今さら聞けない半導体の原理と仕組み、トランジスタの特徴~半導体入門講座(3)

半導体とは文字通り半分導体、つまり導体と絶縁体の中間となる性質を持つ物質です。その性質を活用すれば人間の意のままに電気を流したり止めたりできるデバイスができるのではないか、という発想から半導体が研究されるようになったそうです。また、半導体が広く世の中に普及した背景で、トランジスタの存在は大きなものでした。今回は、半導体の原理と仕組み、そしてトランジスタの誕生とその特徴についてご紹介します。

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半導体は文字通り、導体と絶縁体の中間の性質

半導体とは、半分導体という意味である。導体と絶縁体の中間の性質を持つ。導体は電気をよく流し、絶縁体はほとんど流さない。半導体はその中間に位置するから、そのように呼ばれている。

では、電気を流す物質と流さない物質の中間なら何が良いのか。人間の意のままに電気を流したり止めたりできるデバイスができるのではないか、という発想から半導体が研究されるようになった。

純粋な半導体は実は絶縁体に近い。電流はわずかしか流れない。そこで原子価として中性の4価である半導体にわざと5価の元素をほんの少し混ぜてみると、電流がとても流れやすくなる。同様に3価の元素をわずか入れても同様に電流が流れる。

そこで、4価のシリコン(Si)に5価のリン(P)を1万分の1パーセント程度入れたn型半導体と、3価のホウ素(B)を1万分の1パーセント程度混ぜたp型半導体を接合させて、pnダイオードを作ってみると、一方向しか電流は流れない。p型にプラス(+)、n側にマイナス(-)の電池をつなぐと電流は流れるが、その逆につなぐと流れない。

つまり接続の仕方で電流が流れたり、流れなかったりさせることができる。このpn接合の特性こそが、半導体を理解する上での重要なカギを握る。


半導体製造にクリーンルームが必要な理由

上の例で示したn型半導体は、電子がたくさん溢れている物質になっており、p型半導体は電子の抜け殻がたくさんある半導体になっている。電子の抜け殻のことを便宜上、正孔(hole)と呼んでおり、正孔が移動することで電流が流れる、と表現している。

n型半導体に混ぜる(ドープする)5価の不純物元素をドナーと呼び、3価の不純物元素をアクセプタと呼ぶが、それぞれ電子を提供するもの(ドナー)と受け取るもの(アクセプタ)という意味で使っている。

シリコン(Si)結晶1cm3中に含まれるシリコン(Si)原子の数はおおよそ1024個程度である。リン(P)やホウ素(B)を1017~1018個入れて電流にするということは、10万あるいは100万分の1個のドナーやアクセプタを混入するという意味である。このことは、その他の元素やごみを寄せ付けてはならないことになる。流す電流を制御できなくなるからだ。

pn接合の特性はドナーとアクセプタの量で特性が変わってしまう。しかも、4価となる半導体材料も純度が高くなければ思うように制御できなくなる。だから99.999999999%(イレブン・ナイン)の高純度が要求されるのである。

半導体工場では、余計な不純物やごみ、汚染物があっては意図する半導体を作れなくなる。だから、半導体が工業化される1950年代からクリーンルームで作業することが通常だった。


トランジスタとは電流をオン、オフ制御ができるデバイス

リン(P)を混ぜたn型半導体には電子がいっぱい、ホウ素(B)を混ぜたp型半導体には正孔がいっぱいある、ということは両者を接合すると電流が流れるかもしれない、と思われるかもしれない。しかし、現実には流れない。

電子はマイナス(-)の電荷を持ち、正孔はプラス(+)の電荷を持つ。だから、両者をくっつけると、プラス(+)とマイナス(-)は互いに引き合うはずだから、電流が流れてしまうはずなのだが、実際には流れない。そこで、両者をくっつけると電子と正孔が移動しないようなバリアがある、と考えられており、実験でも確かめられている。

実際、pn接合にはエネルギーバリアがあり、その大きさは0.8eV(1eVは約1.6×10-19ジュール)程度と小さなエネルギーを持つ。eVは電子1個が1Vのエネルギーを持つことを表している。そこで、pn接合のp側に0.8Vの電圧を加えると、電流が流れ始めるのである。

シリコン(Si)のような半導体材料にpn接合を作っても電流を流したり止めたりするためには、電池の向きをいちいち変えなければならない。これではたいへん使いにくい。そこで、制御するための端子を加えて、その端子に電圧を加えるか加えないかによって電流を流したり(オン)、止めたり(オフ)できるようになる。こんなデバイスがトランジスタである。

そこで、トランジスタを作るためにどうすべきか、を1940年代後半の米ベル研究所が開発していた。ただし、この時は点接触トランジスタと呼ばれ、半導体上に2点の針を立てて、できる限り二つの針を近づけただけのトランジスタ動作を確認しただけだった。ベル研究所のジョン・バーディーン氏とウォルター・ブラッテン氏が三角形の楔のへりに沿って金属を付け、頂点では二つの金属が触れ合わないようにしながらも、その間の距離をできるだけ短くした。この時に電流増幅率が最大100という増副作用を示したのである。

実は、この実験で増幅作用を発見した時に、上司のウィリアム・ショックレー氏は出張中で、歴史的な場面に立ち会えなかった。ショックレー氏が真空管に代わる固体の増幅器を発明せよ、という命題を受け取って、さまざまな実験を繰り返してきたのにもかかわらず、大事な実験の場に立ち会えなかった。

ショックレー氏はとても悔しくて、点接触トランジスタのような芸術的な作品ではとても工業化できないと考え、今日のトランジスタに通じる接合型トランジスタのコンセプトを生み出し、理論づけた。この結果1956年に3人はトランジスタの発明でノーベル賞を受賞した。


<図1>点接触トランジスタ(左)と接合型トランジスタ(右)
<図1>点接触トランジスタ(左)と接合型トランジスタ(右)



トランジスタの種類:バイポーラ型とMOS型

ベル研で発明されたトランジスタは、今日ではバイポーラ型と言われている(図2の(a))。その動作原理を簡単に紹介する。

<図2>npnバイポーラ型トランジスタ(a)とnチャンネルMOS型トランジスタ(b) 
<図2>npnバイポーラ型トランジスタ(a)とnチャンネルMOS型トランジスタ(b) 


コレクタにプラス(+)、エミッタに接地の電圧を加え、ベースが0V(接地)にすると、コレクタ-エミッタ間には電流は流れない。ベースにプラス(+)の電圧(0.8V以上)を加えベース電流を流すと、コレクタ-エミッタ間に大きな電流が流れる。ベース電流に対するコレクタ-エミッタ電流(便宜上コレクタ電流と呼ぶ)の比が直流電流増幅率hFEと呼ばれる。ベル研でトランジスタ動作を見つけた時はこのhFEが100程度あった。

このトランジスタでベースに電圧を加えるか否かによって、コレクタ電流が流れるか流れないかが決まる。つまり、スイッチとしての作用を行わせることができる。

これに対して、現在の集積回路(Integrated Circuit:IC)に使われている主要なトランジスタはMOS(Metal-Oxide Semiconductor)型と呼ばれており、当時のトランジスタとは動作原理も構造も異なっている(図2の(b))。

MOS型トランジスタもnpnトランジスタ同様、ドレイン-ソース間に電圧をかけておき、ゲートにプラス(+)の電圧を加えるとドレイン-ソース間に電流がどっと流れる。ゲート電圧が0V(接地)であれば電流は流れない。ここでもゲートに電圧を加えることでドレイン-ソース間の電流をオンにし、電圧を加えなければオフになる。つまり、スイッチ動作が可能となる。

MOS型トランジスタは、ゲートにかける電圧でドレイン電流を制御するため、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)ともいわれ、MOSFETと表すこともある。

バイポーラ型は入力(ベース)に電流を流すことで、出力(コレクタ)電流を大きく得たのに対して、MOS型は入力(ゲート)に電圧を加えることで、出力(ドレイン)電流を大きく得ることができる。つまり両者の違いは、電流駆動が電圧駆動か、である。


集積回路(IC)のトランジスタとしてMOS型がバイポーラ型より優れた点

工業的には、npnバイポーラ型トランジスタは、n型半導体基板上にp型ベース領域、その中にn型エミッタを形成する(図3の左)。一方、nチャンネルMOSトランジスタは、p型基板上にn型ドレインとn型ソースを設け、その間にゲート領域を設ける(図3の右)。ゲートにプラス(+)の電圧を加えると、p型基板の表面だけがn型に反転し、ドレインからソースに電流が流れるようになる。


<図3>npnバイポーラ型トランジスタ(左)とMOS型トランジスタ(右)の断面図
<図3>npnバイポーラ型トランジスタ(左)とMOS型トランジスタ(右)の断面図


バイポーラ型では、p型ベース領域を広くとって、その中にエミッタ領域を形成しなければならず、面積的にはどうしても広くならざるを得ない。これに対して、MOS型は狭いドレインとソースのn型領域とゲート領域をできる限り小さく作ればよいため、面積的な制限は少ない。

加えて、トランジスタを多数集積する場合には、MOS型トランジスタは分厚い酸化物や別の接合(例えばp型)で分離するだけですむが、バイポーラ型ではコレクタ領域を他のトランジスタのコレクタとも分離するため、接合(p領域)や酸化物を設けるなどしなければならず、1個のトランジスタの面積がどうしてもMOS型よりも広くなってしまう。このため集積回路(IC)ではバイポーラ型は、MOS型に取って代わられた。


トランジスタはデジタル回路においてスイッチとして利用

バイポーラ型にせよ、MOS型にせよ、どちらも信号を増幅する機能がある。このため、トランジスタを、電流をオン、オフするスイッチとして使うとしても、信号が減衰することはない。増幅作用を活かせるからだ。このため当初、集積回路(IC)は、バイポーラ型でもMOS型でも作られた。

また、スイッチとして使う場合は、1か0をオンかオフに当てはめると、そのままデジタル回路になる。例えば、1をオン、0をオフで表す。スイッチを2個直列につなぐと、ANDあるいはNAND回路になり、並列につなげばORあるいはNOR回路になる。つまりトランジスタをスイッチとして使うと、そのままデジタル回路になる(図4)。


<図4>トランジスタでANDとORを表現できる
<図4>トランジスタでANDとORを表現できる

トランジスタはアナログ回路において増幅作用

トランジスタは増幅作用もあるため、アナログ回路ももちろんできる。アナログ回路は入力に対して増幅された出力はリニアに増えていく。例えば、電流増幅率が50のバイポーラ型トランジスタでは、入力電流(ベース電流)が1mAで50mAのコレクタ電流が流れ、2mAなら100mAが流れる。このため、アナログ半導体はリニア半導体とも呼ばれている。

増幅作用があるから、オペアンプ(演算増幅器)、コンパレータ(比較器)、差動増幅器などをはじめ、さまざまなアナログ回路を構成できる。電源回路でも出力に電源変動を検出する回路を作り、その電圧変動に応じて調整弁の役割を果たすパワートランジスタの入力に加える電流や電圧を変えることで出力電圧を安定化させることができる。外部からのノイズや商用の交流電圧の多少の変動があっても出力電圧はほとんど変わらない。


著者:津⽥建二(つだ・けんじ)
技術ジャーナリスト。東京⼯業⼤学理学部応⽤物理学科卒業後、⽇本電気(NEC)⼊社、半導体デバイスの開発等に従事。のち、⽇経マグロウヒル社(現在⽇経BP 社)⼊社、「⽇経エレクトロニクス」、「⽇経マイクロデバイス」、英⽂誌「Nikkei Electronics Asia」編集記者、副編集⻑、シニアエディター、アジア部⻑、国際部⻑など歴任。


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