「アフターコロナ」に向けた新たな社会づくりを探る(2) (2/3)

パンデミックが発生するのは、意外に「世間が狭い」から

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

パンデミックが発生するのは、意外に「世間が狭い」から

『スモールワールド・ネットワーク〔増補改訂版〕』
-世界をつなぐ「6次」の科学


ダンカン・ワッツ 著
辻 竜平/友知 政樹 訳
筑摩書房(ちくま学芸文庫)
2016/10 509p 1,600円(税別)


「世間の狭さ」がネットワークを読み解くヒントになる

現代のウイルスは、主に「人と人の接触」で感染する。よって、パンデミックを防ぐには、人のつながりのネットワークの性質を理解する必要がある。

意外に「世間は狭い」と驚いた経験はないだろうか。初対面の人と、思いもよらないつながりから共通の友人がいたりするケースだ。

本書『スモールワールド・ネットワーク〔増補改訂版〕』は、一言でいえば、そんな「世間の狭さ」を論じた書籍だ。人と人がどうつながり得るか、数理モデルや豊富な事例をもとに解説している。

著者のダンカン・ワッツ氏は、自ら考案した数理モデルで「ネッワーク科学」という新学問領域を拓いた人物だ。


中国の国家主席に何段階の「人のつながり」で届くのか

世間を狭くする要因は何だろうか。

ここで、私が中国の習近平国家主席とつながれるか、考えてみた。すると、まさかと思うかもしれないが、2〜3段階のつながりで届きそうなことがわかった。

カギを握るのは、私の会社の元同僚である中国人のAさんだ。彼女は中国の清華大学の卒業生。そして、清華大学といえば、習主席の出身校だ。Aさんと習主席の年齢差は10歳未満である。

清華大学は卒業生同士のつながりが非常に強いと聞く。ならば、Aさんが習主席と、直接知り合いでなくても、大学関係の知人を辿れば、つながる可能性が高そうだ。

この私と習主席の間にできたネットワークには、「私の会社の関係者」と「清華大学出身者」という2つの集団がある。この両者に所属し、集団同士を“つなぐ”役割を果たすのがAさんである。

本書では、この2つの集団のような、近い人間関係でできた人の集まりを「クラスター」と呼ぶ。そして、Aさんのように、互いの関係が薄かった集団同士を一気につなぐ存在を「ショートカット」と呼ぶ。

もうお分かりだろう。このショートカットこそが、「世間の狭さ」を作る要因なのだ。


感染症拡大対策には「ショートカット」がカギになる

今回の新型コロナウイルスのケースで「ショートカット」になるのは、「よく動き回る人」にほかならない。都道府県間を移動したり、「夜の街」を徘徊して複数の店(=クラスター)を渡り歩いたりする人だ。

東京のような過密都市では、ある程度の濃厚接触者のクラスターができるのは避けられないだろう。ならば、ショートカットに注目すべきではないだろうか。

ウイルスと共存する「アフターコロナ」の段階においては、ショートカットとなり得る自らの行動に注意しつつ、どこまで経済活動を再開していけるかがポイントになりそうだ。


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