「アフターコロナ」に向けた新たな社会づくりを探る (1/3)

浅羽 登志也(株式会社情報工場 シニア・エディター)
浅羽 登志也
株式会社情報工場 シニア・エディター

2019年末に発生したと言われる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、われわれの油断の隙をついて一気に世界中に広まり、多くの先進国の医療と経済を麻痺させた。一方、同感染症に関するさまざまなデマや不確かな情報が増幅されて広がり、われわれの正しい情報に基づいた適切な行動を難しくしている。こうした混乱に強い社会は、どのように構築すればいいのだろう。上場企業を中心に、新規事業開発や研究開発に携わるビジネスパーソンも愛用する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」を提供する(株)情報工場のシニア・エディター、浅羽登志也が、2冊の書籍から考察する。

▽『みんさく× 情報工場』の関連記事

現代社会で増殖しやすく進化した新型コロナウイルスに、どのように対抗するべきか

『感染症 増補版』
-広がり方と防ぎ方



井上 栄 著
中央公論新社(中公新書)
2020/04 256p 820円(税別)


無自覚な感染者がウイルスをまん延させる

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスには、これまでのウイルスとは異なる厄介な特徴がある。

 まず、感染して症状が出るまでの潜伏期間が最大12.5日と長い。さらに軽症者や無症状者も多く、それがかえって無自覚な感染者による感染拡大を招いた。

 死亡率も、過去に流行したいくつかのウイルス感染症よりも小さい。つまり、このウイルスの毒性は比較的弱い(弱毒化されている)のだ。

 それにもかかわらず、多くの国や都市がロックダウンを断行し、日本でも緊急事態宣言が出された。弱毒とはいえ、かなりの数の重症者や死亡者が発生し、ワクチンもなく、医療崩壊の危険性があるからだ。

 この、かつてない状況を招いた新しいタイプのウイルスに、われわれはいかに対処すべきなのだろうか。

 本書『感染症 増補版』は、感染症対策の歴史や、ウイルスの伝播の仕組み、遮断法などを解説。2006年に出版された新書に、新型コロナウイルス感染症への対処法をまとめた補章を加えたものだ。著者は国立感染症研究所感染症情報センターの初代センター長を務めた井上栄氏。


予言されていた新型コロナウイルスの出現

 実は本書は、今回の新型コロナウイルスのような弱毒化したウイルスの出現を予言している。

 本書によれば、ウイルスのような微生物病原体は、環境に適応しながら進化し続けている。

 最近、多くの都市環境が清潔になり、汚染された水や大気、ネズミなど、これまでウイルスを媒介していたものが街から一掃された。すると残されたウイルス媒介者は「人体」のみになる。こうして人から人への直接感染が主なウイルスの感染経路となっていく。

 ウイルスにしてみれば、媒介者である人体の命を簡単に奪うわけにはいかない。そのため、弱毒のものに進化していったのだ。その結果が、新型コロナウイルスの大流行だ。

 弱毒で多くの場合症状を出さないまま人から人へと感染し、増殖を続けるウイルス。それが広範囲にまん延すれば、重篤患者や死者も増える。

 恐ろしいのは、今後もウイルスが環境に応じた進化を続ける可能性が高いことだ。たとえ今回のコロナウイルスのワクチンが開発されたとしても、さらに進化したウイルスが、短期間のうちに登場するかもしれない。

 ウイルスの感染拡大を防ぎつつ、経済活動を維持できるよう社会の進化を図っていくことは、現代人に課された喫緊の課題なのだ。


「確証バイアス」「エコーチェンバー」に惑わされない情報の受け取り方 次ページ

こちらの記事もおすすめ(PR)