量産試作のための基礎知識(3)~射出成形工程と金型における最適なゲート形状の選び方

樹脂製の製品を考えた際、最終目標は当然「量産して製品をリリースすること」でしょう。量産するためには金型が必要となります。試作の初期段階では金型を意識する必要はありませんが、量産前の設計や試作の段階ではその製品が金型で成立していることが必須条件です。
 
製品設計者としては、金型で製品を成立させるために、金型について最低限のことを知らなければはじまりません。そこで今回は金型の基本的な構造について説明していきます。


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金型による射出成形から製品取り出しまでの工程

金型は、「固定側型板(キャビティ:Cavity)」と「可動側型板(コア:Core)」の2枚の主要なプレートにさまざまな部品がついて構成されます。この固定側と可動側の間で製品を成形しますが、一般的には固定側に製品として見える側(意匠面)を設定します。
 
なおこの金型は、射出成形機とよばれる機械に取り付けて成形します。したがって、射出成形機に取り付けられない金型は“ただの金属のカタマリ”となってしまいます。


金型の構造:固定側型板と可動側型板
金型の構造:固定側型板と可動側型板


それでは、簡単に金型の動きを見てみましょう。
 
 
1. 以下の図は、樹脂を充填する前、金型が閉じている状態を示します。

金型が閉じた状態(樹脂が充填されていない)
金型が閉じた状態(樹脂が充填されていない)


2.  次に、射出成形機から金型内部に樹脂が射出されます。この時の樹脂は高温の液状になっています。


射出成形機から金型内部に樹脂を射出する
射出成形機から金型内部に樹脂を射出する


3.  金型内の樹脂を冷却し固化した後、金型を開きます。このとき製品は可動側に付いています。


樹脂を冷却し固化した後、金型を開く
樹脂を冷却し固化した後、金型を開く


4.突出機構により、金型から成形した製品をピンで押し出します。


金型から成形した製品をピンで押し出す
金型から成形した製品をピンで押し出す


5.製品を金型から取り出します。


金型から製品が取り出された状態
金型から製品が取り出された状態


6.次の成形をするために型が再度閉じ、1の状態に戻ります。


以上の動きを繰り返すことで、金型を用いて製品を大量に成形して生産することが可能です。


射出成形金型におけるさまざまなゲート形状

もう少し製品目線で金型を詳しく見てみましょう。


ランナーとゲート:「金型内における樹脂の通り道」と「ランナーと製品の接続部」

射出成形機から射出された樹脂は金型の中を通って製品部に充填されます。この製品部に充填されるまでの樹脂の通り道を「ランナー」といい、ランナーと製品部分をつないでいる部分を「ゲート」といいます。例えば、プラモデルを見ると部品の周りにフレームがあると思いますが、それがランナーです。通常の製品ですと、ランナーは製品以外の不要な部分であるため取り除かれます。一方、使用者自身が組み立てをして楽しむプラモデルでは、ランナーに部品を付けたまま製品として販売しているというわけです。

プラモデルのパーツとランナー
プラモデルのパーツとランナー


ゲートにはさまざまな形状があり、その形状の選定次第で製品の成形に影響が出ます。製品形状によってゲート形状の向き不向きがあります。さまざまなゲートの特徴を知っておけば製品設計に生かすことができるでしょう。なおランナーの設計の仕方に関しては、製品そのものの設計ではなく金型設計の範ちゅうであるため今回は省略します。
 
以降は、主なゲート形状について以下に説明します。


ゲート形状①:ダイレクトゲート

ランナーを介さず直接製品にゲートを落とす方法です。対応できる製品形状が限定的となりますが、成形バランスが取りやすくランナーを必要としないため、設定が容易かつ樹脂の節約にもなります。欠点としては、ゲート付近にゆがみが出やすいこと、製品にゲートカットをした跡が大きく残ることなどがあります。ダイレクトゲートは断面が均一な製品に適しています。バケツや箱などの成形で多く見られるゲート形状です。


ダイレクトゲート
ダイレクトゲート


ゲート形状②:サイドゲート

製品の側面(サイド)に付けるゲートのことで、加工が簡単で多数個取りにも対応できることから最もよく使用されているゲート形状です。成形品を金型から取り出した後、ニッパーなどでゲートを切断して仕上げます。ゲート跡が残るため目立たない場所にゲートを付けるなどの配慮が必要です。


サイドゲート
サイドゲート


ゲート形状③:ジャンプゲート(オーバーラップゲート)

サイドゲートによく似ているゲート形状です。サイドゲートは製品の側面にゲートを設定するのに対し、ジャンプゲートは製品の上面または下面にゲートを設定します。サイドゲートで製品の側面に跡を残したくない場合にこのゲートを使用します。

ジャンプゲート
ジャンプゲート


サイドゲートと同様に加工は容易ですが、サイドゲートに比べて若干ゲートカットがしづらいのが難点です。


ゲート形状④:トンネルゲート

型が動作するタイミングで自動的に切断されるゲート形状です。今までのゲートは成形後にゲートの処理が必要でしたが、トンネルゲートは多少のゲート跡は残るものの基本的に仕上げが不要であることがポイントです。欠点は、ゲートを金型に潜らせるため加工が非常に手間となり金型のコストアップになること、樹脂の種類によっては上手くゲートカットされないことなどがあげられます。


トンネルゲート
トンネルゲート


ゲート形状⑤:ピンゲート

トンネルゲートと同様にゲートが自動的に切断されるゲート形状です。仕上げも不要ですが、固定側(意匠側)にゲートを設定するため、切断跡が残らないように切れ対策が必要です。ランナーのレイアウトの自由度が高く多点ゲートも可能なことから、応用性が非常に高いゲート形状です。ただし金型構造は「3プレートタイプ」とよばれる複雑な構造であるため、トンネルゲート以上に加工の手間がかかり、コストアップにつながります。また、樹脂の種類によってはゲートの切断もうまくいかないことがあります。


ピンゲート
ピンゲート


最適なゲート形状を決めるポイント

円筒上の製品であれば、ゲートの跡が残るデメリットがあっても、成形バランスの取りやすいダイレクトゲートがいいかもしれません。月産数量が非常に多い製品であれば、金型に費用をかけてもトンネルゲートやピンゲートを採用するのがいいでしょう。ゲートにはそれぞれメリット・デメリットがありますので、製品形状、外観、コストメリットなどトータルで考えてゲートを決める必要があります。

《次回へ続く》


文/落合孝明
大学卒業後、2年間の会社勤めを経て、モールドテックに入社。2010年から同社の代表取締役に就任、現在に至る。樹脂およびダイカスト金型の設計を軸に、製品の企画・デザインから手配まで一貫して請け負う。著書に、「金型設計者1年目の教科書」「すぐに使える射出成形金型設計者のための公式・ポイント集」(日刊工業新聞社刊)がある。


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