アルミニウム9つの特長と展伸用アルミニウム合金~アルミニウムの基礎知識(1)

軽くて強く、リサイクル性にも優れた金属、アルミニウム。飲み物の缶や自動車、新幹線、ロケットなど幅広い分野で使われているほか、昨今、地球環境や社会の持続可能性に関する意識への高まりもあり、アルミニウムの需要は高まっています。

そんなアルミニウムについて、みなさんはどれだけの情報を知っているでしょうか? 研究開発など“試作”においても使われることの多いアルミニウム。アルミニウムの基礎知識連載第1回目のテーマは、アルミニウムの9つの特長と展伸用アルミニウム合金について。今回、話を聞いたのはアルミニウム合金の開発を主力事業に据える日軽エムシーアルミ株式会社開発部長の堀川宏(ほりかわ・ひろし)氏です。


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「アルミニウム」の9つの特長

日軽エムシーアルミ株式会社 開発部長 堀川宏氏
日軽エムシーアルミ株式会社 開発部長 堀川宏氏


鉄や銅よりも軽いことから、軽金属と言われるアルミニウム。加工性もよく、鉄よりも腐食が進みにくいことから、汎用性が高く、幅広い分野で使われています。一般的に触れることが多いのは、アルミニウム箔、窓のサッシ、飲料缶、鍋、橋の欄干、金属バット、スポーツ自転車のフレームなどでしょうか。そもそも素材として、どのように製造されているのか、そしてどのような特長があるのでしょうか?


左から、ボーキサイト、水酸化アルミニウム、アルミナ
左から、ボーキサイト、水酸化アルミニウム、アルミナ


「アルミニウムの原料は、ボーキサイトと呼ばれる赤褐色の鉱石です。ボーキサイトの原産地はオーストラリア、中国、ブラジル、インド、ギニアなどです。このボーキサイトを、苛性ソーダ液で溶かしてアルミン酸ソーダ液をつくり、そこからアルミナ分を抽出するのが製造における最初の工程です。

次にそのアルミナを溶融氷晶石の中で電気分解することによりアルミニウム地金を製造します。これを製錬と言います。現在、ここまでのプロセスはすべて海外で行われており、日本国内では製錬は行われていません。日本のアルミニウム・メーカーはアルミニウム地金を海外から輸入しています。


アルミニウムの地金、スラブ
アルミニウムの地金、スラブ


アルミニウムの地金は、そのまま加工を行うか、アルミニウム地金に、さまざまな金属を添加して、アルミニウム合金を作ってから加工します。そうしたアルミニウム合金を原材料として圧延・押出・鍛造・鋳造などの加工を行うことで、いろいろな形のアルミニウム素材が完成します」

堀川氏によれば、アルミニウムには9つの特長があると言います。その特長が軽量、電気伝導性、熱伝導性、反射性、リサイクル性、加工性、耐食性、高強度、非磁性です。

それぞれの特長について、堀川氏はこう説明します。


①軽量

「金属材料の中でシェア1位を誇るのは鉄で、アルミニウムは2位です。アルミニウムを鉄と比較した際の顕著な特長が“軽量”であることです。アルミニウムの比重は2.7で、鉄の比重7.9と比べておよそ1/3なので、同じ製品を作った場合、重さが大きく異なります」


②電気伝導性の高さ

「アルミニウムの電気伝導性は銅の約6割と銅には及びません。しかし、銅の比重は8.9と大きいので、銅の代わりにアルミニウムを導電材とすると約半分の重量に抑えられます」


③熱伝導性の高さ

「アルミニウムの熱伝導性は約230W/m·Kで、主要金属の中では銀、銅、金に続いて熱伝導度が良いのも特長です。鉄の熱伝導性は約85W/m·Kで、アルミニウムよりもかなり低いです」


④反射性

「光・熱・電波などをよく反射するので、暖房機器の反射板や照明器具などにアルミニウムはよく使われています。ただし反射性は、銀やニッケル、クロムなどの方がきれいに出ます。アルミニウムは表面が酸化しやすく、表面に薄い皮膜ができて少し白っぽくなるので、ギラギラ感を出すのは難しいですが、それでも鉄に比べれば反射性ははるかに良いです」


⑤リサイクル性の高さ

「アルミニウムは新しく地金を作る製錬の際は大きなエネルギーがかかりますが、リサイクルすると新地金を作る場合の3%のエネルギーで再利用できます。リサイクル性が高いのです。鉄の融点は約1,500℃ですが、アルミニウムの融点は660℃と低く溶けやすい、これもエネルギーコストを少なくしている魅力のひとつです」


⑥加工性の高さ

「アルミニウムは塑性加工(力を加えて変形させること)がしやすく、さまざまな形状に成形できます。薄い箔や複雑な形状の押出形材などを製造することができるため、幅広い分野で使われるのです」


⑦耐食性

「アルミニウムは酸化しやすいのですが、表面にバリア型の酸化皮膜をつくるので、腐食が進まず錆びにくいです。また酸化皮膜に何かがぶつかって削り取られたとしても、大気中の酸素や水蒸気と反応してすぐに酸化皮膜をつくるため、耐食性が強いと言えます」


⑧高強度

「アルミニウムは断面積あたりの強度では鉄には勝てないですが、重さあたりの強度は高く、鉄と比べて3倍ほどあります。強度の高さから輸送機器や建築でも使われることが多いです」


⑨非磁性

「アルミニウムは磁気を帯びないので、磁場に影響されません。そのため計測機器や医療機器といったものにも活用されています」


複数の特性を持つアルミニウム合金

アルミニウムの板材料
アルミニウムの板材料


軽量で電気、熱の伝導性がよく、加工もしやすい──アルミニウムはこうした特性を兼ね備える一方で、純粋なアルミニウムは、柔らかく、傷つきやすい金属材料でもあります。

そのため、ある程度強度が必要な部材に純度100%のアルミニウム(純アルミニウム)が使われることはなく、純アルミニウムの欠点を克服するためにマンガンや銅、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、ニッケルなどを付与した「アルミニウム合金」が使われることが多いです。

そんなアルミニウム合金には、複数の種類があることをご存知でしたか? JIS規格においてアルミニウム合金の種類と表示方法が決められています。今回の記事では、板材や押出形材のような展伸用アルミニウム合金のJIS規格を紹介します。

「これらは“番手”と呼ばれておりまして、展伸用アルミニウム合金は大きく分けて1000〜8000系の8種類に分類することができます。アルミニウムに加える合金元素の種類と量が変わってきます。詳しくは述べませんが、同じ番手であっても板材・押出形材を作るときの塑性加工や熱処理によっても強度や延性を変化させています」

それぞれの種類の特長について、堀川氏はつぎのように説明します。


1000番系: アルミニウム

「1000番系は成分の99%以上がアルミニウムで構成された工業用の純アルミニウムのことを指します。成分が99.9%以上のものは高純度アルミニウムと呼ばれます。アルミニウムの純度が高いため加工性や熱伝導性、電気伝導性には特に優れていますが、強度が低く、構造材料には適していません。そのため機械的強度があまり必要ではない部材や部品、家庭用品や電気器具などに使われることが多いです。

代表的な合金番号はA1100、A1070、A1050などですね。合金番号の下二桁は純度を表し、A1100アルミニウムは99.0%以上、A1070は99.7%以上、A1050は99.5%以上の純度と定められています」


2000番系: Al-Cu系合金

「アルミニウムに銅を加えた合金です。銅を付加することで鋼材に匹敵する強度を持った高強度のアルミニウム合金になり、主に航空機部材やねじ・ギア部品、成形用金型などで使われます。2000番系の代表的な合金番号としてA2017合金(ジュラルミン)やA2024合金(超ジュラルミン)などがあります。強度は高いのですが、銅を含むと耐食性は低下するほか、この番手は溶接割れが発生しやすいため溶接には不向きとされています」


3000番系: Al-Mn系合金

「アルミニウムにマンガンを加えた合金です。アルミニウムの特性である加工性、耐食性を維持させつつ、強度を上げたのが3000番系の特長です。この番手はアルミニウム缶、器物、建材など幅広い用途で使われています」


4000番系: Al-Si系合金

「アルミニウムにケイ素(シリコン)を加えた合金です。ケイ素の特性は熱に強く、耐摩耗性が向上することで、その性質がアルミニウム合金にも加わっています。耐熱性にも優れるため、鍛造されてピストンなどで使われるほか、他のアルミニウム合金よりも融点が低いため溶接溶加材などでも使われることが多いです」


5000番系: Al-Mg系合金

「アルミニウムにマグネシウムを加え、耐食性と強度をアップさせた合金です。加工性も良いので、アルミニウムの切削材料としては最もメジャーな材料と言えるでしょう。マグネシウム量の少ないものは装飾用や器物用に、多いものは船舶、車両、化学プラントなどの構造材として使用されます」


6000番系: Al-Mg-Si系合金

「アルミニウムにマグネシウムとケイ素が付加されており、5000番系のアルミニウムよりも強度や耐食性が優れています。代表的な例を挙げると、建築用のサッシなどにA6063合金が使われます。ただ、溶接には弱く、溶接個所や周辺部位にまで熱による強度低下が起きるため、サッシを組み立てるときにはボルトやナットなどの機械的接合が使われます」


7000番系: Al-Zn(-Mg)系合金

「アルミニウムに亜鉛を加えた合金ですが、多くは同時にマグネシウムを加えています。熱処理による硬化でアルミニウム合金のなかでは一番の強度を誇ります。代表的なA7075合金は超々ジュラルミンと呼ばれており、航空機の部品や車両、スポーツ用品にも使用されています」


8000番系: その他(Al-Fe系など)

「1000~7000番系のどの合金系にも属さない主な合金として、Al-Fe系合金があります。アルミニウムに鉄を添加することで強度と圧延加工性を付与して電気通信用や包装用アルミニウム箔として使用されています。そのほかには、低密度・高剛性が特長のAl-Li系合金などがあります。2000番系・7000番系に代わる新しい航空機材料として使用されています」



今回はアルミニウム、そしてアルミニウム合金の基礎知識についてまとめました。「アルミニウム合金を製造するにあたって、耐食性がどれくらい必要か、伸びがどれくらい必要か、といったニーズをいただくと、アルミニウム・メーカー側から提案がしやすくなる」と語る堀川氏。

アルミニウムの基礎知識を身につけておくことは、試作や研究開発の現場で役に立つのではないでしょうか。 次回は鋳造用アルミニウム合金の知識をお届けします。


文/新國翔大


《次回へ続く》

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