人協働ロボット「COBOTTA(R)」で書面押印などオフィス定型業務の自動化支援

INTERVIEW

日立システムズ 片桐 康裕

日立キャピタル 芝崎 理人

デンソーウェーブ 小畠 聖平

株式会社デンソーウェーブが株式会社デンソーと共同開発した人協働ロボットがCOBOTTA(R)です。2017年11月29日から受注を開始しました。

協働ロボットといえば、工場のラインなどで人間と協調して作業を行う姿をよく見ます。COBOTTAも1年ほど前から展示会などで、導入各社が工夫を凝らした使い方が紹介されるなどしてきました。


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3社によるオフィス向け自動化支援サービスの共同開発

こうした工場内での作業から応用の幅を広げ、事務用としてデンソーウェーブが展開を始めたのが「RPA&COBOTTAオフィス向け自動化支援」、オフィス向けの月額サービスです。2019年12月には書面押印と書類の電子化の事例を東京ビッグサイトで開かれた「2019国際ロボット展」に出展しました。

このオフィス向け自動化支援サービスは、株式会社デンソーウェーブ、日立キャピタル株式会社、株式会社日立システムズの3社による共同開発です。

そこで、3社それぞれの担当者であるデンソーウェーブ、小畠聖平(こばた・しょうへい)FA・ロボット事業部製品企画室、日立キャピタル、芝崎理人(しばさき・まさと)営業統括本部アカウント事業本部新規事業チーム、日立システムズ、片桐康裕(かたぎり・やすひろ)金融プラットフォーム事業部ソリューション本部クラウドゲートウェイサービス部に、COBOTTAのオフィス向け自動化支援の技術とサービスについてお話をうかがいました。


────今回、オフィス用としてCOBOTTAを応用したわけですが、そもそもCOBOTTAとはどんなロボットなのでしょうか。

「弊社のCOBOTTAは、安全柵を必要とせずに使える、本質安全と機能安全の両面からアプローチし安全性を担保した弊社初の協働ロボットです。コントローラを内蔵しているにもかかわらず、重量は約4kgと軽量で手軽に持ち運びできるのが特長です。どこでも素早くセットアップでき、公開された制御用APIとアーム部を直接手で動かすだけで動作を設定できるダイレクトティーチング機能、タブレット端末で直感的に操作できるGUIによってオリジナルの操作ができますから、短時間で作業の自動化が可能になります」 (デンソーウェーブ小畠氏)


────3社共同開発のサービス・システムということですが、それぞれの役割はどのようなものになっていますか。

「弊社から、COBOTTAの可能性に着目し、工場などの製造現場だけではなくオフィス環境の自動化をお客様にご提案できないかということでデンソーウェーブ様にお声がけさせていただきました。弊社が今回のソリューション・サービスの契約窓口となります。

まずは、書面の電子化と押印という基本プログラム、そしてお客様のニーズに応じたプログラムを内蔵させていただいたCOBOTTAの初期設定費用や保守メンテナンスをパッケージ化したものがサービス内容で、月額サービスでご提供させていただきます」 (日立キャピタル芝崎氏)

「弊社は、スキャンした画像データのOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)とマッチング処理を開発しました。お客様には、RPA(Robotic Process Automation)ツールの初期設定、保守サポートなどを担当します」 (日立システムズ片桐氏)

「弊社は実際にCOBOTTAをどう動かせば、オフィス環境の自動化に最適化できるかという実装の部分を担当しました」 (デンソーウェーブ小畠氏)


オプションになりますが、両脇に未処理書類と処理済み書類を入れるパレットを付け、未処理パレットから自動で取り出して作業をし、処理済みパレットへ収めるという動作もできます。
オプションになりますが、両脇に未処理書類と処理済み書類を入れるパレットを付け、未処理パレットから自動で取り出して作業をし、処理済みパレットへ収めるという動作もできます。


────いつくらいから3社で今回のサービスをやろうと始まったのでしょうか。

「2018年の夏頃から走り出したのですが、弊社(日立キャピタル)がニーズを持ち込み、それを実現していったという構図になります。その間には、こちらの要望に対していろいろと議論したこともありました。2019年から開発が始まり、最初に2つの機能を開発することは2019年の初めごろに決まりました」 (日立キャピタル芝崎氏)


ニーズの多かった書類の電子化

────2つの機能というのは?

「1つは、契約書や注文書などのページをめくってスキャンし、電子化して、名前を付けて保存するという機能です。もう1つは契約書などに押印する機能です。オフィス環境で協働ロボットを使う場合、どのような自動化のニーズがあるか、いくつかのお客様に事前にニーズヒアリングをしたのですが、最も多かったのが文書の電子化でした。冊子型の書類を手作業で電子化するには、1枚ずつページをめくり、スキャンしなければならず、多くの時間を要するとのお声を多くいただきました」 (日立キャピタル芝崎氏)


契約書などの書類をスキャンするため、書類の扱いを考えて動く速度は一定です。
契約書などの書類をスキャンするため、書類の扱いを考えて動く速度は一定です。


────電子化する機能で技術的に難しかったのはどのあたりでしょうか。

「製本された冊子をめくる作業は、我々がこれまで手がけてきた技術の中にはなかった機能でした。特にページを1枚だけ、正確にめくるところが最も苦労した部分です。展示会で数日間、ページめくりをしていましたが、失敗はありませんでした。コピー用紙のようなものならほぼ完璧にめくることができます。

電子化にはPFU社の卓上スキャナを使っていますが、契約書などページ数の多くて綴じられている冊子はページの綴じる部分が厚くなっていて平面にしにくく、画像をスキャンする際に山なりになってピントが合わなかったり文字が歪んだりしてうまくスキャンできません。そのため、めくった後にロボットが平らにするという機能もありますが、この工夫にも苦労しました。

システム開発で苦労した部分は、組み込みというより、お客様のニーズに合わせてどうカスタマイズしていくかということになるかと思います。サンプルコードが基本になっていますので、今後、お客様のニーズによってはシステムの構築で苦労することが出てくるかもしれません。

想定されるニーズには、例えば自動でお客様の社内システムに組み込みたいといった場合、そのシステムによって対応しなければなりませんし、どういうセキュリティ対策を施さなければならないかなど、お客様ごとのポリシーによって違う問題が出てくると思います。AIを使っていないのは、自動でというより、わざとある程度、指示した動きしかしないようにしている部分も大きいのです」 (デンソーウェーブ小畠氏)


────もう1つの押印の機能はどのように開発されたのですか。

「押印機能を付けようとしたのは、多機能性として2つくらい機能を付けたいということで、事前のニーズヒアリングで書面電子化に次いで、人の手を介する作業であり、時間を要しているとのお声が多かったため、開発を始めました。

機能が1つだけだと専用機としてみられてしまう恐れがあったので、専用機ではなく汎用機という位置づけをアピールしたかったという点もあります。今はまだ2つの機能だけですが、今後はニーズによって自動化の機能を増やしていくという開発の方向性になります」 (日立キャピタル芝崎氏)


モニターはタッチパネルになっています。
モニターはタッチパネルになっています。


────当初、押印ロボットとして話題にもなりましたが。

「プレスリリースを出した後、押印ロボットという報道が出てしまいました。実際に展示会に来て見ていただいた感想もそうしたものが多かったのは事実です。

しかし、今回の「RPA&COBOTTAオフィス向け自動化支援」は、あくまでオフィス環境で事務作業をする人との共同作業を目的に開発した汎用性の高いロボットです。押印機能は1つの応用例であり、汎用性の高いロボットということを強くアピールしてきました。その成果もあって、最近はようやく押印専用ではないという記事も出てくるようになっています」 (日立キャピタル芝崎氏)


人間より上手!ムラのない押印が可能に

────実際のオフィス環境で押印の作業というのはまだ大変なのでしょうか。

「工場の部品などの納品時、膨大な納品書に手作業で押印しなければならないというお声も事前のニーズヒアリングでお聞きしました。我々もリース契約時に電子上の契約行為ができる電子契約を取り入れていますので、けっしてハンコ文化を助長しているわけではありません。

しかし、ハンコがつかないと契約行為ができないお客様もまだまだ多いというのが現状で、完全電子化になっていく過渡期にあるのではないかと思っています。そうした意味で、今回のご提案は人の手を介する業務を自動化して、人は人にしかできない価値を創造する仕事に注力していただくことを支援する商品という位置づけになります」 (日立キャピタル芝崎氏)


────COBOTTAの押印はどうでしょうか。

「柘植の木彫りのハンコを朱肉につけて押印しています。実は、ロボットでハンコを押したほうが、人間よりもうまく押せることがわかりました。人間の場合、どうしても力の入れ加減や押す角度などにムラが出ますが、COBOTTAは最初に正確に動作を覚えさせれば、コンプライアンス機能によって常に一定の押印ができるためです」 (日立キャピタル芝崎氏)


「2019国際ロボット展」で展示された押印バージョン。
「2019国際ロボット展」で展示された押印バージョン。


────今回のオフィス向けの自動化支援ではCOBOTTAを2台使っていますが、それぞれどのような機能があるのでしょうか。

「このシステムでは電動ハンドを着用しているCOBOTTAとバキュームを使用しているCOBOTTAという、それぞれ異なる役割を持ったCOBOTTAを使用しています。ここでの文書の電子化は、空気圧でページを吸引し、ページを吸い付けてめくっています。吸い付けた紙を取り外すため、もう1本の腕が必要になったので2台になりました。また、押印の場合、電動バキュームを交換し、ハンコをつかむ電動グリッパにします。

このように、複数のCOBOTTAを組み合わせ、既存のアプリケーションを利用したり新たに開発したりして複雑な動きや機能性、汎用性を持たせていくことになります」 (デンソーウェーブ小畠氏)

書類などを吸着するためのコンプレッサも付属します。
書類などを吸着するためのコンプレッサも付属します。


────安全性についてはどうでしょうか。

「安全についてはまずISO規格がありますが、産業用ロボットの安全性に関して定められた規格に基づいてCOBOTTAの安全性を国際的な第三者認証機関にも評価され、認証していただいています。この認証により国際的な信頼度が増します。」 (デンソーウェーブ小畠氏)


────ビジネスとしても可能性をお聞かせください。

「最初は、総務部、法務部、経理部などでの導入を想定していましたが、実際にお問い合わせしていただくお客様は多種多様です。官公庁や金融業界などを考えていたのですが、メーカー、ゼネコン、物流など本当にさまざまななお客様から問い合わせがあります」 (日立キャピタル芝崎氏)

左から日立システムズ 金融プラットフォーム事業部ソリューション本部クラウドゲートウェイサービス部 片桐康裕氏、日立キャピタル 営業統括本部アカウント事業本部新規事業チーム 芝崎理人氏、デンソーウェーブ FA・ロボット事業部製品企画室 小畠聖平氏。
左から日立システムズ 金融プラットフォーム事業部ソリューション本部クラウドゲートウェイサービス部 片桐康裕氏、日立キャピタル 営業統括本部アカウント事業本部新規事業チーム 芝崎理人氏、デンソーウェーブ FA・ロボット事業部製品企画室 小畠聖平氏。


今回のサービス、今のところは月額サービスのみで、導入側が本体を勝手に改造するといったことはできないそうです。なにか要望するニーズがあれば、特別なハンドを作ることもできると言います。

このように、事務作業などを行うオフィス環境にも人間と協働するロボットが進出してきています。大量のルーティンワークをロボットが代わりにやってくれる時代になっているのです。


参考情報
・COBOTTAは、株式会社デンソーの登録商標です。



文/石田雅彦

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