世界シェアナンバーワン部品も有する電子部品メーカーが語るセンサーの歴史とその役割〜《村田製作所:前編》部品の仕事(9) (2/2)

センサーの登場

野地 秩嘉(ノンフィクション作家)
野地 秩嘉
ノンフィクション作家

センサーの登場

 さて、次に村田製作所とセンサーの歴史については同社センサ事業部、商品技術部の宇野静さんが答えてくれた。

 宇野さんは「センサーそのものは当社が設立される(1944)以前からありましたし、研究もされていました」と言った。

「最初は気圧センサーのような簡単なものから始まって、徐々に複雑な形になっていったのでしょう。加速度センサーですとか、あるいは回転を計るジャイロセンサーなどのように。
 弊社が初めて出したのは魚群探知機に使われている水中用のモールド型振動子という超音波センサーです。創業当時なので、70年以上も前のことになります」

 わたしは聞いた。
「センサーがないと魚群探知機を作ることはできないのですか?」

 宇野さんはうなづく。
「船が航行する時、魚群を追うのですが、それに際して座礁したりすると困る。そこで、海底までの距離というのを計らないといけない、そこで圧電セラミックスを開発し、それが水中用モールド型振動子になりました。弊社初のセンサーで、以後、各種のセンサーが派生してきました。

 今回ご紹介しているMEMSセンサーはかなり以前から弊社内では研究してきたものですが、紆余曲折ありまして、フィンランドのVTI社を買収し、同社のMEMSセンサーを製品として出しています」


────では、荻浦さん、一般の人間が「ああ、あれがセンサーの働きなのか」とわかる具体的な例を教えていただけますか。

「自動ドアはご存知ですね。最近の自動ドアは光を放つレーザーみたいな感じの赤外線センサーですね。光を出してその反射を拾っているんです。
 あとは防犯カメラなどに付いている人間の身体から出る赤外線を拾う人感センサーがポピュラーでしょうか」(荻浦)

「トイレに入って電気が点くのは人の熱をとる焦電型の赤外線センサーで、便座が開いたりとか、手をかざした時に水が出るというのは光式の赤外線センサーを使っています。同じ赤外線センサーでも、用途によって違う種類のものが使われたりしています」(宇野)


────つまり、センサーは感知した情報を使って動く機械のなかに入っている。動きの前の情報を収集する働きを持ったものですね。

「まあまあ、正解です」(荻浦、宇野)


株式会社村田製作所_センサ事業部商品技術部シニアエンジニア、ビジネスデベロップメント 宇野 静(うのしずか)氏
1991年株式会社村田製作所野洲事業所入社。生産技術部にて設計アシスタント業務に従事。その後、結婚・出産・育休を経て、1994年センサ事業推進部(現センサ事業部)に復帰。商品技術アシスタント業務に従事。2000年以降各種センサーの商品技術担当を経て現在センサ全般マーケティングコミュニケーション担当。
株式会社村田製作所_センサ事業部商品技術部シニアエンジニア、ビジネスデベロップメント 宇野 静(うのしずか)氏
1991年株式会社村田製作所野洲事業所入社。生産技術部にて設計アシスタント業務に従事。その後、結婚・出産・育休を経て、1994年センサ事業推進部(現センサ事業部)に復帰。商品技術アシスタント業務に従事。2000年以降各種センサーの商品技術担当を経て現在センサ全般マーケティングコミュニケーション担当。


車載のMEMSセンサーについて

────では、荻浦さんが開発されている車載MEMSセンサーの用途について詳しく教えてください。やはり、何かの動作が起こる前の情報を感知するためのものですね。

「乗用車が多いのですが、用途は車の姿勢制御に使われています。車のインパネにESCというマークというか、警告ランプがあります。ESCとはエレクトリック・スタビリティ・コントロール。電気的に姿勢を制御するシステム。タイヤが滑り始めたことを感知、検出して、スタビリティを上げる。スピンしないように姿勢を制御する。安全のためのものです」(荻浦)


────車のどのあたりに付いているものなのですか?

「メーカーさんによっても違いますが、ブレーキを制御するものなので、ブレーキユニットのなかが多い」


────センサーとESCがあれば、ブレーキを踏んでもロックしなのですか。

「ブレーキのロックというより、滑り始めたときにタイヤの四輪のどこのトルクを抜くとか、四輪のうちの、どのタイヤに少しブレーキをかけて滑らなくするかということをやっているセンサーです」(荻浦)


────つまり、タイヤはロックしない?

「はい、しません」


────すぐれたものですね。

「はい。ただ、一般的に雪道などでブレーキかけてロックしないのはABSというアンチブロック・ブレーキ・システムがあります。ESCとは微妙に連動してると思います」


────それは村田製作所が独自に考えついて車載提案するのですか。

「いやいや。このシステムは、もともとは自動車メーカーさん、あるいはサプライヤーさんが考えたシステムで、それを実現するためのセンサーを我々が開発したということになります」


────でも、これ、要するに凍結した路面などでの事故を防ぐものですよね。北国とか北欧の国などでは便利というか安心なシステムでは?

「ええ、めちゃくちゃ便利だと思います」


────では、次に車載の加速度センサーはどこについているのですか?

「これもまたESCのなかです。加速度センサーというのは、加速度なので、重力とか、あるいは距離を2回微分すると加速度になるんですけれども、そういったものを測ります。それは車の加速であったり、減速であったり」(荻浦)


────そうか、どこに付いていても、車体の加速度がわかる?
    では、ジャイロセンサーというものはどんな働きをするのですか?


「回転を拾うセンサーです。カーブを曲がったとか、高速道路の大きな回転を曲がった場合です」


────では、ESCにはジャイロセンサーと加速度センサーがついている。ふたつともにMEMSという加工技術で作られたもの。そう理解していいですか。そして、このふたつのセンサーがあるから車体の姿勢が制御できる。

「そうです。主にふたつのセンサーが検出した車体情報をもとにESCが動き、タイヤが滑ったり、揺れたり、ロックしたりするのを防ぐ」(荻浦)


────なるほど。これだけ聞いて、やっとわかりました。もし、このセンサーが車載されていなければ、ドライバーは安心できないですね。

加速度センサー SCA3300シリーズ。寸法は7.6×8.6×3.3mmと極小。
ジャイロセンサーSCC2230-D08。こちらも極小部品だ。

《後編に続く》

 


コンデンサーが原点。シャーペンの芯より小さい極小のものも!〜《村田製作所:後編》部品の仕事(10) | みんなの試作広場

『部品の仕事』第10回は電子部品専業メーカーの村田製作所後編です。EVや自動運転に用いられる車載センサーの開発に加え、同社の小さくて高性能を誇るコンデンサーなどの世界シェアナンバーワン製品のビジネスについてお話を伺うことで、部品研究者の幸せや部品会社での仕事の魅力について野地氏が迫ります。

野地秩嘉(のじつねよし)
1957 年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。著書は『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『ヤンキー社長』など多数。近著『トヨタ物語』『トヨタ 現場の「オヤジ」たち』がベストセラーに。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。


▽連載『部品の仕事』シリーズ一覧
  1. 日本精工(NSK)「ベアリング」前編 / 後編
  2. BOSCH「二輪車用ABS」前編 / 後編
  3. GSユアサ「自動車用バッテリー」前編 / 後編
  4. NTT(日本電信電話)「コネクテッドカー」前編 / 後編
  5. 村田製作所「車載センサー」前編 / 後編
  6. ブリヂストン「トレッドパターンデザイン」前編 / 後編
  7. 矢崎総業「ワイヤーハーネス」前編 / 後編
  8. クラリオン「カーオーディオ」前編 / 後編
  9. エフ・シー・シー「クラッチ」前編 / 後編
  10. ソミック石川「ボールジョイント」前編 / 後編
  11. 林テレンプ「内装部品」前編 / 後編
▽番外編・特別編

 

 

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