自動車用バッテリーはどのように開発するのか?〜《GSユアサ:後編》部品の仕事(6) (1/2)

野地 秩嘉(ノンフィクション作家)
野地 秩嘉
ノンフィクション作家

『部品の仕事』第6回は自動車部品の老舗電池メーカーGSユアサ後編です。GSユアサでは、どのように電池開発が進められており、これからの電池をどう考えているのでしょうか。前編に引き続き、GSユアサの特色から電池開発の仕方、電池の寿命、未来の電池を伺うなかで、多方面から開発現場における部品の仕事にせまります。

GSユアサのシェア

 さて、GSユアサという会社についての質問をした。
「現在、日本のマーケットにおいて、GSユアサのマーケットシェアはどのくらいなのですか?」

 大前はあっさり「自動車の鉛バッテリーのシェアは半分以上です」と答えた。

「グループ会社にGSユアサ エナジーという会社があるのですが、そこは元はパナソニックのグループ会社でした。我々が鉛バッテリーの事業を譲り受けたのです。つまり、鉛バッテリーでは我々のシェアが半分以上で、ほかに国内メーカーが2社あります。」

「では、リチウムイオン電池だとシェアはどうなっているのですか?」

 これも答えたのは大前だ。
「車載用のリチウムイオン電池になるとパナソニックさんのシェアが大きいですね。国内メーカーでは他に、当社含めて3~4社でしょうか。」

 ここからの答えは山口に変わる。
「世界を見渡すと、中国と韓国の電池メーカーが強いのですが、鉛バッテリーとリチウムイオン電池の両方をつくっている会社は当社くらいなんです。また、リチウムイオン電池はアジアが圧倒的で、中国、韓国、日本のメーカーが強いですね。鉛バッテリーは欧米に展開する巨大メーカーのシェアが大きいのですが、我々もアセアンを中心に世界17か国で生産しています。
 というのは、鉛バッテリーは重たくて大きいから、地産地消の傾向が強いです。自動車メーカーや通信事業をやっている会社の近くに鉛バッテリーの会社がある。わざわざ重くて大きなものを海を越えて送るくらいだったら、近くで作ったほうがいいという発想でしょうね」

株式会社GSユアサ 取締役 自動車電池事業部副事業部長 山口義彰(やまぐちよしあき)氏
熊本県生まれ。大学院修了後、湯浅電池株式会社に入社。2010年に湯淺蓄電池(順徳)有限公司に出向し、董事総経理を務める。その後、GSユアサに戻り要職を歴任後、現職。
株式会社GSユアサ 取締役 自動車電池事業部副事業部長 山口義彰(やまぐちよしあき)氏
熊本県生まれ。大学院修了後、湯浅電池株式会社に入社。2010年に湯淺蓄電池(順徳)有限公司に出向し、董事総経理を務める。その後、GSユアサに戻り要職を歴任後、現職。

GSユアサの特色

 鉛バッテリーとリチウムイオン電池の両方を作っている会社はGSユアサくらいのものだという。それはそれで大きな特色だが、では他にも同社独特の技術、考え方はあるのだろうか。

「GSユアサの特徴はなんですかと聞かれたら、『私どもがいちばん優先しているのはお客様ニーズと性能のバランス』と答えます。電池には耐久性、出力、寿命、安全性などのニーズがあるわけですが、我々はバランス重視の設計をします。つまり、出力が欲しいお客さまと話をした時は出力を中心に考えるけれど、それだけではダメですよと提言する。

 自動車のエンジンだって似たようなところがあると思うのですが、パワーを出しすぎると寿命や耐久性能は落ちます。電池の性能もそういうトレードオフの関係なんですよ。見た目のパワーを出そうと思うと、我々もできます。しかし、それをやると買ってすぐはものすごく出力が出るけれど、1年後にはもうダメになったとなってしまう。ですから、我々は買った時の性能を長く維持できるようなバランス設計でお客様にお届けする」(大前)

「値段も重要な要素ですよね」とこれは、わたしの質問だ。

「まあ中国製に比べると、当社の製品は高いかもしれません。鉛バッテリーであれば数割程度不利にはなるかな。
 EV用電池の場合は、中国のメーカーはいかに数を作ってコストを下げるかという領域に入りつつある。それは中国の自動車メーカーとしては安いのが大歓迎だからです。しかも、EVでは電池をたくさん使います。いかに軽くして、距離をどれだけ走れるかということをどの自動車会社も追求しています。だから、少しでも安い方がいい。
 それに電池の性能競争って本当に日進月歩です。ですから、現在、ある会社がシェアトップだったとしても来年はもうわからないというのが電池の業界です」(大前)

 山口が補足する。
「当社の特色は性能をよくすることも、むろんそうですが、加えて安全性です。100パーセント発火しない電池だとは言いません。しかし、鉛バッテリーにせよ、ハイブリッド用、EV用のリチウムイオン電池にせよ、安全性を最優先に、設計、開発、製造を行っています。」

株式会社ブルーエナジー製ハイブリッド車用リチウムイオン電池
株式会社ブルーエナジー製ハイブリッド車用リチウムイオン電池
電池開発の仕方 次ページ

こちらの記事もおすすめ(PR)