フルカラー3Dプリンター~樹脂3Dプリンター入門講座(6)

この連載ではこれまで、樹脂3Dプリンターの造形手法として、FDM、光造形、粉末焼結積層造形を紹介してきました。これらの造形手法はどれも、一つのパーツに対して、樹脂のカラーは白や黒、黄色といったような単色になります。しかし、一つのパーツでも面ごとに色を変えたり、マーブル模様といったフルカラーの3Dプリンティングができる方式の3Dプリンターも存在します。今回はフルカラープリンターの方式および機種について紹介します。

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粉末固着造形(バインダージェッティング)のフルカラー機の変遷

粉末固着造形のパウダーベッドで製作されたパーツ 提供:3D-GAN
粉末固着造形のパウダーベッドで製作されたパーツ 提供:3D-GAN


フルカラーより以前には「マルチカラー」という、一つのパーツの中で複数の単色を切り替えることができる、多色の3Dプリンターが存在していました。その後、マルチカラーからフルカラーに進化しました。

フルカラー3Dプリンターで広く知られていたものは、石膏を用いる粉末固着造形のフルカラー3Dプリンター「Z printer」でした。薄い石膏粉の層に接着剤(バインダー)とカラーインクを吹き付けて造形します。造形物の表面は粉っぽいざらつきを帯びています。元々の地の素材は白くくすんだ感じの色です。その技術はもともとZ社の特許技術であったためか、市場には長らくZ printer以外のフルカラー機が登場することがありませんでした。

そのZ社は2011年に3D Systemsに買収されています。その技術は同社のインクジェット式3Dプリンター、ProJetシリーズに継承されていきました。3D SystemsはZ社の技術を自社の技術と融合し、樹脂を用いたフルカラー3Dプリンティングも可能にしました。

ただし3D Systemsのカラープリンターのラインナップの中で、現在は石膏系のフルカラー3Dプリンターの機種がメインになっています。石膏系の機種も、Z printer時代よりも色が鮮やかになっています。
樹脂を用いた同社のフルカラー3Dプリンター「ProJet 4500」は2021年3月に生産中止ということです。


粉末固着造形で製作されたパーツ 提供:3D-GAN
粉末固着造形で製作されたパーツ 提供:3D-GAN


さまざまなフルカラー方式

PolyJet式のフルカラー機

前述したインクジェット式の一種であるPolyJet式フルカラー3Dプリンターは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)と白などの色を混ぜたアクリル系硬質樹脂で造形物に色を付け、透過色の造形物も作れます。材料も部位により複数組み合わせることができるテクスチャマッピングにも対応します。粉末材料を使った積層ではないので、造形物の表面はなめらかで、発色も鮮やかです。こちらはボクセルデータによる制御ができます。

ボクセルデータとは、体積の要素であり、3次元空間での正規格子単位の値を表します。ピクセルが平面上の最小単位の正方形であると同じように、ボクセルは三次元上の最小単位の立方体のことです。


UV硬化インクジェット式のフルカラー機は日本製

大きな紙図面を出力するプロッターメーカーとして知られてきたミマキエンジニアリング社も、UV硬化インクジェット方式のフルカラー3Dプリンターを開発しています。C、M、Y、K、白、透過色のUVインク(光硬化樹脂が液化した材料)をワーク面に吹き付け、UV照射で固化させて薄い層を作ります。こちらのフルカラー造形物は、他の手法のものと比べて発色がよく、フルーツなども本物そっくりに作ることができます。この造形手法は、白インクで造形物の内部を作り、その表面にカラーを載せます。そのため、外光をよく反射し、造形物が色鮮やかに見えるとのこと。ただし、このような方式なので、造形物を輪切りにすれば、白い核の部分があらわになります。


FDMにもある! フルカラー機

FDMプリンターでは、インクが染み込みやすいPLA樹脂の層にカラーインクを吹きかけながら造形するフルカラー造形をする装置があります。フィラメントはカラーインク向けのものを使わなければならず、通常のフィラメントを使うと色があまりしみこまないとのことです。PLA樹脂を染めるため、造形物の色は若干白っぽい感じです。FDMのフルカラー機は25万円程度で買えます。


将来はボクセル単位のカラーに対応

HP社が発売するMulti Jet Fusionシリーズのテクノロジーはインクジェットの手法の1つです。Multi Jet Fusionの装置ではボクセルデータを扱えるようにしています。現在はまだ実現していませんが、発売当初から、ボクセルの一つひとつに材料や色が設定できるようになるとHPが発表しています。かつては単色で材料もナイロン系のもの1種類しか対応していなかったのですが、今はこの仕組みを使ってフルカラー出力ができるようになっています。


紙で作るタイプのフルカラー機

ロール紙を使って造形するフルカラー3Dプリンターもあります。Mcor Technologies社製の3Dプリンター「ArkePro」は、積層した紙を少しずつカットしながら形状を作っていく仕組みです。材料が紙なので、カラーインクとは相性が抜群で、発色も良くなります。また、ランニングコストも安いそうです。積層ピッチは、紙の薄さである0.1mm程度です。ただし紙なので、重みがなくて、表面はあまり滑らかではありません。それに、着色には少々の手間が掛かります。


フルカラー3Dプリンターの用途は?

フルカラープリンターで製作したフィギュア 提供:3D-GAN
フルカラープリンターで製作したフィギュア 提供:3D-GAN


フルカラー3Dプリンターを使えば、プラスチックに塗装したものに匹敵する造形物も作れます。ただし、樹脂系の高級な装置を使った場合です。石膏ベースのものや、安価な機種は、やはりそれなりに品質が劣り、後処理が必須です。装置を購入せずとも、3Dプリンターのサービスビューロにはフルカラー3Dプリンターを備えていることがあるため、そちらを利用することも可能です。

フルカラー3Dプリンターの用途として、ぱっと思いつくのがフィギュアだと思います。実際、家族やペット、アニメやゲームのキャラクター、タレントのフィギュアをフルカラー3Dプリンターで造形する事例が多くあります。

さらによく見かけるのが、医療模型です。医療模型は施術前のシミュレーションや治療時の説明などに使われます。人の臓器は複雑に入り組んでいます。やはりカラーの造形物の方が、医師も患者もイメージがしやすくなります。CTスキャンの画像を利用して3Dプリントすることも可能です。

フルカラーで造形ができるということは、試作の時点で製品カラーも検討できることになります。スタイロフォームに紙を貼ったモックアップよりも断然リアルですし、塗装する手間もいりません。3Dプリンター製の試作品にリアルなカラーが付けられることで、設計の早い段階から量産品をイメージした検討が行えます。

また、試作の段階で色も含めて量産の近い外観のモノが作られていれば、製品カタログの写真に利用する、あるいは製品発売前の製品展示などにも利用できます。現在、3D CGが非常に進化していますが、やはり実物を使う評価や、実物があった方がいいシーンというのは、今後も存在し続けるでしょう。

フルカラー造形の分野は、3Dプリンターのボクセルデータ対応と合わさることで、用途が拡大していきます。ボクセルで色が指定できる、と言うことは、造形物の内部も詳細に色の指定ができるので、輪切りにすると柄が出てくる金太郎飴のような造形物が作れるようになるということです。これは、従来の加工物では実現できなかったことです。

HP社の以前の講演では、部品の摩耗状態のマーカーとして、部品の中に色の層を仕込んでおいて、摩耗するごとに見える色で状態を判断するという例を紹介していました。他にも、造形物の内部に色指定ができるという特性で、さまざまな工夫やアイデアが広がりそうです。



著者:小林由美(こばやしゆみ)
エンジニア、⼤⼿メディアの製造業専⾨サイトのシニアエディターを経て、2019 年に株式会社プロノハーツに⼊社。現在は、広報、マーケティング、イベント企画、技術者コミュニティー運営など幅広く携わる。技術系ライターとしても活動。



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