氏が出会ったのが、CTOのロセン氏でした。ロセン氏は高校でコンピューターサイエンスとAI(人工知能)について学び、カーネギーメロン大学のロボティクス研究所で「自律マニピュレーションシステムの自動構築」のテーマで博士号を取得した人物。
 
ロボット用ミドルウェアの「ROS」を開発した会社「Willow Garage(ウィローガレージ)」でインターンをしていたロセン氏は、2009年に開催されていた国際ロボット展でウィローガレージ社の展示ブースの営業を手伝っていた滝野氏と出会いました。自分が研究していた「モーション・プランニング(動作計画)」という技術を使って世の中に貢献したいという想いを抱いていたロセン氏は、滝野氏のビジネスセンスに惚れ込み、一緒にビジネスをやろうと滝野氏に1年ほど熱烈なアプローチをかけ、2011年にMUJINが創業することになりました。


自動化で必要とされた「ティーチング」の解放、ロボットに「目」と「脳」を与えて「考えさせる」

ピッキング作業を行うロボット
ピッキング作業を行うロボット


MUJINが開発した、ロボットの動きを制御するロボットコントローラ「MUJINコントローラ」は「モーション・プランニング」技術が核となっています。
 
産業用ロボットに“知能”を与える──これが同社が開発するコントローラの特徴です。従来は、ロボットが動作を実行するのに関節の角度やアームの進行方向、距離などをプログラミングで教え込む「ティーチング」が必要とされていますが、「MUJINコントローラ」はその必要がありません。人間がロボットに必要な動作を教えるのではなく、ロボットに必要な動作を「考えさせる」のです。
 
「モーション・プランニングは、始点から目的地まで、障害物を避けながら最適経路でたどり着く技術です。具体的には“目”の部分にあたる3Dビジョンシステムが物体の特徴や位置を認識し、“脳”の部分にあたるコントローラがその場に最適なロボットアームの軌道を自動で生成し、ロボットを動かすイメージです。これまではロボットの干渉回避、特異点回避をしながら、経由点ポイントを一つひとつ教えなければなりませんでしたが、MUJINコントローラを使うことでその必要はなくなります」(滝野氏、以下同)
 
また、MUJINコントローラは大手ロボットメーカー8社のロボットに接続可能であり、ロボットを高度に知能化することができます。まさにロボットを動かすためのOS(Operating System)を作っている、ということです。
 
現在、MUJINは製造業の工場向けと物流倉庫向けのほか、ロボットコントローラのOEM(Original Equipment Manufacturer)の3つの軸で事業を展開しています。最近では、物流倉庫向けの引き合いが強くなっています。
 
例えば、ロボットによって自動化が進んでいる自動車工場は、同じ部品が運ばれてきて塗装する、など繰り返しの作業が多く、一度ティーチングをすれば、ロボットは安定して動くことができます。
 
一方、物流倉庫の現場では多品種を取り扱い、商品の種類や位置姿勢は毎回変動するため、あらかじめあらゆる動きを想定してティーチングをしておくことができません。そういった工程はこれまで人の手によって行うしか選択肢がありませんでした。
 
「そうした今までロボットを入れられなかった工程の自動化をMUJINコントローラであれば実現できるため、物流業界からの引き合いが強くなっています」


成功の要因、それは「現場」の課題・ニーズを一つ一つ解決してきた点

倉庫内にてピッキング作業を行うロボット
倉庫内にてピッキング作業を行うロボット


創業当時は製造業の顧客を対象にしていましたが、2016年のアスクルとの業務提携をきっかけに物流にも進出をしました。
 
将来の人手不足を早くから見込んだアスクルは、他社に先駆けて物流センターにおけるピッキングの自動化を実現する術がないかと模索していたところインターネットでMUJINを見つけ、そこからともに物流の自動化にチャレンジをする話が進んでいったそうです。
 
MUJINの成功の要因において技術力は10%くらいに過ぎず、残りは現場の課題、ニーズを把握し、一つひとつ問題解決を進めてきたことにあります。実際の現場ではデモ環境では起こりえない無数の課題が発生します。それにつぶさに向き合って解決してきた点がMUJINの強みであり、後続の企業がなかなか真似できない点です。
 
そのほか、小売業社に化粧品・日用品・一般用医薬品を卸販売するPALTAC社の倉庫センターでパレットから荷物を積み下ろすデパレタイズ作業や積み付けるパレタイズ作業において採用されていたり、海外では中国EC大手のJD.com(京東集団)社が「世界初の完全無人倉庫」として立ち上げた上海の倉庫にも入庫とピッキング、商品を包装機へ投入する工程で採用されたりしています。
 
現在は、実際のロボットの稼働の様子を見ることができるショールームが併設されたオフィスへ移転したMUJIN。
 
「テスト機能を本社のオフィスに設置することで、提案から試験、納入までのリードタイムを短縮できるようになりますし、ショールームで実際にロボットがきちんと動いているのをご覧いただくことができれば、お客様にも納得してもらいやすいと思っています」
 
MUJINは中国の広州にもオフィスを構え、今後は海外への事業展開も考えているとのことです。新型コロナウイルスの感染拡大によって、倉庫内の“無人化”のニーズがより高まることが予想されている昨今、MUJINが提供するMUJINコントローラはより多くの現場で必要不可欠とされる存在になるのではないでしょうか。


 
文/新國翔大


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